- 更新日 : 2025年11月25日
深夜労働の割増率は?時間帯や残業・休日との重複計算を解説
深夜帯に働く方にとって、深夜労働の割増賃金(深夜手当)は正当な権利であり、生活を支える重要な収入源です。深夜労働の基本的な割増率は25%以上ですが、時間外労働(残業)や休日労働と重なると計算が複雑になります。
そのため、残業代計算や給与計算の実務では、どの時間帯にどの割増率を適用すべきか、正確な理解が求められます。担当者が割増率のルールを正しく把握していないと、意図せず賃金未払いが発生するリスクも抱えるでしょう。
この記事では、深夜労働の基本的な定義から、時間外労働や休日労働が重なった場合の割増率、具体的な計算方法、そして万が一割増賃金が支払われていない場合の対処法まで解説します。
目次
深夜労働の時間帯や割増率とは?
労働基準法第37条では、午後10時から翌日の午前5時までの労働を深夜労働と定めています。この時間帯に労働した場合、企業は通常の賃金の25%(2割5分)以上の割増賃金、いわゆる深夜手当を支払わなければなりません。
これは、正社員やアルバイトといった雇用形態に関わらず、すべての労働者に適用されるルールです。生活リズムが乱れやすい深夜帯の労働に対する、労働者への健康配慮と補償の意味合いを持っています。
深夜労働と深夜残業の違い
深夜労働は、22時〜翌5時に働くこと自体を指します。一方、深夜残業とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた残業が、深夜の時間帯に及んだ状態を指します。この場合、時間外労働(25%以上)と深夜労働(25%以上)の両方の割増率が適用され、合計で50%以上の割増賃金が支払われます。
時間外・深夜・休日の割増率一覧
深夜労働の割増率は25%ですが、残業や休日出勤と重なると、さらに割増率が加算されます。まずは全体像を一覧表で確認しましょう。
| 労働の種類 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働(法定労働時間超) | 25%以上 |
| 深夜労働(22時~翌5時) | 25%以上 |
| 休日労働(法定休日) | 35%以上 |
| 時間外労働 + 深夜労働 | 50%以上 (25% + 25%) |
| 休日労働 + 深夜労働 | 60%以上 (35% + 25%) |
| 月60時間を超える時間外労働 | 50%以上※ |
| 月60時間超の時間外労働 + 深夜労働 | 75%以上 (50% + 25%) |
※月60時間超の時間外労働に対して50%以上の割増率を適用する規定は、2023年4月1日より中小企業にも正式に適用されています。
※法定休日の労働は休日労働となり、時間外労働とは区別されます。そのため、法定休日に何時間働いても時間外労働の割増率は適用されず、休日労働の35%以上の割増率のみが適用されます。
参照:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省(PDF)
深夜労働の割増賃金の計算方法
深夜割増賃金を計算するには、まず「1時間あたりの基礎賃金」を正確に算出する必要があります。実際に深夜割増賃金を計算する方法を3つのステップで見ていきましょう。
1. 1時間あたりの基礎賃金を算出する
割増賃金の計算に用いるのは、1時間あたりの基礎賃金です。月給制の正社員や時給制のアルバイトなども算出する必要があります。
月給基本給や役職手当など、毎月固定的に支払われる賃金の合計。
1ヶ月の平均所定労働時間年間の所定労働時間(就業規則で定められた労働時間)を12ヶ月で割って算出。
- 年間所定労働日数:365日 – 120日 = 245日
- 年間所定労働時間:245日 × 8時間 = 1,960時間
- 1ヶ月の平均所定労働時間:1,960時間 ÷ 12ヶ月 ≒ 163.33時間
【基礎賃金から除外される手当】
月給には、基本給のほか役職手当、資格手当、技術手当や職務手当など、労働の対価として毎月固定的に支払われる手当が含まれます。一方で、以下の手当は労働との直接的な関係が薄いため、計算から除外されます。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金(結婚手当など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)
2. 労働パターン別の割増率を確認する
次に、ご自身の労働がどのパターンに当てはまるかを確認し、一覧表から正しい割増率を見つけます。
3. 計算式に当てはめる
基礎賃金と割増率がわかれば、あとは計算するだけです。ここでは、1時間あたりの基礎賃金が1,500円のケースで具体例を見てみましょう。
- 割増率:25%
- 計算式:1,500円 × 3時間 × 0.25 = 1,125円
通常の3時間分の賃金に加えて、1,125円の深夜割増賃金が支払われます。
- 割増率:時間外労働25% + 深夜労働25% = 50%
- 計算式:1,500円 × 2時間 × 0.50 = 1,500円
通常の2時間分の賃金に加えて、1,500円の割増賃金が支払われます。
- 割増率:休日労働35% + 深夜労働25% = 60%
- 計算式:1,500円 × 4時間 × 0.60 = 3,600円
通常の4時間分の賃金に加えて、3,600円の割増賃金が支払われます。
ご自身での計算が難しい場合は、Webサイト上の残業代計算ツールなどを利用するのも便利です。ただし、あくまで目安として活用し、正確な金額は会社の担当部署や専門家にご確認ください。
【ケース別】深夜労働の割増賃金の取扱い
働き方や特定の役職によっては、深夜割増賃金の取り扱いに注意が必要なケースがあります。代表的なケースを見ていきましょう。
変形労働時間制・フレックスタイム制の場合
変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している場合、1日8時間・週40時間を超えても、ただちに時間外労働とはなりません。
しかし、これらの制度を採用している場合でも、深夜労働の規定は通常どおり適用されます。 制度の種類にかかわらず、22時から翌5時の間に働いた分については、25%以上の深夜割増賃金の支払いが必要です。
年俸制・固定残業代制の場合
年俸制や固定残業代制(みなし残業代制)であっても、労働基準法が適用されることに変わりはありません。
もし、年俸や月給の中に「〇〇時間分の深夜手当を含む」といった形で固定深夜手当が定められている場合、その旨が雇用契約書や賃金規程に明記されている必要があります。 そして、そのあらかじめ定められた時間数を超えて深夜労働を行った場合、企業は超過した時間分の割増賃金を追加で支払わなくてはなりません。
管理監督者の場合
労働基準法上の管理監督者には、労働時間、休憩、休日の規定は適用されません。そのため、残業手当や休日手当は支払われません。
しかし、深夜労働に関する規定(割増率25%以上)は管理監督者にも適用されます。 「管理職だから深夜手当は出ない」というのは誤った解釈です。
管理監督者であっても、22時から翌5時に働いた分については、25%以上の深夜割増賃金を支払う義務があります。管理職だから深夜手当は出ないというのは誤りです。
参照:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省
深夜労働が制限・禁止されている人は?
法律上、健康や福祉の観点から、深夜労働(午後10時~午前5時)が原則として禁止されたり、制限されたりする労働者がいます。
年少者(満18歳未満)の原則禁止
満18歳未満の年少者は、原則として深夜労働が禁止されています。(労働基準法第61条) 例外として、交替制勤務の場合(16歳以上の男性など一定の条件あり)や、災害時などの非常事態、農林水産業など一部の業種では適用が除外されますが、一般的なアルバイトなどでは深夜勤務をさせることはできません。
妊産婦(妊娠中・産後1年未満)が請求した場合
妊娠中の女性や、産後1年を経過しない女性(妊産婦)が請求した場合は、深夜労働をさせてはなりません。(労働基準法第66条第3項) これは本人の請求があった場合の制限であり、本人が希望し、医師の指導などにもとづき支障がないと判断される場合はこの限りではありませんが、企業側は母体保護の観点から慎重な対応が求められます。
深夜割増賃金が支払われない場合の対処法
給与明細を確認し、「深夜労働時間分の割増賃金が計算されていない」「計算が合わない」と感じた場合、いくつかの理由が考えられます。
支払われない理由を確認
まず就業規則や雇用契約書を確認しましょう。以下のようなケースが考えられます。
- 単純な計算ミスや勤怠の集計漏れ
会社の経理担当者の計算ミスや見落とし、勤怠システムへの入力ミス。 - 固定残業代(みなし残業代)制度の採用
給与に一定時間分の深夜手当や残業代が予め含まれている場合があります。ただし、その時間を超えた分は別途支払われなければなりません。 - 管理監督者としての雇用
管理監督者には、労働時間や休憩、休日の規定が適用されませんが、深夜労働の割増賃金は支払われる必要があります。管理監督者だから深夜手当がない、というのは誤りです。 - 意図的な未払い(違法)
会社が労働基準法を理解しておらず、意図的または過失で支払っていない悪質なケースも存在します。
未払いが疑われる場合
もし深夜割増賃金の未払いが疑われる場合は、以下のステップで対応を進めるのが一般的です。
- 証拠の確保
ご自身の労働時間を客観的に証明できる資料と給与明細書を揃えます。(タイムカードのコピー、業務日報、PCのログイン・ログオフ記録、業務上のメール送信履歴など) - 会社への確認
まずは直属の上司や人事・経理担当者に、計算根拠について丁寧に質問してみましょう。「〇月〇日の深夜勤務分の割増賃金がどのように計算されているか教えてほしい」といった形で、冷静に確認するのがよいでしょう。
単純なミスであれば、この段階で解決することがあります。 - 専門家・公的機関への相談
会社に相談しても解決しない、または言いにくい場合は、弁護士などの専門家に相談します。労働基準監督署や都道府県労働局の労働相談コーナー、各地の弁護士会や労働相談センターなど、無料で相談できる窓口も多く設置されています。
未払いには時効がある
未払いの賃金(割増賃金を含む)を請求できる権利には時効があります。 2020年4月1日の民法改正にともない、賃金請求権の時効は「当面3年」(将来的には5年に延長予定)となっています。時効が成立すると請求できなくなるため、早めに行動を起こすことが重要です。
深夜労働の割増率計算を正しく理解し、適切な労務管理を
深夜労働の割増賃金は、法律で定められた労働者の権利です。基本的な時間帯(午後10時~午前5時)の労働には25%以上の割増率が適用されます。さらに、時間外労働(残業)と重なれば50%以上、法定休日労働と重なれば60%以上と、割増率は加算されます。
特に月60時間を超える時間外労働が深夜に及んだ場合は75%以上となり、企業の計算実務はより複雑になっています。
この記事を参考に、ご自身の給与明細と労働時間を照らし合わせ、正しく賃金が支払われているかを確認する習慣をつけましょう。
人事・会計担当者や経営者は、これらのルールを正確に理解し、勤怠管理システムや給与計算ソフトの設定が最新の法令に対応しているかを確認しなくてはなりません。正しい割増率にもとづく給与計算は、従業員との信頼関係を築き、法令遵守(コンプライアンス)経営を維持するための基本です。
もし計算が合わない、支払われていないなどの疑問があれば、まずは会社に確認し、それでも解決が難しい場合は、労働基準監督署や弁護士といった専門機関へ相談することをためらわないでください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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