- 更新日 : 2021年11月29日
社会保険の資格取得届とe-Gov電子申請手続きのやり方
社会保険の資格取得届は、社会保険の取得義務が発生した場合に提出する書類です。資格取得届を提出するのは、社会保険の適用事業所が新たに従業員を雇った場合、および勤務形態の変更により社会保険の取得義務が発生した場合があります。
目次
資格取得届が必要な事業所とは
社会保険の資格取得届が必要となる事業所は、以下のとおりです。
強制適用事業所
以下のいずれかに当てはまる場合には、強制適用事業所となります。
1. 適用業種である事業を行い、常に5人以上の従業員を使用する事業所
適用除外規定により被保険者にならない従業員であっても、常時使用されている場合には、「5人」の中にカウントされます。
2. 常に1人以上の従業員を使用する国や地方公共団体
3. 常に1人以上の従業員を使用する法人
任意適用事業所
強制適用事業所に該当しない事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受ければ、適用事業所とすることができます。そのためには、事業所で働く被保険者に該当する者の2分の1以上からの同意が必要です。無事に同意が得られれば、申請のはこびとなります。
一括適用事業所
1人の事業主が複数の適用事業所を運営している場合には、それらをまとめて1つの適用事業所扱いとすることができます。もちろん、厚生労働大臣による事前の承認が必要です。このような事業所を一括適用事業所と呼び、本来ならばそれぞれの事業所単位で行う必要がある社会保険の諸手続きを一括して処理することができます。
適用除外
次のいずれかに該当する場合は、適用事業所であっても社会保険の被保険者手続きができません。また、所在地が一定しないものに雇われる労働者は、どれほど長期間雇用されても被保険者扱いにはなりません。
1. 共済組合の組合員・私立学校教職員共済制度の加入者
2. 日雇い労働者
ただし、1ヶ月を超えて継続雇用されることが決まった場合は、1ヶ月を超えた日から被保険者となります。
3. 2ヶ月以内の期間で雇われる労働者
ただし、所定の期間よりも長く継続雇用されることが決まった場合は、所定の期間を超えた日から被保険者扱いとなります。
4. 4ヶ月以内の期間雇われる労働者で、季節労働に従事する者
ただし、雇用初日から換算して4ヶ月を超えて継続雇用される予定の労働者は、雇用初日から被保険者扱いとなります。
5. 臨時的事業で雇われる労働者
ただし、雇用初日から換算して6ヶ月を超えて継続雇用される予定の労働者は、雇用初日から被保険者扱いとなります。
資格取得届が必要な場合
従業員は、以下のいずれかの要件に該当した日から一般の被保険者としての資格を取得します。社会保険の資格を喪失するときは、喪失事由が発生した翌日扱いのケースもありますが、取得の場合はすべて事由発生「当日」となり、資格取得届が必要です。
1. 適用事業所(強制適用事業所または任意適用事業所)に雇われたとき
2. 働いている事業所が、社会保険の適用事業所になったとき
3. 社会保険の適用除外要件に該当しなくなったとき
なお、新規雇用されたものの、就業初日から自宅待機となってしまった場合には、
・雇用契約が成立していること
・休業手当が支払われていること
を満たす場合、休業手当の支払対象になった初日に被保険者の資格を取得します。
被保険者になる人とは
社会保険の被保険者になる人とはどのような人たちでしょう。まず、正規従業員、そして所定労働時間・日数が正規従業員の4分の3以上であるパート・アルバイト、適用事業所に雇用される外国人、試用期間中の者、休業手当が支給されている自宅待機者など、その対象範囲は非常に広くなっています。
社会保険の被保険者になる人については「社会保険の加入義務~対象者と新規適用届の書き方~」のページにてより詳しく解説しております。
資格取得届の提出方法
資格取得届の提出方法について説明します。
資格取得届の提出先
提出先は事務センターもしくは年金事務所、または健康保険組合、厚生年金基金になります。
資格取得届の提出期限
雇用開始から5日が期限となっているため、急いで準備することが必要です。
資格取得届の添付・確認書類
・年金手帳
事業主が基礎年金番号を確認できる場合は不要
・健康保険被扶養者(異動)届
従業員に被扶養者がいる場合に提出
・年金証書
60歳以上の従業員を雇用した場合
・年金手帳再交付申請書
採用した従業員が年金手帳を紛失している場合に必要です。
・同事業所を定年退職し、引き続き、あるいは短いブランクの後、再雇用した場合の添付書類
65歳までの従業員を定年後に再雇用した場合は、下記の書類が必要です。この場合は、以下の書類のいずれかが必要です。
1. 就業規則の写し
2. 退職辞令の写し
なお、資格取得届に記載する標準報酬月額を決定する計算は、そのなかに時間外手当の見込額や1ヶ月分の通勤手当も加算して行います。
書類提出を電子申請システムで行うには?
電子申請を利用すれば、社会保険に関わる大半の手続きを「e-Gov(イーガブ)」という電子申請システムを利用し、オンラインで行うことができます。ただし、原則として社会保険に関わる書類には、事業主(被保険者等)の電子署名が必要です。
電子申請システム「e-Gov(イーガブ)」でできること
処理状況の照会
電子申請では、申請・提出済みの手続きについて、提出時に割りふられた到達番号・問合せ番号をもとに検索し、処理状況を照会することができます。また、照会画面では書類の審査などの事務処理が終了した後には以下の処理を行うことができます。
・提出先の行政機関から発行された公文書の取得
・コメント通知の確認・取得・補正書の提出
・申請・届出の取下げ処理
印鑑の省略
紙媒体での書類申請の場合は、事業主の印鑑が押印された申請書を行政窓口へ提出(または郵送)する必要があります。しかし、電子申請の場合は押印をする必要はありません。社会保険労務士を通して申請を行う場合にも、あらかじめ「提出代行に関する証明書」を用意すれば申請するたびに事業主印を押印する必要はありません。
証明書の画像ファイルを申請書類に添付することで、社会保険労務士の電子署名のみでいつでも電子申請が可能です。
電子申請のメリットとデメリット
メリット
・毎日24時間利用可能、かつ場所を選ばない。
・労務関係書類をデータ管理することができ、仕事の効率化につながる。
デメリット
・システムを導入するまでに書類の準備や処理が必要で、実際に使えるようになるまでに時間がかかる。不明点は社会保険労務士など専門家に確認しながら行う方が良いでしょう。
・オンラインでの作業のため、受付印の押印がない。状況照会を行えば受理についての情報は得られるが、一見していつ受理されたのかがわかりにくい可能性がある。
まとめ
社会保険に加入すべき期間に加入せず、保険料の支払期間が短くなった場合は、将来の年金給付額も減額されます。そのため、事業所が社会保険の適用要件に該当しているか、従業員が社会保険の対象か、これらを十分に確認しておきましょう。
また、該当する従業員が雇用された場合は、社会保険の資格取得届は提出期間が雇用開始日より5日以内と短いため、迅速に対応する必要があります。
従業員数が多い会社では、数多くの書類を時間や場所にこだわらず手続きすることができる電子申請が特に効力を発揮されます。
ただし、電子申請を使って申請するのが人間であるのと同様に、その書類を審査し受理を行うのもコンピュータではなく人間なので、瞬時に書類が受理されるわけではないということを理解しましょう。
場合によっては紙媒体による申請の方が早い場合もあります。不安な場合は行政に問い合わせてみると良いでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
社会保険に自分で加入するには?会社が適用事業所になった場合
社会保険は健康保険や厚生年金保険などからなり、社会保険適用事業所に勤めている会社員や公務員が加入します。一方、個人事業主や自営業者は国民健康保険や国民年金に加入することが一般的ですが、個人で社会保険に加入することはできないのでしょうか。この…
詳しくみる厚生年金における加給年金とは?もらえる条件や振替加算についても解説!
厚生年金保険加入者が年金を受給できることになったときに、条件により年金額が加算されることを知っていますか?年金に加算される額のことを「加給年金」「振替加算」といいます。これらは家族の構成や家族の年齢によって受給できる条件が決まっています。こ…
詳しくみる社会保険の随時改定はいつから反映される?タイミングや手続き方法を解説
社会保険料を決定する際に用いられる「標準報酬月額」は、基本的には年1回の定時決定によって見直されます。しかし、昇給や降給などで給与が大きく変動した場合には、「随時改定」という手続きが必要です。 本記事では、随時改定がいつから反映されるのか、…
詳しくみる借り上げ社宅制度とは?メリットや税金優遇、導入の流れ、トラブル対応まとめ
借り上げ社宅制度とは、企業が契約した賃貸物件を従業員に貸し出す制度のことです。従業員が負担する家賃が相場よりも低い傾向にあることや、企業によっては従業員が物件を選べる場合があるため、人気の福利厚生制度の1つです。本記事では、借り上げ社宅制度…
詳しくみる親を社会保険の扶養に入れることはできる?条件や保険料を解説!
社会保険には扶養という家族の生計を支援する大事な制度があります。そんな扶養制度ですが、親と同居していなくても親を扶養に入れることはできるのか、親を扶養に入れる際の条件は、など親を扶養に入れる際のルールはご存知でしょうか。当記事では親を扶養に…
詳しくみる交通費は社会保険の課税対象に含まれる?
多くの企業では、通勤のための交通費を通勤手当として従業員に支払っていますが、法律上の扱いは意外と知られていません。 交通費は給与に含まれるのでしょうか。これによって、社会保険料や所得税額が変わります。 この記事では、交通費の社会保険と税法上…
詳しくみる