- 更新日 : 2025年3月5日
週3日勤務のパートの有給休暇は何日?計算方法・企業の正しい対応を解説
週3日勤務のパートでも、有給休暇は法律で定められており、一定の条件を満たし、入社後6ヶ月を経過すれば5日以上取得できます。有給休暇の付与日数は勤務日数に応じて決まり、週3日勤務の場合は最大で年間11日です。
本記事では、有給休暇の計算方法や具体的な企業の対応について詳しく解説します。
目次
週3日勤務のパートの有給休暇の付与日数
週3日勤務のパートの場合、週所定労働日数が3日、週所定労働時間が30時間未満であれば6ヶ月以上の継続勤務で5日の有給休暇が付与されます。以降、勤続年数に応じて有給休暇が付与され、付与される日数は以下のとおりです。
勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 5日 |
1年6ヶ月 | 6日 |
2年6ヶ月 | 6日 |
3年6ヶ月 | 8日 |
4年6ヶ月 | 9日 |
5年6ヶ月 | 10日 |
6年6ヶ月以上 | 11日 |
週の所定労働日数が4日以下で、かつ所定労働時間が30時間以下の場合、有給休暇は比例付与となります。上記の場合、所定の基準に従い、比例配分された日数が決まります。
週5勤務のパートの場合
週5日勤務のパートは、「週所定労働時間が30時間以上」または「年間の所定労働日数が217日以上」のいずれかの条件を満たすと、正社員と同様の有給休暇が付与されます。
週5勤務のパートの有給休暇の付与日数は、以下のとおりです。
勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 10日 |
1年6ヶ月 | 11日 |
2年6ヶ月 | 12日 |
3年6ヶ月 | 14日 |
4年6ヶ月 | 16日 |
5年6ヶ月 | 18日 |
6年6ヶ月以上 | 20日 |
また、週5勤務であっても、週所定労働時間が30時間未満の場合は比例付与となります。
勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 7日 |
1年6ヶ月 | 8日 |
2年6ヶ月 | 9日 |
3年6ヶ月 | 10日 |
4年6ヶ月 | 12日 |
5年6ヶ月 | 13日 |
6年6ヶ月以上 | 15日 |
週4勤務のパートの場合
週4日勤務で週所定労働時間が30時間未満の場合、継続勤務が6ヶ月を超えると、有給休暇が7日付与されます。以降、1年ごとの付与日数は以下のとおりです。
勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 7日 |
1年6ヶ月 | 8日 |
2年6ヶ月 | 9日 |
3年6ヶ月 | 10日 |
4年6ヶ月 | 12日 |
5年6ヶ月 | 13日 |
6年6ヶ月以上 | 15日 |
また、週4日勤務であっても週所定労働時間が30時間以上の場合は比例付与とならず、週5勤務のパートの場合で解説した通り、正社員と同様の有給休暇が付与されます。
週2勤務のパートの場合
週2日勤務のパートで週所定労働日数が2日、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合、継続勤務が6ヶ月に達すると3日の有給休暇が付与されます。以降、1年ごとに以下のように付与日数が増加します。
勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 3日 |
1年6ヶ月 | 4日 |
2年6ヶ月 | 4日 |
3年6ヶ月 | 5日 |
4年6ヶ月 | 6日 |
5年6ヶ月 | 6日 |
6年6ヶ月 | 7日 |
上記のように、勤務年数に応じて有給休暇が増加します。
週1勤務のパートの場合
週1日勤務のパートで、週所定労働日数が1日、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合、継続勤務数が6ヶ月になった時点で有給休暇が1日付与されます。以降、1年ごとの付与日数は以下のとおりです。
勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 1日 |
1年6ヶ月 | 2日 |
2年6ヶ月 | 2日 |
3年6ヶ月 | 2日 |
4年6ヶ月 | 3日 |
5年6ヶ月 | 3日 |
6年6ヶ月 | 3日 |
上記のように、勤務年数が長くなるほど付与される有給休暇も増える仕組みです。
2019年4月から年5日分の有給取得が義務化された
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、有給休暇の取得が義務化されました。
年次有給休暇は、労働者の心身のリフレッシュを目的に、原則として労働者が請求する時季に付与することが義務付けられています。しかし、有給休暇を取得することに対して罪悪感を抱く方もおり、取得率は低調でした。
改正により、年間10日以上の有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)は、最低5日分の有給休暇を取得することが義務付けられました。有給休暇の取得が義務化されたことで、労働者は有給休暇を消化しやすくなります。
使用者は、労働者が5日間の有給を確実に取得できるよう、取得状況を厳格に管理しなければいけません。そのため、賃金計算や労務管理の負担が増える可能性があります。
また、時季指定に関しては、使用者は労働者の意見を聞き、可能な限り希望を尊重することが重要です。今回の法改正により、労働者の休暇取得が促進され、働きやすい環境の整備が期待されています。
パートが有給休暇を取得できる条件
パートの方も、一定の条件を満たせば有給休暇を取得できます。具体的な条件は、継続勤務期間や出勤率などです。以下では、有給休暇を取得できる具体的な条件を解説します。
6ヶ月以上継続的に勤務している
パートが有給休暇を取得できる条件は、「6ヶ月以上継続的に勤務している」ことです。入社から6ヶ月以上継続して勤務すれば、シフトの日数に関係なく、入社6ヶ月後に一定の日数が付与されます。
したがって、働き始めて6ヶ月未満の従業員は有給休暇を取得できません。正社員も同様に継続勤務が条件です。有給休暇の取得には、入社日を確認し、付与日を把握しておくことが重要です。
すべての労働日の8割以上出勤している
パートが有給休暇を取得するには、基準期間内の出勤率が8割以上であることが条件です。基準期間とは、事業者が有給休暇の付与条件を判断する期間で、一般的に入社日から6ヶ月後が基準日とされます。
基準日の時点で出勤率が8割に満たない場合、有給休暇を付与する必要はありません。継続勤務していても、基準を満たさなければ権利は発生しないため、注意が必要です。
有給休暇の手当の計算方法
有給休暇の手当は、労働基準法に基づいて計算されます。支給額の計算方法は3種類あり、企業によって異なるため、事前の確認が重要です。以下では、各計算方法について解説します。
通常賃金から計算する方法
有給休暇を取得した日は、通常勤務と同じ賃金が支払われます。パートの場合、1日の労働時間が決まっている場合、計算が簡単で管理しやすいことがメリットです。通常賃金から計算する方法は「有給休暇取得日の勤務時間 × 時給」で算出されます。
たとえば、時給1,500円で1日8時間勤務の場合、有給休暇1日分の手当は「1,500円 × 8時間 = 12,000円」です。
平均賃金から計算する方法
労働者が固定給でなく、労働日数や労働時間が不規則な場合、有給休暇の手当は平均賃金から計算されます。上記の場合、計算方法は以下の2つがあります。
- 原則の計算方法:直近3ヶ月の賃金総額 ÷ 直近3ヶ月間の総暦日数
- 最低保証:直近3ヶ月間の賃金総額 ÷ 直近3ヶ月間の総労働日数 × 0.6
労働日数や労働時間が不規則な場合、暦日数で計算した平均賃金が著しく不当で低い金額になることがあるため、このように最低保障が設けられています。
たとえば、直近3ヶ月の賃金総額が72,000円、総暦日数が90日、総労働日数が60日の場合は以下のとおりになります。
- 72,000円 ÷ 90日 = 800円/日
- 72,000円 ÷ 60日 × 0.6 = 720円/日
この場合、原則の計算方法により算出された金額が平均賃金として採用されます。
上記のように平均賃金で計算すると、勤務時間が固定されている場合と比べて金額が低いことが多く、とくにパートの方にとっては差が顕著です。
標準報酬日額から計算する方法
有給休暇の手当を「標準報酬日額」から計算する方法は、標準報酬月額を基に計算します。計算式は、標準報酬月額を30で割って求めます。
たとえば、標準報酬月額が300,000円の場合、計算式は「300,000円 ÷ 30日 = 10,000円/日」となり、1日の有給休暇手当は10,000円です。
ただし、標準報酬月額は社会保険加入者に適用されるため、社会保険適用外のパートやアルバイトなどには使用できません。
また、標準報酬日額には上限があり、適用するには労使協定の締結と就業規則への記載が必要です。
有給休暇を付与する際の注意点
有給休暇を付与する際は、法的な要件を満たす必要があります。適切に付与しないと、使用者が罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。以下では、有給休暇の付与における主な注意点について解説します。
未消化の有給休暇は翌年度に繰り越せる
有給休暇には繰越制度があり、労働者に付与された有給休暇を1年以内に使いきれなかった場合、翌年度に繰り越すことが可能です。そのため、労働者は未使用分を次の年に利用できるため、無駄にならずに済みます。
ただし、繰り越した有給休暇の有効期限は付与日から2年間で、2年を過ぎると時効により未使用分は失効するため注意が必要です。しかし、企業によっては有効期限を2年以上に設定している場合もあります。
なお、繰越制度は正社員だけでなく、パートやアルバイトを含むすべての有給休暇付与対象者が利用できます。
有給休暇の繰越については、下記の記事をあわせてご覧ください。
関連記事:有給休暇は繰越できる?上限や規程などをわかりやすく解説!
出勤率8割未満の年も継続勤務年数に含まれる
有給休暇は出勤率が8割以上でないと付与されません。したがって、出勤率が8割未満の年には有給休暇は付与されないため注意が必要です。
しかし、出勤率が8割未満の年でも継続勤務していれば、勤務年数に含まれます。たとえば、直近1年間の出勤率が8割以上であったため、その年には有給休暇が付与されなかった労働者であっても、その次の有給休暇付与のタイミングで出勤率を満たしていれば、有給休暇が付与されなかった期間も含めた勤続年数に応じた有給休暇が付与されます。
初年度の出勤率が8割以上の場合、6ヶ月後に10日の有給休暇が付与されますが、その後1年間の出勤率が8割未満の場合、入社から1年6ヶ月の時点では新たな有給休暇は付与されません。ただし、1年目に付与された有給休暇は繰り越して使用できます。
上記のように、出勤率が低くても勤務年数や有給休暇の繰越分には注意が必要です。
有給休暇管理簿を作成する必要がある
使用者は労働基準法施行規則第24条の7に基づき、従業員ごとに有給休暇管理簿を作成・管理する義務があります。管理簿の形式は紙やExcel、勤怠管理ソフトなど自由ですが、記載すべき項目があるため注意が必要です。
管理簿には、主に以下の情報を記載する必要があります。
項目 | 詳細 |
---|---|
付与日 | 有給休暇が付与された日。同じ年度内で有給休暇が2回付与される場合は、それぞれの日付を記載する必要がある。 |
取得日数 | 労働者が取得した有給休暇の日数。前年度の繰越分がある場合、繰越日数と合計数も記載する。 労働者が追加で有給休暇を取得した場合は、都度、取得した日数を差し引いた残り日数を記載する。 |
取得時季 | 有給休暇を取得した正確な日付。有給休暇を消化するたびに日付を記載する。 労働者が希望して取得した日数だけでなく、時季指定の付与による日付も記載する。 |
有給休暇管理簿を適切に作成・保管することで、有給休暇を正確に管理できます。
有給休暇管理簿の適切な書き方や作成義務については、下記の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:年次有給休暇管理簿とは?書き方や作成義務について解説
参考:労働基準法施行規則
年5日の有給休暇取得ができていないと罰則を科せられる場合がある
労働基準法では、10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日以上の有給休暇取得を義務付けています。使用者が年5日の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
さらに、労働者が有給休暇を取得したくない場合でも、使用者には付与する責任があるため注意が必要です。年5日の取得義務に違反すると、以下のような罰則が科せられます。
違反内容 | 罰則 |
---|---|
年5日の有給休暇を取得させなかった場合 | 30万円以下の罰金 |
使用者による時季指定を行う場合、就業規則に記載していない場合 | 30万円以下の罰金 |
労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合 | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
上記のような違反が発覚すると、使用者は指導・是正勧告を受けることとなり、悪質な場合には罰則が適用される可能性もあるため、適切な有給休暇の付与が求められます。
有給休暇の理由を無理に聞いてはいけない
労働者に有給休暇の取得理由を使用者に申告する義務はありません。また、使用者にも労働者に取得理由を聞く権利はなく、理由を追求することは不適切です。
理由を尋ねること自体は違法ではありませんが、「理由をいわないと有給休暇を与えない」というルールを設けることは法律違反です。
有給休暇は労働者の自由な権利であり、取得理由を問うことは原則として認められていません。したがって、使用者は従業員のプライバシーを尊重し、適切に有給休暇を付与する必要があります。
パートに有給休暇の取得を促す方法
パートに対しても有給休暇を取得する権利がありますが、使用者は労働者が有給を取得しやすい環境を整えることが重要です。以下では、パートに有給休暇の取得を促す方法について解説します。
年次有給休暇取得計画表を作成する
パートが有給休暇を連続または分割できます。しかし、有給休暇を確実に取得するためには、年次有給休暇取得計画票の作成が重要です。
計画表を使用することで、従業員は希望に合わせて有給休暇を取りやすくなります。また、使用者は取得状況を把握し、業務計画との調整が容易になります。
計画を立てることで、従業員が確実に有給休暇を取得できる環境が整うでしょう。
使用者が有給取得の時季を指定する
労働者が多忙で有給休暇の取得が難しい場合、使用者は有給休暇の時季を指定する必要があります。ただし、時季を一方的に決めるのではなく、労働者の希望を尊重して調整することが重要です。
労働者の状況に配慮し、業務に支障がない時季に取得できるよう調整することで、スムーズに有給休暇を取得させられます。
週3日勤務のパートに適切な有給休暇を付与しよう
週3日勤務のパートには、年次有給休暇を最低5日以上付与する必要があります。労働基準法では、週の労働日数に応じた有給休暇の日数が定められており、週3日勤務の場合、勤続半年で5日、1年半で6日が付与されます。
有給取得の管理が不十分だと法令違反になる可能性があるため、適切な付与と管理が重要です。有給休暇の管理・取得を徹底して従業員の権利を守り、職場環境の向上につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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