- 更新日 : 2025年3月3日
有給休暇の保有日数は最大40日?35日?保有の条件を紹介
有給休暇は最大で40日保有可能だと聞いたことはないでしょうか。
しかし、それは単純に付与された日数全てを繰り越せる場合に限られます。
また、入社したら誰でも有給を使えるわけではなく、有給付与には2つの条件があります。
この記事では有給の最大保有日数・繰越のルールや、付与の条件などについて解説します。
目次
【条件別】有給休暇の最大保有日数
まずは有給休暇の最大保有日数について解説します。
日数は勤続年数や週の労働日数によって異なりますが、最大40日まで保有できます。
週30時間以上、または5日以上勤務の場合(正社員など)
正社員などフルタイムで働く従業員は週30時間以上、または週5日以上勤務すれば、下記のように有給が付与されます。
継続勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月(半年) | 10日 |
1年6ヶ月(1年半) | 11日 |
2年6ヶ月(2年半) | 12日 |
3年6ヶ月(3年半) | 14日 |
4年6ヶ月(4年半) | 16日 |
5年6ヶ月(5年半) | 18日 |
6年6ヶ月以上 | 20日 |
のちほど詳しく説明しますが、年度内に使い切れなかった有給休暇は繰り越せるため、単純に考えれば、7年6ヶ月で最大40日まで有給の保有が可能です。しかし、それは後述する消化義務との関係上、難しくなっています。
週30時間未満かつ週4以下の勤務の場合(パートなど)
アルバイトやパート、派遣社員など雇用形態に関係なく、週30時間未満かつ週4日以下の労働をする従業員にも、有給休暇が付与されます。
このように、出勤日数に応じた有給休暇の付与を「比例付与」と呼びます。
勤続勤務年数 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
週所定の労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
また、労働者への有給の付与は、労働基準法第39条により事業者の義務となっています。
40日の保有ができるのはいつから?繰越のルール
勤続年数や勤務日数によりますが、有給休暇は最大40日までの保有が可能です。
先ほどご説明した通り、年度内に使い切れなかった有給休暇は翌年度に繰越ができます。
そして、年間の有給休暇の最大付与日数は「週30時間以上、または5日以上勤務している6年6ヶ月以上働いている従業員」への20日です。
20日分をそのまま繰越できるなら、翌年の付与分と合わせて最大40日の有給休暇を使えます。
しかし、年10日以上有給を付与される従業員は、年度内に5日間有給を使わなければいけない消化義務が労働基準法により定められています。
そのため、消化義務を果たせば「有給繰越分の上限は15日」となり、この時点での最大保有日数は下記のように計算が可能です。良く見られる有給休暇の最大保有日数35日は、この計算からきています。
また、有給休暇を取得する際は、原則として前年度から繰り越した分が優先的に消費され、その年に付与された分は後から使われます。
そして、付与から2年が経過した有給休暇の未使用分は時効として消滅しますので、注意しましょう。
下記の表は、有給休暇の繰越のイメージです。
年度 | 付与日数 | 昨年からの繰越日数 | 利用可能な日数 | 消化日数 |
---|---|---|---|---|
2025年 | 20日 | 0日 | 20日 ・2025年付与分20日 ・繰越分0日 | 5日 |
2026年 | 20日 | 15日 | 35日 ・2026年付与分20日 ・繰越分15日 | 10日 ※うち5日は義務 |
2027年 | 20日 | 20日 | 40日 ・2027年付与分20日 ・繰越分20日 | 消化義務の5日を繰越分により満たすことで、以降は最大40日保有可能 |
※勤続年数6.5年以上と仮定。
仮に2025年に全く有給休暇を消化していなければ、20日を繰り越せるはずです。そのため、改正により導入された消化義務がなければ、2026年の時点で最大となる40日まで保有できるはずでした。
しかし、年5日の消化義務があるため、付与日数を丸々繰り越すことはできず、15日の繰り越しとなっています。
また、2026年に繰り越した15日のうち10日が消化されていますが、残りの5日は時効により消滅するため、繰り越すことはできません。しかし、5日の消化義務は繰越分で満たしているため、2026年に付与された20日はそのまま翌年度に繰り越すことが可能です。そのため、2027年に付与される20日と合わせて、これ以降は最大となる40日を保有できることになります。
有給休暇の繰越についての、より詳しい解説は関連記事をご覧ください。
関連記事:「有給休暇は繰越できる?上限や規程などをわかりやすく解説!」
有給休暇の「繰越なし」は違法
有給休暇の繰越を認めないことは、原則的には違法となります。
会社の経営者や人事担当者から「うちの会社では有給休暇を繰り越せない」と説明される場合があるかもしれません。
しかし、有給休暇の繰越は労働基準法第115条により規定されており、有給の繰越を認めないことは労働基準法に違反しているおそれがあります。
また、会社の就業規則に「有給休暇の繰越はできない」という記載があったとしても、法律が優先するため繰越は可能です。
40日間保有していても連続取得は難しい
有給休暇が40日間残っていても、長期間の連続取得は現実的ではありません。
基本的には、有給休暇は労働者が取得したいタイミングでの取得が可能です。
取得申請をした従業員に対して、上司もその申請を断ることはできません。
ただし、いくら有給休暇があっても数十日など長期間の有給を続けて取得すると、業務に与える影響が大きくなり、同僚などに迷惑を掛けてしまうおそれがあります。
そのため、退職時など特殊なケースを除き、長期間の有給の連続取得は難しいでしょう。
何らかの事情でどうしても有給休暇を長期間取りたい場合は、その理由を上司や同僚などに説明したうえで、業務への影響を最小限に抑えられるようにしましょう。
希望通りに使えないパターンもある
まとめて有給休暇を使おうと思っても、希望通りに使えないパターンもあります。
それは、会社が「時季変更権」を行使した場合です。
時季変更権とは、従業員から申請のあった有給休暇の取得時期を、業務に支障が出る場合に限り会社側が変更できる権利です。
この時季変更権は、労働基準法第39条により定められています。
有給休暇が40日余っており長期間の有給を取得しようとした場合も、この時季変更権が適用される可能性があります。
▼時季変更権の使用例
|
上記のようなパターンに当てはまる場合、有給休暇を申請した本人が休んでしまうと、会社の業務に支障が出かねません。
こうした場合は、会社が時季変更権を使い、有給休暇の取得日を移動させられます。
消化が難しい場合は時間単位で取得する
40日間など大量の有給休暇が余っていて消化が難しい場合は、有給を時間単位で取得しましょう。
労使協定(労働者と会社間での協定)が交わされていれば、年5日分までは、1時間単位や2時間単位など有給休暇を時間単位で取得できます。
この時間単位での有給休暇の取得は、労働基準法39条により認められています。
ただし、最低の時間単位は会社により異なりますので、就業規則をよく確認しましょう。
また、直近では時間単位の有給取得の上限を「年5日以内」から「付与日数の50%」へ見直す方向で検討されています。
参考:“時間単位取得の有休 上限緩和を” 規制改革推進会議中間答申│ | NHK
独自の有給制度があれば、最大50日や60日も可能?
会社に独自の有給休暇の制度(特別休暇)があれば、最大60日など通常の法定日数を超える有給が付与される場合もあります。
たとえば「リフレッシュ休暇」や「誕生日休暇」など、会社が独自の休暇制度を福利厚生として導入している場合が、このパターンに当てはまります。
その場合、会社によっては40日を超えて最大50日や60日といった有給を保有できる可能性があるでしょう。
ただし、先ほどご説明した通り長期間の連続取得は難しいと思われるため、その点は注意が必要です。
有給休暇が付与されるための条件
有給休暇が付与される条件は2つあり、それぞれ解説していきます。
①入社から半年以上続けて勤務している
入社から半年以上続けて勤務していることが、有給付与のための1つ目の条件です。
最初の有給休暇の付与日数は、正社員など「週30時間以上、または5日以上勤務」している従業員であれば10日になります。
また、会社から有給を付与されるタイミングも、通常は雇い入れから半年経過時点(6ヶ月後)です。
②全労働日の8割以上出勤している
有給付与のための2つ目の条件は、全労働日の8割以上の出勤です。
「全労働日」とは会社との契約時に定めた出勤日数のことです。
たとえば、入社後半年間の全労働日が120日であった場合、96日以上出勤していれば10日の有給が付与されます。
また、下記の場合も出勤として認められます。
|
一方で、出勤途中の事故など「通勤災害」は出勤日には含まれないため気をつけましょう。
有給取得に関する注意点
最後に、有給取得時の注意点を解説していきます。
年10日以上の場合は取得が義務
労働基準法第39条により、年10日以上の有給を付与される従業員は、年5日の有給取得が義務化されています。
もし年5日以上の有給を取得しない従業員がいる場合、会社は違反者1名につき30万円以下の罰金や、労働基準監督署による監督指導を科せられる可能性があるでしょう。
また、場合によっては「従業員に有給を取らせない会社」という悪評が広まり、会社としての社会的信用を失うおそれもあります。
年10日以上の有給を付与されている場合は、仕事量を調整するなどして必ず年度内に5日間の有給を取得するようにしましょう。
関連記事:「有給休暇の義務化とは?5日が最低?中小企業が取るべき対策」
有給の買取は原則NG
有給休暇の買取は、従業員の休息の機会を奪うことにつながりかねないため、労働基準法により原則として禁止されています。
しかし、以下の3つの例外的なケースでは買取が認められる場合もあります。
|
ただし、あくまで認められているだけであり、有給休暇の買取は会社にとっての義務ではありません。
有給休暇の買取を拒否されることもあるため、その点は注意しておきましょう。
関連記事:「有給休暇の買取ができるパターンと計算方法を解説」
有給休暇は消滅前に利用しよう
有給休暇は条件を満たせば、最大40日まで保有できます。
また、未消化分は翌年に繰越可能ですが、その繰越分も2年間を超えると消滅してしまいます。
有給休暇は労働者がゆっくり休むための権利ですので、リフレッシュしてより仕事に集中するためにも、溜め込まず積極的に取得していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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