- 更新日 : 2025年6月19日
勤怠管理を外注するには?業者の選び方やメリット・デメリットを解説
勤怠管理を外注・アウトソーシングする企業が増える中、依頼する業務範囲を明確にすることが大切です。
本記事では、外注によってどのような勤怠管理業務がカバーできるのかを解説します。勤怠管理を外注する際のメリットとデメリット、自社に最適な外注先を選ぶためのポイントなども紹介します。
目次
勤怠管理の外注・アウトソーシングとは?
勤怠管理の外注・アウトソーシングとは、従業員の出退勤や休暇、労働時間の記録といった業務を、外部の専門業者に任せることです。「アウトソーシング」は、もともとアメリカで発展したものです。給与計算など専門知識が必要な業務を外部に委託することで、人材採用や教育にかかるコストを削減し、効率化を図る手法として普及しました。
日本では、1990年代のバブル崩壊をきっかけに注目されました。現在では、少子高齢化による人手不足を背景に、勤怠管理業務の一部を外注する企業が増加しています。昨今ではAIによる勤怠管理を実施する企業も、増加傾向にあります。具体的な方法について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
社内と外注の勤怠管理の違い
勤怠管理を社内で実施する場合は、専任スタッフを配置するのが一般的です。業務がすべて社内で完結するため、従業員も有給や福利厚生について相談しやすい環境が整います。
一方で、外注する場合は外部の専門スタッフに委託する形となり、対応できる業務の範囲は業者によって異なります。具体的には、勤怠管理の基本業務に加え、システム導入の支援や法改正への迅速な対応など、専門性の高い領域も任せられるのがメリットです。外注することで、社内に専任スタッフやノウハウがない場合でも、勤怠管理が可能となります。
勤怠管理を外注できる業務内容
勤怠管理を外部に委託した場合に、対応してもらえる具体的な業務内容について紹介します。
勤怠管理の仕事内容や、活用できるツールを比較したい方はあわせて下記の記事もご参照ください。
従業員の出勤・退勤管理
勤怠管理とは、従業員の出勤・退勤時間を正確に記録し、労働時間を適切に把握・管理する業務です。勤怠管理を実施する際には、労働基準法などの法令を守る必要があります。違反すると、企業が行政から指導や処分を受ける可能性もあるため、注意が必要です。
出退勤の集計や労働時間の計算は、ミスが許されない作業であり、正確性が求められます。労務に関する法令が守られているかどうかの確認も重要です。
給与計算
勤怠管理を外注すると、集めた勤怠データをもとに、基本給や残業代、各種手当を反映させた給与計算まで任せることが可能です。また、福利厚生に関する手続きの対応を依頼できる場合もあり、自社の人事業務の負担を軽減できます。
従業員ごとの残業時間を正確に把握することは、労働時間を適切に管理するうえで大切です。勤怠管理の専門業者に依頼することで、法令遵守や労務リスクの低減にもつながります。
有給休暇管理
有給休暇の管理は、従業員に付与される休暇日数を正確に把握し、取得状況を記録・管理する業務です。とくに、年間10日以上の有給休暇が与えられた従業員には、1年以内に5日以上の取得を義務づける法令があり、違反するとひとりあたり最大30万円の罰金を科される可能性があります。
こうした法的リスクを回避するためにも、有給休暇の管理や取得状況の確認は、勤怠管理の外注先に任せるのが効果的です。
勤怠管理システム導入のサポート
勤怠管理を外注する際には、システム導入のサポートまで対応してくれる業者もあります。ITや運用の知識が乏しい企業にとっては、技術面の支援を受けられるのは大きなメリットです。勤怠管理システムの導入をスムーズに進められるだけでなく、効果的な運用につながります。
とくに初めて勤怠管理システムを導入する企業にとっては、専門的なサポートを受けることで、運用開始後のトラブルや初期設定の手間を減らすことにもつながります。
勤怠管理を外注するメリット3選
ここでは、勤怠管理を外部に委託することで得られる主なメリットを3つに絞ってご紹介します。業務効率の向上や法令対応の強化など、外注ならではのメリットに注目しながらご覧ください。
人件費を削減できる
勤怠管理を外注することで、企業は人件費を抑えるという大きなメリットを得られます。たとえば、社内で専任担当者を雇用する場合は、給与に加え、社会保険料の負担や採用・育成にかかる時間とコストが発生するでしょう。さらに、労働時間や有給取得状況を正確に把握し、法令を守るためには専門的な知識が求められます。
外注であれば、勤怠管理の専門業務を外部に任せられるため、固定費の削減と法令遵守の両立が可能です。
法改正にも対応しやすい
勤怠管理を外注すると、専門知識をもつスタッフが法令改正にも迅速に対応してくれます。法令に違反すると行政からペナルティを科される可能性があるため、専門家に任せるとよいでしょう。
外注先は、法改正情報の収集やシステムへの反映など、法令遵守をサポートしてくれます。そのため、企業は最新の法規制に対応した勤怠管理が可能になります。
コア業務に集中できる
勤怠管理を外注することで、社内の人材や時間をコア業務に集中させることが可能です。勤怠管理は専門性と正確性が求められる重要な業務ですが、直接的な利益を生み出すわけではありません。
外注によって節約できたリソースを人材の育成や採用などの主要業務に振り向けることで、企業全体の生産性が上がります。結果的に、企業の利益拡大につながるメリットがあります。
勤怠管理を外注するデメリット3選
ここでは、勤怠管理を外注する際に注意すべき代表的なデメリットを3つ紹介します。外注のリスクや課題を理解し、適切な対策を検討するための参考にしてください。
情報漏えいのリスクがある
勤怠管理には、個人情報や企業の機密情報が含まれるため、外注すると重要なデータを社外に持ち出すことになります。そのため、情報漏えいのリスクが高いことがデメリットです。
対策としては、情報管理の教育や資格取得を徹底している信頼できる業者を選ぶことが大切です。万が一、情報漏洩が発生すると、個人情報保護法などの法令違反となり、多額の罰金や訴訟に発展する可能性があります。
情報漏えいのリスクを避けるためにも、慎重に業者を選定することが求められます。
維持費がかかる
勤怠管理を外注すると、外注費用が発生し、自社で管理する場合よりもランニングコストが高くなることがあります。
なるべくコストを抑えるためにも、自社の規模やニーズに合ったプランを選ぶことが大切です。コスト面での最適化を図るために、定期的な運用体制の見直しや比較検討を実施し、効率的な運用を心がけることが求められます。
自社にノウハウが蓄積されない
勤怠管理を外注すれば、勤怠や給与計算の専門知識をもつ人材を社内で確保する必要がなくなります。その一方で、業務のノウハウが社内に蓄積されにくくなるというデメリットもあります。ちょっとした確認や修正でも外注先に依頼する必要があり、対応に時間がかかるケースもあるでしょう。
また、将来的に労務業務を社内に戻すことになった場合、担当者が対応に戸惑う可能性もあります。さらに、外注先でトラブルが発生した際に、業務が一時的に止まってしまうリスクも考慮しておくことが大切です。
勤怠管理の外注先・アウトソーシングサービスの選び方
ここでは、勤怠管理の外注先やアウトソーシングサービスを選ぶ際のポイントを解説します。自社に合った信頼できるパートナー選びの参考にしてください。
業務範囲が自社の必要とするものとマッチしているか
勤怠管理の業務範囲は多岐にわたり、どこまでを外注するかを明確にしたうえでサービスを選ぶことが重要です。たとえば、採用や退職手続き、人材配置といった人事関連の業務も含めて考える必要があります。
外注先のサービスが、自社で求める具体的な業務にしっかり対応しているかを事前に確認しましょう。業務内容とサービス内容が合っていれば、スムーズな業務運用につながり、信頼できるパートナー選びにも役立ちます。
予算内に収められるか
勤怠管理を外注する際は、自社でかかる人件費やシステムの導入・維持費と、外注サービスの料金を比較して、予算内に収まるかを確認することが大切です。
外注費用は従業員数や依頼する業務範囲、オプションによって変動します。導入前に複数の外注先から具体的な見積もりを取り、コスト面をしっかり比較検討することで、最適なサービスを選びやすくなります。
過去の実績は信頼できるか
外注先を選ぶ際は、過去の実績をチェックして信頼性を見極めることが重要です。あらかじめ導入事例や実績を確認することで、サービスの品質や対応力を把握できます。
とくに自社と同業種での導入経験や、顧客からの評価を参考にすると、具体的な利用イメージが湧きやすくなり、安心して依頼できるかどうか判断しやすくなります。
安全性・セキュリティが高いかどうか
勤怠管理を外注する際には、社員の個人情報や企業の機密情報を提供します。そのため、外注先のセキュリティ体制が信頼できるかどうかを見極めることが大切です。情報漏えいのリスクを抑えるため、契約前にセキュリティ対策の内容を具体的に確認しましょう。
たとえば、データの暗号化やアクセス権限の管理などを確認できると安心です。セキュリティ対策の事前確認が、リスクの最小化につながります。
勤怠管理代行サービスの種類
ここでは、勤怠管理代行サービスのさまざまな種類について解説します。自社のニーズに合ったサービス選びの参考としてご活用ください。
人材派遣サービス
人材派遣サービスでは、専任スタッフが企業に派遣され、勤怠管理業務をサポートします。企業は派遣先となり、人材派遣会社が派遣労働者と雇用契約を結びます。
そのため、給与の支払いや社会保険の手続きなどは派遣会社が行い、受け入れ企業は業務の指示やサポート体制の整備に専念できる点がメリットです。なお、派遣スタッフは正社員とは異なり、期間が定められた契約など、柔軟な雇用形態で働く点が特徴です。
クラウド型のサービス
クラウド型勤怠管理システムでは、専用のソフトウェアやブラウザ上のサービスを通じて利用できます。インターネット環境があれば、場所や時間を問わずアクセスできるため、リアルタイムで勤怠状況を管理可能です。そのため、在宅勤務や外出先での業務にも対応しやすく、柔軟かつ効率的な勤怠管理ができます。
オンラインアシスタント
オンラインアシスタントサービスは、依頼から納品までをすべてWeb上で完結できる点が特徴です。勤怠管理だけでなく、人事や総務、秘書業務など幅広い業務を委託できるプランも用意されており、企業の多様なニーズに対応しています。
勤怠管理を外注する場合のよくある質問
ここでは、勤怠管理を外注する際によく寄せられる質問と回答を紹介します。不安や疑問を解消し、外注を検討する際の参考にしてください。
勤怠管理システムの相場はいくらですか?
勤怠管理システムの初期費用は、種類によって大きく異なります。オンプレミス型は約100万円かかるのに対し、クラウド型は0円から50万円程度が一般的です。ただし、金額はあくまでも目安になります。
初期費用には、設定や導入支援も含まれる場合が多いでしょう。ランニングコストは、従業員ひとりあたり月200〜500円が目安です。とくにクラウド型は、従業員数に応じた従量課金制が主流となっています。
勤怠管理は会社の義務ですか?
2019年4月の労働基準法改正により、企業は従業員の勤務状況を正確に把握し、客観的な記録をもとに管理することが義務化されました。
勤怠管理は使用者の責任であり、怠ると法令違反となる可能性があります。違反した場合は罰金や懲役などの罰則が科されるため、適切な勤怠管理が重要です。勤怠管理を効率化したい方は、打刻のペーパーレス化を実施するとよいでしょう。興味がある方は、下記の記事をご確認ください。
エクセルの勤怠管理は違法になりますか?
エクセルをタイムカード代わりに使うこと自体は違法ではありません。しかし、エクセル上でいつでも修正や追記が可能なため「客観的な労働時間の記録」とは認められにくく、違法となるリスクがあります。
※厚生労働省のガイドラインによると、「使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。」もしくは「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。」と明示されています。
とくに意図的な修正や入力漏れで給与が不足すると、労働基準法違反と判断される場合があるでしょう。労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があるため、適切な管理が求められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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