- 更新日 : 2025年11月20日
9時間勤務の休憩は1時間でいい?労働基準法のルールや休憩が取れなかった場合の対処法を解説
「1日の勤務時間が9時間なのに、休憩は1時間しか取れない」「これって法律的に問題ないの?」といった疑問や不満を抱えていませんか。労働時間と休憩時間は、働く人の健康と生産性を維持するために非常に重要です。
この記事では、労働基準法に定められた休憩時間の基本的なルールから、9時間勤務の具体的なケース、休憩が適切に取得できなかった場合の対処法まで分かりやすく解説します。ご自身の働き方を見つめ直し、権利を正しく理解するための参考にしてください。
目次
9時間勤務における休憩時間のルール
9時間勤務における休憩時間のルールを正しく理解するためには、まず労働基準法で定められた原則を知る必要があります。法律で定められた最低限の基準を知ることで、ご自身の労働条件が適切かどうかを判断できます。
労働基準法第34条が定める休憩時間
労働基準法第34条では、事業者は労働時間に応じて、以下の休憩時間を労働者に与えなければならないと定めています。
- 労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合:少なくとも45分
- 労働時間が8時間を超える場合:少なくとも1時間
この法律があるため、労働者は心身を休め、健康を維持しながら働き続けられます。この時間は法律で定められた最低ラインであり、これより短い休憩時間は違法となります。
9時間勤務は最低1時間の休憩が必要
9時間勤務は、労働時間が8時間を超える場合に該当するため、事業者は労働者に対して、最低でも1時間の休憩を与えなければなりません。
就業規則などで「9時間勤務(うち休憩1時間)」と定められている場合、法律の基準を満たしており合法です。会社によっては、1時間以上の休憩時間を設定している場合もあります。
9時間勤務で1時間半や2時間の休憩があっても問題ない
9時間勤務で2時間や1時間半の休憩時間を設定することは全く問題ありません。法律で定められているのは、あくまで最低1時間という基準です。
そのため、会社が業務の都合や、従業員の働きやすさを考慮して1時間を超える休憩時間を設けることは自由です。例えば、昼休憩1時間に加えて、午後にリフレッシュ休憩を設けるといったケースが考えられます。
ただし、拘束時間が長くなり労働者の負担が増える可能性もあるため、働きやすさや健康管理の観点から慎重に検討することが大切です。
9時間勤務の休憩に関してよくある疑問
ここでは、9時間勤務の休憩について多くの人が抱く疑問に答えていきます。
9時間勤務の休憩時間は給料に含まれる?
休憩時間は、原則として給料の支払い対象にはなりませんが、会社の指示で待機を命じられたり業務を行ったりする場合は、休憩ではなく労働時間として給料の支払い対象になります。
9時間勤務の休憩がいらない場合は?
休憩はいらないので、そのぶん早く退勤したいと考える人もいるかもしれません。しかし、休憩時間の取得は法律で定められた事業者の義務であり、労働者の健康を守るための制度です。そのため、労働者側の判断で一方的に休憩を取らない、ということは原則として認められません。
事業者は労働者に対して適切な休憩を与え、安全に働ける環境を整える義務(安全配慮義務)を負っています。
9時間勤務がきついと感じる理由と対処法
法律上は問題ないと分かっていても、9時間勤務がきついと感じる方は少なくありません。ここでは、その理由と具体的な対処法を探ります。
9時間拘束による心身への影響
実働が8時間であっても、休憩を含めた拘束時間が9時間になると、通勤時間も合わせれば1日の大半を仕事に費やすことになります。これにより、プライベートな時間が圧迫され、趣味や自己研鑽、家族との時間に影響が出ることがあります。結果として、心身のリフレッシュが不十分になり、ストレスや疲労が蓄積しやすくなる傾向が見られます。
休憩時間をしっかり確保するための工夫
休憩時間とは名ばかりで、電話番や来客対応などで十分に休めていないケースもあります。休憩時間は労働から完全に解放されていなければなりません。もし、休憩中に業務を指示されることがあるなら、法律上の「手待ち時間」として労働時間に含まれます。
まずは、休憩時間は仕事から離れるという意識を持ち、意識的に休息を取ることが重要です。
9時間勤務の休憩時間が取れなかった場合の対処法
「忙しいから」「周りも取っていないから」といった理由で休憩時間が取得できない場合でも、事業者が法律で定められた休憩を与えないのは違法です。休憩させないだけでなく、休憩時間中に業務を頼む「ながら休憩」も労働時間であり、休憩として認められないため問題となります。
ご自身の状況が法律に反している可能性があることを認識し、以下の対処法を検討してください。
1. 状況を記録する
休憩が取れなかった場合、まずは具体的な事実を記録しておくことが重要です。感情的に訴えるのではなく、客観的な証拠が後の相談をスムーズに進めます。
- 記録する内容:日時、休憩が取れなかった時間、その理由、業務内容など
- 証拠の例:タイムカードのコピー、業務日誌、PCのログイン・ログオフ記録、業務指示のメールなど
2. 会社に相談する
次に、直属の上司や人事・労務担当部署に相談してみましょう。会社側も意図せず違法な状態になっている可能性もあるため、冷静に事実を伝える姿勢が解決につながります。記録した証拠を基に、具体的な状況を説明することがポイントです。
3. 外部の専門機関へ相談する
社内で相談しても改善が見られない場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーといった外部の専門機関に相談する方法があります。ここでは、匿名での相談も可能です。
一人で抱え込まず、専門家から客観的なアドバイスを受けることで、次の具体的な行動を考える手助けになります。
9時間勤務における権利を理解し、健康的な働き方を
この記事では、9時間勤務における休憩時間のルールを中心に、労働基準法の基本的な考え方から、休憩が取れなかった場合の対処法までを解説しました。
労働時間が8時間を超える9時間勤務では、法律上、最低1時間の休憩が必要です。そして、その休憩時間は労働から完全に解放された状態でなければなりません。
もし、9時間勤務はきついと感じたり、休憩が適切に取得できていなかったりする場合には、ご自身の状況を客観的に把握し、まずは社内で相談し、それでも改善が難しい場合は外部の専門機関を頼るという選択肢があります。法律で定められた休憩は、労働者の心身の健康を守るための重要な権利です。この記事で得た知識を活用し、ご自身が納得できる健康的な働き方を実現してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
遅刻早退控除とは?計算方法や違法にならないための注意点を徹底解説
従業員が遅刻や早退をした場合、遅刻早退控除という給与計算が発生します。計算方法やルールの認識を誤ると、意図せず違法な賃金カットとなり、深刻な労務トラブルに発展する可能性があります。特に誤解されやすい減給の制裁との違いや違法となるリスクなど、…
詳しくみる有給休暇の義務化とは?5日が最低?中小企業が取るべき対策
年次有給休暇は、労働者のリフレッシュを目的として法制化されましたが、取得率は低く推移しています。そこで、取得のルールを義務化することで有給休暇の取得率を向上させるために労働基準法が改正されました。 今回は、この法改正による取得義務化の概要、…
詳しくみる特別休暇とは?給料は支払われる?種類や日数も解説!
労働者に与える休暇のうち、法定休暇とは別に企業が任意で付与する休暇を特別休暇と言います。企業は特別休暇の種類や付与日数、給料支払いの有無などについて自由に設定でき、無給としても問題ありません。 代表的な特別休暇には病気休暇や慶弔休暇、裁判員…
詳しくみる「有給」と「有休」はどっちが正しい?日数や使い方もわかりやすく解説
「有給」と「有休」はどっちが正しい表現なのか気になったことはありませんか?この記事では、2つの言葉の違い、法律上の正しい使い方、そしてビジネスシーンでの実際の運用方法について詳しく解説します。この記事を読めば、「有給休暇」についての正しい知…
詳しくみる終業時間とは?始業時間との関係やどこまで含まれるか解説
終業時間を守ることは働き方を見直す第一歩です。 本記事では、終業時間の定義や始業時間との関係性、労働時間に含まれる範囲を解説します。 終業時間を守るためのポイントも紹介するので、働きやすい環境を整えたい方は参考にしてみてください。 終業時間…
詳しくみる有給休暇の消滅はいつ?繰り越しルールや違法な場合、計算方法を解説
有給休暇は労働者の権利ですが、忙しい会社ではなかなか消化できないというケースが多いかもしれません。 有給休暇は発生した日から2年経つと消滅するため、注意が必要です。有休の取得は労働者の重要な権利であり、会社には消滅を防止する取り組みが求めら…
詳しくみる