- 更新日 : 2025年10月31日
採用管理とは?業務内容からExcelでの管理やシステム(ATS)の選び方
採用管理とは、企業の成長に必要な人材を確保するため、候補者の募集から選考、内定、入社までの一連のプロセスを計画し、効率的・戦略的に実行・最適化する活動全般を指します。優れた採用管理は、採用のミスマッチを防ぎ、企業の競争力を高めることにつながります。
この記事では、採用管理の具体的な業務内容から、Excelでの管理方法、採用管理システム(ATS)の選び方まで、最新の採用市場の動向をふまえてわかりやすく解説します。
目次
採用管理とは?
採用管理とは、企業の採用目標を達成するために、候補者の募集から選考、内定、そして入社後のフォローまでの一連のプロセスを計画し、実行・最適化していく活動全般を指します。その目的は、単に人手不足を解消するだけでなく、企業の成長戦略に合った優秀な人材を、適切な時期とコストで確保することにあります。
採用管理の業務プロセス
採用管理の業務は、候補者と接点を持つ前から入社後まで、長期にわたります。主なプロセスは以下の5つのステップで進められます。
1. 採用計画を立てる
採用管理は、どのような人材を、いつまでに、何人採用するのかという計画を立てることから始まります。経営計画や事業戦略に基づき、現場のニーズをヒアリングしながら、求める人物像(ペルソナ)や必須スキル、経験などを明確にします。採用活動全体の予算やスケジュールもこの段階で決定します。
2. 募集活動で候補者を集める
採用計画で定めたターゲット人材に自社を認知してもらい、応募につなげるための活動です。求人サイトへの掲載、人材紹介会社の利用、自社の採用サイトやSNSでの発信、リファラル採用(社員紹介)など、さまざまな手法を組み合わせて候補者の母集団を形成します。
3. 選考プロセスで候補者を見極める
応募があった候補者の中から、自社にマッチする人材を見極めるプロセスです。書類選考から始まり、複数回の面接、適性検査などを通じて、候補者の能力や価値観を多角的に評価します。この段階では、面接官とのスムーズな情報共有や、候補者への迅速な連絡が重要になります。
4. 内定を出し入社までフォローする
選考を通過した候補者に対して内定を通知し、入社意思を確認します。内定通知書の送付や雇用条件の提示といった事務手続きに加え、内定者が不安なく入社日を迎えられるよう、面談や社員との懇親会などを設定する「内定者フォロー」も採用管理の重要な業務です。
5. 入社後の定着を支援する
採用管理は、候補者が入社したら終わりではありません。入社した人材が早期に組織に定着し、活躍できるよう支援する「オンボーディング」も含まれます。定期的な面談の実施や研修の案内などを通じて、新しい環境への適応をサポートします。
Excelやスプレッドシートで行う採用管理
採用管理システムを導入する前の段階では、企業の多くが採用管理をする際にExcelやGoogleスプレッドシートを利用しています。コストをかけずに始められる一方で、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが大切です。
Excel管理のメリットとデメリット
手軽に始められるExcelでの採用管理ですが、応募者数が増えるにつれて限界が見えてくることも少なくありません。
- コストがかからない: 追加費用なしで始められます。
- 操作に慣れている人が多い: 多くの社員が基本的な操作に慣れています。
- カスタマイズの自由度が高い: 自社の選考フローに合わせて、管理項目を自由に変更できます。
- 情報共有がしにくい: ファイルが分散し、リアルタイムでの情報共有が困難です。
- 属人化しやすい: 複雑な関数やマクロは、作成者しかメンテナンスできなくなる可能性があります。
- セキュリティリスク: 個人情報の漏えいリスクが伴います。
- 手作業による工数の増大: 応募者情報の入力や更新、メール作成などの負担が急増します。
管理を効率化するための工夫
Excelやスプレッドシートで採用管理を行う際は、以下のような工夫をすることで、ある程度効率的に運用できます。
- 管理項目を標準化する:
「氏名」「応募日」「選考ステータス」「評価」など、管理する項目をあらかじめ決めておき、入力ルールを統一します。 - 関数や機能を活用する:
VLOOKUP関数で応募者情報を参照したり、プルダウンリストで入力項目を制限したり、条件付き書式で選考状況に応じてセルの色を変えたりすることで、管理しやすくなります。
採用管理システム(ATS)とは?
採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)とは、候補者の応募から採用までの一連のプロセスを可視化し、一元管理するための専門ツールです。Excelやスプレッドシートでの手動管理に限界を感じる企業や、より戦略的な採用活動を目指す企業など多くの企業に使われています。
採用管理システム(ATS)の主な機能
ATSには、採用業務を円滑に進めるための機能が集約されています。
- 候補者情報の一元管理:
複数の求人媒体や人材紹介会社、自社の採用サイトなど、さまざまな経路からの応募者情報を自動でシステムに取り込み、データベースとして一元管理します。これにより、情報が担当者ごとに散在するのを防ぎます。 - 選考の進捗管理:
候補者一人ひとりが「書類選考中」「一次面接待ち」「最終選考後」など、どの選考段階にいるのかをリアルタイムで可視化します。面接官の評価やコメントも集約できるため、採用チーム全体でスムーズな情報共有が可能です。 - 面接のスケジュール調整:
面接官と候補者の空き時間をシステム上で照らし合わせ、候補者に面接可能な日時を自動で提示するなど、これまで何度もメールで行っていた煩雑な日程調整を効率化します。 - 分析とレポーティング:
応募経路別の効果測定、選考フェーズごとの通過率や辞退率などを自動で集計・分析します。データに基づいた客観的な振り返りが可能になり、採用戦略の改善に役立ちます。
採用管理システム(ATS)を導入するメリット
採用管理システムを導入することで、採用担当者の業務負担削減はもちろん、選考スピードと質の向上、データに基づいた戦略的な採用活動、そして候補者体験の向上といった、多岐にわたるメリットが得られます。
採用担当者の業務負担を大幅に削減する
採用担当者は、候補者情報の入力、面接日程の調整、合否連絡など、多くの事務作業に時間を費やしています。ATSはこれらの定型業務を自動化することで、担当者の工数を大幅に削減します。これにより、担当者は候補者とのコミュニケーションや採用戦略の立案といった、より付加価値の高いコア業務に集中できるようになります。
選考スピードと意思決定の質を高める
候補者情報や選考の進捗が一元管理されることで、採用に関わるメンバー間の情報共有がスムーズになります。これにより、迅速な意思決定と候補者へのスピーディーな連絡が可能となり、優秀な人材を競合他社に奪われるリスクを低減できます。また、過去の評価データを参照しながら議論できるため、より客観的で質の高い選考が実現します。
データに基づいた戦略的な採用活動を実現する
ATSに蓄積されたデータを分析することで、「どの求人媒体からの応募者が採用につながりやすいか」「選考のどの段階で辞退が多いか」といった採用活動のボトルネックや成功要因を客観的に把握できます。勘や経験に頼るのではなく、データに基づいたPDCAサイクルを回すことで、継続的に採用活動を改善し、採用の質を高めていくことが可能です。
候補者体験(CX)を向上させる
候補者への連絡漏れや遅延は、企業のイメージを損ない、入社意欲を低下させる大きな原因となります。ATSを活用することで、応募から内定まで、候補者に対してスムーズで丁寧なコミュニケーションを一貫して提供できます。迅速な対応は「候補者体験(Candidate Experience)」を向上させ、企業のブランドイメージ向上にもつながります。
自社に合った採用管理システムの選び方
採用管理システムにはさまざまな種類があり、それぞれに特徴や価格帯が異なります。自社に合わないシステムを選ぶと、うまく活用できずにコストだけがかかることにもなりかねません。
採用課題から選ぶ
まず、自社が採用管理において最も解決したい課題は何かをはっきりさせましょう。
- 「応募者管理の煩雑さを解消したい」:
複数の求人媒体との連携が強く、応募者情報を自動で集約できるシステムが適しています。 - 「選考の質を高めたい」:
面接官ごとの評価を記録・比較できる機能や、評価基準を統一できる機能が充実したシステムがよいでしょう。 - 「内定辞退率を改善したい」:
内定者とのコミュニケーションを円滑にする機能や、フォロー状況を管理できるシステムが役立ちます。
企業の規模や採用人数で選ぶ
企業の規模や年間の採用人数も、システム選定の重要な基準です。
- 中小企業・採用人数が少ない場合:
シンプルな機能で、低コストから始められるクラウド型のシステムがおすすめです。 - 大企業・大量採用を行う場合:
複雑な選考フローに対応できるカスタマイズ性の高いシステムや、多様な採用手法に対応できる多機能なシステムが求められます。
確認すべきその他のポイント
機能や価格以外にも、以下の点を確認することが大切です。
- 操作性:
実際にシステムを使う人が直感的に操作できるか。無料トライアルなどを活用して確認しましょう。 - サポート体制:
導入時や運用中にどのようなサポートを受けられるか。 - セキュリティ:
大切な個人情報を預けるため、セキュリティ対策が万全であるか。
採用管理とは企業の成長を支える戦略的な活動
採用管理とは、企業に必要な人材を適切なタイミングで確保し、入社後の定着までを支援する戦略的なプロセスです。計画段階から募集・選考・内定・フォローに至るまでを一貫して管理することで、採用の質を高めることができます。
Excelなどを用いた手軽な管理は小規模採用に有効ですが、応募者が増えるとセキュリティや効率面に限界があり、採用管理システム(ATS)の導入が効果的です。自社の課題や規模に合った方法を選択することが、採用成功率を高め、企業の持続的な成長につながります。
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