- 更新日 : 2025年9月9日
賃金台帳はどこでもらえる?開示義務の有無や対応をテンプレートつきで解説
賃金台帳は、どこかでもらえるものではなく、事業場ごとに作成・保管が義務付けられている帳簿です。
労働基準法にもとづき作成・保管が義務付けられているため、違反すると30万円以下の罰金が科せられる可能性もあるため注意が必要です。
作成・保管が義務付けられている賃金台帳について、従業員から情報開示が求められた場合の対応などもあわせて解説します。
目次
賃金台帳はどこでもらえる?
賃金台帳は、本社だけではなく、支店営業所、工場などの事業場ごとに作成・保管が義務付けられています。
そのため、管轄の自治体でもらえるのではなく、事業場ごとに作成して用意しなければなりません。
また、従業員から賃金台帳の開示を求められることがありますが、個人情報であり義務ではありません。開示するかどうかは事業場ごとに判断がゆだねられます。
保管場所は事業場ごと
賃金台帳は、各事業場ごとに作成・保管することが法律で義務付けられています。
労働基準法第108条にもとづき、労働者が受け取るべき賃金が正確に管理されることを目的に、雇用者は労働者の賃金に関する記録を作成しなければなりません。
賃金台帳には、労働者の氏名・賃金の額・支払日などが含まれます。また、賃金台帳は労働基準監督署の監査や調査の際に重要な資料となります。
賃金台帳の保管期間は、最後に記載した賃金の支払日から5年間(当分の間3年間)です。
開示義務は定められていない
従業員への賃金台帳の開示は、法律で明確には定められていません。
つまり、従業員から賃金台帳の開示が求められたとしても、事業場側は拒否ができます。
ただし、従業員側においては、過去に受け取った賃金について知る権利があります。
賃金台帳の開示要請があり拒否する際は、合理的な理由を説明することが望ましいです。一方的な情報開示の拒否は、企業の信頼性に影響を与える可能性があるため、慎重な対応が求められます。
賃金台帳の情報開示に法的な義務はありませんが、求められた際の対応として、企業や事業場内で方針を定めておいたほうがよいでしょう。
従業員が賃金台帳をもらう必要のある手続きは?
従業員が事故や病気で休業した場合、休業損害証明書を保険会社に提出するとき、賃金台帳の写しが求められるケースがあります。
通常なら源泉徴収票を提出しますが、雇用されたタイミングで受け取っていない場合は、賃金台帳の情報で補償の支払いを判断します。
多くのケースでは、事業場が保険会社へ休業損害証明書と賃金台帳の写しを送付します。そのため、従業員から賃金台帳の開示が求められた際は、休業損害証明書は事業場が記載する旨を伝え、無理に開示しなくてもよいでしょう。
また、従業員が「賃金が適切に支払われていない」または「職場で不当に差別を受けた」などから、従業員側の弁護士より内容証明郵便が届くことがあります。届いた際は、支払うべき賃金の証拠として、従業員または弁護士に対し、指定された期日までに賃金台帳の情報開示を行う必要があるでしょう。
弁護士を通じて賃金台帳の情報を請求されるケースは非常にまれです。しかし、求められた場合は、基本的には拒否できないため、あらかじめ賃金台帳を適切に保管して対応できる状況にしておくことが望ましいでしょう。
従業員が賃金台帳をもらいにくるケースと対応方法
従業員が賃金台帳をもらいにくるケースとして、自身の給与や労働条件を正確に把握したい場合が考えられます。
賃金台帳には、労働日数・労働時間・支払われた賃金の詳細などが記載されており、従業員は自分の労働が適切に記録されているかが確認できます。
賃金台帳の情報開示を求められた場合に備え、下記の対応を行いましょう。
- 賃金台帳の情報を開示するか否か方針を定める
- 賃金台帳の情報を小まめに更新する
- 賃金台帳を電子化して保管する
賃金台帳の情報開示は、事業場にとっては義務ではありませんが、拒否する際は合理的な理由がないとその後労働トラブルに発展しかねません。
そのため、賃金台帳の情報開示が求められた際は、開示するか否かの方針を定めます。情報を開示する場合は、いつ求められてもいいように情報を更新しましょう。開示しない場合は、理由もあわせて用意しておきます。
また、賃金台帳は従業員の数だけ保管が必要なため、電子化による保存の検討もおすすめです。
賃金台帳の無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、賃金台帳の無料テンプレートをご用意しております。
無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
給与明細は賃金台帳の代わりになる?
給与明細は、賃金台帳として代用は基本的にできません。監査においても、賃金台帳の情報開示が求められた際に、給与明細は使用できません。
賃金台帳に記載する項目のうち、給与明細にも同様の項目があります。
しかし、給与明細には支払った賃金や控除額の記載はあるものの、賃金台帳に必要なすべての項目が含まれているわけではありません。
必要な項目がひとつでも欠けていたら、法的要件を満たしたことにはならないのです。
とくに、給与明細には下記の項目が記載されていない場合が見受けられます。
- 時間外労働の詳細な時間数
- 休日出勤の詳細な時間数
- 深夜労働の詳細な時間数
したがって、給与明細だけでは賃金台帳として法的要件を満たさない場合が多いため、代用できません。法的な要件を満たすためには、従業員の数だけ賃金台帳を別途作成する必要があります。
ただし、給与明細に賃金台帳における必須項目がすべて含まれている場合には、代用が認められることがあります。
賃金台帳は事業場ごとに作成・保管が必要
賃金台帳は、管轄の自治体や本社から受け取るものではなく、事業場ごとで作成・管理が必要です。
労働基準法により義務付けられているため、定められたルールに沿って適切に作成・保管しましょう。
また、従業員から賃金台帳の情報開示が求められる場合がありますが、事業主に情報開示義務はありません。しかし、事業場のイメージや信頼に影響を与える可能性があるため、開示に応じるか理由を説明したうえで拒否するか、方針を定める必要があるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
休職手当とは?主な種類6つ!傷病手当金の条件も解説
病気などで休職する場合、休職手当の支給の手続きをすることで、気がかりな休職期間中の経済的な困窮を回避することができます。この記事では休職手当の概要や支給条件、金額、申請方法について解説し、休職期間中に支給される手当の種類についてもご紹介しま…
詳しくみる中途採用者の住民税の手続きまとめ!一括徴収とは?
会社には住民税の特別徴収が義務付けられており、中途採用者も原則として特別徴収の対象となります。 ただ、下記のように疑問に思う人もいるでしょう。 「中途採用した場合はどのような手続きをする?」 「いつから住民税を天引きすれば良い?」 そこで本…
詳しくみる藤枝市の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
藤枝市は、静岡県の東部に位置し、豊かな自然と歴史的な文化が調和する魅力的な地域です。農業や製造業を中心に、多様な産業が発展しており、多くの中小企業が活動しています。 このような環境下で、給与計算は企業運営において欠かせない重要な業務ですが、…
詳しくみる定額減税とは?給付金・所得税・住民税についてわかりやすく解説!
2024年は所得税と個人住民税において、一律の金額が控除される定額減税が実施されます。減税額は1人あたり所得税3万円、住民税1万円の合計4万円です。会社は6月給与から減税処理を開始し、2024年中の給与支払いにおいて減税分を控除するまで処理…
詳しくみる退職者に給与明細を郵送するときの送付状の書き方、文例を解説
退職者に給与明細を郵送するときには送付状を添えるのがビジネスマナーです。給与明細以外にも退職に関わる書類が複数ある場合は、一覧を記載し、受け取り時に内容を一目で確認できるようにします。また、在職中の感謝と今後の活躍を祈る一言を添えることで、…
詳しくみる定額減税における新入社員の扱い- 扶養の対象かどうかなど解説!
新入社員が親の扶養控除対象になるかどうかは、企業の人事担当者にとって重要な問題です。特に、定額減税の適用に関しては、扶養控除の適用範囲を正確に把握することが求められます。 本記事では、定額減税における新入社員の扶養控除の扱いについて、親が勤…
詳しくみる