• 更新日 : 2025年7月23日

解雇予告とは?手続きや注意点について解説!

「解雇予告」とは、会社による従業員解雇で前もって行わなければならない告知のことです。30日前までに行う必要があり、ないと労働基準法違反になります。期間が不足する場合は解雇予告手当を支払わなくてはならず、きちんとした手続きも求められます。解雇を告げられた労働者は解雇理由の書面での明示や、解雇予告手当の支払いが請求できます。

目次

解雇予告とは?即時解雇との違い

「解雇」とは、会社が従業員を辞めさせることです。会社と従業員の間には労働契約が結ばれていますが、この契約はどちらかの申し出により、終了させることができます。都合により会社から労働契約終了の申し出が行われる場合が解雇になります。しかし、解雇は労働者の生活を著しく脅かす行為であるため、厳しく制限されています。

会社が労働者を解雇する場合には、解雇予告が必要です。解雇を行う少なくとも30日前までに、会社は労働者に対して解雇を通告しなければなりません。解雇予告は、労働者が生活を安定させるために必要な猶予期間とされています。

即時解雇とは、解雇予告しない解雇のことです。会社は30日分の賃金(解雇予告手当)を支払えば、予告なく解雇を言い渡した当日に解雇することができます(労働基準法第20条)。しかし、解雇予告手当の支払いもせずに即日解雇するには、労働基準監督署の除外認定が必要になります。除外認定のためには、「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」(労基法20条1項ただし書)に該当しなければなりません

会社が従業員の解雇を行う場合の手続き

解雇は、労働者にとって非常に重大な出来事となるため、安易に実施することは認められません。法律に定められた手続きを、しっかりと行う必要があります。

① 30日前には解雇の予告を行う

会社が従業員を解雇するためには、解雇予告を行う必要があります。解雇予告は、解雇日の少なくとも30日前までにしなくてはなりません。30日前を数える際は、解雇予告をした日はカウントしないことに注意が必要です。

解雇予告日の数え方

  • 11月30日に解雇する場合:10月31日までに解雇予告をしなければならない
  • 12月31日に解雇する場合:12月1日までに解雇予告をしなければならない

➁ 解雇理由証明書・解雇予告通知書を作成し従業員に渡す

労働者は解雇された場合、解雇理由についての証明書を受け取ることができます。退職後や解雇予告期間中に請求でき、労働者から求めを受けた会社は速やかに交付しなければなりません。解雇理由証明書については、労働基準法第22条に定められています。

解雇理由証明書については、以下のページから無料でダウンロードできます。
状況に合わせて適宜変更し、実務でご利用いただけます。

▶ 解雇理由証明書をダウンロード(ダウンロードのためのフォーム入力画面に遷移します)

解雇予告通知書は、会社が労働者に対して行った解雇予告の内容を記した書面です。解雇予告は口頭で行っても有効ですが、記録は残りません。トラブルを避けるためには書面での通知が望ましく、解雇予告通知書がこれに該当します。

③ 解雇予告をしていない場合、解雇の際に30日分以上の解雇予告手当を支払う

解雇をするには30日前までの解雇予告が必要ですが、解雇予告手当の支払いで代替とすることも認められています。会社は、労働者を解雇する際、解雇予告の代わりを解雇手当金支払いとすることができます。解雇予告手当金を支払えば30日の期間は必要なくなり、前述のように即日解雇が可能になります。

解雇予告手当の金額は、平均賃金×30日分です。解雇予告の期間が30日に満たない場合に、その日数分だけ解雇予告手当を支払うこともできます。

解雇予告手当の金額

  • 1日あたりの解雇予告手当額:直近3ヵ月間の平均賃金
  • (例1)解雇予告なしの場合:平均賃金×30日分
  • (例2)解雇予告が20日前の場合:平均賃金×10(30-20)日分

解雇予告通知書の作成と交付のポイント

解雇予告は口頭ではなく、書面で明示することが望ましく、労使間のトラブルを防ぐために解雇予告通知書の作成と交付は重要です。ここでは、通知書の内容や形式、交付方法における実務上のポイントを解説します。

解雇予告通知書の記載内容

解雇予告通知書は、労働者に対して「いつ付けで解雇されるか」を明確に伝える文書であり、トラブル回避のためにもその記載内容は明確かつ具体的である必要があります。最低限記載すべき事項としては、①解雇日、②解雇の理由、③解雇を通知する日付、④使用者の会社名と代表者名などが挙げられます。解雇理由については「会社都合による人員整理」や「就業規則に違反する重大な行為」など、具体的かつ合理的な表現を用いることで、労働者が内容を納得しやすくなります。

また、就業規則に基づく解雇である場合は、該当する規定条文を併記することで合理性が担保されます。曖昧な表現は労働審判や訴訟の際に企業側に不利に働く可能性があるため、事実関係に即した表現で作成することが求められます。

書面交付の重要性

法令上、解雇予告通知書の交付方法は明確に定められているわけではありませんが、実務上は「書面」で交付することが望ましいとされています。口頭での通知では、後に「聞いていない」「説明がなかった」などと主張されるおそれがあるため、書面によって通知したことを記録として残しておくことが企業の防衛策になります。

また、交付の際は、受け取りを確認できるように「本人の署名・押印入りの控えを保管」する、もしくは「内容証明郵便などで送付し、送付履歴を証拠として残す」といった方法が推奨されます。証拠能力が重視される場面では、通知書の存在と交付日を第三者が客観的に確認できることが重要となります。

解雇理由を明示する際の注意点

解雇理由については、労働基準法上は必ずしも通知書に記載する義務はありませんが、労働者から請求があった場合には「解雇理由証明書」に記載する義務が生じます。そのため、解雇予告通知書にあらかじめ解雇理由を記載しておくことで、後の手続きや説明がスムーズになります。

ただし、記載する際には、名誉毀損やプライバシー侵害にあたる表現、感情的・抽象的な文言は避ける必要があります。たとえば「勤務態度が悪い」など漠然とした理由ではなく、「業務指示に複数回従わず、注意指導にも改善が見られなかった」といった具体的な事実に基づいた説明を行うべきです。

解雇予告通知書を交付するタイミング

解雇予告通知書は、解雇日の少なくとも30日前に交付するか、もしくは即時解雇する場合には30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。いずれにしても、通知と解雇日の関係を正確に管理しないと、労働基準法違反に該当し、罰則の対象となります。通知と手当のいずれか一方でも適切に行われていない場合、行政指導や労働審判に発展する可能性があるため、スケジュール管理も重要です。

解雇予告の適用除外【解雇不可の期間】

労働基準法は第19条において、解雇禁止期間を定めています。次の期間にある労働者に対して、会社は解雇を行うことはできません。

・業務上のケガや病気の療養のために休業する期間と、その後の30日間
・産前産後休暇期間と、その後の30日間

ただし業務上のケガや病気で休業している労働者については、治療開始から3年が経過しても治療が完了しない場合、平均賃金の1,200日分の打切補償を支払えば解雇することができます。

また、労働基準法第21条は解雇予告適用除外の規定となっていて、次の労働者については解雇予告が適用されないと定められています。

  • 日々雇い入れられる者
  • 2ヵ月以内の期間で雇用される労働者
  • 季節的業務に4ヵ月以内で雇用される労働者
  • 試みの使用期間中の労働者

    しかし解雇予告が適用除外であってもそれぞれが次のような場合は、解雇予告の対象になります。

    • 日々雇い入れられる者が1ヵ月を超えて引き続き働く場合
    • 2ヵ月以内の期間で雇用される労働者が期間を超えて引き続き働く場合
    • 季節的業務に4ヵ月以内で雇用される労働者が期間を超えて引き続き働く場合
    • 試みの使用期間中の労働者が14日を超えて引き続き働く場合

      解雇予告を行う上での注意点

      会社が従業員を解雇するには、天災事変や即時解雇の場合を除いては解雇予告をする必要があります。解雇予告をするにあたっては、以下のような注意点があります。

      解雇予告を行わない会社は、刑事罰の可能性も

      解雇予告は、会社が授業員を解雇する際には必ず行わなければならない手続きです。労働基準法第20条に定められている手続きであるため、解雇予告を行わない解雇は労働基準法違反として6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。解雇予告は違反すると刑事罰が科せられる可能性があることを認識し、しっかりと行わなければなりません。

      口頭での解雇予告はトラブルの原因になるため行わない

      解雇予告について、手段はとくに定められていません。そのため口頭で行うことが認められ、効力も発生します。しかし口頭での解雇予告は記録が残らず、あとからトラブルに発展する恐れがあります。解雇予告がいつ行われたか、解雇日はいつか、解雇理由はなにか、といったことが問題となってトラブルが引き起こされることがよくあるため、口頭での解雇予告は避けるようにしましょう。

      【従業員向け】会社から解雇を伝えられたら?

      従業員が会社から解雇を通告された場合、どのような対応が必要になるのでしょうか?不当な解雇を防いだり、支払われるべき解雇予告手当を受け損ねたりしないためには、適切な対応方法を身につけておくことが必要です。

      正当な理由がある解雇かを確認する

      会社から解雇を通告されたら、まず不当な解雇ではないかを確認しなくてはなりません。承諾できる解雇理由であるかどうかを判断するため、会社に解雇理由の明示を求めます。

      会社が労働者を解雇する際には解雇予告をしなければならず、労働者は解雇予告期間中や退職後に解雇理由についての証明を書面で受け取ることができます。解雇理由について納得できずに申し立てをする場合、証拠としてこの証明書が必要です。また、雇用保険の失業給付等を受ける上でも解雇理由証明書がないと自己都合での退職とされ、給付期間が短くなったり待機期間が設けられたりします。解雇を告げられたら必ず解雇理由証明書の交付を受け、理由を確認するようにしましょう。

      即時解雇の場合には、解雇予告手当を請求する

      解雇予告手当の支払いもせずに即日解雇するには、労働基準監督署の除外認定が必要になりますが、「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」という基準は、かなり厳格に適用されます。

      労働者を保護する必要がないという重大かつ悪質な非違行為があった場合に限られると考えるべきです。即日解雇された場合でも、解雇予告手当を請求しましょう。

      解雇予告手当がもらえない場合は?

      解雇予告手当の支払いは、労働基準法第20条第2項に明記されています。支払われない場合は法律違反となり、請求の訴えを起こすことが可能です。

      訴えを起こすためには、解雇の内容が明らかになる証拠が必要になります。記録として解雇予告通知書や解雇理由証明書の交付を受けるようにしましょう。

      整理解雇でも解雇予告すれば解雇できる?

      解雇にはさまざまな種類がありますが、誤解が多いのが「解雇予告」と「整理解雇」の違いです。どちらも労働契約を終了させる手続きではありますが、根拠や実務対応は大きく異なります。企業が適正に対応しないと、労働トラブルや訴訟リスクを招く可能性があるため、正しい理解が不可欠です。ここでは両者の違いと注意点について解説します。

      解雇予告は「通知」のルール、整理解雇は「要件」の問題

      まず、「解雇予告」とは、労働基準法第20条に基づき、使用者が労働者を解雇する際に少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが義務付けられている制度です。これは、どのような理由であれ、労働契約を一方的に終了させる場合に必要な最低限の手続きです。そのため、整理解雇であっても当然に解雇予告が必要となります。

      一方、「整理解雇」は、経営上の理由により人員削減を行う解雇のことであり、その有効性が認められるには一定の「整理解雇の4要件」を満たす必要があります。つまり、整理解雇は理由の正当性に重点が置かれており、単に予告をすれば済むという性質ではありません。

      整理解雇は4要件を満たす必要がある

      整理解雇は、経営悪化を理由に労働者を解雇するものであり、解雇権の濫用とみなされないためには、次の4つの要件を満たすことが判例上求められています。

      1. 人員削減の必要性:会社の経営が悪化しており、やむを得ず人員削減をする必要があること
      2. 解雇回避努力義務の履行:一時帰休、配置転換、希望退職の募集など、解雇を回避するための手段を尽くしたこと
      3. 人選の合理性:どの従業員を対象とするかについて、客観的・合理的な基準があり、公平に選定されていること
      4. 手続きの妥当性:労働者や労働組合に対して説明や協議などの誠意ある手続きが行われたこと

        このいずれかを欠く場合、たとえ解雇予告をしていたとしても、整理解雇は無効と判断されるおそれがあります。

        両者の混同が招くリスク

        整理解雇はその背景にある経営的理由の合理性と手続きの適正性が重視されるため、解雇予告があっても、要件を満たしていなければ違法な解雇となります。

        整理解雇の要件を満たしているからといって、解雇予告が不要になるわけでありません。整理解雇であっても解雇予告が必要であり、解雇予告または予告手当の支払いのない整理解雇は、労基法違反として刑事罰の対象ともなります。

        解雇予告手当は退職金に含められる?

        解雇予告手当は、退職に伴い一時的に支払われるものであるため、その金額に関係なく退職所得として扱われます。そのため、退職所得として処理することが必要であり、給与所得の源泉所得税や、社会保険料の対象としないように注意することが必要です。また、会計上の処理においても、勘定科目は「給料手当」ではなく、「退職金」として計上する必要があります。

        試用期間中でも解雇予告は必要?

        試用期間中の労働者についても、原則として解雇予告のルールは適用されます。「試用期間だから自由に解雇できる」と誤解されがちですが、労働基準法の保護対象であることに変わりはありません。

        雇入れ後14日を超えた場合は解雇予告が必要となる

        労働基準法第21条では、試用期間中の労働者でも、雇入れ後14日を経過した場合は、通常の労働者と同様に解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要とされています。つまり、試用開始から15日目以降に解雇する場合は、30日前の予告、もしくは不足日数分の平均賃金を支払う必要があります。

        解雇理由の明確化と書面通知が望ましい

        試用期間中の解雇であっても、理由が曖昧だったり、手続きが不十分だったりすると不当解雇とされるおそれがあります。そのため、できる限り書面で通知を行い、解雇理由も明示しておくことがリスク回避につながります。試用期間中でも慎重な対応が求められます。

        解雇で法律違反とならないよう解雇予告をきちんと理解しよう

        解雇は労働者の生活に大きな影響を与える出来事です。安易に行うことは認められず、労働基準法は解雇に対して厳しく制限しています。やむを得ないとして認められる場合でも、ルールや手続きについての定めが設けられています。

        解雇予告は労働生基準法に規定されている解雇ルールの一つで、少なくとも30日前までの予告を必要とするものです。30日の予告期間が確保できないときは、解雇予告手当を支払わなくてはなりません。また解雇には、解雇理由証明書や解雇通知書の交付も必要です。

        会社が従業員を解雇しようとする場合には、労働基準法の定めるとおりに行う必要があります。不備があると労働基準法違反となり、罰則が適用される可能性があります。また民事訴訟や刑事事件に発展することも考えられます。解雇を行う際は労働基準法の規定をよく理解し、違反とならないようにすることが必要です。

        よくある質問

        解雇予告とはなんですか?

        会社が従業員を解雇する際には、解雇日の少なくとも30日前に従業員に告げる必要があり、この告知のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

        解雇予告に適用除外はありますか?

        日々雇い入れられる者、2ヵ月以内の期間で雇用される労働者、季節的業務に4ヵ月以内で雇用される労働者、試みの使用期間中の労働者が解雇予告適用除外となります。詳しくはこちらをご覧ください。


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