• 更新日 : 2025年11月25日

雇用保険被保険者離職証明書の離職理由|自己都合・会社都合の書き方やコードを解説

雇用保険被保険者離職証明書および離職票に記載される離職理由は、退職後の失業保険(基本手当)の受給内容を左右する重要な項目です。離職理由の書き方や、ハローワークが判断する離職区分コードによって給付条件が大きく変わるため、自己都合退職なのか会社都合退職なのか、判断基準を正確に理解する必要があります。

この記事では、離職理由の具体的な種類、契約期間満了などのケース別の書き方、そして判断基準となる離職区分コードの一覧までわかりやすく解説します。

離職証明書の離職理由が重要な理由

事業主が作成する離職証明書に記載された離職理由は、ハローワークが発行する離職票に反映され、失業保険(基本手当)の受給内容を決定づける重要な項目です。

ハローワークは、事業主から提出された離職証明書の記載内容をもとに、失業保険の給付条件を左右する「離職区分コード」を判断し、退職者へ離職票を交付します。つまり、離職証明書の記載内容が、そのまま退職者の失業保険の受給条件に直結するのです。

離職理由が失業保険(基本手当)に与える具体的な影響は、主に以下の3つのポイントです。

1. 給付制限の有無が決まる

自己都合(転職希望や一身上の都合など)で退職した場合、一般の受給資格者として原則1ヶ月間の給付制限(2025年4月1日以降に退職した場合)が設けられます。一方、会社の倒産や解雇といった会社都合退職(特定受給資格者)や、契約更新を希望したにも関わらず更新されなかったことによる会社都合退職(特定理由離職者)、病気や介護など正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者)に該当する場合は、この給付制限がありません。

2. 給付日数が変わる

失業保険(基本手当)を受けられる日数(所定給付日数)も、離職理由によって大きく異なります。会社都合で離職した方(特定受給資格者と契約更新がされずに離職した特定理由離職者)は、予期せぬ離職で再就職の準備が十分でないことを考慮され、自己都合の退職者よりも手厚い給付が受けられます。

3. 国民健康保険料の軽減措置に影響する

会社の倒産・解雇といった会社都合や、正当な理由のある自己都合で離職した方は、国民健康保険料の軽減措置を受けられる場合があります。この軽減措置の対象となるかどうかも、ハローワークが最終的に判断する離職理由によって決まります。

項目自己都合退職
(一般の受給資格者)
会社都合退職
(特定受給資格者など)
給付制限原則1ヶ月あり
(2025年4月1日以降に退職した場合)
なし
所定給付日数90日~150日90日~330日
代表的な離職区分コード4D、5E1A、1B、2A、2B、3A、3B、3C など
国民健康保険料軽減措置なし軽減措置あり

雇用保険被保険者離職証明書と離職票の違い

「雇用保険被保険者離職証明書」は事業主が作成してハローワークへ提出する手続き書類であり、それに基づいてハローワークから退職者本人へ交付されるのが「雇用保険被保険者離職票(通称:離職票)」です。

離職証明書に記載された賃金支払状況や離職理由といった内容が、そのまま離職票-2に反映されます。

書類の種類雇用保険被保険者離職証明書雇用保険被保険者離職票
(離職票-1、離職票-2)
役割事業主が従業員の離職をハローワークに届け出るための書類離職者が失業保険の受給手続きに使うための書類
作成・交付者事業主が作成ハローワークが交付
提出先事業所の管轄ハローワーク離職者本人の住所管轄ハローワーク
特徴3枚複写式で、1枚目が事業主控、2枚目がハローワーク提出用、3枚目が離職票-2となる。離職票-1(資格喪失の通知)と離職票-2(離職理由等を記載)の2種類がある

離職理由の種類と判断基準

ハローワークは、離職証明書に記載された情報と、必要に応じて労働者からのヒアリング内容を加味して離職理由を判断し、離職者を区分します。その区分の判断基準となるのが「離職区分コード」です。

主要な離職理由の分類と、それに対応する離職区分コードの一覧は以下の通りです。

大分類具体的な離職理由離職区分離職区分コード
会社都合解雇(重責解雇を除く)特定受給資格者
特定理由離職者(区分コード2Cのみ)
1A、1B
退職勧奨など3A
事業所移転等3B
契約期間満了契約更新の合意がなく、本人は契約更新を希望した2C
本人が契約更新を希望しなかった一般の離職者2D
自己都合
(正当な理由あり)
やむを得ない個人的な事情によるもの特定理由離職者3C
自己都合
(正当な理由なし)
転職希望など労働者の判断によるもの一般の離職者4D
自己の責めに帰すべき重大な理由(重責解雇)一般の離職者5E

参考:特定受給資格者となる離職理由の判定基準|厚生労働省

【事業者向け】離職証明書の離職理由の書き方と注意点

事業者は、離職証明書を作成する際、離職に至った客観的な事実を「具体的事情記載欄」に正確に記入する義務があります。この書類はハローワークが離職理由を判断するためのもととなる公的書類であるため、事実に基づいた正確な書き方を徹底し、労働者本人に内容を確認してもらい、署名を得ることが後のトラブルを避ける上で重要です。

自己都合退職の場合の書き方

労働者から「一身上の都合」や「転職希望」を理由とする退職届が提出された場合は、その事実を客観的に記載します。

  • 記載項目
    離職証明書の離職理由欄で「労働者の個人的な事情による離職」に〇印を入れます。また⑥その他欄に「転職希望による自己都合退職」など具体的な理由を記載します。
  • 具体的事情記載欄の記入例
    「転職希望のため、本人より一身上の都合による退職願が○年○月○日に提出されたため。」

単に「一身上の都合」と書くだけでなく、「退職願の提出があった」という客観的な事実を明記することが重要です。

契約期間満了の場合の書き方

契約社員やパートタイマーなどの有期雇用労働者が契約期間満了で退職する場合、契約更新の有無が離職理由の判断を分けるため、その経緯を正確に記載する必要があります。

  • 記載項目
    離職証明書の離職理由欄で「労働契約期間満了による離職」の該当項目にチェックを入れます。
  • 具体的事情記載欄の記入例
    • 本人が更新を希望しなかった場合:「○年○月○日付の契約期間満了にあたり、本人から更新を希望しない旨の申し出があったため。」
    • 会社が更新しなかった場合:「○年○月○日付の契約期間満了にあたり、本人から更新希望の申し出があったが、当社の都合により契約を更新しなかったため。」

【労働者向け】離職票の離職理由に納得できない場合の対処法

ハローワークから交付された離職票に記載されている離職理由に納得できない場合、労働者には異議を申し立てる権利があります。安易に署名せず、ハローワークの窓口でその旨を伝えられます。最終的な離職理由を判断するのは、事業者ではなくハローワークです。

1. 離職票-2の内容を確認し、意思表示する

離職票-2を受け取ったら、署名する前に必ず「離職理由」欄を確認してください。事業主が主張する離職理由に同意できない場合は、「離職者本人の判断」欄にある「事業主が記載した離職理由に異議 有り」に丸をつけます。

2. ハローワークで異議を申し立てる

失業保険の申請手続きを行う際に、ハローワークの窓口担当者へ「離職票の離職理由に異議があります」と明確に伝えてください。なぜ事実と異なるのか、実際の退職経緯はどうだったのかを具体的に説明できるよう準備しておきましょう。

3. 主張を裏付ける証拠を準備する

ハローワークは事業者と労働者、双方の主張を聞いて客観的に離職理由を判断します。そのため、自身の主張を裏付ける客観的な証拠を準備することが重要です。

離職理由に関してよくある質問(FAQ)

最後に、離職理由に関してよくある質問とその回答をまとめました。

離職証明書に事実と違う離職理由を書くとどうなりますか?

事業主が虚偽の記載をした場合、雇用保険法に基づく罰則の対象となる可能性があります。また、労働者が不正に失業保険を受給した場合、事業主も連帯して返還を求められる可能性があるなど、大きなリスクを伴います。

パートやアルバイトでも離職理由は同じように扱われますか?

はい、雇用保険に加入している場合は、雇用形態にかかわらず正社員と同様に、離職理由が失業保険の給付内容に大きく影響します。特に有期契約の場合、契約期間満了時の更新希望の有無などを正確に申告することが重要です。

病気やケガ、家族の介護が理由の場合はどうなりますか?

自己都合退職ではありますが、「正当な理由のある自己都合退職」として特定理由離職者に該当する可能性があります。この場合、給付制限なしで失業保険を受給できるため、医師の診断書や介護が必要であることを証明する書類などを準備し、ハローワークに相談してください。

正確な離職理由の申告が、円満な退職につながる

この記事では、雇用保険被保険者離職証明書および離職票における離職理由の重要性について、書き方や判断基準となる離職理由コードの一覧、契約期間満了などのケースまで詳しく解説しました。

離職理由は、退職後の生活を支える失業保険の給付内容を左右する重要な情報です。事業者側は事実に基づいた正確な記載を、労働者側は自己都合とされる理由に納得がいかなければ内容をしっかり確認し、異議を申し出ることが、双方にとって不要なトラブルを避け、次のステップへ円滑に進むための鍵となります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事