• 更新日 : 2025年8月20日

入社時の社会保険加入手続き|必要書類から期限、中途採用やパートの対応まで解説

新入社員の入社に伴う社会保険の手続きは、期限が定められており、必要書類も多岐にわたるため、複雑に感じられるかもしれません。

この記事では、入社時の社会保険手続きについて、基本的な流れから具体的な必要書類、間違いやすいポイントまでわかりやすく解説します。正社員はもちろん、中途採用やパート・アルバイトのケースにも対応していますので、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも社会保険とは

社会保険とは、病気やケガ、失業、老齢、介護といった生活上の様々なリスクに備えるための公的な保険制度の総称です。企業と従業員が保険料を負担し合うことで、いざという時に従業員とその家族の生活を守る重要な役割を担っています。

社会保険は、主に以下の5つの制度で構成されています。

  1. 健康保険
    業務外での病気や怪我、出産、死亡に対する医療給付や手当金を支給します。
  2. 厚生年金保険
    老後の生活保障である老齢年金のほか、障害年金や遺族年金が支給されます。
  3. 介護保険
    40歳以上になると加入が義務付けられ、要介護・要支援状態になった際に介護サービスを受けられます。
  4. 雇用保険
    失業した場合の生活支援や再就職支援、育児・介護休業中の給付金などが支給されます。
  5. 労災保険(労働者災害補償保険)
    業務中や通勤中の災害による傷病に対して、治療費や休業中の賃金を補償します。保険料は全額事業主負担です。

従業員を採用した時の社会保険手続きの流れ

ここでは、従業員の入社から手続き完了までの基本的なステップを解説します。

1. 社会保険の加入対象者か確認する

まず、採用した従業員が社会保険の加入対象者であるかを確認します。正社員は原則として全員が加入対象です。パート・アルバイトの場合でも、所定労働時間や賃金などの条件を満たす場合は加入義務が生じます。

特に、近年は社会保険の適用対象が拡大しているため、最新の加入条件を正確に把握し、個々の従業員が該当するかどうかを判断することが重要です。確認を怠ると、後で遡って加入手続きを行う必要が生じ、追加の事務負担や保険料の支払いが発生します。

2. 必要書類の準備と従業員への案内

加入対象者であることを確認したら、手続きに必要な書類を従業員から回収します。入社が決まった段階で、必要書類のリストと提出期日を明確に伝え、入社日までに準備してもらうよう案内するとスムーズです。

従業員から回収する主な書類

その他、扶養家族がいる場合はその方のマイナンバーや続柄、収入がわかる書類などが必要です。

3. 資格取得届の作成

従業員から必要書類が提出されたら、事業主は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」および「雇用保険 被保険者資格取得届」を作成します。

これらの書類には、従業員の氏名、生年月日、マイナンバー、基礎年金番号などを正確に記入します。特に、健康保険料や厚生年金保険料の基準となる報酬月額は、基本給だけでなく、通勤手当や住宅手当、残業代などを含めた税引き前の総支給額を基に算定するため、間違いのないよう慎重に記載する必要があります。

4. 資格取得届の提出

資格取得届には法律で定められた提出期限があります。これらの期限を過ぎると法令違反となり、遡って加入手続きを行うなど追加の負担が生じる場合があるため注意しましょう。

  • 健康保険・厚生年金保険
    入社日(事実発生日)から5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターへ被保険者資格取得届を提出します。
  • 雇用保険
    入社日の翌月10日までに、事業所の所在地を管轄するハローワークへ被保険者資格取得届を提出します。
  • 労災保険
    雇用する形態を問わず自動的に適用されるため、入社する従業員ごとの加入手続きは不要です。

5. 手続き完了後の対応

手続きが完了すると、マイナ保険証が利用可能となり、マイナンバーカードを持っていないような場合には、年金事務所から資格確認書が交付されます。また、ハローワークからは雇用保険被保険者証と雇用保険被保険者資格取得等確認通知書が交付されます。

雇用保険の書類は、2通とも本人に渡し、紛失しないよう大切に保管してもらいましょう。

入社時に会社へ提出が必要な社会保険の書類

入社するにあたり、社会保険の手続きのために会社へいくつかの書類を提出する必要があります。事前に準備しておくことで、入社後の手続きが円滑に進みます。

年金手帳または基礎年金番号通知書

厚生年金保険に加入するために、自身の基礎年金番号を会社に知らせる必要があります。この番号は、青色の年金手帳または基礎年金番号通知書に記載されています。

手元に見当たらない場合は、前職の会社に返却されていないか確認するか、年金事務所で再発行の手続きを行いましょう。新卒で初めて年金制度に加入する場合は、会社が新規加入の手続きを行います。

なお、マイナンバーによる手続きも可能であるため、必ずしもこれらの書類の提出を求める必要はありません。

マイナンバー(個人番号)が確認できる書類

社会保険および税の手続きにおいて、マイナンバーの提出は必須です。マイナンバーカードの裏面のコピー、または通知カードやマイナンバーが記載された住民票のコピーと、運転免許証などの身元確認書類をセットで提出します。

会社によって提出方法が異なる場合があるため、担当者の指示に従ってください。個人情報のため、取り扱いには十分に注意しましょう。

扶養家族がいる場合の必要書類

配偶者や子供など、自身の収入で生計を維持している家族を被扶養者として健康保険に加入させる場合、追加の書類が必要です。具体的には、被扶養者のマイナンバー、続柄を証明するための住民票、収入状況を確認するための所得証明書などが求められます。

どの書類が必要になるかは、会社の健康保険組合や協会けんぽの規定、また扶養する家族の状況によって異なるため、事前に人事担当者へ確認しておくと安心です。

雇用保険被保険者証(中途採用の場合)

中途採用で入社する場合、前職で雇用保険に加入していたことを証明する雇用保険被保険者証の提出が必要です。この書類には、雇用保険の加入者番号である被保険者番号が記載されており、新しい会社で加入手続きを引き継ぐために使用します。

もし雇用保険被保険者証を紛失してしまった場合は、ハローワークで再発行が可能です。

パート・アルバイトの社会保険加入手続き

正社員だけでなく、パート・アルバイトとして働く方も、一定の条件を満たす場合には社会保険への加入が義務付けられています。

パート・アルバイトの社会保険加入条件

週所定労働時間および月所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパートやアルバイトは社会保険に加入します。

2024年10月から、従業員数51人以上の企業で働くパート・アルバイトの社会保険適用がさらに拡大されました。2025年現在、以下の条件をすべて満たす方は、本来の4分の3条件を満たさなくても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金が8.8万円以上
  3. 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  4. 学生ではない(夜間や定時制の学生は加入対象)

パートの社会保険加入手続きは誰がするのか

パートの社会保険加入手続きを行うのは、従業員本人ではなく、雇用主である会社です。会社の人事労務担当者が、加入条件に該当するパート・アルバイト従業員の資格取得届を作成し、年金事務所やハローワークへ提出します。従業員側は、会社から求められた必要書類(基礎年金番号通知書やマイナンバーカードなど)を提出することで協力します。

入社時の社会保険手続きに関するQ&A

ここでは、入社時の社会保険手続きに関して、人事担当者や新入社員からよく寄せられる質問にお答えします。

社会保険の手続きは入社前にできる?

原則としてできません。社会保険の資格取得日は、入社日(雇用契約が開始される日)となります。手続きに必要な被保険者資格取得届は、資格取得の事実が発生した後に提出する書類であるため、入社日より前に手続きを完了させることは不可能です。ただし、入社後速やかに手続きを進めるために、必要書類の案内や回収を入社前に行うことは一般的です。

中途採用の入社手続きの注意点は?

中途採用の入社手続きで特に注意すべき点は、雇用保険被保険者証と源泉徴収票の回収です。雇用保険は前職からの加入期間を引き継ぐため、被保険者番号が記載された被保険者証が必須です。また、年末調整を新しい会社で行うためには、その年に前職で得た給与額や徴収された所得税額が記載された源泉徴収票が必要になります。これらの書類を前職から必ず受け取り、新しい会社へ提出するよう従業員に案内してください。

社会保険加入手続きはどこで行う?

必要書類の提出先は保険の種類によって異なります。

  • 健康保険・厚生年金保険
    会社の所在地を管轄する日本年金機構の年金事務所または事務センターです。
  • 雇用保険
    会社の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)です。

入社時の社会保険手続きをしっかりと理解しましょう

入社時の社会保険手続きは、従業員の生活を守るために重要な手続きです。

企業側は、正社員やパート・アルバイトといった雇用形態にかかわらず、加入条件を正しく理解し、期限内に正確な手続きを行う責務があります。一方、従業員側も、自身の基礎年金番号通知書やマイナンバーカードといった必要書類を速やかに提出することで、手続きに協力することが求められます。

本記事で解説した流れや注意点を参考に、企業と従業員双方が円滑なコミュニケーションを図り、確実な手続きを実現してください。


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