- 更新日 : 2025年11月25日
社会保険料率(健康保険・厚生年金保険)の確認方法は?保険料額表の見方や計算方法を解説
健康保険料や厚生年金保険料の計算の根拠となる、保険料率の確認方法をご存知でしょうか。保険料率は、お住まいの地域や加入している健康保険組合によって異なり、年度ごとに改定されるため、定期的に確認する必要があります。
この記事では、健康保険および厚生年金保険の保険料率に関する正確な確認方法を初心者にもわかりやすく解説します。ご自身の社会保険料への理解を深め、ライフプランニングに役立てましょう。
目次
そもそも社会保険料率(健康保険・厚生年金保険)とは?
健康保険と厚生年金保険の保険料率は、給与(標準報酬月額)に対して事業主と従業員がそれぞれ負担する社会保険料の割合を定めたものです。 これらの保険料は、病気やケガ、老齢、障害、死亡といった人生のリスクに備えるための重要な財源となっています。
社会保険料の基本構成
会社員が毎月の給与から支払う社会保険料は、主に以下の5つで構成されています。
- 健康保険料:業務外の病気やケガ、出産、死亡などに備える医療保険制度の保険料です。
- 厚生年金保険料:老後の生活を支える老齢年金や、障害・死亡時に給付される障害年金・遺族年金のための保険料です。
- 介護保険料: 介護や介護予防に必要な費用の給付を受けるために、40歳以上の方が負担する保険料です。
- 雇用保険料:失業などに備えるための保険料です。
※労災保険料は業務上の災害に備える保険料で、全額事業主が負担します。
このうち、健康保険料と厚生年金保険料が大部分を占めており、その料率を把握することが、ご自身の保険料負担を理解する第一歩となります。
保険料率が重要な理由
保険料率は、私たちが納める保険料の金額を決定する直接的な要因です。保険料率は医療費の動向や年金財政の状況に応じて定期的に見直されます。特に健康保険料率は都道府県ごとに異なるため、転勤や引っ越しによって保険料額が変わる可能性があります。ご自身の保険料率を正しく知ることは、給与の手取り額を正確に把握し、将来のライフプランを考える上で不可欠と言えるでしょう。
健康保険の保険料率を確認する方法
健康保険の保険料率は、ご自身が加入している健康保険の種類によって確認先が異なります。
協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合
中小企業などで働く多くの会社員が加入しているのが、全国健康保険協会、通称「協会けんぽ」です。協会けんぽの健康保険料率は、事業所の所在地がある都道府県ごとに設定されています。
- 協会けんぽの公式サイトにアクセスする
まずは、全国健康保険協会の公式ウェブサイトにアクセスします。トップページから「保険料率」や「保険料額表」といったメニューを探します。 - 最新年度の保険料額表を選択する
健康保険料率は毎年3月分(4月納付分)から改定されるのが一般的です。サイト内で最新年度の保険料額表(保険料の早見表)を選択してください。 - 自社の事業所が所在する都道府県のページを確認する
保険料額表は都道府県ごとにPDFファイルなどで用意されています。ご自身の勤務先(事業所)が加入している協会けんぽの都道府県別の資料を開くと、健康保険料率と介護保険料率(40歳以上の場合)が記載された一覧表を確認できます。
参考:保険料率|協会けんぽ
協会けんぽの保険料率が都道府県ごとに異なる理由は、地域ごとの医療費の実績に基づいて料率が算出されているためです。具体的には、その地域における加入者の年齢構成や平均所得、医療機関の受診率などが医療費に影響し、それが保険料率に反映される仕組みになっています。そのため、医療費が高い地域ほど、保険料率も高くなる傾向にあります。
組合健保(健康保険組合)の場合
大企業や同業種の企業が集まって設立しているのが「健康保険組合(組合健保)」です。組合健保は、法律で定められた範囲内で独自の保険料率を設定できるため、協会けんぽとは料率が異なる場合が多くあります。
ご自身が加入している健康保険組合の名称を保険証(健康保険被保険者証)で確認した上で、以下の方法で調べます。
- 健康保険組合の公式ウェブサイトで確認する
多くの組合が公式サイトで最新の保険料率や保険料額表を公開しています。 - 会社の総務・人事部に問い合わせる
社内の担当部署に確認すれば、最新の料率を教えてもらえます。
厚生年金保険の保険料率を確認する方法
厚生年金保険の保険料率は、2017年9月以降、18.3%で固定されており、全国一律です。このため、お住まいの地域や勤務先によって料率が変わることはありません。最新の情報は、日本年金機構の公式サイトで確認できます。
厚生年金保険料率は全国一律
健康保険料率とは異なり、厚生年金保険料率は都道府県による違いはありません。事業主と従業員が半分ずつ(9.15%ずつ)を負担する形で、料率は全国共通です。この料率は、2004年の年金制度改正で段階的に引き上げられてきましたが、現在は引き上げは終了しており、2017年9月以降は18.3%で固定されています。ただし、勤務先が厚生年金基金に加入している場合は、保険料率が異なります。
日本年金機構の公式サイトで確認する手順
厚生年金保険料率に関する正式な情報は、制度を運営する日本年金機構のウェブサイトで確認するのが最も確実です。
- 日本年金機構の公式サイトにアクセスします。
- サイト内で「厚生年金保険料率」などのキーワードで検索するか、「事業主の方」といったメニューから「保険料」に関するページを探します。
- 厚生年金保険料額表のページで、最新の料率(18.3%)と、ご自身の給与に対応する標準報酬月額別の保険料額を確認できます。
給与から天引きされる社会保険料の計算方法は?
毎月の給与から天引きされる健康保険料と厚生年金保険料は、「標準報酬月額」にそれぞれの保険料率を掛けて算出されます。この計算された保険料を、会社と従業員で半分ずつ(労使折半)負担します。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするために、従業員の月々の給与を一定の範囲(等級)で区切ったものです。具体的には、毎年4月・5月・6月の3ヶ月間に支払われた給与(基本給、残業代、通勤手当などの各種手当を含む)の平均額を基に決定され、その年の9月から翌年8月まで適用されます。
- 健康保険:第1級(5万8千円)~第50級(139万円)
- 厚生年金保険:第1級(8万8千円)~第32級(65万円)
たとえば、給与の月額平均が31万円だった場合、「31万円」という実際の金額ではなく、定められた等級(例:32万円)の標準報酬月額が適用されます。この等級制度により、給与が高い場合でも、保険料は一定額以上にならない仕組みになっています。
給与明細から社会保険料を確認する手順
ご自身の給与明細を見ながら、実際に保険料が正しく計算されているかを確認してみましょう。
- 勤務地:東京都
- 年齢:35歳(介護保険料の負担なし)
- 給与月額(報酬月額):310,000円
- 標準報酬月額:320,000円(健康保険:23等級 / 厚生年金保険:20等級)
- 最新の保険料率を確認する
- 健康保険料率(東京・令和7年度):9.91%
- 厚生年金保険料率(全国一律):18.300%
- 保険料の総額を計算する
- 健康保険料(総額):320,000円 × 9.91% = 31,712円
- 厚生年金保険料(総額):320,000円 × 18.300% = 58,560円
- 従業員負担額(折半額)を計算する
- 健康保険料(本人負担):31,712円 ÷ 2 = 15,856円
- 厚生年金保険料(本人負担):58,560円 ÷ 2 = 29,280円
この計算結果(本人負担額)が、給与明細の「健康保険料」「厚生年金保険料」の控除額と一致しているかを確認します。1円単位の端数が発生した場合は、端数処理の方法により調整する必要があります。
健康保険・厚生年金保険の保険料率はいつ変わる?
健康保険の保険料率は原則として毎年1回、3月分(4月納付分)から改定されます。一方、厚生年金保険料率は2017年9月以降18.3%で固定されています。
健康保険料率の改定時期
協会けんぽの健康保険料率は、毎年の医療費実績などを基に再計算され、通常は1月下旬から2月頃に新しい料率が発表され、その年の3月分から適用されます。組合健保も、各組合の財政状況に応じて、通常は年度替わりのタイミングで見直しが行われます。
厚生年金保険料率の改定時期
厚生年金保険料率は2017年9月に18.3%に達して以来、引き上げが終了し、現在は固定されています。将来的に制度改正が行われない限り、この料率が継続される見込みです。
介護保険料率の改定にも注意
40歳になると、健康保険料と合わせて介護保険料の徴収が始まります。この介護保険料率も、介護サービスの費用実績などに基づき、定期的に見直されます。協会けんぽの場合、健康保険料率と同時に改定されることが一般的です。40歳を迎えた方や、料率改定のニュースに触れた際は、介護保険料率の変動も併せて確認するようにしましょう。
健康保険・厚生年金保険の保険料についてよくある質問
健康保険・厚生年金保険の保険料に関する、よくある疑問にお答えします。
給与明細の保険料が計算結果と合いません。折半されていないのでしょうか?
保険料が折半されていない可能性は低いですが、まずは端数処理の違いを確認しましょう。 給与から本人負担分の保険料が控除される場合、社会保険料の労使折半額に50銭以下の端数が出た場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円とすることが法律で定められています。しかし、労使間の合意によっては異なる処理も可能なため、会社の給与計算ルールを確認することが第一です。それでも疑問が解決しない場合は、会社の総務・人事部に問い合わせてみましょう。
自分の標準報酬月額や等級はどこで確認できますか?
ねんきん定期便や、会社の給与担当部署への問い合わせにより確認できます。 毎年誕生月に日本年金機構から送付されるねんきん定期便には、直近の標準報酬月額が記載されています。また、会社の総務・人事部に直接確認すれば、ご自身の現在の標準報酬月額と等級を教えてもらえます。
パートやアルバイトの保険料率は正社員と違いますか?
雇用形態に関わらず、同じ保険料率が適用されます。 パートやアルバイトであっても、社会保険の加入要件を満たす場合は、同じ事業所に勤務する正社員と全く同じ健康保険料率・厚生年金保険料率が適用されます。保険料額は、その方の給与(標準報酬月額)によって決まります。
ご自身の保険料率を正しく把握しましょう
この記事では、健康保険と厚生年金保険の保険料率に関する正確な確認方法を解説しました。健康保険料率は加入先(協会けんぽ・組合健保)と地域によって異なり、厚生年金保険料率は全国一律である点が重要なポイントです。
ご自身の保険料率は、協会けんぽや日本年金機構、または加入する健康保険組合の公式サイトで公開されている保険料額表を見ることで、誰でも簡単に確認できます。給与明細と照らし合わせ、社会保険料への理解を深めることは、手取り額を正確に把握し、賢く家計を管理するための第一歩です。年に一度は最新の料率を確認する習慣をつけてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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