- 更新日 : 2025年9月26日
休憩時間ルールとは?長すぎ・早すぎ・休めない対応も解説
従業員の休憩時間は、労働基準法で厳密にルールが定められています。「6時間勤務だから休憩は不要」「電話番をしているから実質休めていない」といった状況は、意図せず法律違反になっているかもしれません。
この記事では、労働基準法における休憩時間の基本的な考え方から、休憩時間中の労働とみなされるケース、深夜の仮眠といった間違いやすい点まで、人事労務担当者が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。適切な労務管理の実現に、ぜひお役立てください。
目次
労働基準法が定める休憩時間ルールの基本
労働基準法では、従業員の健康を守り、生産性を維持するため、労働時間に応じた休憩の長さと、その与え方に関する3つの原則が定められています。これらのルールはすべての企業に適用されるため、正確に理解しておく必要があります。
労働時間に応じた休憩時間の長さ
企業が従業員に与えるべき休憩時間は、労働時間によって法律で明確に定められています。たとえば、働く時間が6時間を超えるときは45分以上、8時間を超えるときは60分以上の休憩を取らなければなりません。
労働時間 | 必要な休憩時間 |
---|---|
6時間以内 | 不要 |
6時間超~8時間以内 | 45分以上 |
8時間超 | 60分以上 |
たとえば、所定労働時間が8時間の会社では、45分の休憩を付与すればよいことになります。ただし、残業によって労働時間が8時間を超えた場合は、合計で60分以上の休憩を与えなければなりません。
休憩時間に関する「3つの原則」
休憩時間の与え方には、「途中付与」「自由利用」「一斉付与」という3つの原則があり、これらを遵守することが企業には求められます。単に時間を確保するだけでなく、休憩の質も法律で定められているといえるでしょう。
1. 労働時間の途中に与える(途中付与の原則)
休憩は、労働時間の開始前や終了後ではなく、必ず労働時間の「途中」に与えなければなりません。たとえば、9時から18時(休憩1時間)の勤務で、9時から1時間休憩して10時から18時まで働かせるといった運用は認められません。
2. 自由に利用させる(自由利用の原則)
休憩時間は、従業員が労働から完全に解放され、自由に利用できる時間でなければなりません。休憩時間中に電話番や来客対応をさせることは、実質的な「手待ち時間」とみなされ、労働時間として扱われる可能性があります。
3. 全従業員に一斉に与える(一斉付与の原則)
休憩は、原則として、その事業場の全従業員に対して同じ時間帯に一斉に与える必要があります。ただし、従業員の過半数で組織する労働組合などとの間で労使協定を締結すれば、休憩を交代で取得させることが可能です。また、運輸交通業や商業、保健衛生業など、特定の業種ではこの原則が適用されません。
出典:労働基準法を遵守した休憩時間の設定方法と休憩の3原則を紹介|弥生株式会社
休憩時間が労働時間とみなされるケース
休憩時間とは、従業員が労働から完全に解放されている時間のことです。たとえ休憩時間という名目であっても、会社の指揮命令下にあり、いつでも業務に対応できる状態で待機している時間は「手待ち時間」とみなされ、労働時間に含まれます。
労働時間と判断される具体的なパターン
以下のようなケースは、休憩時間ではなく労働時間と判断される可能性が高いといえます。
- 電話番や来客対応:
休憩時間中に事務所で電話番をしたり、来客対応をしたりする時間は、労働から解放されているとはいえず、労働時間にあたります。 - 緊急時の呼び出し待機:
休憩中にトラブルがあればすぐに対応するよう指示され、特定の場所で待機している時間は労働時間です。たとえば、システム管理者が出先で食事をしていても、PCを携帯し、アラートがあれば即時対応する必要がある場合は、休憩時間とは認められない可能性があります。 - 研修や勉強会の参加:
会社からの指示で休憩時間中に研修動画を視聴したり、勉強会に参加したりする時間は、自己啓発ではなく業務の一環とみなされ、労働時間となります。 - 義務付けられた朝礼やミーティング:
朝礼やミーティングなど、参加が義務付けられているものは休憩時間ではありません。
これらの時間に相当する賃金を支払わず、かつ法定の休憩を与えていない場合、企業は法律違反に問われる可能性があります。
休憩時間中の自由な過ごし方
休憩時間の「自由利用の原則」に基づき、従業員は休憩時間をどのように過ごすか、基本的に自分で決めることができます。
- 外出:
昼食のために外出したり、私用で銀行や役所に行ったりすることは自由です。ただし、事業場の規律保持上、必要な場合には、外出に所属長の許可を求めるといった合理的な制限を設けることは可能とされています。 - 仮眠:
休憩室などで昼寝や仮眠をとることも、もちろん自由です。会社が休憩中に寝ている従業員を起こして業務を指示することは、休憩の自由利用を妨げる行為であり、原則として認められません。そのような指示をした場合、その時間は労働時間として扱われます。 - 業務の依頼:
休憩中の従業員に声をかけて業務を依頼することも、休憩の自由利用を中断させる行為です。緊急やむを得ない場合を除き、避けるべきでしょう。もし業務を依頼し、従業員がそれに応じた場合は、その業務に費やした時間を労働時間として扱い、別途休憩を与える必要があります。
従業員が心身ともにリフレッシュできるよう、会社側は休憩時間を労働から完全に切り離す意識を持つことが大切です。
6時間ちょうど勤務の休憩時間ルール
労働時間が6時間ちょうどの場合、法律上は休憩を与える義務はありませんが、残業で6時間を超えた際には45分以上の休憩が必要になります。この「超える」という言葉の解釈が、実務上の重要なポイントです。
6時間ぴったりの勤務に休憩は不要
結論として、労働時間が6時間ちょうどの場合、法律上は休憩を与える義務はありません。労働基準法第34条では、「労働時間が六時間を超える場合」に少なくとも45分の休憩が必要と定められています。したがって、勤務時間が6時間を1分でも超えなければ、休憩なしでも法律違反にはなりません。
しかし、従業員の健康や安全、そして業務の効率性を考慮すると、たとえ短時間でも休憩を設けることが望ましいでしょう。
残業で6時間を超えた場合の対応
所定労働時間を6時間としていても、日々の業務の都合で残業が発生し、実際の労働時間が6時間を超えることは十分に考えられます。「たとえば、10分の残業で合計の労働時間が6時間10分となった場合、その時点から休憩付与義務が発生し、企業は45分以上の休憩を確保する必要があります。
このような事態に備え、あらかじめ就業規則などで「残業により労働時間が6時間を超える場合は、別途休憩を取得すること」といったルールを定めておくと、労使間のトラブルを防ぎやすくなります。
長すぎる・短すぎる・早すぎる・取れない休憩のルール
休憩時間は、長すぎても短すぎても、またタイミングが不適切であったり取得できなかったりすると、法的な問題や従業員の不満につながる可能性があります。それぞれのケースについて、適切な対応を理解しておくことが大切です。
長すぎる休憩時間や、従業員が勝手に長く取った場合は?
法律で定められているのは休憩時間の「最低ライン」であり、上限に関する規定はないため、企業が設定する休憩時間が1時間を超えていても問題ありません。しかし、従業員が所定の休憩時間を超えて勝手に長く休憩を取った場合は、別の問題が生じます。
たとえば、昼休憩が1時間のところを2時間取った従業員がいた場合、超過した1時間分は労働していないため、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、給与から控除することが法的には可能です。
ただし、無断で控除するとトラブルの原因となります。このような対応を行うためには、あらかじめ就業規則に「所定の休憩時間を超えて業務に従事しなかった時間については、その時間分の賃金を控除する」といった規定を設けておく必要があります。また、控除を行う前に、なぜ休憩が長くなったのかを本人に確認し、注意・指導を行うことが先決です。
短すぎる休憩時間や分割付与のルール
法定の休憩時間(6時間超で45分、8時間超で60分)を下回ることは、明確な法律違反です。一方で、法定の合計時間を満たしたうえで、休憩を複数回に分けて与える「分割付与」は、法律上認められています。
たとえば、8時間勤務の従業員に対し、合計60分の休憩を「昼に45分、午後に15分」と分けて与えることは可能です。しかし、あまりに細かく分割しすぎると、休憩の目的である「心身の疲労回復」が果たせなくなるため、違法と判断される可能性があります。たとえば、60分の休憩を5分×12回のように与えることは、従業員が実質的に労働から解放されたとはいえず、休憩として認められないでしょう。
休憩を分割する場合は、従業員がしっかりリフレッシュできる時間を確保し、労使間でルールを合意しておくことが望ましい対応です。
早すぎる・遅すぎる休憩時間のタイミング
休憩は「労働時間の途中」に与える必要がありますが、その具体的なタイミングについては法律で細かく定められていません。しかし、あまりにも始業時刻に近かったり、終業時刻の直前だったりすると、休憩本来の目的を損なうため、違法と判断される可能性があります。従業員の健康を維持するためにも、労働時間の中間あたりに休憩時間を設けるのが一般的です。
休憩が取れなかった場合は労働時間として扱う
業務の都合などで従業員が休憩時間を取得できなかった場合、その時間は「労働時間」として扱われ、企業は賃金を支払う義務があります。もし、休憩が取れなかった時間に対して賃金を支払わず、かつ法定の休憩時間を与えていないとなれば、賃金未払いと休憩時間未付与の2点で法律違反に問われる可能性があります。
就業規則やシステムで休憩時間ルールを徹底する方法
休憩時間に関するルールを全社で徹底するためには、就業規則でルールを明確に定めるだけでなく、勤怠管理システムの活用や、従業員が休みやすい職場環境を整えるといった多角的なアプローチが必要でしょう。
勤怠管理システムに記録する
客観的な記録は、適切な労務管理の基礎となります。勤怠管理システムを導入することで、以下のようなメリットが期待できるでしょう。
- 正確な休憩時間の記録:
始業・終業時刻だけでなく、休憩の開始・終了時刻も打刻することで、従業員一人ひとりが実際に取得した休憩時間を正確に把握できます。 - アラート機能による注意喚起:
休憩の取得漏れや、法定の休憩時間に満たない従業員がいる場合に、本人や管理者に自動で通知(アラート)を送る機能もあります。これにより、意図しない法律違反を防ぎやすくなります。 - 労働時間の実態把握:
休憩時間が適切に管理されることで、残業時間なども含めた実労働時間の実態が見えやすくなり、長時間労働の是正にもつながります。
休憩を取得しやすい職場環境づくり
ルールを定めるだけでは、業務の忙しさなどから「休みたくても休めない」という状況が生まれてしまう可能性があります。従業員が気兼ねなく休憩を取れるよう、会社として環境を整えることも重要です。
- 管理者からの積極的な声かけ:
管理職やリーダーが「時間になったら休憩に入ってください」「しっかり休んでください」といった声かけを日常的に行うことで、休憩を取りやすい雰囲気が醸成されます。 - 業務の相互フォロー体制の構築:
特定の人に業務が集中し、休憩が取れないといった事態を防ぐため、チーム内で業務を共有し、お互いにフォローし合える体制を整えることが望ましいでしょう。休憩時間中は他のメンバーが対応する、といったルールを決めておくのも有効です。 - 休憩スペースの整備:
従業員がオンとオフを切り替え、しっかりリフレッシュできるよう、リラックスできる休憩スペースを設けることも一つの方法です。食事をとったり、談笑したり、一人で静かに過ごしたりできる快適な空間は、休憩の質の向上に貢献します。
就業規則に明記しておくべきポイント
休憩時間に関するルールは、必ず就業規則に具体的に記載しておきましょう。記載が曖昧だと、解釈をめぐってトラブルになる可能性があります。
【就業規則の記載例】
第〇条(休憩時間)
- 労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は45分、8時間を超える場合は60分の休憩時間を労働時間の途中に与える。
- 所定の休憩時間は、原則として午後0時から午後1時までの一斉付与とする。
- 前項にかかわらず、労使協定を締結した部署については、休憩を一斉に付与しないことがある。
- 所定の休憩時間を超えて業務に従事しなかった時間については、無断または正当な理由がない限り、その時間分の賃金を控除することがある。
第〇条(法定外の休憩)
- 前条に定める休憩時間のほか、心身の疲労回復を目的として、所定労働時間内に15分間の有給の休憩を午前と午後に各1回与える。
- 前項の休憩時間は、所属長の指示する時間に取得するものとする。
法定外の休憩(小休憩)を設ける場合の注意点
コールセンターやデータ入力業務、立ち仕事の多い飲食店などでは、集中力の維持や疲労回復を目的として、法定休憩とは別に短い休憩(小休憩)を設けることがあります。
このような企業独自の休憩は法律で義務付けられたものではないため、その扱い(有給か無給か、取得方法など)は企業が任意で決めることができます。ただし、トラブルを避けるため、これらのルールは就業規則に明記しておくことが重要です。無給とする場合は、その時間が労働時間に含まれないことを従業員に周知徹底する必要があります。
休憩時間ルールを正しく運用するために
休憩時間は労働基準法で明確に定められた義務であり、企業は従業員の健康と安全を守るために適切に運用する必要があります。6時間超で45分、8時間超で60分という基本ルールに加え、一斉付与・自由利用といった原則を守ることが大切です。残業や業務都合で例外的なケースが発生した場合も、労使協定や就業規則に基づいて運用しなければなりません。
休憩を取れなかった場合は労働時間とみなされ、未払い賃金リスクが生じます。勤怠管理システムの活用や就業規則の整備を通じて、従業員が安心して働ける環境を整えることが、企業の信頼と持続的な成長につながります。
関連:休憩は何時間から必要?深夜労働は追加で取るべき?上限や分割についても解説
関連:就業時間とは?休憩は含まれる?労働時間との違いや就業規則への記載方法
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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