• 更新日 : 2025年8月20日

深夜労働の割増率は?残業・休日との違いや計算方法、未払い時の対処法を徹底解説

深夜帯に働く方にとって、深夜労働の割増賃金(深夜手当)は正当な権利であり、生活を支える重要な収入源です。しかし、その計算方法は時間外労働(残業)や休日労働が絡むと複雑になり、会社側が正しく計算できていないケースも少なくありません。

この記事では、深夜労働の基本的な定義から、時間外労働や休日労働が重なった場合の割増率、具体的な計算方法、そして万が一割増賃金が支払われていない場合の対処法まで解説します。

そもそも深夜労働とは

労働基準法第37条では、午後10時から翌日の午前5時までの労働を深夜労働と定めています。この時間帯に労働した場合、企業は通常の賃金の25%(2割5分)以上の割増賃金、いわゆる深夜手当を支払わなければなりません。

これは、正社員やアルバイトといった雇用形態に関わらず、すべての労働者に適用されるルールです。生活リズムが乱れやすい深夜帯の労働に対する、労働者への健康配慮と補償の意味合いを持っています。

参考:労働基準法|e-Gov 法令検索

深夜労働と深夜残業の違い

深夜労働は、22時〜翌5時に働くこと自体を指します。一方、深夜残業とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた残業が、深夜の時間帯に及んだ状態を指します。この場合、時間外労働(25%以上)と深夜労働(25%以上)の両方の割増率が適用され、合計で50%以上の割増賃金が支払われます。

時間外・深夜・休日の割増率一覧

深夜労働の割増率は25%ですが、残業や休日出勤と重なると、さらに割増率が加算されます。まずは全体像を一覧表で確認しましょう。

労働の種類割増率
時間外労働(法定労働時間超)25%以上
深夜労働(22時~翌5時)25%以上
休日労働(法定休日)35%以上
時間外労働 + 深夜労働50%以上 (25% + 25%)
休日労働 + 深夜労働60%以上 (35% + 25%)
月60時間を超える時間外労働50%以上※
月60時間超の時間外労働 + 深夜労働75%以上 (50% + 25%)

※月60時間超の時間外労働に対して50%以上の割増率を適用する規定は、2023年4月1日より中小企業にも正式に適用されています。

※法定休日の労働は休日労働となり、時間外労働とは区別されます。そのため、法定休日に何時間働いても時間外労働の割増率は適用されず、休日労働の35%以上の割増率のみが適用されます。

深夜割増賃金の計算方法

それでは、実際に深夜割増賃金を計算する方法を3つのステップで見ていきましょう。

1. 1時間あたりの基礎賃金を算出する

割増賃金の計算で最も重要なのが、1時間あたりの基礎賃金です。これは時給制のアルバイトだけでなく、月給制の正社員なども算出する必要があります。

1時間あたりの基礎賃金 = 月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間

月給には、基本給のほか役職手当、資格手当、技術手当や職務手当など、労働の対価として毎月固定的に支払われる手当が含まれます。一方で、以下の手当は労働との直接的な関係が薄いため、計算から除外されます。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金(結婚手当など)
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)

2. 労働パターン別の割増率を確認する

次に、ご自身の労働がどのパターンに当てはまるかを確認し、一覧表から正しい割増率を見つけます。

3. 計算式に当てはめる

基礎賃金と割増率がわかれば、あとは計算するだけです。ここでは、1時間あたりの基礎賃金が1,500円のケースで具体例を見てみましょう。

深夜労働のみを3時間行った場合
  • 割増率:25%
  • 計算式:1,500円 × 3時間 × 0.25 = 1,125円

通常の3時間分の賃金に加えて、1,125円の深夜割増賃金が支払われます。

時間外労働(残業)として深夜労働を2時間行った場合
  • 割増率:時間外労働25% + 深夜労働25% = 50%
  • 計算式:1,500円 × 2時間 × 0.50 = 1,500円

通常の2時間分の賃金に加えて、1,500円の割増賃金が支払われます。

法定休日に深夜労働を4時間行った場合
  • 割増率:休日労働35% + 深夜労働25% = 60%
  • 計算式:1,500円 × 4時間 × 0.60 = 3,600円

通常の4時間分の賃金に加えて、3,600円の割増賃金が支払われます。

ご自身での計算が難しい場合は、Webサイト上の残業代計算ツールなどを利用するのも便利です。ただし、あくまで目安として活用し、正確な金額は会社の担当部署や専門家にご確認ください。

深夜割増賃金の注意点

働き方によっては、深夜手当の扱いがさらに複雑になることがあります。代表的なケースを見ていきましょう。

変形労働時間制・フレックスタイム制の場合

これらの制度では1日の労働時間が8時間を超える日があっても、ただちに残業とはなりません。しかし、深夜労働の規定は通常通り適用されます。したがって、制度に関わらず22時から翌5時の間に働いた分については、25%以上の深夜割増賃金が支払われる必要があります。

年俸制の場合

年俸制であっても、深夜労働や時間外労働の割増賃金は支払われなければなりません。もし年俸に一定時間分の深夜手当が含まれている(固定残業代制)場合は、その旨が雇用契約書に明記されている必要があります。そして、契約で定められた時間を超えて深夜労働をした場合は、その超過分の割増賃金が別途支払われなければなりません。

管理監督者の場合

労働基準法上の管理監督者には、労働時間、休憩、休日の規定は適用されません。そのため、残業手当や休日手当は支払われません。しかし、深夜労働に関する規定は管理監督者にも適用されます。したがって、管理監督者であっても、22時から翌5時に働いた分については、25%以上の深夜割増賃金を受け取る権利があります。管理職だから深夜手当は出ないというのは誤りです。

深夜割増賃金が支払われない場合の対処法

「給与明細を見ても、深夜割増賃金が見当たらない」「深夜に働いているのに手当がついていない気がする」といったケースは少なくありません。

支払われない理由を確認

まず就業規則や雇用契約書を確認しましょう。以下のようなケースが考えられます。

  • 単純な計算ミスや見落とし
    会社の経理担当者が誤って計算している可能性があります。
  • 固定残業代(みなし残業代)制度
    給与に一定時間分の深夜手当や残業代が予め含まれている場合があります。ただし、その時間を超えた分は別途支払われなければなりません。
  • 管理監督者としての雇用
    管理監督者には、労働時間や休憩、休日の規定が適用されませんが、深夜労働の割増賃金は支払われる必要があります。管理監督者だから深夜手当がない、というのは誤りです。
  • 違法な状態
    会社が労働基準法を理解しておらず、意図的または過失で支払っていない悪質なケースも存在します。

未払いが疑われる場合

もし深夜割増賃金の未払いが疑われる場合は、以下のステップで行動することをお勧めします。

  1. 証拠の確保
    タイムカードのコピー、業務日報、給与明細など、自身の労働時間を客観的に証明できる資料をできるだけ多く集めます。
  2. 会社への確認
    まずは直属の上司や人事・経理担当者に、計算根拠について丁寧に質問してみましょう。単純なミスであれば、この段階で解決することがあります。
  3. 専門家への相談
    会社に相談しても解決しない、または言いにくい場合は、弁護士などの専門家に相談します。労働基準監督署や都道府県労働局の労働相談コーナー、各地の弁護士会や労働相談センターなど、無料で相談できる窓口も多く設置されています。

未払いの賃金請求権には時効があります。2020年4月1日以降の賃金請求権については、当面3年の時効が適用されます。時効を迎える前に早めに行動することが重要です。

深夜労働の割増率について正しい知識を身につけましょう

深夜労働の割増率は、労働者の権利を守るための大切なルールです。基本となる25%の割増率に加え、時間外労働や休日労働が重なることで、その率は50%、60%と加算されます。

この記事を参考に、ご自身の給与明細と労働時間を照らし合わせ、正しく賃金が支払われているかを確認する習慣をつけましょう。

もし計算が合わない、支払われていないなどの疑問があれば、まずは会社に確認し、それでも解決が難しい場合は、労働基準監督署や弁護士といった専門機関へ相談することをためらわないでください。

正しい知識を持つことが、ご自身の正当な権利を守るための第一歩です。


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