• 更新日 : 2025年11月5日

勤怠締め日にやることは?正しい締め処理の方法や作業を効率化するポイントを解説

勤怠締め日の作業は、正確な給与計算を行うために重要です。労働時間の集計から各種手当の確認、法的な要件の遵守まで、多岐にわたるタスクが含まれます。担当者にとっては、毎月決まって訪れる繁忙期であり、ミスが許されないプレッシャーのかかる時期でしょう。

この記事では、勤怠締め日にやることを具体的なステップで解説します。さらに、締め処理でよくある課題と対策、作業を効率化する具体的な方法まで分かりやすく解説します。

そもそも勤怠締め日とは?

勤怠締め日は、給与計算の対象となる労働時間等の勤怠を確定させるための基準日です。

この日を基点として、従業員一人ひとりの労働時間、残業、休暇取得状況などを集計し、給与額を決定します。もし勤怠の締め作業に誤りがあれば、給与の未払いや過払いといった重大な問題に直結するため、正確性が強く求められます。

勤怠締め日から給与支払日までの期間

勤怠締め日から給与支払日までの期間は法的な定めはなく、企業によって10日〜30日程度の幅があります。これは、勤怠データの集計、給与計算、そして金融機関への振込手続きに必要な時間を確保するためです。

たとえば、毎月20日締め・当月末払いや、毎月末締め・翌月25日払いといった形が代表的です。このスケジュールを遵守するためにも、締め日の作業を迅速かつ正確に進めることが不可欠です。

勤怠締め日を早めに設定する理由

多くの会社では、勤怠締め日と給与締め日を同じ日に設定しています。ただし、給与を正確に支払うためには、勤怠データの集計や確認、給与計算に一定の時間が必要です。ただし、給与を正確に支払うためには、勤怠データの集計や確認、給与計算に一定の時間が必要です。そのため、実際の支払日(たとえば月末)より前に勤怠を締めるのが一般的です。たとえば「20日締め・月末払い」の場合、1日〜20日までの勤務分を集計し、21日〜月末の勤務分は翌月分として扱います。このように勤怠締め日を早めに設定することで、給与計算のミスや遅延を防げます。

勤怠締め日にやることは?

勤怠締め日に行うべき作業は、大きく7つのステップに分けられます。

ステップ1. 全従業員の勤怠データを回収する

まず、給与計算の対象期間における全従業員の勤怠データを集めます。この作業が滞ると、その後のすべての作業に影響が出るため、抜け漏れなく回収することが重要です。

企業によって勤怠の記録方法は異なりますが、主に以下のような方法で記録されたデータを回収します。

  • タイムカード:紙のカードに打刻された出退勤時刻を回収します。
  • ICカード・生体認証:勤怠管理システムと連携された打刻データをシステム上から抽出します。
  • PCログ、チャットツール:在宅勤務(テレワーク)などで利用される客観的な記録を確認します。
  • 自己申告:ExcelやGoogleスプレッドシート、あるいは手書きの勤務表などを回収します。全従業員から漏れなく提出・回収できているかを確認することが最初の重要なポイントです。

ステップ2. 打刻漏れ・誤りの確認と修正依頼を行う

次に、回収したデータに打刻漏れや申請不備がないかを確認し、不備があれば従業員本人や上長に修正を依頼します。客観的な記録に基づかない修正は認められないため、必ず本人および承認者による修正手順を経ることが大切です。

打刻漏れを放置すると、正確な労働時間が把握できず、賃金未払いのリスクが生じます。労働安全衛生法および厚生労働省のガイドラインに基づき、使用者には労働時間を客観的に把握する義務があります。

具体的な確認項目
  • 出勤・退勤のどちらか一方しか打刻がない
  • 深夜をまたぐ勤務での打刻が翌日分になっている
  • 直行直帰や出張時の勤務時間が記録されていない
  • 休憩時間の打刻が抜けている

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省

ステップ3. 時間外労働・休日労働・深夜労働時間を集計する

労働基準法に従い、残業(時間外労働)、休日労働、深夜労働の時間を正確に集計します。これらの労働時間には、通常の賃金に加えて割増賃金の支払いが必要となるため、特に慎重な計算が求められます。

労働基準法第37条により、法定時間外労働は25%以上(60時間超は50%以上)、法定休日労働は35%以上、深夜労働は25%以上の割増賃金の支払いが義務付けられています。

集計のポイント
  • 時間外労働:1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた時間
  • 休日労働:週1回の法定休日に勤務した時間
  • 深夜労働:22時から翌5時までの間に勤務した時間

参考:労働時間等の設定の改善|厚生労働省

ステップ4. 有給休暇やその他休暇の取得状況を確認する

年次有給休暇や慶弔休暇、欠勤などの勤怠区分を正しく反映させます。特に有給休暇の管理は、法律で義務化されている年5日の取得義務などもあるため、取得日数や残日数の管理を正確に行う必要があります。従業員から提出された各種休暇申請書と勤怠データを照合し、正しく処理されているかを確認します。

  • 年次有給休暇:取得日数、残日数、時間単位取得の有無などを管理簿に記録します。
  • 欠勤:欠勤控除の計算に必要となります。
  • 特別休暇(慶弔など):有給か無給か、就業規則に基づいて処理します。
  • 休職傷病手当金の申請など、社会保険関連の手続きと連携が必要になる場合もあります。

ステップ5. 各種手当・インセンティブなどを確認する

役職手当や資格手当、通勤手当といった固定手当や、インセンティブなどの変動手当を給与計算に反映させます。

これらの手当は従業員の処遇に直結するため、人事情報や業績データと連携して間違いなく計上する必要があります。

確認する手当の例
  • 役職手当
  • 資格手当
  • 住宅手当
  • 家族手当
  • 通勤手当(実費精算の場合は経費精算システムとの連携も確認)
  • インセンティブ、歩合給

ステップ6. 従業員本人と上長による最終確認と勤怠データの確定

集計・修正が完了した勤怠データを、従業員本人および承認者(主に上長)に確認してもらい、承認を得て勤怠を最終確定させます。承認作業を経ることで、後の認識齟齬といったトラブルを防ぎ、データの正確性を担保します。この最終承認された状態が勤怠確定です。

勤怠管理システムを利用している場合は、システム上で従業員に勤怠内容を確認させ、上長が承認するワークフローを構築するのが効率的です。Excelなどで管理している場合は、印刷して署名・捺印をもらう、あるいはメールで送付して承認の返信をもらうといった方法が考えられます。

ステップ7. 確定した勤怠データを給与計算システムへ連携する

最終確定した勤怠データを、給与計算ソフトやシステムに取り込みます。手入力によるミスを防ぐため、勤怠管理システムからCSV形式などでデータを出力し、給与計算ソフトにインポートする方法が安全かつ効率的です。

連携のポイント
  • フォーマットの確認:勤怠管理システムから出力されるデータの形式と、給与計算ソフトが受け入れ可能な形式が一致しているかを確認します。
  • インポート後の確認:データを取り込んだ後、数名の従業員をサンプルとして抽出し、勤怠データが正しく反映されているかを目視で確認する「検算」作業を行うと、よりミスを減らせます。

勤怠締め作業でよくある課題

勤怠の締め処理では、いくつかの共通した課題が発生します。ここでは、代表的な課題とその対策を解説します。

課題1. 打刻漏れや申請不備が多発する

  • 原因
    従業員の意識の問題だけでなく、打刻しやすい環境が整っていない、申請フローが複雑であるといった原因も考えられます。
  • 対策
    ICカードやスマートフォンで簡単に打刻できる勤怠管理システムを導入する、申請フローを簡略化する、定期的にリマインドを行うなどの対策が有効です。

課題2. 残業時間の計算が複雑で間違えやすい

  • 原因
    法定内残業と法定外残業の区別、深夜や休日労働との重複計算など、手計算ではミスが起こりやすい箇所です。
  • 対策
    割増賃金の計算を自動化できる勤怠管理システムの導入が最も確実な対策です。システムを使わない場合でも、計算ルールをまとめたマニュアルやチェックシートを用意することが重要です。

課題3. 法改正への対応が追いつかない

  • 原因
    働き方改革関連法など、労働時間に関する法改正は数年ごとに行われます。最新の法令を常に把握し、計算ルールに反映させる必要があります。
  • 対策
    クラウド型の勤怠管理システムは、法改正時に自動でアップデートされるため、対応漏れを防げます。また、厚生労働省のウェブサイトや専門家からの情報を定期的に確認する体制も大切です。

課題4. 締め処理を忘れた場合のリスク

  • 原因
    担当者の多忙や失念により、締め処理の開始が遅れるケースです。
  • 対策
    締め処理を忘れた、または遅れた場合、給与計算のスケジュール全体に遅延が生じ、最悪の場合は給与の支払遅延(労働基準法第24条違反)につながる恐れがあります。これを防ぐためには、カレンダーツールでのリマインダー設定、複数担当者制によるダブルチェック体制の構築などが重要です。

勤怠締め日のミスを防止するためのチェックリスト

給与計算へデータを渡す前に、以下の項目を最終確認することをおすすめします。

チェック項目確認内容
データ回収全従業員の勤怠データが揃っているか?
(退職者・休職者も含む)
打刻・申請打刻漏れ、申請漏れはないか?
不自然な長時間労働や打刻時間はないか?
休暇申請はすべて処理済みか?
時間集計残業時間(法定内・法定外)の集計は正しいか?
休日労働・深夜労働の割増計算は正しいか?
36協定で定められた残業時間の上限を超過していないか?
承認プロセス従業員本人による勤怠内容の確認は完了しているか?
上長による承認は得られているか?
その他月の途中で入社・退社した従業員の勤怠は日割り計算されているか?
雇用形態(正社員、パート、アルバイト)に応じた労働時間の管理ができているか?

勤怠締め日の作業を効率化するための方法

毎月の負担を軽減し、より正確な締め作業を実現するために、以下の方法が考えられます。

1. 勤怠管理システムを導入・活用する

勤怠管理システムの導入により、打刻から集計、給与計算ソフトへの連携までを自動化でき、手作業によるミスや工数を削減できます。

主な機能
  • ICカードやスマートフォンアプリで簡単に打刻できる
  • 打刻漏れを自動でアラート通知できる
  • 残業時間や有給休暇の残日数を自動で計算・管理できる
  • 法改正時にシステムが自動でアップデートされる
  • リアルタイムで労働時間を可視化できる

2. 従業員への周知と社内ルールを徹底する

勤怠に関する社内ルールを明確に定め、全従業員に周知徹底することが重要です。

なぜ正確な打刻が必要なのか、締め日までに何をすべきかを理解してもらうことで、担当者の確認・修正作業の負担が軽減されます。

周知すべきルールの例
  • 打刻のタイミング(始業時・終業時、休憩開始・終了時)
  • 打刻を忘れた場合の申請フローと期限
  • 残業や休日出勤の事前申請ルール
  • 勤怠の確認・承認の期限(例:締め日の翌営業日まで)

3. Excelやスプレッドシートの関数・テンプレートを活用する

費用を抑えて効率化を図りたい場合、ExcelやGoogleスプレッドシートのテンプレートや関数を活用する方法も有効です。勤怠管理用のテンプレートを配布したり、VLOOKUP関数やSUMIF関数などを活用して集計を半自動化したりすることで、手計算よりもミスを減らし、時間を短縮できます。

ただし、法改正への対応やデータ管理が特定の人に依存しがちになる点には注意が必要です。

4. マニュアルを作成し、業務を標準化する

勤怠締めの一連の作業フローをマニュアルとして文書化し、業務を標準化することも有効です。担当者が複数人いる場合の作業品質を均一化できるほか、担当者が急に休んだり、退職したりした場合でも、スムーズな引き継ぎが可能になります。フローチャートやスクリーンショットを用いて、誰が見ても分かるように作成するのが良いでしょう。

勤怠締め日の作業を確実に進め、正確な給与計算につなげよう

勤怠締め日にやることは、従業員の生活を支える給与を正確に計算するための、非常に重要な作業です。一連の作業には、勤怠データの回収、打刻漏れの修正、各種労働時間の正確な集計、そして法的な要件の遵守が求められます。毎月の煩雑な締め作業をミスなく効率的に進めるためには、勤怠管理システムの導入や、社内ルールの整備が大きな助けとなります。本記事で紹介したタスクリストやチェックリストを活用し、勤怠締め作業の正確性と効率性の向上につなげてください。


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