- 更新日 : 2025年11月14日
離職年月日とは?退職日や喪失日との違いや、決定後の手続きの流れを解説
離職年月日とは、従業員と事業主との雇用関係が終了した日を指します。この日付は、雇用保険の手続きや各種証明書の作成において利用されます。しかし、退職日や雇用保険の資格喪失日など、似たような日付が多く、混乱する担当者も少なくありません。この記事では、離職年月日、退職日、喪失日の意味、そして雇用保険被保険者資格喪失届や離職証明書への正しい記載方法を解説します。
目次
離職年月日とは?
離職年月日とは、従業員と事業主との雇用関係が完了した日を指します。この日付は、雇用保険の基本手当(失業給付)の受給資格期間を計算するうえで基準となる日となります。
離職年月日と退職日との違い
離職年月日と退職日は、いずれも雇用契約が終了する日を指し、従業員が会社に籍を置く最終日を意味します。
例えば、従業員が3月31日に退職する場合、退職日は3月31日であり、離職年月日も3月31日となります。この翌日という考え方は、雇用保険の受給資格期間の計算に関係するため、正しく理解する必要があります。
離職年月日と喪失日との違い
雇用保険の資格喪失日とは、雇用保険の被保険者資格を喪失する日を指します。離職年月日は雇用契約が終了した日を指し、原則として雇用保険の資格喪失日の前日となります。
つまり、「雇用保険の被保険者でなくなる日」という意味合いです。ただし、例外的に雇用関係は終了しているが賃金支払いの関係で資格喪失日が遅れるケースや、長期休職中で賃金が支払われていない期間がある場合でも雇用関係が継続していれば被保険者資格は継続するため、一律に「一日違い」と断定する際には注意が必要です。
離職年月日が使われる場面
離職年月日は主に、雇用保険の基本手当(失業給付)の受給資格を判断する際に用いられます。失業給付は、原則として離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が合計で12か月以上あることが受給要件となります。この被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間において、離職日から1か月ごとに区切られた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を意味します。
離職年月日は、原則として雇用保険の資格喪失日の前日となります。失業給付の支給開始日や受給期間の起算点に影響しますが、直接的に被保険者期間の計算基準となるのは「離職日」です。
また、離職票や雇用保険被保険者資格喪失届といった公的な書類にも、離職年月日の記載が求められます。
これらの書類が正しく作成されていないと、退職した従業員が失業給付を受け取るまでに時間がかかったり、最悪の場合、受給できないといった問題が発生する可能性もあります。
退職まで欠勤や有給の場合でも離職年月日に影響ある?
従業員が退職するまでの期間に、欠勤や有給休暇の取得、あるいは長期休業があった場合でも雇用契約が終了した日(退職日)が離職年月日となります。
実際に出勤していなかったとしても、雇用契約が継続していれば、その期間の最終日が「退職日」、「離職年月日」となります。
例えば、以下のようなケースです。
- 最終出勤日:4月10日
- 有給休暇消化期間:4月11日〜4月30日
- 退職日(雇用契約終了日)、離職年月日:4月30日
- 資格喪失日:5月1日
有給休暇を使い切ってからの退職や欠勤を伴うケースでも、雇用契約の終了日が確定していれば、その日が離職年月日になります。
ここで注意したいのは、その期間が雇用保険の「被保険者期間」として算入されるかどうかです。賃金の支払いが伴う日(=給与が発生する日)が「被保険者期間」に該当します。
有給休暇は賃金が発生するため、被保険者期間に含まれます。一方で、無給の欠勤や休職(病気・育児・介護など)中は、雇用関係が継続していても、原則として賃金支払いの基礎となる日数が不足するため、被保険者期間として算入されない場合があります。
つまり、書類上の離職年月日は変わらなくても、雇用保険の受給資格や必要な被保険者期間を判断するうえで、給与の有無が大きく影響する点に注意が必要です。
離職年月日が決まった後に行うべき手続き
離職年月日が確定したら、人事・労務担当者は速やかに雇用保険に関する手続きを進める必要があります。これらの手続きは、退職者が失業給付を適切に受け取れるようにするため、また、雇用主が法的義務を果たすためにも不可欠です。
離職年月日が確定した後の流れは、主に退職者への確認、雇用保険関連の書類の作成になります。
退職者に離職票が必要か確認する
まず、退職者に対して離職票が必要かどうかを必ず確認しましょう。離職票は、ハローワークで失業給付の手続きを行う際に必要な書類です。
退職者がすぐに再就職する予定であったり、雇用保険の被保険者期間が短く受給資格を満たさない場合などは、離職票を希望しないケースもあります。ただし、後日必要になる場合もあるため、原則として事前に意思確認を行い、希望があれば作成することが望ましいとされています。
雇用保険被保険者資格喪失届を作成・提出する
離職年月日が決まったら、会社は雇用保険被保険者資格喪失届を作成し、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出する必要があります。
この届出は、従業員が雇用保険の被保険者資格を喪失したことを行政に通知するもので、離職年月日=資格喪失日の前日となるのが一般的です。
提出が遅れると、退職者が失業給付を受ける際に手続きが遅れたり、不利益を被るおそれがあるため、期限内の対応が必須です。
離職票が必要な場合は離職証明書を作成する
退職者が離職票を希望する場合、雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)を併せて作成し、前述の喪失届と一緒にハローワークへ提出します。
離職証明書には、退職理由や退職前の賃金、勤務状況などを正確に記載する必要があります。これをもとにハローワークが離職票を発行するため、虚偽や記載漏れがあると失業給付に支障をきたす可能性もあります。記入内容は、必ず本人と確認のうえ、正確に作成しましょう。
雇用保険被保険者資格喪失届の書き方のポイント
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員の退職により雇用保険の被保険者資格を喪失したことをハローワークに届け出るための重要な書類です。この届出は、失業給付などの手続きに直結するため、正確な作成と期限内の提出が不可欠です。
雇用保険被保険者資格喪失届の作成時に注意すべき主な項目は以下のとおりです。
1. 被保険者番号の正確な転記
従業員の雇用保険被保険者証に記載されている番号を、誤字脱字がなく正確に記載します。記載ミスがあると処理が遅れるおそれがあります。
2. 氏名・生年月日の確認
従業員の氏名と生年月日は、住民票・運転免許証・マイナンバーカードなど公的な本人確認書類に基づいて記入します。漢字の表記や旧字体にも注意しましょう。
3. 資格喪失年月日の記載
原則として、雇用契約が終了した日=離職年月日の翌日を資格喪失日として記載します。
例:退職日が6月30日なら、喪失日は7月1日
4. 喪失理由の選択
「自己都合退職」「会社都合退職」「定年退職」など、該当する退職理由の番号に〇を記入します。選択を誤ると、離職票の内容に影響を及ぼし、失業給付の受給区分に誤解を招く可能性があります。
5. 賃金月額の記入
退職直前の6か月間の賃金総額(賞与、退職金、結婚祝金などの臨時的な賃金を除く)を記載します。これは離職票の記載内容にも連動しており、基本手当の算定基礎となる「賃金日額」を計算するために用いられます。賃金日額(基本手当日額)は、離職日の直前6か月間に毎月支払われた賃金総額(賞与などを除く)を180で割って算出します。給与明細や賃金台帳を基に、正確に計算することが必要です。
記入例や様式の確認も忘れずに
不安がある場合は、厚生労働省やハローワークの公式ホームページに掲載されている最新の様式や記入例を参照しましょう。
誤った記載や不備があると再提出を求められ、退職者の手続きに支障をきたすおそれもあるため、確認しながら作成することが大切です。
参照:事業主の行う雇用保険の手続き|厚生労働省
参照:雇用保険被保険者資格喪失届|ハローワークインターネットサービス
離職証明書の書き方のポイント
離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)は、退職者が雇用保険の基本手当(失業給付)を受けるために必要な離職票の発行に用いられる基礎書類です。
この書類に記載された内容は、受給資格の有無や給付額、給付制限の有無などに直接影響を与えるため、正確かつ事実に基づいた記載が不可欠です。
離職証明書を作成する際は、特に以下の項目に注意して記載しましょう。
1. 離職年月日の正確な記載
離職年月日は、雇用契約が終了した日を記載します。
例:退職日が3月31日であれば、離職年月日も3月31日
2. 離職理由の明確化と具体的な記述
離職理由には、自己都合退職・会社都合退職・契約期間満了・解雇などの区分を明示し、必要に応じて補足説明を具体的に記載します。
例えば、「業績悪化による希望退職募集に応じた」など、状況を明らかにすることで、ハローワークによる正確な判断につながります。
この理由は、給付制限の有無(待機期間・支給開始時期)に直結するため、虚偽や曖昧な表現は避け、事実に基づいた内容を記載する必要があります。
3. 賃金支払状況の記載(過去2年分)
離職日以前の過去2年間における各月の賃金支払状況を記載します(例外あり、高年齢被保険者は1年間)。これは、失業給付の算定基礎となる「賃金日額」の計算に使われます。
空白の月や賃金支払基礎日数が不足する月がある場合も、その期間について賃金が支払われていたか、雇用関係が継続していたかなどを詳細に記載し、必要に応じて理由を付記することが求められます。
これは、ハローワークが被保険者期間を正確に判断し、失業給付の受給資格の有無や期間を決定するために重要な情報となります。
4. 支給された賃金の内訳も記入
単に総額を記載するのではなく、基本給・各種手当・残業代などの内訳を具体的に記入します。賃金の内訳が明確になるため、ハローワーク側の誤解や処理ミスを防げます。
作成前に様式と記入例を確認する
離職証明書は、内容次第で退職者の給付資格や金額に影響を与えるため、記載ミスや不備は厳禁です。
作成にあたっては、厚生労働省やハローワークの公式ホームページに掲載されている記入例・ガイドラインを必ず確認しましょう。
また、退職者本人への確認を行いながら作成することで、トラブルの未然防止にもつながります。
離職年月日を正しく理解し、適切な退職手続きを
離職年月日は、雇用保険の給付に直結する重要な日付です。退職日や喪失日との違いを正確に理解し、雇用契約終了日が離職年月日となる原則を踏まえて、関連書類には正しい情報を記載しましょう。
適切な手続きは、退職者の安心につながるだけでなく、企業の信頼性向上にも寄与します。迷った場合は、ハローワークや社労士など専門機関に相談することをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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