• 更新日 : 2025年8月6日

18歳未満の深夜労働は正社員でも禁止?違反リスクと例外規定を解説

18歳未満の従業員に深夜勤務を任せてよいのか、判断に迷う場面は少なくありません。アルバイト、正社員、芸能活動など、雇用形態を問わず18歳未満の深夜労働は原則禁止されており、違反すれば罰則の対象になります。

この記事では、労働基準法に基づく年齢制限の内容や、高校生や妊産婦などに関する例外規定、実務上の確認ポイント、違反時のリスクまで、18歳前後の深夜労働に関する注意点をわかりやすく解説します。

18歳未満の深夜労働は正社員でも禁止?

18歳未満の深夜労働は、雇用形態を問わず法律で原則禁止されています。

労働基準法第61条では、「年少者(18歳未満)は午後10時から午前5時までの時間帯における労働をさせてはならない」と明記されています。

例外として、交替制の勤務に従事する満16歳以上の男性については深夜労働が許容されます。ただし、男性に限られます。

また、農林業、畜産業、養蚕業、水産業、保健衛生の事業、電話交換の業務も特例として、18歳未満でも深夜に労働させることが可能です。

この法律は、成長期にある若年者の健康と安全、さらには学業や生活リズムを守ることを目的としています。そのため、企業側が「本人が了承しているから」「忙しいので助かるから」といった理由での例外扱いすることは許されません。

そのため、飲食店や小売業、24時間営業のサービス業など、22時以降も業務がある現場では注意が必要です。18歳未満の従業員がシフトに入っていないか、定期的に年齢確認を行うことがリスク管理につながります。

18歳の深夜労働はいつから許される?

18歳の誕生日を迎えていれば、原則として深夜労働が認められます。ただし「高校生」である間は制限があります。

「18歳未満」と「18歳以上」の違い

労働基準法上、18歳の誕生日を迎えるまでは「年少者」に該当し、深夜労働は禁止です。この区分は「年度」や「学年」ではなく、生年月日を基準としています。

一方、18歳以上になれば原則として深夜労働が可能になります。しかし、次の項目で解説するように「高校在学中」である場合は、学校の校則などにより年齢にかかわらず深夜勤務が認められないケースがあるため、確認が必要です。

18歳未満でも深夜労働が認められるケース

原則として18歳未満の深夜労働は法律で禁止されていますが、例外もあります。

農林水産業や保健衛生業の業務

農林水産業、保健衛生業(病院や診療所など)、電話交換の業務については、業務の性質上、18歳未満であっても深夜労働の規制が適用されないことがあります。

これらの業種は、社会的に必要不可欠なインフラを支えるためです。

実際の業務内容が該当するかどうか、事前に所轄の労働基準監督署に確認することが必要です。

交替制で勤務させる特定のケース

労働基準法では、交替制によって使用する満16歳以上の男性の年少者については、深夜労働させることができるとしています(法61条1項)。また、16歳未満の年少者でも、交替制によって労働させる事業については、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、午後10時30分まで労働させることができるとも定めています(法61条3項)。

ただし、この規定は、「一定期日ごとに昼間勤務と夜間勤務とに交替」という「交替制」を前提としているため高校生のアルバイトは該当しないと考えるべきでしょう

非常災害時の一時的な労働

地震や火災といった非常災害が発生し、臨時の対応として労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出でも可)を得て、18歳未満の時間外労働や深夜労働が認められることがあります。

事態が急迫しているときは事後届出でも認められることがあります。しかし、これはあくまでも例外中の例外であり、日常的な勤務とは完全に切り離して考える必要があります。

演劇や映画製作の事業(子役など)

子役タレントなどが代表的ですが、映画の製作や演劇の事業に従事する児童(満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで)については、所轄の労働基準監督署長の許可を得ることを条件に、例外として深夜労働が禁止される時間帯を「午後9時から午前6時まで」に変更することが認められています。

また、学校や保護者の同意も必須条件となります。許可なく深夜に撮影などを行わせた場合は、労働基準法違反となるため、事前の準備と行政手続が欠かせません。

18歳以上でも深夜労働が制限される従業員

「18歳以上なら誰でも深夜労働させられる」と考えるのは早計です。健康や家庭環境に配慮する必要がある従業員については、法律で深夜労働を制限する仕組みが設けられています。

代表的なのが「妊産婦」と「育児・介護を行う労働者」です。

妊産婦が請求した場合は深夜勤務を免除する

妊娠中の女性や、出産後1年を経過しない女性(妊産婦)が深夜勤務を希望しない場合、使用者はこれを拒否できません。労働基準法第66条第3項により、「午後10時から午前5時まで」の深夜労働を免除するよう義務づけられています。

この規定は、企業側の業務都合や繁忙期といった事情よりも優先される強行規定です。妊産婦から申し出があった際には、確実に日勤へ変更するなどの対応を行わなければなりません。

育児・介護中の従業員にも配慮が必要

小学校就学前の子を育てている労働者や、要介護状態の家族を介護している従業員は、「育児・介護休業法」に基づいて深夜労働の制限を請求することができます。

小学校就学前の子を育てている労働者から請求があった場合、会社は深夜業をさせてはなりません。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合や、雇用期間が1年未満の労働者からの請求などに該当する場合は、会社は請求を拒否することができます。

安全配慮義務に基づいた対応も必要

深夜勤務は生活リズムを崩しやすく、心身に大きな負担がかかるため、企業には「安全配慮義務」も課せられています。これは労働契約法第5条に定められたもので、労働者の健康と安全を確保しながら業務に従事させる責任を指します。

法的な請求がない場合でも、持病のある社員や体調に不安を抱える従業員には、深夜シフトを控える配慮が求められます。定期的な健康診断の実施や、無理のないシフト構成を行うことが、労使トラブルを未然に防ぐことにつながります。

18歳未満の深夜労働に違反した場合の罰則とリスク

18歳未満の深夜労働に関する規定に違反した場合、企業や事業主には労働基準法違反として厳しい法的責任が発生します。違反が明るみに出ると、行政指導だけでなく刑事罰や社会的信用の低下といった深刻なリスクを伴います。

労働基準法違反による刑事罰が科される

労働基準法第61条に違反して18歳未満の者を午後10時~午前5時に働かせた場合、使用者には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法第119条)。

この刑事罰は「両罰規定」となっており、法人としての会社にも罰金刑が課せられる可能性があります。

労働基準監督署による是正指導や調査

違反の事実が発覚した場合、まず労働基準監督署から「是正勧告書」や「指導票」が交付され、企業は速やかな改善を求められます。

監督署は立ち入り調査の権限を持っており、シフト表やタイムカード、年齢確認資料の提出を求められることもあります。

企業名公表という社会的制裁

重大かつ悪質な法令違反がある場合、厚生労働省のウェブサイトで「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(通称:ブラック企業リスト)として企業名が公表されることがあります。

これは企業の社会的信用の低下や採用活動への悪影響につながる可能性があり、社会的な制裁として強い効果を持ちます。

一度公表されると、以下のような実害が出ることがあります。

  • 求人応募数の大幅減少(若者を中心に敬遠される)
  • 顧客や取引先からの信頼失墜
  • ネットでの炎上や風評拡大
  • 売上減少や契約破棄

「たった1件の違反」が企業全体の信頼に影響する時代です。特に未成年に関する違反は、学校や保護者、地域社会との関係にも影響しやすく、早期発見・予防が欠かせません。

18歳前後の深夜労働に関する雇用管理の注意点

18歳未満の深夜労働を防止し、すべての従業員が適法かつ安全に働ける環境を整備するためには、企業の的確な雇用管理が不可欠です。年齢確認や労働条件の明示、勤怠管理の徹底ができていないと、重大なトラブルや法令違反につながるおそれがあります。

採用時の年齢確認を徹底する

採用時には、正確な年齢確認を行います。面接時の口頭確認だけでは不十分であり、以下のような公的証明書を通じて確認することが求められます。

  • 住民票の写し(記載事項証明書)
  • 運転免許証やマイナンバーカード(ただし情報管理に配慮が必要)

特に18歳の誕生日直前・直後の応募者については、年齢に基づく労働制限の有無が変わるため、細かな確認が必要です。

労働条件通知書で勤務内容を明示する

労働契約を締結する際は、労働条件通知書を必ず書面で交付し、深夜労働に関する項目を明記する必要があります。以下の内容を明確に伝え、合意を得ることが、のちのトラブル防止につながります。

  • 始業・終業時刻(深夜時間を含む場合は特に注意)
  • 休憩時間と休日
  • 深夜割増賃金の有無と支払い条件

深夜勤務の予定がない場合でも、必要に応じて発生する可能性があるなら、その旨もあらかじめ記載しておくのが適切です。

深夜割増賃金を正確に支払う

午後10時から午前5時に労働させた場合、通常の賃金に対して25%以上の割増率で深夜手当を支払う義務があります(労働基準法第37条)。未払いが続くと、賃金不払いによる是正指導や、過去にさかのぼって支払いを求められるリスクも発生します。

  • 基本時給×1.25で計算
  • 時間単価で管理し、1分単位で記録・管理する

給与ソフトやシステムで自動計算する場合でも、設定の誤りがないか定期的に確認しましょう。

勤怠管理を客観的に行う

深夜勤務の実態を正確に把握するには、信頼できる勤怠記録の運用が必要です。以下のようなツールを活用し、勤務実績をデータで残すようにしましょう。

  • タイムカード
  • 勤怠管理システム(ICカード・アプリなど)
  • パソコンのログイン・ログアウト履歴

労働時間の記録が曖昧だと、深夜勤務の有無や割増賃金の支払い基準が不明確になり、監督署調査や社員とのトラブルの火種になりかねません。

18歳の深夜労働を適切に管理してリスクを回避する

18歳未満の深夜労働は法律で明確に禁止されており、正社員・アルバイトを問わず厳格に対応する必要があります。18歳以上であっても、妊産婦や育児・介護中の従業員など、特定の条件下では深夜勤務が制限される場合があります。

万が一違反が発生すると、労働基準監督署からの是正指導や刑事罰だけでなく、企業名の公表による社会的制裁や信用失墜といった深刻なリスクを招くおそれがあります。

トラブルを未然に防ぐには、採用時の年齢確認を徹底し、労働条件の明示や勤怠管理を正確に行うことが欠かせません。特に22時以降のシフト管理については慎重な運用が求められます。

労務管理の見直しを行い、法律に即した適正な運用を続けることで、従業員の安全と企業の信頼を守る職場環境を築くことができるでしょう。


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