- 更新日 : 2025年2月28日
副業に労働時間の上限はある?違反にならないための管理方法について解説
副業を始める際に気をつけるべきポイントは、労働時間です。本業と副業を両立させるためには、法的な制約を守りながら適切な労働時間を確保することが重要です。
本記事では、副業における労働時間の上限や法律違反にならないための具体的な管理方法について解説します。今後、副業を検討している方やすでに副業をしている方はぜひ参考にしてみてください。
本業と副業で就労可能な時間の上限
労働基準法第32条では、1日8時間、1週間に40時間を超える労働をさせてはいけないと定められています。
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を取る必要があります。少なくとも毎週1日の休日または4週間の間に4日以上の休日を付与する義務があるため、注意が必要です。
また、労働基準法第32条の規定は、複数の事業場で就労する場合にも適用されます。副業の労働時間も大きく関係するため、以下で一つずつ確認していきましょう。
労働時間の上限や計算方法などの詳しい情報については、以下の記事をあわせてご覧ください。
本業と副業の労働時間は通算される
本業と副業のどちらも会社に雇用されている場合、1日8時間、週40時間の上限規定は本業と副業を通算した労働時間に適用される点に注意が必要です。労働基準法第38条により「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められています。
たとえば、本業で1日8時間労働を月曜日から金曜日までの5日間働き、土日に副業として2時間働く場合、土日の副業は法定時間労働を超過していることとなります。
もし、労働基準法第32条に反して従業員に法定労働時間を超えた労働をさせた場合、使用者は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される可能性があるため、注意が必要です。
本業と副業の労働時間が法定労働時間を超えないためにも、職場での労働時間と労働者が申告した他の職場での労働時間を通算して管理することが重要です。
36協定の締結をしていると上限まで時間外労働ができる
使用者と労働者の代表間で労働基準法第36条で定めた協定(通称36(サブロク)協定)を締結し、行政官庁に届出ると、法定労働時間を超える時間外労働、法定休日における休日労働が認められます。
36協定を結んで従業員に時間外労働を命じる場合でも、原則、月45時間・年360時間を超える労働は認められていません。ただし、36協定において特別条項を定めると、「月45時間・年360時間」を超える時間外労働が可能です。
36協定の特別条項は、法令で定められた事項を定める必要があり、限度時間を超える時間外労働は、特別条項の規定の範囲内で認められます。
36協定の特別条項を結んでいる場合でも、以下のポイントは守る必要があるため注意が必要です。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計が「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」がすべて1月あたり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6回(6ヶ月)が限度
従業員に時間外労働を命じる際は、36協定を締結し、労働者代表の合意を得たうえで法定労働時間を超える時間外労働を適切に運用しましょう。
36協定の詳しい情報については、以下の記事をご覧ください。
副業の労働時間に関する5つの注意点
副業をする従業員に対しては、本業と副業を通算して法定労働時間を超えないよう管理することが重要です。しかし、他にも副業の労働時間において注意しないと、労働基準法に違反したり、従業員の健康を損ねたりする可能性があります。
法的リスクを避けるために、以下の注意点に留意しておきましょう。
1. 労働時間を超えた際は割増賃金が発生する
法定労働時間を超えた労働は、割増賃金が発生します。
割増賃金とは、労働基準法で定められた法定労働時間を超えて労働した場合や、休日や深夜に労働した場合に支払われる賃金です。
割増賃金には、以下の3種類があります。
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
---|---|---|
時間外(時間外手当・残業手当) | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間・年360時間)を超えたとき | 25%以上 | |
時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき | 50%以上 | |
休日(休日手当) | 法定休日(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
深夜(深夜手当) | 22時から5時までの間に勤務させたとき | 25%以上 |
たとえば、通常1時間あたり1,200円で働く労働者の場合、時間外労働1時間につき割増率25%が適用され、割増賃金を含めた1,500円の支払いが必要です。
副業先の会社は、本業より後に契約した場合でも割増賃金を支払う必要があります。ただし、本業の会社が副業を認めたうえで時間外労働をさせた場合、本業の会社も割増賃金を支払う義務があるため注意が必要です。
上記の表に基づき、手当の種類により割増率も異なるため、事前に確認して適切に給与計算しましょう。
2. 就業規則を事前に確認する
企業で副業を禁止している場合は、就業規則に副業禁止の旨を記載し、従業員に周知させることも重要です。副業を禁止しているにもかかわらず、就業規則に禁止の旨を記載していない場合、従業員は副業をしても問題ないと解釈し、トラブルにつながる可能性があります。
副業を禁止する場合は、禁止する理由や無断で副業をした場合の処分について詳しく記載しておきましょう。
副業を許可する場合でも、届出の必要性や副業に関する条件を事前に定め、従業員と確認し合うことも大切です。
今一度、就業規則に副業について記載しているか確認しておきましょう。
3. 正しい労働時間を申告する
副業と兼業の状況を確認する際は、労働者からの申告を受けて内容を確認することが重要です。
労働基準法第38条第1項では、労働時間の通算は会社が自社での労働時間に加え、労働者の申告に基づき、他の会社での労働時間を合計して計算する必要があると定められています。
厚生労働省の副業・兼業ガイドラインでは、基本的に、労働者の申告のみで労働時間を把握するものとしており、客観的な記録との照合までは求められていません。
仮に従業員が申告漏れや虚偽申告をした場合でも、企業には責任がないとされています。
申告漏れや虚偽申告による割増賃金の未払いについては、過去の裁判例があります。
横浜地裁(平成30年3月28日)および同控訴審東京高裁(平成30年9月26日)では、本業と副業の労働時間を合算して法定労働時間を超えていても、会社が「明確に認識していなかった」場合は、割増賃金を支払う義務はないと判断されました。
とはいえ、従業員とのトラブルを防ぐために、正しい労働時間を申告してもらうよう周知することが重要です。
4. 副業時の労災保険について確認する
就業中や通勤中に発生した労災は、就業先の労災保険が適用されます。本業での労災は本業の労災保険が適用され、副業での労災は副業先の労災保険が適用されるのが基本です。
2020年9月の労働者災害補償保険法の改正により、副業や兼業をしている労働者が労災保険の給付を受ける際、給付額はすべての勤務先の賃金を合算して計算されるようになりました。
従来は、労災が発生した勤務先の賃金のみを基に給付額が定められていました。そのため、副業先の労災により本業に影響を及ぼす場合でも、休業補償給付が少額となる可能性があったのです。
しかし、法改正により、複数の勤務先で働く労働者が労災保険を利用する際、給付額はすべての勤務先の賃金を合算して計算されます。
副業先で労災保険を適用する場合、本業の労災保険にも影響を及ぼす可能性があるため、労働者に副業先にも報告してもらうことが重要です。
労災保険の詳しい情報は、以下の記事をあわせてご覧ください。
5. 体調に気をつける
副業をする従業員に対して、健康面で配慮することも重要です。過度な労働は肉体的にも精神的にも負担が大きく、副業だけでなく本業に支障をきたす可能性があります。
企業には、労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」があり、従業員の健康と安全を確保する必要があります。そのため、労働基準法に従い、適切な休憩時間を提供し、労働者の生命や健康を守らなければいけません。
副業をする従業員の労働時間や健康状態を把握するためには、従業員に対して副業の内容を申請・届出させることが望ましいです。事前に対処することで、過重労働を未然に防ぎ、従業員の健康を維持できます。
さらに、企業は労働安全衛生法第66条により、健康診断やストレスチェックを実施する義務があります。企業が適切に健康管理措置を行うことにより、従業員の健康を守り、企業全体の生産性向上にもつながるでしょう。
労働時間を超えないように副業時間を確保する4つの方法
労働時間を超えないようにするためには、従業員が副業時間の確保・管理を適切に行うことも重要です。以下では、副業時間を確保するための方法について解説します。
1. スケジュールを可視化して時間を管理する
副業を行う従業員の労働時間が法定労働時間を超えないようにするため、企業側がスケジュールを可視化して時間を管理すること、または従業員に管理を任せることが重要です。
労働基準法では、労働者が複数の事業者に雇用されている場合、労働時間は通算されます。そのため、企業は従業員の本業と副業の労働時間を把握し、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えないよう管理する必要があります。
労働時間を超えない範囲で従業員に副業をしてもらう場合、仕事とプライベートの時間を含めてスケジュールを明確にし、カレンダーアプリやスケジュール管理ができるアプリを活用してもらいましょう。
適切に管理することにより、労働時間の過不足を把握し、適切な対応が可能です。
2. 本業の作業効率を上げて時間を確保する
業務において無駄を排除し、効率的な作業フローを構築することが重要です。業務プロセスを定期的に確認し、改善点を洗い出すことで、従業員の負担を軽減し、作業時間の短縮が図れます。
また、副業する従業員は本業の作業効率を向上できることで、空いた時間を副業に充てられます。
朝の移動中や昼休みなどの短時間に副業をする従業員に対しては、過労にならないよう注意喚起することも重要です。
3. 短時間で完了する副業を選ぶ
副業を行う従業員の労働時間管理は、企業にとって重要な課題です。過度な労働は健康リスクや本業への影響をきたす可能性があります。
企業は、従業員に短時間で完了する副業を選ぶよう促すことで、適切な労働時間管理を支援できます。具体的には、従業員に対して副業の内容や労働時間を報告させ、適切な休息を確保するよう指導することです。
また、厚生労働省が提供する「マルチジョブ健康管理ツール」を活用すると、従業員自身が本業と副業の労働時間や健康状態を管理できる環境を整えられます。
4. 副業専用の時間を固定で確保する
企業は、副業する従業員に対して副業専用の時間を固定で確保するよう促すことは、労働時間の適切な管理に効果的です。
本業が平日18時までの場合、副業の時間を20時〜22時や土日の朝だけなど特定の時間に固定すると、企業は従業員の労働時間を適切に把握しやすくなります。
副業する従業員に対し、副業時間を固定で確保してもらう場合は、従業員と十分に話し合うことが重要です。
副業の労働時間の管理方法
労働時間を適切に把握し、法的リスクを避けるためには、副業する従業員に対して適切に労働時間を管理してもらい、報告してもらうことが重要です。企業は、従業員から申告された副業の労働時間と本業での労働時間を通算し、労働状況を確認する必要があります。
以下では、副業の労働時間の管理方法について解説します。
勤怠管理システムを利用する
従業員の労働時間を適切に管理するためには、勤怠管理システムの利用がおすすめです。
勤怠管理システムとは、従業員の勤怠を管理するシステムです。多くの勤怠管理システムでは、労働時間の集計の機能が搭載されており、適切に勤怠管理が行えます。
マネーフォワードのクラウド勤怠であれば、以下のような機能が利用可能です。
機能 | 詳細 |
---|---|
あらゆる雇用形態に対応した出退勤管理 | 基本勤務制・シフト制・裁量労働制・フレックスタイム制などの従業員の出退勤管理が可能 出退勤管理は、パソコンやスマートフォン打刻、打刻機を使用したICカード打刻にも対応している |
カスタム自動集計 | 任意項目をカスタムし、月の合算値を集計・給与計算ソフトに連携できる |
シフト管理 | シフトを入力することにより、予定を確認でき、所定時間と時間外の自動集計が可能 |
有給休暇管理 | 有給休暇の自動付与や一人ひとりの有給休暇管理簿作成までWebで完結する |
異動履歴管理 | 異動履歴をもつことで、旧組織、旧雇用形態による変更前のデータ出力ができ、組織改変時の勤怠・ワークフロー承認者変更もスムーズに行える |
ワークフロー | 打刻時刻、遅刻、早退、欠勤、残業、休日出勤、休暇の申請や承認もWebで完結する |
アラート | 異常な打刻、残業時間が一定時間を超えた場合、36協定の遵守状況などをアラートで管理できる |
インポート・エクスポート | 従業員や勤怠データなどのインポートにより既存ソフトからの乗り換えも可能 勤怠データのエクスポートにより給与ソフトへの取り込みも可能 |
マネーフォワードの勤怠管理システムは、勤怠管理に役立つ機能が豊富に用意されているため、ぜひ利用してみてください。
タスク管理ツールを利用する
タスク管理ツールは、個人やチームそれぞれのタスクや進捗状況を管理できます。
タスク管理ツールを使用することで、業務の優先順位付けや進捗状況の可視化が容易になり、時間配分の最適化が可能です。たとえば、タスク管理ツールにより本業と副業の予定を分けて管理することで、両者の労働時間のバランスをすぐに把握できます。
作業効率の向上や無駄な時間の削減が期待でき、限られた時間内での生産性を高められます。
手動で勤怠管理する
副業の労働時間を手動で勤怠管理する際は、出退勤時間や休憩時間を紙やExcel、メモアプリなどに記録する手段があります。
手軽に記録できることはメリットですが、ヒューマンエラーが起こりやすいため注意が必要です。記入ミスや記録漏れが発生すると、実際の労働時間とズレが生じ、適正な報酬計算が難しくなります。
また、手動管理では集計作業も手間がかかるため、時間のロスにつながる可能性があります。効率的に勤怠管理するためには、アプリやクラウドツールの活用の検討がおすすめです。
労働時間を管理しながら本業と副業を両立させよう
本業と副業の労働時間の上限は、1週間40時間、1日8時間以内と定められています。36協定がないまま従業員に法定労働時間以上の労働をさせた場合、使用者には罰則が科されるため注意が必要です。
労働基準法で労働時間が定められているのは、労働者の健康を維持しながら働けるようにするためです。従業員は時間管理を行いつつ副業で働いた正確な労働時間を伝え、使用者は労働時間の上限を超えないよう調節しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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