- 更新日 : 2025年7月30日
在職老齢年金とは?手続きの有無や計算方法を解説
会社員等は老齢厚生年金を受けられる年齢になっても在職している場合は、年金を受給しながら厚生年金保険に加入し続けることができます。
ただし、収入によっては年金額が支給停止されてしまう場合があるのです。これを「在職老齢年金」と言います。
今回は在職老齢年金とはどのような制度か、手続きや年金額の計算方法について解説します。
目次
在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受け取りながら在職して、厚生年金保険に加入し続けながら受ける老齢厚生年金のことです。
年金額と給料・賞与の合計が47万円を超える額の場合、47万円を超えた金額の2分の1が年金額から支給停止されます。70歳以上の方は保険料の支払いはなくなりますが、支給停止については同じ取り扱いです。
在職老齢年金については、下記で詳しく解説していますので参照してください。
また、2022年4月施行の法改正による在職老齢年金の支給停止の基準の改正などについては、下記の記事で解説していますので参考にしてください。
在職老齢年金の支給停止期間は?
老齢厚生年金をもらいながら、かつ、厚生年金保険の被保険者である場合に、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額によって年金額が支給停止になる場合があります。
支給停止の条件である基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超えている間は支給停止になります。この支給停止中であっても、年金額は改定される場合があります。
ここでは、在職定時改定、退職時改定について見ていきます。
在職定時改定
令和4年3月までは、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者であった場合、65歳以降の被保険者期間については、年金額は退職時や70歳到達時の資格喪失時にのみの改定でした。
令和4年4月の法改正により、年金額は在職中であっても毎年10月分から改定する「在職定時改定」という制度が導入されました。
具体的には、毎年9月1日時点での老齢厚生年金受給者の年金額については、前年9月から当年8月までの1年間の被保険者期間を算入し、毎年10月分の年金から改定されることになります。
対象となるのは65歳以上70歳未満である老齢厚生年金の受給者です。
退職時改定
厚生年金保険の被保険者となっている老齢厚生年金の受給権者が会社等を退職した場合、厚生年金保険の資格を喪失します。
その被保険者の資格を喪失した日から再度被保険者になることなく1か月経った場合は、1か月を経過した月から年金額が改定されます。
この改定を「退職時改定」と言います。
在職老齢年金の手続きは必要?
在職老齢年金は、日本年金機構に対して行った手続きにより支給されるかどうかが決まります。
厚生年金保険の老齢年金は、年金の基本月額と給料・賞与によって決められる総報酬月額相当額の合計額に応じて、年金額の一部または全部が自動的に支給停止になります。
給料に変動があったことにより、給料によって決められる標準報酬月額が改定になった場合には、会社が日本年金機構に届け出を行うことになっています。また、賞与が支給される毎に、会社は日本年金機構に届け出を行うことにもなっています。
その結果、総報酬月額相当額が変動し支給される在職老齢年金の年金額が変わった時には、直接本人に日本年金機構からお知らせが届きます。
在職老齢年金の計算方法
在職老齢年金は、以下のようにして判定・計算されます。
基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を境にして計算方法が変わります。それぞれの場合の計算方法を見ていきましょう。
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下の場合
在職老齢年金による調整はなく、老齢年金は全額支給されます。
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円超の場合
在職老齢年金による調整後の年金支給月額は、以下の式で計算して求めます。
在職老齢年金を正しく理解して生活設計を立てましょう
在職老齢年金は、年金をもらいながら働き続ける場合に、総報酬月額相当額に応じて受給できる年金が一部または全部支給停止になることがあると説明しました。
年金が調整されて支給停止になるかどうかは、会社が日本年金機構に対して手続きを行った結果の個人個人の総報酬月額相当額によります。
- 自分の総報酬月額相当額は支給停止になるのかどうか
- 支給停止になるとしたらいくらが支給停止になるのか
自分で計算する、会社に相談する、年金事務所で相談するなどの方法で把握して、生活設計をしていきましょう。
よくある質問
在職老齢年金とは?
厚生年金保険に加入し続けながらもらえる老齢厚生年金の制度のことです。年金月額と給料・賞与の合計が47万円を超えた場合、その半額が年金額から支給停止されます。47万円以下の場合は支給停止されません。詳しくはこちらをご覧ください。
在職老齢年金の計算方法は?
年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超える場合には、超えた分の半額、式に示すと「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2」が支給停止されて基本月額から減額されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
医療費が高額になったらどうする?社会保険の使用や自己負担割合を解説!
社会保険の医療費は3割負担です。入院や手術などの高額な医療費は、自己負担限度額を超えると高額療養費として返金を受けることができます。さらに、特定の疾病に罹患した場合は、自己負担額の一部または全額を助成する医療費助成制度を利用することも可能で…
詳しくみる厚生年金の受給額はいくら?計算方法も解説
企業などに雇われている方のほとんどは、給与から社会保険料として年金や健康保険、雇用保険などを天引きされていることでしょう。このうち年金については、実際にはどのような仕組みで将来いくらもらえるのかなど、気になる方も多いのではないでしょうか。 …
詳しくみる個人事業主が選択できる4つの健康保険まとめ
会社に勤めている場合、国民健康保険又は各会社の保険組合に加入することになっていますが、独立して個人事業主として働く場合には自分で加入する健康保険を選ぶ必要があります。 しかし、これは逆に言うと自由に健康保険を選択することができるとも言えます…
詳しくみる転職で空白期間がある場合の健康保険や年金の手続きは?保険証切り替えについても解説!
退職してから転職まで期間が空く場合、任意継続や家族の扶養に入ることを選択しない場合は、一度国民健康保険に切り替える必要があります。国民健康保険加入の手続きは14日を過ぎても行えますが、退職日翌日までさかのぼって保険料を徴収されます。今回は、…
詳しくみる介護保険サービスを受けるための手続き
介護保険は、要介護状態になった場合に介護サービスを受けることができる制度ですが、被保険者になる年齢は第1号被保険者と第2号被保険者では異なります。 今回は、介護保険サービスを受けるための手続きについて解説していきます。 介護保険の被保険者年…
詳しくみる厚生年金の受給前に対象者が死亡した場合 – 手続きや金額
厚生年金に加入している方が亡くなった場合、本人の受給資格はなくなります。遺族は、亡くなった方が受給前だった場合には遺族年金を、受給中だった場合には遺族年金や未支給年金を受け取れる場合があります。ただし、そのためには請求手続きが必要です。本記…
詳しくみる