• 更新日 : 2025年10月6日

退職勧奨の言い方に関する3つのコツ!面談時に避けるべき表現も紹介

退職勧奨とは会社が従業員に退職を促す行為であるため、退職を強要するような発言や退職に追い込むような発言はしてはなりません。

ただ、退職勧奨の面談を控えている人の中には「どのような言い方をするべきなのか」「気をつけるべき発言はあるのか」と疑問に思っている人もいるでしょう。

そこで本記事では、退職勧奨の言い方に関するコツを3つ紹介します。また、面談するときに避けるべき表現や面談をするうえで配慮すべきポイントなどもまとめています。

退職勧奨の言い方が重要な理由

退職勧奨の言い方が重要である理由は、退職勧奨があくまでも退職をお願いする行為であるためです。

退職をするかどうかは従業員の自由であり、会社側は退職を強要できません。

過度に退職を促すような言い方や退職に追い込むような発言をすると、退職を強要していると受け取られる可能性があります。

また、威圧的な言い方や侮辱するような言い方をすると、訴訟に発展することも考えられます。その場合は、退職に同意してもらえたとしても無効になる可能性も否めません。

よって退職勧奨をするときは、従業員には断る権利があると理解したうえで話を進めるべきです。

関連記事:退職勧奨とは?円滑な進め方や言い方、通知書のひな形や文例を紹介

退職勧奨の言い方に関する3つのコツ

退職勧奨の言い方や伝え方のコツを3つ紹介します。

1. 退職勧奨をするに至った理由については事実のみを述べる

1つ目のコツは、退職勧奨の理由について話すとき事実のみを述べることです。具体的には以下のような説明の仕方が挙げられます。

  • 「今まで◯回もの無断遅刻や無断欠席をした」
  • 「部下に対してハラスメントをした」
  • 「◯◯さんがやるべき仕事を部下に押し付けていた」
  • 「会社の経営的な理由で雇い続けるのは難しい」

上記のように退職勧奨をするに至った理由のみをはっきり伝えましょう。理由以外の愚痴のような発言や嫌味を含む発言は避けるべきです。

なお、本人が否定してきたり覚えていなかったりしたときに備えて、問題行動に関する証拠や周囲の証言などを用意しておくと冷静に話し合いを進められます。

2. 指導や注意の内容について具体的に話す

2つ目のコツは、本人の能力不足や問題行動に対して行ってきた指導や注意について具体的に伝えることです。

  • 「毎週3日、直属の上司からフィードバックをする時間を設けた」
  • 「◯月にスキルを活かせそうな◯◯部に配置転換をした」
  • 「週に1回の面談を行って問題行動の指摘や今後の方針を話し合った」

実際に行ってきた指導や対応などを伝え、それでも改善が見られなかったことや会社が期待するレベルに能力が達しなかったことなどを話しましょう。

本人のレベルや仕事のやり方が自社と合っていないという、ミスマッチの視点で話すことがポイントです。

3. 退職に合意するかどうかは本人の自由であると伝える

3つ目のコツは、退職に合意するかどうかは本人の自由であると伝えることです。

  • 「この話を受けて最終的に退職に合意するかどうかは、〇〇さんの自由な意思で決めていただけます」
  • 「これは会社からの一方的なお願いであることをご理解ください」
  • 「今回の話に強制力はありません」

上記のような一言を添えれば、本人も強要されているわけではないと理解しやすくなります。パニックに陥ったり感情的になったりするような事態も避けられます。

また、本人が今後の生活や転職活動について不安を抱いているようであれば、退職金の支給や再就職の支援などをすることも一緒に伝えると良いでしょう。

退職勧奨で言ってはいけないことや避けるべき表現

退職勧奨の面談で言ってはいけないことや、避けるべき表現について紹介します。

退職を強要するような表現

退職を強要するような表現や、退職勧奨には強制力があるといった嘘の発言は避けるべきです。具体的には以下のような表現が挙げられます。

  • 「とりあえず退職届を提出してほしい」
  • 「退職に合意してもらうまで面談を続ける」
  • 「退職勧奨は拒否できない」
  • 「退職勧奨には応じることが義務付けられている」

退職強要は違法であるため、上記のような退職を迫る発言はしないよう徹底する必要があります。強い言い方ではないとしても威圧的な発言をすると、退職を強要されていると従業員が誤解する可能性があるため、言葉選びには細心の注意を払いましょう。

また、退職勧奨には法的な強制力はないため、嘘の発言もしてはなりません。退職するかどうかは本人の自由であると念頭に置いて話し合いを進めるのが望ましいです。

退職勧奨を拒否したら不当な扱いをすると脅すような表現

退職勧奨を拒否したら、不当な扱いや解雇をすると脅すような発言も避けるべきです。具体的には以下のような発言が脅しとみなされる可能性があります。

  • 「退職に応じない場合は解雇も検討している」
  • 「退職しないのであれば地方への転勤となる」
  • 「今後もこの会社で働き続けるとしても仕事は与えられない」
  • 「退職拒否した場合は強制的に別の部署へ異動となる」

あまりにも脅迫めいた発言をすると、刑法の脅迫罪に問われることも考えられます。

なお、配置転換に関しては、すべてが違法とみなされるわけではありません。業務において必要な場合や正当な理由がある場合は配置転換が可能です。

そのため、配置転換を実施したいときは、異動させる正当な理由や異動先での方針などを伝えたうえで本人に配置転換に興味があるか聞いてみましょう。

人格を否定するような表現

以下のような人格を否定する表現や、ハラスメント発言もしてはなりません。

  • 「この業界で働く人間として失格だ」
  • 「周囲の人間はみんな嫌っている」
  • 「無能だから使い物にならない」
  • 「産休や育休を取得するなら辞めてほしい」

上記のような発言は本人を傷つける可能性が高いです。退職勧奨は本人の合意のもと退職してもらうという行為であるため、ひどい言葉で本人を傷つけて退職に追い込むべきではありません。

訴えられて侮辱罪が成立することも考えられるほか、本人が心を病んでしまって適応障害やうつ病になってしまう場合もあります。退職勧奨するうえで必要のない表現は使用を避けましょう。

退職勧奨の面談におけるチェックポイント

退職勧奨の面談におけるチェックポイントを紹介します。

面談で伝えるべき内容

面談で伝えるべき内容は以下の通りです。

  • 退職してほしいという会社側の意向
  • 退職を促す理由
  • これまでに行ってきた指導や対応
  • 退職時の条件(退職日・退職金・有給の買取など)
  • 再就職の支援の有無
  • 退職勧奨への回答期限
  • 面談の翌日以降の業務内容や退職届の提出について(本人が合意した場合)

面談で伝える内容については、ドキュメントやノートなどに整理してまとめておくと良いでしょう。

また、想定される質問への回答もいくつか用意しておくことが推奨されます。聞かれることが多い質問としては、「辞めなければどうなりますか?」「これは解雇ですか?」「退職理由は何に該当しますか?」などがあります。

なお、本人が取り乱したり感情的になったりした場合は、用意していた内容をすべて伝えきるのは避け、日を改めて再度説明しましょう。

面談時間と回数

1回の面談時間は30分程度、長くても1時間程度に収めましょう。

退職勧奨は従業員にとって精神的に負荷がかかることが考えられるため、時間をかけすぎるべきではありません。面談を始めてから時間がそれほど経っていないとしても、本人の反応や顔色を見て説明を続けるのが難しそうであれば日を改めることが推奨されます。

また、面談の回数については、なるべく少ない回数に留めましょう。短期間のうちに何度も面談を実施すると、退職強要と受け取られる可能性が高いためです。

ただ、退職に合意してもらえるか返事を聞いたり今後の方針について話し合ったりする分には、何度か面談を重ねても問題ありません。合理的な範囲内で面談時間や面談回数を決める必要があります。

面談に参加する人数

面談への参加人数は、本人を含めて2〜3人ぐらいが適切です。会社側から参加する人数は1人か2人、多くても3人までに調整するべきです。

あまりにも会社側の人数が多いと、本人を心理的に圧迫させてしまう可能性があります。退職勧奨の話をするうえで本当に必要な人のみが参加するようにしましょう。

なお、面談場所に関しては、参加人数が入る個室や面談ルームなどを使用するのが望ましいです。

他の社員もいる作業エリアや面談していることが分かる半個室のような空間だと、周囲の目が気になって双方が落ち着いて話せない可能性があります。退職勧奨はお互いにとって重大な内容であるため、プライバシーを確保できる空間で面談を行う必要があります。

退職勧奨の言い方に関するよくある質問

退職勧奨の言い方に関するよくある質問をいくつか紹介します。

退職勧奨の面談の切り出し方は?

退職勧奨の面談を始めるときは、以下のように話を切り出すと良いでしょう。

  • 「◯◯さんの今後について大切なお話があります」
  • 「今回、◯◯さんとの面談の時間を設けたのは、退職勧奨のお話をさせていただくためです」
  • 「◯◯さんのキャリアについて、上層部と話し合いをさせていただきました」

「お話したいことがあります」といった遠回しな表現よりは、上記のような具体的な切り出し方のほうが真剣な議題であると受け取ってもらいやすいです。本人も重要な話が始まると心構えができます。

また、いきなり「今月いっぱいで退職していただきたいです」と切り出すのも避けたほうが良いでしょう。

急に退職や期限の話をするとパニックに陥る従業員もいるかもしれないためです。退職を促す理由や今までの対応など順を追って説明すると、相手も話の流れを理解しやすくなります。

退職勧奨を断られたら何と返すべき?

退職勧奨を断られたら、たとえば「◯◯さんのご意見も踏まえて再度検討いたします」のように返して、一旦は相手の意見を受け入れる姿勢を見せましょう。

もしくは「退職に応じることが難しい理由を聞いてもよろしいでしょうか?」と断った理由を聞いてみるという手もあります。

「合意してもらう必要がある」「退職はほぼ決定している」といった退職を強要していると受け取られかねない表現は避けましょう。

本人の結論や拒否の理由を聞き入れているという態度を示すことが重要です。

ただ、本人が理由を話したがらなかったり話が平行線の状態から進まなかったりした場合は、深追いせずに面談を終了させるのが賢明です。

解決金や再就職の支援の話はどのタイミングでしたほうがいい?

解決金や再就職の支援の話は、退職を勧めている理由やこれまでに行った対応について話し終わった後にするのが適切です。

退職勧奨の理由や今までの指導について話す前に解決金や支援の話をすると、お金で解決しているように受け取られかねません。また、従業員本人も退職を強要されていると思ってしまう可能性もあります。

お金や支援の話をするときは、本人の気持ちに配慮していると伝えるためにも「急な話で申し訳ないですが合意してもらえるのであれば」のような一言を添えると良いでしょう。

また、本人が退職勧奨されている状況について納得しているかどうかも重要です。

相手が感情的になっているのにお金の話をすると、より気持ちが荒れてしまうことも考えられます。そのため、本人の様子を伺いながら解決金や再就職の話を切り出しましょう。

退職勧奨の面談はオンラインで行っても問題ない?

従業員が地方に住んでいる場合や都合の良い日程を調整できない場合は、オンラインでも問題ありません。ただ、退職勧奨の面談は、なるべく対面で行うことをおすすめします。

オンラインだと対面よりも表情や声色が伝わりにくくなるためです。たとえば、自分たちは穏やかに話しているつもりでも、冷たく退職を迫っているように受け取られる可能性があります。

どうしてもオンラインで退職勧奨の話をしなければならない場合は、表現や抑揚などに一層気をつけましょう。相槌を多めに打ったり話の理解度をこまめに確認したりなどの配慮も必要です。

また、オンラインだと回線が途切れてスムーズに話を進められないこともあるため、その点にも気を配りましょう。

外国籍の従業員に退職勧奨をする場合の注意点は?

外国籍の従業員に退職勧奨をするときは、言葉選びに気をつけましょう。分かりやすい日本語を使用することを意識し、上手く説明できるか不安であれば通訳も同席させることをおすすめします。

宗教や思想、周囲との接し方などが日本と異なる国も多いため、センシティブな内容について話すときは一層気を配りましょう。相手の出身国の文化的な背景や慣習なども簡単に調べて言い方を考えておくと安心です。

また、外国人労働者にとって在留資格への影響も不安な要素の一つです。在留資格の手続きについても事前に確認し、必要に応じて今後のサポートも具体的に提示してあげると退職勧奨に合意してもらえる可能性があります。


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