• 更新日 : 2025年3月5日

早朝から深夜勤務は可能!時間によって割増賃金の支払いが必要

深夜勤務や早朝勤務における賃金計算は、労働者に適切な割増賃金を支払うために非常に重要です。

とくに、法定休日をまたがる勤務や深夜残業、早朝勤務の場合には、通常の勤務時間とは異なる計算方法が適用されます。

そのため、企業側は正確な計算と適切な支払いを行わなければなりません。

本記事では、深夜勤務や早朝勤務をした場合の賃金計算方法について、具体的な例を交えて解説します。

労働者と企業双方にとって、正しい知識をもつことが重要です。

深夜勤務は早朝勤務でも割増賃金の支払いが必要

深夜勤務には割増賃金が必要であり、早朝勤務も例外ではありません。

午後10時から翌午前5時までの時間帯に働いた場合、労働基準法に基づき、通常の給与に25%以上の割増賃金が支払われることになります。

時給1,200円の労働者が深夜勤務を月20時間行った場合、割増賃金の計算は以下の通りです。

割増率:25%(労働基準法による最低基準)

割増後の時給:1,200円 × 1.25 = 1,500円

割増後の賃金の合計:1,500円 × 20時間 = 30,000円

上記のように、通常の給与と割増賃金をあわせて30,000円が支払われることになります。

さらに、早朝勤務や早出残業が午前5時以前の勤務であれば割増賃金の支払いが必要です。

したがって、勤務時間帯によっては割増賃金を確認し、適正な支払いが行われているかを企業側に確認することが重要です。

深夜労働の時間帯

深夜労働とは、午後10時から翌午前5時までの時間帯に行われる勤務です。

労働基準法に基づき、通常の給与に加えて25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。

時給1,200円の労働者が午後10時〜午前2時(4時間)働いた場合、通常の給与の25%以上が加算されます。

割増後の時給:1,200円 × 1.25 = 1,500円

割増後の賃金の合計:1,500円 × 4時間 = 6,000円

深夜勤務がある場合、割増賃金が正しく計算、支給されているか十分に確認しましょう。

早朝出勤・早出残業も深夜残業になる場合あり

早朝出勤や早出残業は、午前5時以前の勤務が深夜勤務に該当する場合があります。

具体的に、以下のようなケースでは早朝勤務が深夜勤務扱いです。

ケース深夜勤務の該当時間割増賃金の適用
午前4時に出勤し、そのまま勤務を継続する場合午前5時まで深夜割増25%以上
深夜残業が延長となり、午前5時以降まで続く場合午後10時以降午前5時前の時間帯時間外割増25%以上+深夜割増25%以上
シフト制で夜勤から早朝勤務へ直結する場合午後10時以降午前5時前の時間帯深夜割増25%以上

深夜勤務扱いになる場合、通常の給与に加えて25%以上の深夜割増賃金が適用され、深夜勤務かつ残業の場合はさらに25%以上の時間外割増が重ねて適用されます。

そのため、従業員の給与に影響が出ることもあります。

早朝勤務を行う場合は、事前に企業の規定を確認し、割増賃金の適用条件を理解しておくことが大切です。

早朝手当は企業の規定による

早朝勤務に対して支払われる手当は、企業の規定に依存しています。

企業ごとに早朝勤務に対する手当の支給条件や割増率が異なり、どの時間帯から早朝手当が適用されるかも異なります。

企業によって、早朝手当の支給条件や早朝手当の適用条件が異なるため、注意が必要です。

具体的な適用条件には、以下の違いがあります。

  • 企業A:午前7時から早朝手当が適用(1時間あたり300円支給)
  • 企業B:午前5時から適用(支給額は時給の10%増し)
  • 企業C:早朝手当は存在せず、深夜割増のみ適用

上記のように、企業ごとに手当の内容が異なるため、自分の勤務先の就業規則をしっかり確認することが重要です。

規定にしたがって、早朝勤務を行う場合には、適切な手当が支払われているか確認し、給与に反映されるようにしましょう。

深夜勤務における注意点

深夜勤務にはいくつかの注意点があり、労働基準法を遵守することが重要です。

深夜勤務を行う場合、適切な割増賃金を支払う必要があり、労働者に対して適用されるルールを理解しておくことが求められます。

管理監督者にも支払う必要がある

管理監督者(経営者や管理職など)にも、深夜勤務に対して割増賃金を支払わなければなりません。

管理監督者は労働時間の管理を行う立場にあり、深夜勤務については通常の労働者と同様に法令の規定が適用されます。

管理監督者へ支払う理由説明
労働基準法第41条の適用外管理監督者は、時間外手当の対象外とされている。しかし、深夜勤務に関しては労働基準法第37条が適用されるため、25%以上の割増賃金の支払いが必要
違反すると労働基準法違反となる割増賃金を支払わない場合、労働基準監督署の指導を受けることになり、最悪の場合、罰則を科されることもあるため注意が必須

支払い義務を怠ると、労働基準法違反となり、企業側が罰則を受ける可能性があるため、管理監督者の深夜勤務も正しく扱うことが求められます。

未成年と妊娠・出産後の女性は深夜に働かせられない

労働基準法により、未成年者(18歳未満)や妊娠中、または深夜勤務を希望しない旨を申し出た妊娠中や出産後の女性に、深夜勤務(午後10時から午前5時)を命じることはできません。

18歳未満の若者が夜間に働くことは、身体的な負担や精神的な影響が懸念されるため、法律で禁止されています。

また、深夜勤務を希望しない旨を申し出た妊娠中や出産後の女性に対しても、深夜勤務の強制は認められていません。

ただし、通常の労働時間が深夜勤務が前提となっている場合、事業の継続に影響を及ぼす可能性があるため、代替人員の確保など事前の対応が求められます。

そのため、企業は、以下の点を確認し、法律に違反しないよう対応してください。

  • 18歳未満の労働者が深夜勤務を行っていないか確認
  • 妊娠・出産後の女性が希望しない限り、深夜勤務を禁止
  • 万が一、規則に違反した場合は労働基準監督署の指導や罰則のルール設定

法的制限を企業側も認識し、該当者には適切な勤務時間を設定することが重要です。

深夜残業中の仮眠時間も労働時間になる場合がある

深夜勤務中に仮眠を取る場合、仮眠時間が業務の一環として認められる場合、労働時間としてカウントされることがあります。

【仮眠時間が労働時間として認められるケース】

ケース具体例
業務上の対応が求められ手待ち時間となる場合深夜勤務の警備員や医師・看護師などが仮眠時間中であっても業務への対応を求められる場合
休憩時間外で仮眠を命じる場合長距離トラック運転手が、指定の仮眠時間を確保しながら移動する場合

【仮眠時間が労働時間にならないケース】

ケース具体例
業務上の対応が求められない場合複数名で深夜勤務しており、仮眠中に生じた業務への対応は他の労働者が行う場合

仮眠中であっても業務への対応が求められる場合、労働から完全に解放されていないため労働時間となります。

一方、仮眠時間に生じた業務への対応を他の労働者が行う体制が整っていれば、仮眠時間は労働から完全に解放されている時間として労働時間とはなりません。

仮眠時間を設けるにあたっては、労働時間となるか否かについて、使用者・労働者の双方が正しく理解することが欠かせません。

深夜勤務・早朝勤務をした場合に支払うべき賃金の計算方法

深夜勤務や早朝勤務には特別な賃金計算が必要です。

深夜勤務の場合、午後10時から午前5時の時間帯は通常の賃金に0.25倍の割増賃金が適用されます。

また、早朝勤務についても、午前5時までの深夜時間帯に勤務した場合は0.25倍の割増賃金が適用されます。

1. 勤務が深夜に及んだ場合

深夜勤務には、午後10時から午前5時までの時間帯が該当し、割増賃金を含め通常賃金の1.25倍の賃金を支払う必要があります。

なぜなら、深夜勤務は労働者にとって身体的な負担が大きいため、法的に割増が求められているからです。

たとえば午後8時から午前2時までの勤務の場合、午後10時以降の4時間については通常賃金の1.25倍を支給しなければなりません。

したがって、企業は深夜勤務の時間帯を正確に記録し、適切な割増賃金を支払うことで、法的義務を果たせます。

2. 始業前に早朝勤務をした場合

始業前の午前5時までに早朝勤務を行った場合、早朝勤務の時間も労働時間となり、深夜勤務としての割増賃金が適用されます。

そのため、通常賃金の1.25倍以上の額を支払わなければなりません。

午前4時から勤務を開始した場合、午前5時までは通常の賃金の1.25倍の支払いが必要です。

労働者が健康的に働けるよう、企業は始業前の勤務時間を正確に把握し、適切な賃金を支払うことが大切です。

3. 翌日の始業時間まで深夜勤務をした場合

翌日の始業時間まで深夜勤務を行った場合、出勤日の午後10時以降翌日の午前5時までの時間帯について0.25倍以上の割増賃金が必要です。

さらに、前日からの労働時間が8時間を越えている場合は別途0.25倍以上の時間外割増賃金が必要となります。

翌日の始業時間までのうち、午前5時以降は深夜勤務としての割増賃金は不要です。

しかし、前日からの労働時間が8時間を越えている場合に0.25倍以上の時間外割増賃金が必要となります。

なお、翌日の労働時間は、始業時間以降新たにカウントしますので、前日から引き続いた始業時間までの労働時間を合算する必要はありません。

割増賃金の重複に注意して計算を行い、適切な支払いをすることが法的な義務を果たすために重要です。

4. 翌日の法定休日にまたがって深夜勤務をした場合

日曜日を法定休日とした例において、土曜日から日曜日にかけて深夜勤務を行った場合、深夜割増と休日割増が重なる時間が発生します。

なお、本内容では土曜日を通常の出勤日として取り扱います。

日曜日にまたがる深夜勤務のうち、24時までの時間帯は深夜労働に該当し、通常賃金の0.35倍以上の割増賃金が必要です。

24時以降の時間帯は深夜勤務かつ法定休日労働に該当するため、深夜割増・休日割増をあわせて通常賃金の0.6倍以上の割増賃金が必要となります。

【土曜日の午後11時から日曜日の午前8時まで(うち休憩1時間)働いた場合】

  • 0時までは25%の深夜割増賃金が適用
  • 0時以降5時までは60%の割増賃金(深夜25% +法定休日35%)が適用
  • 5時以降8時までは25%の深夜割増賃金が適用

5. 法定休日から翌日にまたがって深夜勤務をした場合

同様に日曜日を法定休日とした例において、日曜日から月曜日にかけて深夜勤務を行った場合にも、深夜割増と休日割増が重なる時間が発生します。

月曜日にまたがる深夜勤務のうち、24時までの時間帯は深夜かつ休日労働に該当し、深夜割増・休日割増をあわせて通常賃金の0.6倍以上の割増賃金が必要です。

24時以降の時間帯は深夜勤務に該当するため、通常賃金の0.25倍以上の割増賃金が必要となります。

【日曜日の午後11時から月曜日の午前8時まで(うち休憩1時間)働いた場合】

  • 0時までは60%の割増賃金(深夜25% +法定休日35%)が適用
  • 0時以降5時までは25%の深夜割増賃金が適用
  • 5時以降8時までは割増賃金の適用はなし

早朝深夜勤務をした場合は適切な割増賃金の支払いをしよう

早朝勤務は、通常の勤務時間よりも早い時間帯に開始する労働形態を指し、午後10時から翌午前5時までの労働時間は深夜勤務と同様に扱われます。

通常の賃金に加えて25%以上の割増賃金を支払う義務があるため、企業は適正な給与計算を行わなければなりません。

本記事で紹介した内容をもとに、企業は早朝勤務が深夜勤務の時間帯に該当するかどうかを把握し、適切な給与計算を徹底してください。

労働者の権利を守り、企業の法的責任を果たせるようにしましょう。


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