• 更新日 : 2025年7月25日

フレックスタイム制に遅刻の概念はある?よくある勘違いやコアタイムの遅刻連絡も解説

フレックスタイム制は、自由な時間に出退勤できるというメリットがある一方で、遅刻の扱いに悩んだり、上司と認識がずれてトラブルになったりするケースが少なくありません。

「フレックスなのに、遅刻扱いはおかしいのでは?」「コアタイムに少し遅れただけで、減給されるの?」

この記事では、そんなフレックスタイム制における遅刻の概念から、給与や評価への影響、正しい対応方法、ずるいと思われないための運用ポイントまで分かりやすく解説します。

フレックスタイム制における遅刻の概念

まず、フレックスタイム制における遅刻の概念を整理しましょう。

フレキシブルタイム内なら遅刻ではない

フレックスタイム制では、従業員が始業・終業時刻を自由に決められる「フレキシブルタイム」が設けられています。例えば、始業のフレキシブルタイムが午前7時から10時の会社で、普段9時に出社している人が10時に出社しても、それは遅刻にはあたりません。なぜなら、フレキシブルタイム内では、何時に仕事を始めるかを労働者自身が決定する権利があるためです。

コアタイムに1分でも遅れれば遅刻になる

フレックスタイム制の最大のポイントが「コアタイム」の存在です。コアタイムとは、全従業員が必ずオフィスにいるべき(勤務すべき)時間帯を指します。

もし、このコアタイムの開始時刻に1分でも間に合わなければ、明確な遅刻として扱われます。例えば、コアタイムが10時から15時の会社で10時1分に出社した場合、1分の遅刻となるのです。

自由な働き方を尊重しつつも、会議やチームでの共同作業など、組織として円滑に業務を進めるためにコアタイムは設けられています。このルールを守ることが、フレックスタイム制を活用する上での大前提となります。

フレックスタイム制なのに遅刻の概念が存在する理由

「自由な働き方のはずなのに、なぜ?」と疑問に思うかもしれません。フレックスタイム制は、個人の裁量を尊重しつつも、会議や共同作業など、組織として業務を円滑に進めるための時間も確保する必要があります。そのために設けられているのがコアタイムです。個人の自由と組織の協調性のバランスを取るためのルールであり、この時間を守ることは、制度の根幹を成す重要な規律と言えます。

フレックスタイム制の遅刻に関するよくある勘違い

フレックスタイム制の遅刻に関するよくある勘違いを、具体的なケースを挙げて解説します。

ケース1. フレキシブルタイム内で普段より遅く出社した場合

遅刻ではありません。フレキシブルタイム内であれば、何時に出社するかは個人の自由です。ただし、「明日は9時に出ます」と上司に伝えていたのに、連絡もなしに10時に出社した場合、ルール違反にはならなくとも、信頼関係に影響する可能性はあります。

ケース2. コアタイムの開始時間に間に合わなかった場合

遅刻として扱われるのが一般的です。たとえ5分の遅れでも、自己都合の寝坊でも、公共交通機関の遅延でも、コアタイムに間に合わなかった事実は同じです。会社によっては遅延証明書の提出を求められることもあります。

ケース3. 清算期間内の総労働時間が足りなかった場合

フレックスタイム制では、1ヶ月などの清算期間における総労働時間が定められています。日々の出退勤は自由でも、この総労働時間を満たさなければなりません。もし実労働時間が総労働時間に満たなかった場合、これは遅刻ではなく、労働時間不足(欠勤扱い)となります。不足した時間分は給与から控除(減給)されるのが一般的です。

コアタイムに遅刻した場合のペナルティ

コアタイムに遅刻してしまった場合、具体的にどのようなペナルティが課される可能性があるのでしょうか。

遅刻した分は減給(控除)される

コアタイムへの遅刻は原則として、その分の給与が控除される「ノーワーク・ノーペイ原則」が適用されます。ただし、フレックスタイム制の場合、清算期間内の総労働時間を満たしていれば即時の賃金控除が行われない場合もあります。また、企業の就業規則に明記されている場合は、遅刻を制裁措置として減給することもあります。

遅刻を繰り返すと人事評価(査定)に影響する

遅刻の回数や時間が、人事評価や賞与(ボーナス)の査定に影響する可能性は十分にあります。多くの企業では、勤務態度や規律遵守も評価項目の一つです。一度の遅刻で直ちに評価が大きく下がることは少ないかもしれませんが、繰り返し遅刻をする場合は「自己管理能力が低い」「協調性に欠ける」といったマイナス評価に繋がりかねません。真摯な勤務態度が、信頼の基盤となります。

悪質な場合は懲戒処分の対象になる可能性も

遅刻が何度も繰り返されたり、悪質であったりする場合、就業規則に基づき、けん責、減給、出勤停止といった懲戒処分の対象となることがあります。フレックスタイム制という自由な働き方が認められているからこそ、最低限のルールであるコアタイムを守る意識が、より一層求められるのです。

コアタイムに遅刻してしまった場合の正しい連絡方法とマナー

万が一、コアタイムに遅刻しそうな場合、あるいは遅刻してしまった場合は、迅速かつ誠実な対応が不可欠です。信頼を損なわないための連絡の基本マナーを身につけましょう。

当日連絡の重要性

「どうせ遅刻だから」と連絡を怠るのは最も避けるべき行動です。始業時間になっても連絡がなければ、上司や同僚は「何か事件や事故に巻き込まれたのではないか」と心配します。また、その日の業務計画にも支障をきたします。始業時刻までに連絡を入れるのは、社会人としての最低限の義務であり、安全配慮の観点からも極めて重要です。遅刻が確定した時点で、速やかに連絡を入れましょう。

連絡の基本マナー

連絡は、会社のルール(電話、チャット、メールなど)に従い、まずは直属の上司に行うのが基本です。

伝えるべき内容は、以下の3点です。

  1. 遅刻する旨とその理由
  2. 到着予定時刻
  3. 緊急の要件の有無

理由は正直に、簡潔に伝えましょう。「電車が遅延しており、30分ほど遅れます。本日の午前中に予定していた〇〇の件は、到着次第すぐに着手します」のように、具体的な状況と業務への影響を伝えることが大切です。

無断欠勤や虚偽報告は信頼を失う「落とし穴」

寝坊してしまった気まずさから、「体調不良で…」などと嘘の理由を報告するのは絶対にやめましょう。その場しのぎの嘘は、後で必ずつじつまが合わなくなり、信頼を著しく損なう「落とし穴」となります。正直に非を認め、誠実に対応することが、結果的に信頼回復への一番の近道です。

フレックスなのにずるいと思われないための運用ポイント

フレックスタイム制は、時に「あの人だけ自由でずるい」といった不公平感を生むことがあります。全員が気持ちよく働くためのポイントを解説します。

会社側:ルールの明確化と公平な管理

管理者は、就業規則にコアタイム、遅刻時の連絡方法やペナルティなどを明確に定め、全従業員に周知徹底することが不可欠です。また、勤怠管理システムで客観的な労働時間を把握し、公平な運用を心がけることがトラブル防止に繋がります。

従業員側:自律的な姿勢と状況の見える化

従業員側は、制度に甘えるのではなく、自律的な働き方が求められます。特に重要なのが、周囲とのコミュニケーションです。朝礼や会議がない日でも、チャットツールなどで一日の業務予定を共有したり、離席する際にステータス表示を活用したりするなど、自身の状況を可視化する工夫が大切です。こうした小さな配慮が、チームの一体感を醸成し、「ずるい」という感情を防ぎます。

フレックスタイム制の遅刻を正しく理解し、信頼関係を築こう

今回は、フレックスタイム制における遅刻をテーマに、その概念からペナルティ、正しい対応まで詳しく解説しました。

フレックスタイム制は、正しく運用すれば、従業員のワークライフバランスと企業の生産性を両立できる優れた制度です。しかし、その成功は、会社と従業員の相互理解と信頼関係の上に成り立っています。本記事を参考に、制度への理解を深め、より良い働き方の実現に繋げてください。


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