- 更新日 : 2025年10月31日
社会保険の加入要件「月額賃金8万8,000円」に残業代や通勤手当は含まれる?
社会保険(ここでは健康保険・厚生年金を指します。以下同じ)の適用拡大により加入条件が緩和され、月額賃金8万8,000円以上の短時間労働者も社会保険に加入することになります。8万8,000円には基本給や諸手当が含まれ、残業代などは含まれません。また、通勤手当や賞与なども含めないとされています。3ヵ月連続で超えた場合ではなく、労働契約書などで判断されます。
目次
社会保険の加入要件である「月額賃金8万8,000円」とは?
社会保険の適用拡大により、条件を満たす短時間労働者に社会保険への加入義務が生じます。社会保険加入義務の有無の判定に用いられるのは、勤務時間・賃金・雇用期間・非学生の4項目です。賃金が「月額8万8,000円」以上の場合、短時間労働者でも社会保険への加入義務が生じます。では月額賃金8万8,000円は、どのように計算するのでしょうか。月額賃金8万8,000円に算入される給与と、算入されない給与について解説します。
月額賃金8万8,000円に算入される給与
給与のうち、毎月決まって支払われるものは月額賃金8万8,000円に算入されます。基本給や定額支給される諸手当も、月額賃金8万8,000円への算入対象です。手当という名称であっても支払われたり支払われなかったりする手当や、月によって金額が変わる手当は月額賃金8万8,000円には算入されません。
月額賃金8万8,000円に算入されない給与
月額賃金8万8,000円に算入されない給与には、賞与や時間外手当などがあります。賞与は、1ヵ月を超える期間ごとに支払われるものだからです。時間外労働に対する割増賃金として支払われる賃金も、月額賃金8万8,000円に算入されません。また家族手当のような最低賃金に算入しないことが定められている賃金も、月額賃金8万8,000円には含めないとされています。
月額賃金8万8,000円に算入されない給料
・1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金:賞与
・時間外労働に対する割増賃金:時間外労働手当、休日出勤手当、深夜労働手当
・最低賃金に算入しないことが定められている賃金:精勤手当、皆勤手当、家族手当
残業代は月額賃金に含まれる?
残業代は、月額賃金8万8,000円の計算には含まれません。時間外労働に対する割増賃金は、社会保険に加入しなければならない短時間労働者の8万8,000円の月額賃金には含まれず、残業代も算入する必要はありません。残業代と同じように休日出勤をした場合に支払われる休日出勤手当や、深夜(22:00から翌朝5:00まで)に労働したことで支払われる深夜労働手当も、月額賃金8万8,000円には含めないとされています。
通勤手当は月額賃金に含まれる?
通勤手当も、月額賃金8万8,000円の計算には含まれません。通勤手当は実費弁償的性質を有するものとの解釈から、最低賃金の算出においては計算に含めないとされています。社会保険加入の判定においても、通勤手当は月額賃金8万8,000円に含まれません。
扶養から外れるのは3ヵ月連続で8万8,000円を超えた場合?
月額賃金が8万8,000円を超えることにより扶養から外れて、社会保険に加入しなければならないのは、3ヵ月連続で月額賃金8万8,000円を超えた時点ではありません。労働契約書を交わすなど、月額賃金8万8,000円を超えることが決定した時点で社会保険に加入する義務が生じます。
月額賃金8万8,000円の計算方法
月額賃金8万8,000円は、所定内賃金で計算されます。所定内賃金とは、給料のうち支払われることと支払われる金額があらかじめ決まっている、労働契約書などに記載されている賃金のことです。時間給の場合は、以下の計算式で算出します。
例えば時間給が1,000円、週の所定労働時間が21時間の場合は、以下のように計算します。
この場合は月額賃金が8万8,000円を超えるため、社会保険への加入義務が生じます。
2022年10月の適用拡大により短時間労働者の対象者が変わる?
社会保険の適用拡大は社会保険加入条件を緩和し、被保険者を増やすことを目的としています。これまでは条件に満たないために社会保険に加入できなかった短時間労働者でも被保険者資格を取得できるようになり、働き方に相応しい保障を受けられるようになります。2022年10月より、従業員数101人以上の企業に社会保険の適用拡大が求められるようになりました。2022年9月までは従業員数501人以上の企業に対応が求められていましたが、2022年10月からは新たに従業員数51~100人の企業が要対応となります。
月額賃金8万8,000円を超えた場合の対応
社会保険の適用拡大に該当する企業では、月額賃金8万8,000円を超えると短時間労働者であっても社会保険加入義務が生じます。事業主・従業員は、以下のような対応が必要です。
事業主に必要とされる対応
事業主は対象従業員の理解を得られるよう、説明する必要があります。社会保険に加入すると保険料を負担しなければならないため、手取り金額は少なくなります。不満を訴える従業員も少なくないと予想されますが、納得してもらえるように丁寧な対応が求められます。
従業員に必要とされる対応
勤務先で社会保険に加入する際には、それまで扶養に入っていた場合は外れる手続き、国民健康保険に加入していた場合は脱退する手続きを行う必要があります。扶養から外れる場合は家族の勤務先に連絡して、手続きをしてもらいます。国民健康保険の脱退手続きは、自分で届け出て手続きをします。
月額賃金8万8,000円の計算方法を理解し、しっかりと対応しよう
社会保険の適用拡大は社会保険加入条件を緩和し、加入者を増やすことを目的としています。短時間労働者であっても、月額賃金8万8,000円以上の場合は社会保険に加入しなければなりません。月額賃金8万8,000円には基本給や諸手当が含まれ、残業代や通勤手当、賞与は含まれません。
短時間労働者の社会保険加入にあたって、事業主は対象従業員に対して説明し、理解を得る必要があります。対象従業員は扶養から外れたり、国民健康保険から脱退したりしなければなりません。必要な対応をしっかり行いましょう。
よくある質問
社会保険の加入条件である月額賃金8万8,000円とは何ですか?
社会保険加入となる金額で、基本給や諸手当が算入されます。 詳しくはこちらをご覧ください。
残業代や通勤手当は月額賃金に含まれますか?
残業代のような時間外労働に対する割増賃金や、通勤手当のような最低賃金に算入されない賃金は月額賃金に含まれません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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