• 更新日 : 2025年4月7日

従業員の個人情報が漏洩した場合の罰則は?企業事例や社内での対策まで徹底解説

企業が取り扱う個人情報の漏洩は、従業員や顧客に大きな被害をもたらすリスクを伴います。特に近年では個人情報保護法の改正により、企業に対する責任や罰則が厳格化され、漏洩に対する社会的な関心も高まっています。本記事では、個人情報保護法の概要から、実際に企業が従業員の個人情報を漏洩した具体的事例、さらに企業としての対策や、被害を受けた個人が取るべき対応方法までをわかりやすく解説します。

個人情報保護法とは

個人情報保護法とは、個人情報の漏洩や不適切な利用を防止し、個人のプライバシーを守ることを目的とした法律です。企業や団体が個人情報を収集・利用する場合、この法律にもとづいて厳格に管理しなければなりません。

個人情報保護法における個人情報の定義

個人情報保護法における「個人情報」とは、氏名や住所、生年月日、電話番号など、特定の個人を識別できる情報を指します。また、単体では特定できなくても、他の情報と組み合わせることで個人が特定可能な場合も個人情報に該当します。こうした情報は無断で漏洩したり、不適切に利用したりされることがないよう、厳格な管理体制が求められています。

個人情報保護法における企業の義務と責任

個人情報保護法は、個人情報を取り扱う企業や団体に対し、収集・利用における義務や管理責任を明確に定めています。具体的には、情報収集時の適切な手段の採用、利用目的の明示、情報漏洩防止のための安全管理措置の実施が挙げられます。また、本人の同意を得ずに個人情報を第三者へ提供することは原則禁止されており、企業は法律にもとづき適正な取り扱いを徹底しなければなりません。

個人情報保護法の主な改正点

個人情報保護法は2003年に施行され、その後も社会情勢にあわせて改正されています。直近の改正では、個人情報を取り扱う企業や団体の責任がより明確になり、個人情報漏洩時には速やかに本人への通知が義務化されるなど、情報管理への注意が一層厳しく求められるようになりました。

従業員の個人情報が漏洩した場合の罰則

従業員の個人情報が漏洩した場合、企業は法的な罰則を受ける可能性があります。個人情報の漏洩は企業の信用や業務運営に深刻な影響をもたらすため、具体的な罰則や責任について把握しておくことが重要です。

個人情報保護法にもとづく罰則

個人情報保護法では、企業に対して個人情報を適切に管理する義務を定めています。この義務に違反し、故意または重大な過失によって個人情報が漏洩した場合、個人情報保護法第83条にもとづく罰則が適用されます。

法人の場合、最大で1億円の罰金が科されることがあります。また、漏洩に関与した個人に対しては、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されることもあります。

会社内部の懲戒処分

個人情報の漏洩が従業員によるものである場合、法律上の罰則とは別に、企業内での懲戒処分が実施されることもあります。

処分内容としては解雇や降格、減給などが考えられ、具体的な処分は漏洩行為の性質や会社の信用に与えた影響の大きさを考慮して決定されます。

被害者からの民事訴訟

個人情報の漏洩により被害を受けた従業員や顧客から、企業に対して民事訴訟が提起されることもあります。漏洩による損害賠償責任が認められれば、企業は多額の賠償金を支払うこととなり、経済的損失を負うリスクが高まります。また、こうした訴訟は企業のブランドイメージを損ね、顧客からの信頼を失う原因にもなります。

このように、従業員の個人情報漏洩は法的罰則、社内処分、民事訴訟など多方面にわたる重大なリスクを伴います。企業は情報管理体制の強化や教育を徹底し、情報漏洩の予防に努めることが必要不可欠です。

従業員の個人情報漏洩に関する企業事例

従業員の個人情報が漏洩する事例は、企業にとって深刻な問題となります。以下に具体的な事例を紹介し、その影響を考察します。

事例1: 製造業における情報漏洩事件

2023年11月、自動車部品メーカーのベルソニカ社は、外部からの不正アクセスにより、取引先および従業員、元従業員の個人情報約1,000件が流出した可能性があると公表しました。

事例2: IT企業の元従業員による不正アクセス事件

2021年1月、ソフトバンクの元社員が在職中に5Gに関する機密情報を不正に持ち出し、転職先の楽天モバイルに漏洩させたとして逮捕されました。

事例3: 医療機関での個人情報漏洩

2024年4月、横浜市立大学附属病院の看護師が、患者27名分の個人情報を含む書類を病院外に持ち出し、外部で紛失する事案が発生しました。

これらの事例から、従業員の個人情報漏洩は企業や組織に多大な影響を及ぼすことが明らかです。法的責任の追及だけでなく、信頼やブランドイメージの低下、経済的損失など、多岐にわたるリスクが存在します。そのため、企業は情報管理体制の強化や従業員教育の徹底など、再発防止策を講じることが不可欠です。

社内情報漏洩を防止するための具体的な対策

社内の情報漏洩を防ぐには、適切な情報管理体制を整備することが重要です。従業員の個人情報を守り、企業の信頼性を維持するためにも、以下で挙げる対策を徹底する必要があります。

セキュリティ教育の実施

従業員に対し定期的にセキュリティ教育を実施することは、漏洩防止の基礎となります。教育では個人情報の重要性や適切な取り扱い方法を明確に伝え、情報を扱う際の注意点やリスクを理解させます。継続的な教育により、従業員のセキュリティ意識が向上し、漏洩リスクを低減させる行動が取れるようになります。

アクセス権限の管理徹底

従業員が社内の情報にアクセスする際の権限を厳格に管理することも効果的です。特に個人情報などの重要なデータについては、業務上必要な担当者にのみアクセス権限を付与し、それ以外の従業員からのアクセスを制限します。また、従業員の異動や退職時には、速やかにアクセス権限を解除し、不正なアクセスを防止する仕組みを構築することが重要です。

セキュリティソフトの導入

企業内で管理するデータを保護するためには、最新のセキュリティソフトを導入することが不可欠です。ソフトウェアを定期的にアップデートし、ウイルスやマルウェア、ランサムウェアなどによる攻撃からデータを守ります。特にクラウドサービスを利用する場合は、さらに強固なセキュリティ対策を講じる必要があります。

データの暗号化

万が一情報が流出した際のリスクを軽減するため、重要なデータを暗号化することも効果的な対策です。データを暗号化することで、外部に情報が漏れたとしても容易には解読できなくなり、情報漏洩による被害を最小限に抑えることができます。

企業から個人情報を漏洩された際の適切な対応

企業に個人情報を漏洩された場合、個人が迅速かつ適切に対応することは極めて重要です。被害を最小限に抑え、自身の権利を守るためにも、以下の対応手順を理解しておく必要があります。

漏洩の事実を速やかに確認する

まず最初に行うべきことは、個人情報漏洩の事実確認です。企業から直接通知や連絡があった場合や、自身の個人情報が不正に使用されている兆候を感じた場合には、情報漏洩を疑い、事実関係を整理する必要があります。漏洩したとされる日時や個人情報の具体的な内容、影響範囲について記録し、整理しておくと後の対応がスムーズになります。

弁護士や専門機関への相談を行う

漏洩の影響が深刻である場合や、対応方法に不安がある場合には、弁護士や消費者相談機関などの専門家に相談することを推奨します。専門的なアドバイスを受けることで、自身が取るべき適切な対応や法的措置について詳しく知ることが可能です。特に、企業への損害賠償請求など法的な対応を検討する場合には、弁護士のサポートが重要となります。

信用情報機関へ被害を報告する

個人情報が漏洩したことで、金融取引やクレジットカード情報などが不正に使用されるリスクがある場合には、信用情報機関への速やかな報告が重要です。信用情報機関に通知を行うことで、不正利用があった際に迅速に検知・対応できる可能性が高まります。これにより、自身の信用情報を保護し、二次的な被害の拡大を防ぐことができます。

損害賠償請求を検討する

個人情報漏洩によって実際に損害が生じた場合、企業に対して損害賠償請求を検討することも重要です。賠償請求を行う際には、漏洩した事実と具体的な被害状況を明確に示し、企業側に適切な対応を求める必要があります。この手続きは法的知識が求められるため、専門家と協力して慎重に進めることが望ましいです。

企業からの個人情報漏洩は、自分だけでなく家族や周囲にも影響を与える可能性があるため、冷静かつ慎重に対応することが求められます。自分の権利をしっかりと守るためにも、上記のポイントを押さえた行動が重要となります。

従業員の個人情報漏洩には十分注意しましょう

企業による個人情報の漏洩は、法的責任や信頼失墜など、極めて深刻な影響をもたらします。個人情報保護法にもとづき、企業は適切な情報管理体制を構築し、従業員への教育やセキュリティ対策を徹底することが求められます。また、万が一個人情報が漏洩した場合には、被害者も冷静かつ迅速に対応することが重要です。企業と個人がそれぞれの立場で適切な対応を取ることが、個人情報漏洩による被害を最小限に抑える鍵となります。


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