• 更新日 : 2025年8月20日

基本給の決め方に種類はある?内訳や平均金額、最低ラインなども解説

基本給は、毎月の給与やボーナスの計算の土台となる非常に重要です。そのため、基本給の種類や決まり方を正しく理解することは、ご自身の働き方が正当に評価されているかを知り、将来のキャリアプランを考える上で欠かせません。

この記事では、基本給の定義や月給や手取りとの違い、具体的な種類と内訳、さらには平均額や最低ラインまでわかりやすく解説します。

そもそも基本給とは

基本給とは、各種手当(残業手当、通勤手当、住宅手当など)やインセンティブを含まない固定賃金のことです。

基本給を基準として、残業代や賞与(ボーナス)、退職金などが計算されることが多いため、給与全体を左右する重要な指標となります。求人票を見るときも、総支給額だけでなく基本給の額面に注目することが大切です。

月給・額面・手取りとの違い

基本給と月給・額面・手取りは混同されがちですが、意味は明確に異なります。

  • 月給
    基本給に役職手当や資格手当といった固定手当を合計した金額です。
  • 額面(総支給額)
    会社が従業員に支払う金額の総額です。
    基本給と諸手当(固定手当+変動手当である残業代など)を合計して計算します。
  • 手取り(差引支給額)
    額面から、社会保険料(健康保険、厚生年金など)や税金(所得税、住民税)が天引きされた後、実際に自分の銀行口座に振り込まれる金額です。

手取りは額面から各種控除が引かれた金額と覚えておくと分かりやすいでしょう。

基本給に含まれる手当

原則として、基本給に手当は含まれません。基本給はあくまで給与の基本となる賃金です。

そのため、残業手当、深夜労働手当、休日出勤手当といった労働時間に応じて変動する手当や、通勤手当、住宅手当といった福利厚生にあたる手当は、法律上も明確に基本給とは区別して計算・支給される必要があります。

基本給の決め方の種類

基本給の決め方は、企業が何を重視しているかによって大きく異なります。ここでは、その考え方を3つの種類に分類して解説します。

属人給

属人給とは、その名の通り人に紐づく要素で決定される基本給です。代表的なものに、年齢を基準とする「年齢給」や、勤続年数を基準とする「勤続給」があります。

属人給型は、長く勤めるほど給与が上がっていく年功序列の考え方が根底にあります。従業員にとっては、将来の生活設計が立てやすいという安定感がありますが、個人の成果や能力が給与に反映されにくいという側面も持ち合わせています。

仕事給

仕事給は、仕事の内容や価値を基準に決定される基本給です。担当する職務の難易度や責任の重さで決まる「職務給」、役職に応じて決まる「役割給」、個人の業務遂行能力で決まる「職能給」などがこれにあたります。

年齢や社歴に関わらず、重要な仕事や難しい業務をこなす人材が高く評価されるため、実力主義や成果主義の企業で採用されることが多いです。従業員の挑戦意欲を高める効果が期待できます。

総合給

現在の多くの日本企業では、属人給と仕事給の要素を組み合わせた「総合給型」が採用されています。

「年齢給+職能給」「勤続給+役割給」のように、安定性を担保する属人給をベースにしつつ、個人の能力や役割を評価する仕事給を加えることで、バランスの取れた賃金体系を構築しています。

基本給の内訳

総合給型を採用する企業では、基本給の内訳が複数の項目で構成されています。ここでは、代表的な4つの給与項目について、その評価基準と特徴を掘り下げていきます。

職能給

職能給は、業務を遂行する能力を基準に支払われる給与です。企業が定めた資格等級制度と連動していることが多く、等級が上がると職能給も上昇します。

同じ仕事をしていても、保有スキルや資格、経験によって金額が変わるのが特徴です。個人の成長を促す目的がありますが、評価基準が曖昧になりやすいという課題も指摘されています。多くの日本企業で基本給の主要な部分を占めています。

職務給

職務給は、担当する職務の価値に応じて支払われる給与です。同一労働同一賃金の原則に沿った考え方で、年齢や勤続年数に関係なく、同じ責任・難易度の仕事をしている人には同じ水準の給与が支払われます。

人事評価よりも、職務分析・職務評価といった客観的な分析に基づいて金額が決定されるのが特徴で、欧米企業で主流の制度です。

役割給

役割給は、課長や部長といった役割(役職)に応じて金額が設定される給与です。

職務給と似ていますが、より広範な責任や会社への貢献期待度などが加味されます。例えば、部長という役割には、部下の育成や部門目標の達成といった複数のミッションが含まれており、その役割の重さに応じて給与が支払われます。キャリアパスが明確になりやすいというメリットがあります。

年齢給・勤続給

年齢給は年齢、勤続給は勤続年数という、客観的で分かりやすい基準で自動的に昇給していく給与です。

生活給としての側面が強く、従業員の定着率を高める効果が期待できます。しかし、個人の能力や成果とは直接関係しないため、若手社員や中途採用者のモチベーションを維持しにくいという面もあります。近年では、これらの比重を下げ、仕事給の割合を高める企業が増加傾向にあります。

基本給の種類や内訳の重要性

ここまで基本給に関する様々な情報を見てきましたが、これらの知識は実生活やキャリア形成に直接的に関わってきます。その重要性を3つの観点から説明します。

昇給・昇格の仕組みを理解するため

自社の基本給が職能給中心なのか、役割給中心なのかを理解することで、どうすれば給与が上がるのかが明確になります。

例えば、職能給の比重が高いなら、資格取得やスキルアップが昇給の近道となります。一方、役割給が重視されるなら、より責任のあるポジションを目指すことが収入アップに繋がります。

会社の評価制度を理解し、戦略的にキャリアを築くことが可能です。

転職時に企業の評価制度を見抜くため

転職活動において、求人票の基本給は必ずチェックすべき項目です。もし面接で給与体系について質問できる機会があれば、「基本給の内訳はどのようになっていますか?」と尋ねてみましょう。その回答から、その企業が年功序列なのか実力主義なのか、どのような人材を求めているのかといった、求人票だけでは分からない企業の体質や文化を推測することができます。

残業代や賞与(ボーナス)に直接影響するため

多くの企業では、残業代や賞与(ボーナス)を基本給に基づいて算出します。

  • 残業代の計算式:基本給(一部手当含む) ÷ 月平均所定労働時間 × 割増率 × 残業時間
  • 賞与の計算式:基本給 × 支給月数 × 評価係数

基本給が高いほど、残業単価や賞与の額も大きくなります。「月給は高いけれど基本給が低く、手当で補っている」という給与体系の場合、賞与額が見た目の月給から想定されるよりも低くなる可能性があるので注意が必要です。

基本給の平均額

厚生労働省が公表した最新の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の平均賃金(所定内給与額)は以下のようになっています。

  • 男性:36万3,100円
  • 女性:27万5,300円

※所定内給与額は、基本給に各種手当を含んだ月給に近い概念ですが、基本給の大まかな水準を把握する上で非常に参考になります。

参考:令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省

年齢が上がるにつれて給与額も上昇し、50代後半でピークを迎える傾向は続いています。ご自身の基本給や月給と比べて、参考にしてみてください。

基本給の最低ラインと最低賃金の関係

法律上、基本給に最低ラインという明確な規定はありません。しかし、給与総額は最低賃金法で定められた金額を必ず上回る必要があります。2024年10月からの改定では、最も高い東京都で1,163円、全国加重平均額も大幅に引き上げられました。2025年度もさらなる引き上げが議論されています。

月給制の場合、「月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金(時給)」でなければなりません。ここで注意したいのは、計算に含められるのは基本給と一部の固定手当のみで、残業代や通勤手当などは除外される点です。

基本給の種類や内訳について理解しましょう

本記事では、基本給の種類や決め方を詳しく解説しました。

基本給は、残業代や賞与の計算基準となる重要な要素です。属人給や仕事給といった考え方があり、内訳である職能給や役割給の構成比率には、企業の評価方針が色濃く反映されています。

ご自身の会社の給与体系を正しく理解することは、昇給の道筋を把握し、キャリアプランを立てる上で不可欠です。まずは給与明細や就業規則を確認し、ご自身の働きと評価を見つめ直すきっかけとしてみてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事