• 更新日 : 2025年8月6日

24時間勤務明けの休みは休日扱い?ルールや賃金計算、違法ケースを解説

24時間勤務は、医療・福祉・警備・運送など、社会インフラを支える多くの業界で導入されています。

この記事では、労働基準法に基づいて、24時間勤務明けの休みの取り扱い方、適法に運用するための条件、休憩・インターバルの確保方法、業種ごとの対応例までをわかりやすく解説します。

24時間勤務明けの休みは休日になるのか?

24時間勤務明けの休みは「休日」ではなく、「休息時間」として扱われます。

労働基準法で定める休日は、行政解釈上「午前0時から午後12時までの24時間、労働義務が完全に免除された日」を指します(暦日休日性の原則)。この定義にあてはめると、1日のうちに少しでも労働が発生していれば、その日は休日とは認められません。

例えば、以下のような勤務スケジュールを考えてみましょう。

  • 勤務日:6月14日(金)9:00 出勤 ~ 6月15日(土)9:00 退勤
  • 明け休み:6月15日(土)9:00以降の時間

この場合、6月15日は午前0時から9時まで労働があるため、「暦日単位での完全な休日」ではありません。

明け休みは、心身の回復を目的とした「勤務間のインターバル」であって、いわゆる「夜勤明け」の日は、法定休日には該当しません。

そのため、企業はこの明け休みとは別に、週に1回以上または4週で4回以上の法定休日を明確に設定する必要があります。もし明け休みを誤って休日としてカウントしてしまうと、法定休日が不足し、労働基準法違反となるリスクが生じます。

シフト作成時には、「休日」と「明け休み(休息時間)」を明確に区別し、就業規則にも正確に反映させることが重要です。

24時間勤務明け後の休みを有給にできるか?

明け休みは「労働義務のない日」とされるため、原則として有給休暇の対象にはなりません。

有給取得を希望するならいつ?

例えば、次のようなスケジュールを考えてみましょう。

  • 勤務日:6月14日(金)9:00 出勤 ~ 6月15日(土)9:00 退勤
  • 明け休み:6月15日(土)9:00以降
  • 次回勤務:6月16日(日)9:00 出勤予定

この場合、6月15日は「勤務の翌日の休息時間」であって、労働義務がない日です。したがって、有給休暇の取得対象にはなりません。

一方で、6月16日(日)に出勤義務がある場合は、その日に有給を取得することは可能です。

24時間勤務は合法?違法になるケースとは

24時間勤務そのものは、法律で明確に禁止されているわけではありません。ただし、労働時間・休憩・割増賃金などの条件を満たさなければ、違法と判断されるリスクがあります。

36協定がないまま時間外労働をさせると違法

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合は、「36(サブロク)協定」の締結と届出が必要です。

労働基準法第32条では、法定労働時間を以下のように定めています。

1日 8時間以内

1週 40時間以内

この協定がないまま時間外や休日労働を行わせると、即座に違法状態となり、企業には是正勧告や罰則が科されるおそれがあります。

変形労働時間制の導入で24時間勤務が可能に

24時間勤務を適法に行う代表的な方法が、「1か月単位の変形労働時間制」です。

この制度では、1か月間の総労働時間を平均し、週40時間以内に収めることができれば、ある特定の日に8時間を超える勤務をさせても認められます。

ただし、導入にあたっては以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 就業規則に変形労働時間制の記載があること
  • 労使協定を締結していること
  • 36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ていること

これらが整備されていない状態で24時間勤務を実施すれば、形式上は制度を導入していても、実質的には労働基準法違反となるリスクがあります。

労働基準法違反となる代表的なケース

以下のようなケースでは、労働基準法違反と判断される可能性が高まります。

  • 36協定を締結していない
  • 就業規則に変形労働時間制の規定がない
  • 仮眠や休憩が十分に与えられていない(形式的な休憩)
  • 割増賃金(時間外・深夜・休日)が適切に支払われていない

なお、勤務間インターバルが不十分なこと自体は、直ちに労働基準法違反となるわけではありません。これは努力義務とされているためです。ただし、従業員の健康や安全への配慮を怠ったとして「安全配慮義務違反」に問われるリスクはあります。

24時間勤務明けの賃金計算、割増賃金のルール

24時間勤務では、実労働時間・休憩時間・深夜労働・時間外労働を正確に区分し、それぞれに対応する賃金を計算する必要があります。計算方法を誤ると、未払い賃金や労務トラブルにつながります。

実労働時間と休憩時間を分ける

労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を与えることが義務付けられています(第34条)。

24時間勤務では、この休憩時間に加え、「仮眠時間」や「待機時間」が発生するケースもあり、どの時間が賃金対象となるかを明確にすることが必要です。

例えば、勤務中に2時間の仮眠時間があったとしても、実際には電話対応や緊急呼び出しに備えていた場合は「手待ち時間」となり、労働時間に含まれます。

逆に、完全に自由に使える時間であれば、休憩時間として除外可能です。

深夜割増賃金を正しく計算する

午後10時から翌午前5時までの労働は、「深夜労働」として通常賃金の25%以上の割増賃金を支払う義務があります(第37条)。

24時間勤務には深夜帯が含まれるため、この割増を見落とすと未払いとなるリスクが高まります。

午後9時~翌日午前9時まで勤務した場合、午後10時~翌5時の7時間分には深夜割増が適用されます。さらに、深夜帯が時間外労働と重なる場合は、時間外割増25%+深夜割増25%=合計50%以上の割増賃金が適用されます。

時間外労働・休日労働の割増を確認する

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える部分には、時間外割増賃金(25%以上)が発生します。また、法定休日に労働があった場合は休日割増(35%以上)が必要です。

24時間勤務では、実労働時間が非常に長くなるため、これらの割増の正確な適用が求められます。

労働時間の把握ミスや、就業規則に基づかない運用があると、後日まとまった未払いが発覚し、遡って請求されるリスクもあります。

宿直勤務として扱うには許可が必要

一部業種では、24時間勤務を「宿直勤務」として処理し、割増賃金の支払いを軽減しようとするケースも見られます。しかし、これには労働基準監督署の許可が必要であり、以下の条件を満たす必要があります。

  • 実際の業務がほぼ発生しない「断続的な勤務」であること
  • 仮眠・休息時間が十分に確保されていること
  • 休息用の設備(寝具など)が整備されていること

例えば、夜間警備員が建物内で巡回1回と電話対応のみ行い、残りは休息できる体制である場合、宿直勤務と認められる可能性があります。

一方で、病院や介護施設で常にナースコール対応や記録業務が発生しているような勤務形態では、宿直とは認められず、全時間が労働時間と判断されます。

このように、24時間勤務における賃金計算では、「どこまでが労働か」を厳密に見極める必要があります。

24時間勤務後のインターバルは何時間空けるべき

24時間勤務のあとに十分な休息を設けないと、従業員の健康を損なうリスクが高まります。長時間労働による疲労を回復するために、勤務終了から次の勤務までの間隔、いわゆる「勤務間インターバル」の確保が必要です。

勤務間インターバル制度とは

勤務間インターバルとは、労働者の勤務終了後から次の始業時刻までに一定時間以上の休息時間を確保する制度です。

この制度は2019年の法改正により、企業に対して導入の「努力義務」が課されるようになりました。罰則はありませんが、厚生労働省も積極的な導入を推奨しています。

推奨されるインターバル時間

厚生労働省のガイドラインでは、勤務間インターバルは11時間以上を目安とすることが望ましいとされています。24時間勤務の直後には、通常よりも長い休息が必要とされます。

例えば午前9時に勤務を終えた場合、次の出勤は午後8時以降とするのが望ましいとされます。

これに満たない間隔での連続勤務が続くと、睡眠時間や生活時間が圧迫され、心身の不調や生産性の低下を招くおそれがあります。

実際の勤務例とインターバルの注意点

次のような勤務スケジュールを例に取ると、問題点が見えてきます。

  • 6月14日 9:00 出勤 ~ 6月15日 9:00 退勤(24時間勤務)
  • 6月16日 6:00 再出勤

このように、24時間勤務の翌日に早朝から勤務を入れる場合、退勤から次の出勤までのインターバルが21時間あるように見えても、途中に移動や睡眠が含まれることを考慮すると、実質的な休息時間は大きく削られている可能性があります。

特に介護・医療の現場では、夜勤明けの職員に翌朝の会議や研修を課すケースが問題視されています。

日本医療労働組合連合会の調査(2023年)によると、看護職員の約半数が勤務間インターバルを12時間未満で働いており、8時間未満の勤務間隔も4割を超えました。さらに、16時間以上の長時間夜勤を行っている2交替制病棟は5割に達しており、健康への影響や離職の要因として深刻化しています。

参照:2交替制夜勤職場が48.4%で過去最高に/日本医労連調査

勤務間インターバル制度を導入している企業の例

ヤマト運輸では、社員の健康維持を目的として、勤務終了から次の始業までに11時間以上の休息時間(インターバル)を確保する取り組みを行っています。

また、KDDIも日本国内で勤務間インターバル制度をいち早く取り入れた企業の一つです。就業規則において9時間以上のインターバルを原則とし、社内システム上で自動的に確認・管理される仕組みを整えています。

勤務間インターバル制度の導入は、従業員の健康確保に加え、業務効率の改善や働きやすい職場づくりにもつながっているとされています。

中小企業においても、クラウド型の勤怠システムや助成金(働き方改革推進支援助成金)を活用しながら、業務の分担や引き継ぎの仕組みを整備することで、段階的な導入は十分に可能です。

参照:労働慣行|ヤマトホールディングス労働慣行|KDDI株式会社
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省

24時間勤務明けの休みは休息時間として扱い、管理ルールを明確にする

24時間勤務明けの休みは、労働基準法上「休日」ではなく「休息時間」に位置づけられます。そのため、休日としてカウントしたり、有給休暇を充てたりすることはできません。明け休みは法定休日とは別に設定し、勤務間インターバルも確保する必要があります。賃金計算においては、仮眠や手待ち時間の扱い、深夜・時間外の割増賃金も含めた適正な処理が求められます。管理ルールをあいまいにしたまま放置すると、違法労働や未払い賃金のリスクが高まります。明確な就業規則と勤怠管理体制の整備が、労務トラブルの予防につながります。


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