• 更新日 : 2025年8月27日

振替休日は会社が強制できる?違法性や拒否する場合、代休との違いも解説

会社から「この日は振替休日にして」と一方的に指定されて戸惑ったことはないでしょうか。また、会社側も、業務上の都合で振替休日を指示する際に、どこまで強制力が及ぶのか悩む場合があるでしょう。

休日出勤の振替として休日をとることは法律上認められていますが、その運用方法には注意が必要です。本記事では、振替休日を会社が強制できるのか、拒否できるのか、代休との違いは何かなど、制度の仕組みやトラブル防止のポイントをわかりやすく解説します。

振替休日は会社が強制できる?

振替休日は、会社が就業規則などで定めた条件を満たし、かつ、労使間で合意された振替休日制度に基づく適切な手続き(事前の指定・通知など)を経て行う場合に限り、従業員にその取得を求めることができます。ただし、事後的な通知や一方的な決定はトラブルの原因となり、場合によっては違法と判断されることもあります。

振替休日とは?

振替休日とは、休日と定められていた日に従業員を勤務させる代わりに、他の労働日を休日に振り替える制度です。これは労働基準法第35条の趣旨に基づき、行政解釈や通達によって認められている休日の運用方法の一つです。

例えば、日曜日が法定休日となっている会社で、急な業務対応のため日曜出勤が必要になった場合、その週の水曜日を事前に振替休日として指定すれば、日曜日の出勤は通常労働扱いとなります。

この場合、日曜日の労働は通常の労働として扱われ、休日出勤にはなりません。そのため、原則として休日出勤に対する割増賃金は発生しません。

振替休日として認められるには、次の2点が必須です。

  • 就業規則に制度として明記されていること
  • 休日出勤の前日までに振替日を特定し、明確に通知すること
  • 振替によっても労働基準法上の法定休日が確保できること

これらが不十分な場合、「後日休みを取らせる」対応は振替休日ではなく「代休」に分類され、従業員の同意がなければ強制力を持ちません。

参照:e-GOV 法令検索

会社の指示に従う義務はあるか

振替休日を会社が指定できるかどうかは、就業規則の内容に基づきます。「業務上の必要がある場合、会社が振替休日を指定できる」といった条項が就業規則に盛り込まれていれば、会社が事前に振替日を指定することは就業規則上の根拠を持つため、原則として有効とされます。

この場合、従業員は会社の指示に原則として従う必要がありますが、その命令が不合理である場合や、労働者の生活に著しい支障をきたす場合には、その限りではありません。企業側は、事前に定めたルールと周知の義務を果たすことで、正当な形で振替休日を運用できます。

一方で、休日出勤の後に会社が後付けで「この日を休みにして」と伝える場合は、法的には代休の扱いになります。代休は就業規則等に規定がある場合のみ取得させることが可能です。この点を混同すると、給与トラブルや労務紛争の原因になるおそれがあります。

振替休日の強制が違法とされる場合

振替休日は、労働時間の調整を目的とした有効な手段ですが、その運用方法を誤ると、労働基準法違反とみなされる可能性があります。どのようなケースが違法と判断されるのか、具体的に理解しておきましょう。

1. 「いつ休むか」の約束を事前に交わしていない時

振替休日を有効に成立させるためには、休日出勤させる日よりも前に、いつの休日といつの労働日を入れ替えるのかを具体的に特定し、労働者に通知することが必須です。法的には口頭での通知でも有効と解釈されますが、後々のトラブル防止のためには、書面やメールなど証拠が残る形で通知することを強く推奨します。

もし、休日出勤後に「今日休んでいいよ」といった形で事後的に休日を指定したり、事前の通知なしに振替休日を命じたりした場合は、それは振替休日ではなく「代休」とみなされます。代休であれば、休日出勤そのものに対して割増賃金が発生するため、もし支払っていなければ違法となります。

2. 1週間以上連続で働かせてしまう時

労働基準法35条では、労働者に対して少なくとも「週に1回」、または「4週間に4回以上」の休日(法定休日)を与えることを義務付けています。振替休日を設定する場合も、この法定休日の原則を破るような運用は違法とされます。

これは、法定休日を振り替えた結果、「連続して1週間以上労働させることになった場合」があてはまります。たとえ振り替え休日を別日に与えていたとしても、間に法定休日が置かれなかったこと自体が問題となります。

例えば、法定休日である日曜日を火曜日に振り替えたものの、その翌週まで連続して勤務が続いた場合、結果として1週間以上連続で労働させることになります。たとえ別日に振替休日を与えていたとしても、間に法定休日が設けられていないため、法定休日が確保されていない違法な振替を行ったことになります。

このような連続勤務が多く発生すれば、労働基準法違反と見なされ、割増賃金の未払いに加えて是正勧告の対象となるおそれもあります。振替休日を設定する際は、カレンダー上で法定休日が確実に確保されているかどうかを必ず確認する必要があります。

3. 「この日に休め」という指示が常識外れな時

振替日の指定は、業務上の必要性に基づいて行われますが、あまりにも不合理な指定は、権利の濫用とみなされる可能性があります。例えば、労働者の生活に著しい支障をきたすような急な通知や、あまりにも遠い未来の振替日の指定などは、問題となることがあります。

労働者が健康上の理由や家庭の事情などでどうしても指定された日に休めない場合、会社は可能な限り労働者の意見を尊重し、代替日を検討する努力が求められます。一方的な指定は、労働者との信頼関係を損ねる原因にもなりかねません。

4. 残業代(割増賃金)を支払っていない時

振替休日を適切に設定した場合でも、週の法定労働時間(原則40時間)を超過した部分については、時間外労働として割増賃金(25%以上)を支払う義務があります。

例えば、週休2日制の会社で土曜日が出勤日、日曜日が法定休日だとします。日曜日を火曜日に振り替えて出勤した場合、日曜日の出勤は通常の労働となり、火曜日が休日となります。

この場合、休日労働の割増賃金は発生しませんが、もしその週の総労働時間が法定労働時間である40時間を超えた場合、その超過した時間には時間外労働として25%以上の割増賃金が必要です。この割増賃金を支払わない場合は、労働基準法違反となります。

5. 会社のルール(就業規則)に書いていない時

振替休日の制度を導入・運用する際は、その内容を就業規則に明文化しておく必要があります。就業規則に規定がなければ、会社が一方的に振替休日を命じても従業員にとって「従うべき義務」が明確ではなくなり、会社の指示が無効とされる可能性が高まります。 記載しておくべき内容は以下のようなものです。

  • 振替休日の対象となる日と条件
  • 振替の手続き(事前通知の時期・方法など)
  • 振替日の指定方法
  • 賃金の取扱い(割増賃金の要否など)

就業規則の変更には、労働者代表の意見聴取が必要であり、会社は労働者代表の意見を聴き、その意見書を添付して届け出る必要がありますが、その意見に同意が得られなくとも、変更自体は会社の一存で行うことができます(ただし、合理性のない不利益変更は無効となる場合があります)。

未整備のまま制度を運用している企業では、今一度見直しが求められます。

振替休日を強制されたときは拒否できる?

会社から振替休日を強制されたと感じた場合、従業員はどのように対応すれば良いのでしょうか。一方的に指定された振替休日を拒否できるのか、また、その場合の対応方法について解説します。

振替休日命令が適法であれば原則従う義務がある

会社が就業規則に基づき、適法な手続きを踏んで振替休日を命じた場合、従業員は原則としてそれに従う義務があります。もし従業員が正当な理由なく振替休日を取らなかった場合、欠勤扱いとなり、賃金が支払われない可能性があります。さらに、就業規則に違反したとして、懲戒処分の対象となるリスクも考えられます。

しかし、もし会社の振替休日命令が違法なものであったり、不合理なものであったりする場合には、従業員に不利益が生じることは避けなければなりません。その判断が難しい場合は、後述する専門機関への相談を検討しましょう。

拒否する場合は理由の説明と代替案を提示する

振替休日を拒否したい場合、「休みません」と伝えるのではなく、合理的な理由を会社に説明し、可能であれば別の日程を提案するなど、建設的な対応が求められます。

例えば、「その日は重要な社外会議がある」「家庭の事情で対応が困難」など、具体的な根拠があれば会社側も柔軟な対応を取りやすくなります。また、やり取りは口頭だけでなく、メールなど記録に残る形で行いましょう。

会社が従業員の正当な理由や代替案の提案を無視し、一方的に不合理な振替休日を強制するようであれば、次のステップに進む必要があります。

有給休暇の取得で対応できる場合もある

会社の振替休日命令が不当であると感じた場合、自ら有給休暇を申請するという選択肢もあります。

振替休日と有給休暇は、どちらも「休む権利」に関わるものですが、その性質は全く異なります。

振替休日

休日と労働日を交換するものであり、基本的に賃金が減ることはありませんが、会社が指定する性質が強いです。

有給休暇

労働基準法で保障された労働者の権利であり、労働者が「時季指定権」を行使して取得できます。有給休暇を取得しても賃金は、原則として所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、平均賃金または健康保険法上の標準報酬日額に相当する額のいずれか就業規則で定められた方法により支払われるため、賃金が減ることはありません。その日を休むことによって労働義務が免除されます。

従業員は、会社の振替休日命令が不適切だと感じる場合、自身の有給休暇を取得することを検討することもできます。しかし、有給休暇の取得は労働者の権利ではありますが、会社には「時季変更権」があるため、事業の正常な運営を妨げる場合は別の日に変更を求めることができる点には注意しましょう。

解決できない場合は労働基準監督署に相談する

会社による振替休日の強制が、労働基準法に違反すると思われる場合や、従業員が話し合いをしても解決しない場合は、労働基準監督署に相談することを検討しましょう。労働基準監督署は、労働基準法などの労働関係法令に違反している事実がある場合に、事業主に対して是正勧告や指導を行う公的機関です。

相談する際には、これまでの経緯や会社の対応、記録などを具体的に説明できるように準備しておきましょう。これにより、適切なアドバイスやサポートを受けることができるでしょう。また、労働組合に加入している場合は、組合に相談することも有効な手段です。

振替休日を拒否されたときの会社の対応策

会社が振替休日を従業員に命じたにもかかわらず、従業員から拒否された場合、どのように対応すべきでしょうか。「従わない」と突っぱねるのではなく、法的な観点と職場の信頼関係を両立させる対応が求められます。

代替案を提示して柔軟に対応する

従業員が振替休日を拒否する背景には、業務都合や家庭事情など、何らかのやむを得ない理由があるはずです。会社は、従業員の拒否理由を丁寧に聞き取り、可能な限りその事情に配慮した代替案を提示しましょう。

例えば、以下のような代替策が考えられます。

  • 別の振替日を提示する: 従業員が休めない理由を考慮し、他の日付で振替休日を設定できないか検討します。
  • 代休での対応も視野に入れる: どうしても事前振替が難しい場合は、休日出勤後に代休として休日を与え、その分の割増賃金を支払うことも選択肢となります。
  • 有給休暇の利用を促す: 従業員が有給休暇の残日数がある場合、本人の希望に応じて有給休暇の取得を促すことも考えられます。

代替案の提示により、従業員の不信感や反発を和らげ、制度への理解と協力を得やすくなります。

日頃から勤務調整をしやすい体制を整える

トラブルを未然に防ぐためには、振替休日や休日出勤の必要性が生じた際に、一方的な命令となることを避けるため、日頃から勤務調整を柔軟に行う体制を構築しておきましょう。

  • シフト制の導入: 業種によっては、シフト制を採用することで特定の従業員に業務が集中するのを防ぎ、計画的に休暇を取得できるようになります。
  • 多能工化の推進: 従業員が複数の業務に対応できるよう育成しておけば、誰かが休んでも他のメンバーで業務を補完しやすくなります。
  • 業務の標準化: 属人化を減らし、業務をマニュアル化・共有化することで、誰でも対応可能な体制が築け、急な勤務調整にも対応しやすくなります。

トラブルを防ぐための制度設計を行う

振替休日に関する認識の違いから生じるトラブルを防ぐには、制度そのものを明確に整備しておくことが不可欠です。

就業規則に制度を明記する

振替休日や代休の定義、対象者、取得条件、申請方法、給与の扱いまで、具体的な運用ルールを盛り込みましょう。

運用ガイドラインを策定する

就業規則に加え、従業員向けのガイドラインやQ&A形式の資料を作成して周知することで、実務上の混乱を防げます。

労使協定(36協定)の見直し

時間外労働や休日労働の上限が現状に合っているかを定期的に見直し、必要に応じて改訂を行いましょう。

これらの制度を従業員に周知し、理解を促すことで、「強制された」という認識を減らし、納得感を持って制度を利用してもらえるようになります。

振替休日の必要性を丁寧に説明する

従業員に振替休日が必要となる背景や目的、制度の意義について、従業員に対して丁寧に説明しましょう。

なぜその日が振替休日なのかを説明する

業務上の必要性や業務量の偏りなど、背景事情を率直に伝えましょう。

制度の特徴とメリットを伝える

振替休日を使えば割増賃金の発生を抑えられる点や、業務負担の平準化が可能になることなどを正確に共有します。

対話の場を設ける

従業員からの疑問や不安に耳を傾け、納得感を持って制度を受け入れてもらえるよう、質疑応答の時間を積極的に設けましょう。

一方的な通知や命令ではなく、対話を通じて納得感を得てもらうことで、従業員のモチベーション維持や会社へのエンゲージメント向上にもつながります。

振替休日と代休との違い

振替休日と代休はどちらも休日出勤に関連して発生する休日ですが、法的な意味合いや賃金の計算方法に大きな違いがあります。

項目振替休日代休
発生のタイミング休日出勤の「前」に休日と労働日を入れ替える休日出勤の「後」に休日を与える
法的根拠法律上の規定はなく、就業規則の定めに基づく法的義務はなく、就業規則や労使協定に基づく
割増賃金の支払い原則不要(通常労働扱い)必須(休日出勤のため35%以上)
就業規則への記載明記が必要明記が望ましい
労働者の同意不要(就業規則に基づく)不要(就業規則に定めがあれば強制的代休も可能)
給与の扱い通常の労働と同様、減額なし出勤日は割増賃金、代休日は無給・有給は企業判断

振替休日と代休の給料の扱い

振替休日は、事前に休日と労働日を交換することを指します。例えば、日曜日に出勤する代わりに、その前の水曜日を休日にするといったケースです。この場合、元々の休日が労働日に、元々の労働日が休日になるため、休日出勤にはならず、通常の労働として扱われます。そのため、原則として休日出勤に対する割増賃金は発生しません。ただし、交換後の労働日が週40時間を超える場合は時間外労働となり、割増賃金が必要です。

一方、代休は、休日出勤をした後に、その代償として別の労働日に休日を与えることを指します。これは、あくまで休日出勤が先に発生し、その後に通常の労働日を休みにするという事後的な措置です。代休は、法律上与える義務があるわけではなく、労使協定や就業規則に定めがある場合にのみ発生します。代休の場合、休日出勤をした事実自体は変わらないため、その休日出勤に対する割増賃金は支払われる必要があります。

給料が減るケースはある?

振替休日を適切に取得した場合、基本的には給料が減ることはありません。なぜなら、事前に休日と労働日を交換するため、総労働時間数が変わらないためです。しかし、会社が振替休日として指定した日に、従業員が個人的な理由で出勤した場合などは、その分の給料が支払われない可能性もあります。

また、振替休日が適切に運用されず、結果的に週の法定労働時間を超えたにも関わらず割増賃金が支払われないケースでは、実質的に労働に対する対価が減っているともいえるでしょう。

割増賃金が必要になる場合

振替休日は、休日出勤に対する割増賃金の支払いを回避する目的で利用されることがありますが、常に割増賃金が不要となるわけではありません。

  • 法定休日の振替: 法定休日(週1回または4週4日の休日)を他の労働日に振り替えた場合、振り替えられた労働日は通常の労働日となるため、休日労働としての割増賃金は発生しません。
  • 週40時間を超えた場合: 休日出勤により、振り替えられた週の総労働時間が週40時間を超えた場合は、その超えた時間について時間外労働としての割増賃金(25%以上)が発生します。

代休の場合は、休日出勤自体が成立しているため、必ず休日出勤に対する割増賃金(35%以上)が発生します。

振替休日の強制には法令順守と配慮が欠かせない

振替休日を「強制された」と感じる場面は、従業員との間に誤解や不信を生みがちです。制度の目的や法的枠組みを理解せずに一方的な運用を行えば、割増賃金の未払いなど法令違反となるリスクもあります。

振替休日は、事前に休日と労働日を入れ替えることで、週休を確保しつつ割増賃金を抑えられる有効な制度です。ただし、就業規則への明記や事前通知、法定休日の確保といった条件を満たす必要があります。

従業員が命令に疑問を持った場合は、まず制度が適法に運用されているかを確認し、代替案の提示など、冷静な対話を心がけることが大切です。解決が難しい場合は、労働基準監督署への相談も選択肢となります。

企業側は、透明性と柔軟性のある運用を徹底し、説明責任を果たすことで、信頼される労務管理を実現できるでしょう。



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