• 更新日 : 2025年11月21日

SHL適性検査とは?企業が導入するメリットと注意点を解説

企業の採用活動で広く活用されているSHL適性検査。世界有数のアセスメント会社が提供するテストで、候補者の知的能力やパーソナリティを客観的に測定し、採用のミスマッチ防止や入社後の活躍予測に役立ちます。一方で、「SPIとの違いは?」「種類が多くてどれを選べばいいかわからない」といった疑問を持つ経営者や人事担当者の方も多いでしょう。この記事では、SHL適性検査の基本的な知識から、具体的なテストの種類、企業が導入するメリット、活用時の注意点まで、初心者にも分かりやすく解説します。

SHL適性検査とは

SHL適性検査は、採用候補者の潜在能力や職場への適応性を客観的に評価するためのアセスメントツールです。面接だけでは見えにくい個人の特性を、科学的根拠に基づいたデータで可視化します。これにより、企業はより自社にマッチした人材を見極めることが可能になります。まずは、このテストがどのようなものか、基本的なポイントから見ていきましょう。

SHL社が提供する世界標準のテスト

SHL適性検査は、英国に本社を置くSHL社が開発・提供しています。同社は世界に50以上の拠点を持ち、人材アセスメントの分野をリードしてきたパイオニア的存在です。そのテストは、2025年現在、世界150カ国以上、40以上の言語で展開されており、グローバル企業から中小企業まで、世界中で年間3,000万件以上も実施されています。長年の実績と膨大なデータに裏打ちされた高い信頼性が、多くの企業に選ばれ続ける理由です。

測定できる2つの能力

SHL適性検査は、大きく分けて「知的能力」と「パーソナリティ(性格)」の2つの側面から個人の特性を測定します。知的能力検査では、業務を遂行する上で必要となる論理的思考力やデータ読解力、言語能力などを測ります。一方、パーソナリティ検査では、個人の行動スタイルや価値観、モチベーションの源泉などを明らかにし、組織文化への適合性やチーム内での役割などを予測します。

企業が採用で利用する目的

企業がSHL適性検査を利用する主な目的は、採用基準を統一し、客観的な視点で候補者を評価することにあります。面接官の主観や経験だけに頼った選考は、評価にばらつきが生じたり、候補者の本質を見誤ったりするリスクがあります。適性検査の結果を面接と組み合わせることで、学歴や職歴だけでは分からないポテンシャルを見出し、入社後の活躍や定着をより高い精度で予測することが可能になります。

SHL適性検査を導入するメリット

SHL適性検査を導入することは、単に選考のプロセスが一つ増えるだけではありません。採用活動の質そのものを向上させ、企業の成長に貢献する多くのメリットをもたらします。ここでは、企業側が享受できる具体的な4つのメリットについて解説します。

客観的で公平な採用基準の確立

採用面接では、どうしても面接官の個人的な印象や経験則が評価に影響を与えがちです。SHL適性検査を導入すれば、すべての候補者を同じ基準で測定できるため、客観的で公平な評価が可能になります。「印象は良いが、自社の求める論理的思考力があるか」といった点を、具体的なデータで補完できます。これにより、選考の透明性が高まり、社内での合意形成もスムーズに進めやすくなります。

採用のミスマッチ防止

「期待して採用したのに、思うように活躍してくれない」「社風に合わず、すぐに辞めてしまった」といった採用のミスマッチは、企業にとって大きな損失です。SHL適性検査のパーソナリティ検査を活用すれば、候補者の価値観や行動特性が自社の文化や求める人物像と合っているかを事前に確認できます。能力面だけでなく、カルチャーフィットの観点からもマッチング精度を高めることで、早期離職のリスクを低減し、人材の定着率向上に繋がります。

採用業務の効率化

特に多くの応募がある場合、すべての応募者と面接を行うのは現実的ではありません。SHL適性検査を選考の初期段階で導入することで、自社の基準を満たす候補者を効率的に絞り込むことができます。これにより、人事担当者は有望な候補者との面接やコミュニケーションに、より多くの時間を割けるようになります。採用活動全体の工数を削減し、コア業務に集中できる環境を整える効果が期待できます。

潜在能力やパーソナリティの把握

履歴書や職務経歴書、短い面接時間だけでは、候補者が持つ潜在的な能力や本質的な性格を完全に見抜くことは困難です。SHL適性検査は、プレッシャーのかかる状況での思考力や、まだ発揮されていないリーダーシップの素養、チームで働く際の協調性といった、見えにくい部分を可視化する手助けをします。これにより、将来のリーダー候補や、特定の分野で高いパフォーマンスを発揮する可能性のある人材を発掘できるチャンスが広がります。

SHL適性検査を導入する際の注意点

多くのメリットがあるSHL適性検査ですが、導入すれば自動的に採用が成功するわけではありません。その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの注意点を理解し、適切に運用することが不可欠です。ここでは、導入前に検討すべき4つのポイントを解説します。

コストと運用工数の把握

SHL適性検査の導入には、当然ながらコストがかかります。料金体系は、受検者数に応じた従量課金制や、年間契約など様々です。まずは自社の採用規模や頻度に合わせて、どのプランが最適かを見極める必要があります。また、テストの案内、結果の管理・分析、面接官へのフィードバックといった運用工数も発生します。これらの費用と手間を事前に把握し、費用対効果を慎重に検討することが重要です。

自社に合ったテストの選定

SHL適性検査には、後述する「玉手箱」や「GAB」をはじめ、多種多様なテストが存在します。それぞれ測定できる能力や対象となる職種が異なるため、「どのポジションの採用で、何を見極めたいのか」を明確にしなければなりません。例えば、コンサルタント職に高い論理的思考力を求めるならGAB、事務職に正確な処理能力を求めるなら玉手箱といったように、採用要件とテストの特性を合致させることが成功の鍵となります。

適切な評価基準の設定

テスト結果をどのように評価するか、自社独自の基準を設けることが非常に重要です。単に点数の高低だけで合否を判断するのは危険です。高得点者が必ずしも自社の社風に合うとは限りませんし、逆に特定の能力が突出している人材が活躍する場合もあります。既存のハイパフォーマー社員にテストを受けてもらい、その結果を参考に基準値を設定するなど、自社の状況に合わせた評価基準作りが求められます。

Webテストの不正受検対策

現在主流のWebテスト形式は、時間や場所を問わず実施できる利便性がある一方、なりすましや電卓以外のツールの使用、他者との協力といった不正のリスクが常に伴います。SHL社もオンライン監督型のサービスを提供するなど対策を講じていますが、企業側としても、最終面接の場でテスト結果に関する質問をするなど、本人確認と結果の妥当性を確かめる工夫が必要です。公平性を担保するための対策を怠らないようにしましょう。

SHL適性検査の種類と分野

SHL適性検査と一口に言っても、その中には様々な種類のテストパッケージが存在します。ここでは、特に日本企業の新卒・中途採用でよく利用される代表的なテストと、それぞれの検査でどのような能力が測定されるのかを解説します。

主なテストの種類(玉手箱・GABなど)

玉手箱: Webテストで多く利用される形式の一つ。言語・計数・英語の能力検査と、性格検査で構成されます。特徴は、一つの科目内で同じ形式の問題が出題され続ける点です。主に新卒採用で幅広く利用されています。

GAB (Graduate Aptitude Battery): 総合職の採用を想定して開発されたテストで、知的能力とパーソナリティを総合的に測定します。特に、長文を読み解き、論理的に正誤を判断する問題が特徴的で、コンサルティングファームや金融機関などで多く用いられます。

CAB (Computer Aptitude Battery): IT関連職における適性を評価することを目的とした専門的なテストです。論理的思考力に加え、暗号解読や法則性を見抜く問題など、プログラマーやシステムエンジニアに必要な能力を測定します。

能力検査の出題分野

SHLの能力検査は、主に以下のような分野で構成されています。これらは、ビジネスシーンで求められる基本的な情報処理能力を測るためのものです。

  • 言語分野: 長文を読み、その内容に関する設問の正誤を論理的に判断する能力を測ります。趣旨把握や論理的読解力が問われます。
  • 計数分野: 図や表を正確に読み取り、必要な数値を計算する能力を測ります。電卓の使用が許可されている場合が多いですが、迅速かつ正確な処理が求められます。
  • 図形分野: 図形の法則性や変化のパターンを読み解く問題が出題されます。論理的思考力や空間把握能力が問われます。
  • 英語分野: 英語の長文読解などが出題され、ビジネスレベルの英語力を測定します。

性格検査の特徴

SHLが提供する性格検査「OPQ(Occupational Personality Questionnaire)」は、世界各国の企業で採用や人材開発の場面で幅広く利用されています。この検査は、個人の能力の優劣をつけるものではありません。候補者がどのような状況で力を発揮し、どのような仕事や環境を好むのかといった「行動スタイル」を明らかにします。結果は、対人関係、思考スタイル、感情といった複数の側面から分析され、面接でさらに深掘りすべき質問のヒントとしても活用できます。

SHL適性検査とSPIの違い

採用で使われる適性検査として、SHLと並んで有名なのがリクルート社が提供する「SPI」です。どちらも優秀な人材を見極めるためのツールですが、その特徴には違いがあります。ここでは、両者の違いを理解し、自社に合ったテストを選ぶためのポイントを解説します。

開発会社と目的の違い

まず根本的な違いとして、開発・提供している会社が異なります。SHL適性検査は前述の通りグローバルな実績を持つ英国のSHL社が、SPIは日本のリクルートマネジメントソリューションズ社が開発しています。SPIは日本企業の採用環境に合わせて開発されており、主に「その人がどんな仕事に向いていて、どのような組織に馴染みやすいか」といった、個人の資質や組織適応性の把握に重点を置いています。

問題の傾向と難易度の違い

問題の傾向にも違いが見られます。SPIは、国語や数学といった基礎的な学力と思考力を測る問題が中心です。一方、SHL適性検査は、よりビジネスシーンに近い実践的な情報処理能力を測る問題が多く、特にGABなどは長文読解や複雑な図表の読み取りが求められ、SPIよりも難易度が高いと感じる受検者が多い傾向にあります。また、SHLはテストの種類が多く、それぞれで出題形式が大きく異なるのも特徴です。

企業側の選び方のポイント

では、企業はどちらを選べばよいのでしょうか。判断のポイントは「採用で何を最も重視したいか」です。幅広い職種を対象に、まずは基礎的な能力と人柄の全体像を把握したいのであれば、SPIが適しているかもしれません。一方で、専門職の採用や、特に高いレベルの論理的思考力・情報処理能力を求めるポジションであれば、GABなどのSHL適性検査が候補者の能力をより深く見極めるのに役立ちます。

SHL適性検査の活用で採用の質を高める

採用におけるSHL適性検査は、単に候補者を絞り込むためのツールではありません。応募者の能力や人となりを多角的に理解し、客観的なデータに基づいて採用判断を下すことで、企業の成長を支える人材の獲得へとつながります。本記事で解説したSHL適性検査の種類や特徴、メリットを正しく理解し、自社の採用戦略や目的に合わせて活用することで、採用活動の質を大きく向上させることが可能です。まずは自社の採用課題を明確にし、どのテストが最適か検討することから始めましょう。


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