- 更新日 : 2025年11月14日
ストレスチェック義務化とは?50人未満はいつから対象に?2025年最新の動向を解説
ストレスチェック制度は、働く人々のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための重要な仕組みです。現在、ストレスチェックが義務化されているのは、従業員数50人以上の事業場ですが、2028年春頃までに従業員数50人未満の事業所も義務化の対象となることが決定しています。
本記事では、ストレスチェックの義務化に関する現行制度から、義務を怠った場合の罰則、厚生労働省が示す方針まで、企業の担当者が今知っておくべき情報を分かりやすく解説します。
目次
ストレスチェック義務化とは?
ストレスチェック制度は、2014年6月の労働安全衛生法改正を受け、2015年12月1日から施行されました。この法改正の背景には、長時間労働や複雑な人間関係など、仕事上のストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定に至るケースが増加した社会情勢があります。国は、労働者が自身のストレス状態に気づき、セルフケアを促すとともに、企業側が職場環境を見直す仕組みを法的に整備する必要があると判断し、本制度の導入を決定しました。
ストレスチェックの対象となる事業場は?
現行の法律では、ストレスチェックの義務対象は事業場の従業員数によって明確に区分されています。
従業員50人以上の事業場は「義務」
常時使用する従業員が50人以上の事業場では、年に1回のストレスチェックの実施が法律上の義務です。これには、検査の実施、高ストレス状態と判定された従業員への医師による面接指導の機会提供、そして所轄の労働基準監督署への実施状況の報告が含まれます。従業員50人以上に該当する企業は、今後も法令を遵守し、確実な運用を継続することが求められます。
従業員50人未満の事業場は「努力義務」
常時使用する従業員が50人未満の事業場では、ストレスチェックの実施が努力義務とされています。これは「実施するよう努めなければならない」という規定で、法的な強制力や罰則はありません。しかし、将来的な義務化が決定されているため、準備を進めておくことが必要です。
常時使用する従業員の数え方
義務の有無を判断する「常時使用する従業員」には、正社員だけでなく、契約期間が1年以上(または更新により1年以上となる予定)で、週の労働時間数が正社員の4分の3以上であるパートタイマーやアルバイトなども含まれます。
派遣社員は、派遣元・派遣先いずれの事業場においても従業員数としてカウントされます。ストレスチェックの実施義務は派遣元にあり、派遣先の事業場は集団分析や職場環境の改善などの対応責任を負います。
50人未満の事業場のストレスチェック義務化はいつから?
2025年5月に50人未満の事業場へのストレスチェック義務化が盛り込まれた改正労働安全衛生法が成立・公布され、公布から3年以内に施行される予定です。具体的な施行時期は決まっていませんが、義務化への準備を進めておいた方が良いでしょう。
これは、事業場の規模に関わらず、すべての労働者の心身の健康を確保するという国の方針を反映した動きです。
企業がストレスチェックを実施する流れは?
ストレスチェックを適切に実施するためには、厚生労働省が示す手順に沿って進めることが重要です。
1. 基本方針の表明と衛生委員会での審議
最初に、事業主がストレスチェック制度を実施する基本方針を社内(イントラネットや朝礼など)で表明します。
その後、衛生委員会(または安全衛生委員会)を設置し、実施体制、スケジュール、個人情報の保護に関するルールなど、制度の具体的な進め方について調査・審議し、決定します。
2. 実施体制の構築と社内規程の作成
制度を運営する中心人物として、検査を行う「実施者」(医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士)を決めます。併せて、結果の回収や連絡調整などを行う「実施事務従事者」も指名します。
これらの内容を盛り込んだ社内規程を作成し、全従業員に周知徹底します。
3. ストレスチェックの実施
作成した規程に基づき、全対象従業員にストレスチェック(質問票への回答)を実施します。検査結果は、実施者から直接、従業員本人に通知されます。事業主や人事担当者が、本人の明確な同意なく個人の結果を閲覧することは法律で固く禁じられており、プライバシーの保護は極めて重要です。
4. 面接指導
ストレスチェックの結果、ストレスが高い状態にあると判定された従業員(高ストレス者)に対し、実施者は医師による面接指導を受けるよう勧奨します。この申し出は従業員の任意ですが、企業側は申し出やすい雰囲気や体制を整える配慮が求められます。従業員から申し出があった場合、企業は速やかに面接指導の場を設定する義務があります。
5. 集団分析と職場環境の改善
個人結果の活用と並行して、部署や職種といった一定の集団ごとのストレス状況を集計・分析します。
この結果から、どの職場にどのようなストレス要因が高い傾向があるかを客観的に把握し、職場環境の改善策を立案・実行します。
ストレスチェックを怠った場合の罰則とリスク
ストレスチェックを怠った場合の法律上の罰則と経営上のリスクについて解説します。
実施義務違反に対する直接的な罰則規定はない
現行法では、従業員50人以上の事業場がストレスチェックの実施義務そのものを怠ったことに対する、直接的な罰金や拘禁刑などの罰則は定められていません。
しかし、罰則がないからといって対応を怠ると、他の重大なリスクに直面する可能性があります。
労働基準監督署への報告義務違反には罰金が科される
ストレスチェックを実施した50人以上の事業場は、その実施状況を「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」として、所轄の労働基準監督署へ提出する義務があります。この報告を怠ったり、虚偽の報告を行ったりした場合には、労働安全衛生法第120条に基づく罰金が科される可能性があります。
参考:心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書|厚生労働省
安全配慮義務違反による経営リスク
企業が最も警戒すべきは、安全配慮義務違反に問われるリスクです。労働契約法第5条により、企業は従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する義務を負っています。
ストレスチェックという具体的な予防策を講じなかった結果、従業員がメンタルヘルス不調を発症した場合、企業が安全配慮義務を怠ったとして、高額な損害賠償を請求される可能性があります。
ストレスチェック義務化の最新動向に注目しましょう
2025年現在、ストレスチェックは、従業員50人以上の事業場における法的な義務です。そして、50人未満の事業場においても、義務化が決定されています。
罰則の有無だけで判断するのではなく、従業員の心身の健康を守り、安全配慮義務を果たすという企業の社会的責任としてこの制度を捉えることが大切です。特に現在は努力義務となっている企業も、将来の義務化を見据えて早期に準備を始めることが、結果的に企業の競争力を高め、持続的な成長に繋がるでしょう。
厚生労働省からの最新情報に注目しつつ、まずは自社の状況確認から始めてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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