- 更新日 : 2025年9月22日
安全管理者の役割とは?仕事内容、資格の取り方から巡視頻度までわかりやすく解説
安全管理者という言葉を聞いたことはあっても、具体的な仕事内容や、どのような場合に選任が必要なのか、どうすればなれるのか、正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、安全管理者の基本的な役割から、選任が義務付けられる事業場の条件、必要な資格の取り方、そして混同されやすい安全管理士との違いまで、詳しく解説します。職場の安全体制を強化したい経営者や担当者の方は、ぜひご一読ください。
目次
安全管理者とは
安全管理者とは、労働安全衛生法に定められた、事業場の安全に関する技術的な事項を管理する責任者のことです。主な目的は、機械設備や作業方法に潜む危険性を見つけ出し、労働災害の発生を防ぐための対策を講じることにあります。
事業主は、法律で定められた特定の業種と規模の事業場において、必ず安全管理者を選任し、職場の安全を確保する体制を整えなければなりません。
安全管理者の主な仕事内容
安全管理者の仕事は多岐にわたりますが、中心となるのは以下の業務です。
- 建設物、設備、作業場所、作業方法の危険性に対する防止措置
- 安全装置や保護具の定期的な点検
- 安全に関する教育や訓練の実施
- 労働災害の原因調査と再発防止策の立案・実行
- 関連する記録の作成と保管
これらを通じて安全管理を徹底し、従業員が安心して働ける環境を維持します。
安全管理者と安全管理士の違い
ここで注意したいのが、安全管理者と安全管理士の違いです。
- 安全管理者
労働安全衛生法で定められた、特定の事業場で必ず選任しなければならない公的な立場です。なるためには国の定める要件を満たす必要があります。 - 安全管理士
一般社団法人などが認定する民間の資格です。安全管理に関する知識を証明するものですが、この資格だけでは法律で定められた安全管理者に就任することはできません。
安全管理者の選任義務
安全管理者の選任は、労働安全衛生法第11条によって企業の義務とされています。選任事由の発生日から14日以内に選任を済ませ、ただちに所轄の労働基準監督署長へ報告書を提出する義務があります。
安全管理者を選任しない場合、労働安全衛生法第120条に基づき、事業者には50万円以下の罰金が科されることがあります。
安全管理者の対象となる業種と規模
安全管理者の選任義務は、製造業・電気業・ガス業など政令で指定された業種に限り、常時50人以上の労働者を使用する事業場に適用されます。
- 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業
- 製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業
- 各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、燃料小売業
- 旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
自社がこれらの条件に該当するかどうかを正確に把握し、必要な措置を講じることが求められます。
安全管理者になるための資格の取り方
安全管理者は、厚生労働大臣の定める研修(安全管理者選任時研修)を修了した者で、次のいずれかに該当するもの又は労働安全コンサルタントであることが必要です。
- 大学または高等専門学校の理科系統の正規の課程を卒業し、2年以上の実務経験がある
- 高等学校または中等教育学校で理科系統の正規の学科を修了し、4年以上の実務経験がある
- その他、厚生労働大臣が定める者(7年以上の実務経験者で特定の講習を修了した者など)
理科系の課程には、工学部、理学部、農学部、医学部、薬学部などが該当します。
安全管理者による職場巡視の内容
職場巡視は、計画だけでは見えない現場のリアルな危険を発見する絶好の機会です。機械の安全カバーが正しく使われていない、通路に物が置かれているといった問題を直接確認し、その場で是正を指導することで、事故を未然に防ぎます。
労働安全衛生規則第6条は、安全管理者に「危険のおそれがあるときは直ちに必要な措置を講じるため作業場を巡視すること」を求めていますが、巡視頻度までは規定していません。頻度は事業者がリスクの大きさや事業場の状況に応じて決めるとされています(衛生管理者には「少なくとも毎週1回」の義務がありますが、安全管理者にはありません)。
- 機械や設備の安全装置が有効に機能しているか
- 作業手順が正しく守られているか
- 保護具(ヘルメット、安全靴など)が適切に着用されているか
- 作業場所の整理整頓(4S)は行き届いているか
- 化学物質などの危険物の管理は適切か
これらのポイントを体系的にチェックし、危険箇所を一つひとつ改善していく地道な活動が、職場の安全レベルを向上させます。
安全管理者は職場の安全を守る重要な存在
本記事では、安全管理者の役割、選任義務、資格要件、そして具体的な業務内容について詳しく解説しました。
安全管理者は、専門的な知見から事業場の安全に関する技術的事項を管理し、労働災害の防止という重大な責務を担っています。安全管理者を選任することは、法律で定められた義務であると同時に、従業員の安全と健康を守り、企業の持続的な成長を支えるための重要な取り組みです。
対象となる事業場は、法令を遵守し、適切な人材を選任・育成することが求められます。また、安全管理者を中心に、経営層から現場の従業員まで、組織全体で安全意識を高め、誰もが安心して働けるような職場環境を整えていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
人事評価にAIは活用!プロンプト集・メリット・デメリット、企業のツール導入事例など
近年、多くの企業が人事評価にAI(人工知能)を活用し始めています。AIは大量のデータ分析やパターン認識が得意のため、人間では難しい公平かつ迅速な評価ができます。この記事では、人事評価にAIを導入することは可能なのか、メリットやデメリットを含…
詳しくみる就業規則の適用範囲の記載例|厚生労働省のモデルに準拠したテンプレートを無料配布
就業規則は、従業員の労働条件や会社内の規律などを定める上で不可欠な規定です。その中でも「この規則は、誰に適用されるのか」を定める適用範囲の条項は、労務トラブルを未然に防ぐための根幹と言えます。 適用範囲の定めが曖昧だと、「この手当はパートタ…
詳しくみる労働安全衛生法の概要、2025年の改正をわかりやすく解説
労働安全衛生法(安衛法)は、職場で働くすべての人の安全と健康を守るための重要な法律です。しかし、その内容は多岐にわたり、専門用語も多いため、「自社にどのような義務があるのか」「最近の法改正にどう対応すればよいのか」など、戸惑いを感じる経営者…
詳しくみる会社の定期健康診断は義務!受けないとどうなる?対象者や項目、罰則などを徹底解説
会社の定期健康診断は、労働安全衛生法によって事業者に課された重要な義務です。しかし、「どこまでの範囲が義務?」「パートも対象になるの?」「もし受けなかったらどうなる?」といった具体的な疑問を持つ事業者や従業員の方は少なくありません。 この記…
詳しくみる再就職手当(再雇用手当)とは?もらえる条件や金額、期間、デメリットなども解説
再就職手当(再雇用手当)とは、失業後に早期再就職した方に支給される経済的な支援制度です。この記事では、再就職手当の受給条件、支給額の計算方法、申請方法や必要書類、審査時の注意点などを詳しく解説します。最大限の手当を受け取るためのポイントや、…
詳しくみる退職後に必要な年金手続きは?ケースごとに流れや準備するものを解説
退職後は、厚生年金や国民年金への加入に関する手続きが必要です。ただし、退職時の状況や年齢に応じて、手続きが異なることがあります。とくに、年齢が60歳以上の方は任意加入の手続きを検討することも重要です。スムーズに手続きするために、必要な書類や…
詳しくみる