• 更新日 : 2025年8月27日

振替休日を土曜日に設定できる?企業の休日運用のルールと注意点

休日出勤の振替休日を、土曜日に設定してもいいのだろうか?」企業の経営者や労務担当者の方であれば、一度は考えたことがある疑問かもしれません。
振替休日を土曜日に設定できるかどうかは、その土曜日が貴社にとって「労働日」か「休日」かによって決まります。振替休日の仕組みをきちんと理解していないと、気づかないうちに法令違反や給与計算のミスにつながるかもしれません。
この記事では、振替休日を土曜日に設定できるケースとできないケースを明確にし、その基本的なルールから、代休との違い、実務上の注意点までをわかりやすく解説します。

振替休日を土曜日に設定できる?

振替休日を土曜日に設定できるかどうかは、企業の就業規則においてその土曜日が「労働日」とされているかどうかで決まります。たとえば、隔週で土曜出勤がある企業や、変形労働時間制を採用して土曜を所定労働日にしているケースでは、土曜日を振替休日として設定できます。一方で、完全週休2日制などで土曜がもともと「休日」とされている企業では、振替休日として扱うことはできません。

振り替え休日を土曜日に設定できるケース

振替休日を土曜日に設定できるのは、その土曜日が就業規則で「労働日」と定められている企業です。たとえば、以下のようなケースがあてはまります。

  • 週休1日制(日曜日のみ休日)の企業
  • 隔週週休2日制で、第2・第4土曜が出勤日の企業

これらの企業では、日曜日に休日出勤をさせた場合、その代わりに労働日である土曜日を休日として振り替える、といった運用ができます。これは、振替休日がもともと「働く日」と「休みの日」を交換する仕組みだからです。

振り替え休日を土曜日に設定できないケース

一方で、完全週休2日制(土日祝休み)のように、就業規則で土曜日が「休日」(多くは所定休日)と定められている企業では、振替休日を土曜日に設定することはできません。
たとえば、以下のような企業では該当しません。

  • 完全週休2日制(毎週土日が休み)を導入している
  • 就業規則で土曜・日曜・祝日をすべて休日と定めている

こうした企業では、土曜日はもともと出勤義務のない日=「休日」のため、別の勤務日と入れ替える対象にはなりません。振替休日は「働く日を休みにする」制度であるため、「すでに休みの日」をあらためて振替休日に設定することは制度の趣旨に合致しません。

振替休日の制度とは?

振替休日とは、事前に「休日と勤務日を入れ替える」ことで、休日に勤務させる代わりに別の日を休みに変更する制度です。労働基準法では、「あらかじめ就業規則その他の根拠により定められていること」「事前に振替日を特定し通知しておくこと」が求められます。
一方、代休は「休日労働を行った後」に、その埋め合わせとして休日を与えるもので、性質が異なります。

例として、土曜日が出勤日とされている企業が、日曜に業務を命じ、その代わりに土曜を休みにすることを事前に決めていれば、それは振替休日となります。しかし、事前の振替がなされず、日曜出勤の後から「次の土曜は代わりに休みにしよう」と判断する場合は、代休の取り扱いになります。
このように、制度の違いと運用方法を理解しておくことで、就業規則上の整合性と実務的なトラブルの予防につながります。
出典:振替休日と代休の違いは何か。|厚生労働省

振替休日を土曜日に設定する際の注意点

就業規則上、土曜日が労働日であっても、振替休日として運用する場合には、給与計算や労働時間管理、従業員への対応方法に関して見落とせない注意点があります。ここではとくに実務でつまずきやすい3つのポイントを確認しましょう。

週をまたぐ振替は割増賃金が発生することがある

振替休日を設定したつもりでも、実際の労働時間が週の基準を超えると、時間外労働として扱われる場合があります。

たとえば、週休1日制を採用している企業で、日曜日に従業員を出勤させ、翌週の土曜日(労働日)を振替休日にしたとします。この場合、出勤した週には6日間の勤務が発生し、合計労働時間が40時間を超えると、超過分については25%以上の時間外割増賃金を支払う必要が出てきます。

振替休日を設定したからといって「労働時間が帳消しになる」わけではありません。週単位での労働時間管理を徹底しなければ、意図せず未払い残業が発生してしまうおそれがあるため、勤怠管理システムの設定や36協定の確認も含めた対応が求められます。

給与計算の締め日をまたぐと勤怠管理が複雑になる

振替休日を給与締め日をまたいで設定すると、実務上、2か月にまたがって勤怠や給与の計算が煩雑になることがあるため注意が必要です。また、この場合には労働基準法によって定められた賃金全額払いの原則にも注意しなければなりません。

たとえば、3月30日(日曜・法定休日)に出勤し、その振替休日を4月12日(土曜・労働日)に設定したとします。このケースでは、3月分の給与計算において30日は勤務日として処理され、労働時間が加算されます。一方で、4月12日は休日扱いとなり、4月分の給与では労働時間がその分減ることになります。

このように振替日が翌月にずれ込むと、月をまたいだ正確な労働時間の把握と給与集計が必要となります。勤怠管理システムでの設定ミスや担当者間の連携不足があると、計上ミスや誤支給につながるおそれもあるため、社内での周知や業務フローの明確化が欠かせません。

従業員への通知と配慮を忘れずに

振替休日の設定は、就業規則に明記されていれば会社の業務命令として行うことができます。ただし、一方的な運用では現場の不満やトラブルを招きかねません。
法的には、振替休日の設定にあたり従業員の同意までは不要とされていますが、休日出勤を指示したうえでの対応となるため、納得感を持ってもらうための工夫が求められます。

「なぜこの日が振替になるのか」「業務上の必要性は何か」といった説明を丁寧に行い、可能な範囲で希望日を聞くなど、柔軟な配慮や声かけが重要です。

また、振替日の通知は遅くとも振替前までに明示することが法的に求められるため、メールや勤怠システムでの通知ログを残しておくとトラブル防止にもつながります。

シフト勤務でも土曜日を振替休日にできるのか?

シフト勤務でも、土曜日を振替休日に設定することは可能です。ただし、その土曜日が「その人にとっての労働日」であるかどうかによって、制度の適用可否が変わります。

シフト制では、同じ土曜日でもAさんは出勤日、Bさんは休日というように個別に勤務が設定されています。この場合、土曜を振替休日とするには、あらかじめその日が出勤予定日である必要があります。たとえば、日曜日に出勤し、その翌週の土曜日がAさんの出勤日なら、その土曜日を振替休日に設定できます。

一方で、Bさんのようにその土曜日がもともと休日である場合は、振替休日に設定することはできません。振替休日は、労働日を休みに変更する制度であり、最初から休みだった日には適用できないためです。

元々休みだった場合は、シフト調整と事前相談が必要

もし振替休日として設定したい土曜日が、従業員にとって休日だった場合は、以下のように対応します。

  1. 本人に相談し、土曜日を一時的に出勤日としてシフト修正することを説明する。
  2. 本人が了承すれば、シフト表を修正し、その日を労働日として記録する。
  3. 修正後、その土曜日を振替休日として正式に指定する。

例:「日曜出勤分の振替として、来週の土曜を出勤日に変更し、その日を休みにする運用で調整できるか」など。
確認は、勤怠システムやメール、書面など記録が残る形で行います。
この順序が曖昧だと、制度上正しい運用とはみなされない可能性があります。

代休を土曜日に設定する場合はどうなる?

休日出勤の後で休みをとる「代休」も、振替休日と同じように土曜日に設定できるのでしょうか。ここでもルールは同じです。
代休は、休日出勤の代わりとして事後に休日を与える制度です。振替休日と同じく、設定できるのはその土曜日が「労働日」である場合に限られます。もともと休日である土曜日を代休に設定することはできません。
代休と振替休日の決定的な違いは、手続きのタイミングと割増賃金の扱いです。

項目振替休日代休
タイミング事前に休日と労働日を入れ替える休日労働の事後に代わりの休日を与える
割増賃金不要(法定休日に労働したことにならないため)※必要(法定休日に労働した事実は変わらないため35%以上)

※週の労働時間が40時間を超えた分の時間外手当(25%以上)は別途必要
急なトラブル対応などでやむを得ず休日出勤が発生した場合は、事後的に休みを与える「代休」で対応することになります。
その際は、法定休日の労働に対して35%以上の割増賃金を支払う必要があることを、忘れないようにしましょう。

【番外編】国民の祝日が土曜日だとなぜ振替休日にならないのか?

ところで、そもそも「祝日が土曜日に重なると、なぜ振替休日がないのか」と疑問に思う方も多いでしょう。2025年も5月3日(憲法記念日)が土曜日ですが、振替休日はありません。これは、祝日法に定められた振替休日のルールが関係しています。

祝日法で定められた振替休日の条件

祝日法では、振替休日が発生する条件を「国民の祝日が日曜日に当たるとき」と明確に定めています。条文に「土曜日」についての言及はないため、祝日が土曜日に重なっても、法律上の振替休日は発生しないのです。
出典:国民の祝日に関する法律|e-Gov法令検索

振替休日制度が導入された歴史

この制度は、1973年の法改正で導入されました。当時は週休1日制(日曜日のみ休み)が一般的であり、祝日が日曜日に重なると休みが減ってしまう不公平感をなくすことが目的でした。土曜日は多くの企業で労働日だったため、振替休日の対象とはならなかったのです。制度が作られた頃と今とでは、社会の状況が違っているのですね。

振替休日と土曜日の運用ルールを理解し適切な労務管理へ

本記事では、振替休日を土曜日に設定するためのルールと注意点について解説しました。振替休日を土曜日に設定できるかは、自社の就業規則で土曜日が「労働日」か「休日」かによって決まります。

休日を労働日に振り替えることはできません。この基本的な考え方と、振替休日は「事前」に、代休は「事後」に行うという違いをきちんと理解しておくことが大切です。自社の就業規則と法律のルールを再確認し、適切な労務管理を行うことが、従業員との信頼関係を守り、企業の健全な発展につながります。



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