• 更新日 : 2025年7月18日

給与計算における日割りの端数処理のやり方!欠勤・遅刻・早退時の計算例まとめ

給与計算では、日割り計算や端数処理が必要になる場面が多くあります。例えば、入社日や退職日が月の途中、欠勤や時給制社員の勤務日数が変動する場合などです。基本給や手当の一部に小数点以下の金額が生じた際、「切り捨て」「切り上げ」「四捨五入」のどれを使うかで支給額に差が出ます。この記事では、給与計算における日割りの端数処理の考え方とやり方、実務対応の注意点まで、実例と共にわかりやすく解説します。

給与計算における日割りの端数処理の考え方

給与を日割りで計算する際に発生する1円未満の端数は、企業ごとに定めた就業規則や給与規程に基づいて処理するのが基本です。

例えば、月給を日数で割ると「15,243.75円」のような金額が出ることがあります。この「0.75円」が小数点以下であり、1円未満の端数をどのように処理するかが給与計算では必要です。

労働基準法では、賃金に関する端数処理について、細かいルールは定めていません。ただし、「賃金は全額を支払わなければならない」(第24条)という原則があるため、端数の扱いによって従業員に不利益が生じる場合には、違法とみなされる可能性があります。

例えば、控除額を端数ごと切り上げると、実際よりも多く差し引かれることになります。(例:99.6円の控除を100円に切り上げる)。逆に、支給額を毎回切り捨てるような処理も労働者側からの不満の原因になります。
(例:1,314.8円の支給を1,314円に切り捨てる)

原則として、控除する際の端数処理は、従業員側に有利な切り捨てを選択します。逆に加算時は、切り上げを選択し、従業員にとって不利益とならないようにします。

また、端数処理の対象となるのは、基本給のほか、日割り対象の手当や残業代、欠勤控除の単価などです。対象となるすべての金額で一貫した処理を行うことで、混乱や誤解を防ぐことができます。

給与の日割り計算が必要な場面

給与の日割り計算は、従業員が月の途中で入社したり退職したりする際、または欠勤や休職などにより、通常通り1ヶ月間勤務しなかった場合に必要になります。月給制の従業員に対し、その月の労働実績に基づいて給与を調整する仕組みです。

給与計算における日割りの端数処理のやり方

給与の日割り計算と端数処理は、会社の賃金規程によって採用する計算方法が異なります。それぞれの方法を理解し、適切に運用することが大切です。

日割り計算の流れ

日割り計算は、主に以下のステップで行います。

  1. 月給を「1ヶ月の所定労働日数」で割って、1日あたりの給与を算出
  2. 実際に勤務した日数をかけて支給額を求める
  3. 計算結果に1円未満の端数が出たら、決められた方法で処理する

1ヶ月の所定労働日数の計算方法

給与日割り計算の基礎となる「1日あたりの賃金」の算出方法には、主に以下の3つがあります。企業ごとの規程により、次のいずれかを使うケースが多いです。

  • 暦日数:その月の暦日数(例:31日、30日)で基本給を割る方法です。月によって1日あたりの単価が変動します。
  • 月の所定労働日数を用いる方法:月の所定労働日数(会社が定める労働日)で基本給を割る方法です。所定休日分を計算に含めないため、1日あたりの金額が高くなる傾向があります。
  • 年間所定労働日数÷12の平均:年間所定労働日数を12で割り、月平均の所定労働日数を算出する方法です。年間を通じて1日あたりの単価が一定となるため、公平性が高いとされます。

どの方式を選ぶかは会社の自由ですが、就業規則(賃金規程)に明記し、従業員にわかるようにしておく必要があります。

端数処理の方法と計算例

日割り計算で出た1円未満の金額(小数点以下)は、加算であれば「切り上げ」控除であれば「切り捨て」で処理します。

切り上げでの計算例

1円未満は1円として計算します。

計算結果が「130,000.01円」でも130,001円として支給

加算時は、このように処理すれば、従業員にとって不利益とはなりません。

切り捨てでの計算例

「130,000.99円」→130,000円で支給

支給額への切り捨ては「賃金の一部未払い」と見なされる可能性があるため、控除の場合にのみ行いましょう。

日割りの給与計算に含める賃金の範囲

日割りで給与を計算する際、すべての支給項目が対象になるわけではありません。

基本給や職務手当、役職手当などは日割り・端数処理の対象になりますが、通勤手当や家族手当などの定額支給項目は対象外とする企業もあります。支給条件や金額の算出基準に応じて、適用範囲を判断します。

基本給以外にも、手当や割増賃金などをどう扱うかを明確にすることが必要です。

基本的に手当は、生活の負担を補う福利厚生的な意味合いが強いものです。そのため、日割りにする理由がないケースが多くなります。例えば、住居手当や扶養手当は、出勤日数によってその必要性が左右される性質のものではありません。

そのため、これらの手当について合理的な日割り計算の根拠がない場合には、満額を支給する扱いとするのが望ましいといえます。また、どの項目を日割り対象にするかは、就業規則または賃金規程で明記しておくと、従業員との認識違いを防げます。

給与計算における日割りの端数処理の具体例

実際の給与計算で日割り計算と端数処理がどのように適用されるかを、具体的な例を挙げて説明します。これにより、計算のイメージがより明確になります。

月の途中入社の場合の給与計算例

月給25万円の従業員が、2025年5月15日に入社し、その月の所定労働日数が20日(土日祝を除く平日)であった場合の給与計算例を挙げます。会社の賃金規程では、日割り計算の端数は切り上げとします。

この場合、5月の勤務日数は、15日から31日までの所定労働日数である13日となります。

日割り計算の式は、「月給 ÷ その月の所定労働日数 × 実際の勤務日数」です。

250,000円÷20日×13日=162,500円

この例では端数が発生しませんが、もし計算結果が162,500.3円など端数が生じた場合には、162,501円として処理し支給します。

欠勤控除の給与計算例

月給25万円の従業員が、2025年5月に2日欠勤し、その月の所定労働日数が20日(土日祝を除く平日)であった場合の欠勤控除額と支給額の計算例を挙げます。会社の賃金規程では、欠勤控除額の端数は切り捨てとします。

欠勤控除額は、「月給 ÷ その月の所定労働日数 × 欠勤日数」で計算します。

250,000円÷20日×2日=25,000円

この例では端数が発生しません。もし計算結果が25,000.9円であった場合、切り捨てて25,000円となります。

支給額は、「月給 − 欠勤控除額」で計算します。

250,000円−25,000円=225,000円

欠勤・遅刻・早退時の給与計算と端数処理

従業員の欠勤や遅刻、早退は、給与から控除する対象となります。これらの場合にも、給与計算と端数処理のルールを適用し、適切に賃金を調整します。

欠勤控除の計算方法と端数処理の適用

欠勤による控除は、「ノーワーク・ノーペイ(働かなかった分は支払わない)」の原則に基づき、以下の式で計算されるのが一般的です。

基本給 ÷ 月の所定労働日数 × 欠勤日数

例えば、月給300,000円、所定労働日数が20日で2日欠勤した場合:

300,000 ÷ 20 × 2 = 30,000円

この金額に1円未満の端数が出た場合は、賃金規程に基づいて「切り捨て」で処理します。

支給額と異なり、控除額を切り上げることは従業員に不利益となるため、実務では切り捨てが採用されています。どの方法を使うかは、事前に明記しておくことが必要です。

遅刻・早退控除の計算方法と端数処理の適用

遅刻・早退は、時間単位での控除となるため、より細かな計算が求められます。以下のように計算されます。

基本給 ÷ 月の所定労働時間 × 遅刻・早退時間

月の所定労働時間は、「1日の労働時間 × 月の所定労働日数」で算出します。

例えば、月給300,000円、1日8時間、20労働日で計算する場合:

1ヶ月の所定労働時間=8時間 × 20日=160時間
時間単価=300,000 ÷ 160 =1,875円
30分の遅刻(0.5時間)の場合:1,875 × 0.5 =937.5円

この場合も、「0.5円」の端数処理が必要になります。

労働時間の端数処理との違い

厚生労働省は、月単位で集計した時間外労働時間の端数について、30分未満の切り捨て、30分以上の切り上げを認めています(時間外労働時間の端数処理)。

ただし、これは「時間」の処理であり、給与額の端数処理とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。

給与端数処理のタイミングと締め日・退職時の考え方

給与の端数処理は、どの時点で行うかによって結果が異なることがあります。締め日や退職日が月途中になる場合など、処理タイミングに注意が必要です。

給与締め日が月途中にある場合

多くの企業では「毎月15日締め、25日払い」など、月途中を締め日に設定しています。このようなケースでは、締め日までの勤務実績をもとに日割り計算を行い、1円未満の端数が出た時点で処理を行うのが一般的です。

例えば、15日締めで5月1日〜15日の分を計算する場合、その期間の勤務日数をもとに給与を按分し、支給額を算出します。そこで生じた端数(たとえば「154,320.8円」など)をその時点で処理します。

月途中の退職時における端数処理

退職日が月途中にある場合、給与は基本的に退職日までの勤務分を日割りで計算します。この際の端数も、1日あたりの給与計算の結果に応じて処理されます。

例えば、月給300,000円、30日で1日10,000円の社員が、5月12日に退職した場合:

10,000円 × 12日 = 120,000円

この計算で「120,000.4円」などの端数が出た場合には、規定された方法で処理します。

退職月の処理は最終支給であるため、端数による差額でも「未払い」と受け取られる可能性があるため慎重な扱いが求められます。

実務での注意点

締め日と退職日のズレには規定を用意する

よくある注意点として、まず挙げられるのが締め日と退職日がずれている場合の対応です。

例えば、15日退職で月末締めの企業では、どこまでを勤務期間とみなすか、どの時点で端数処理を行うかを就業規則などに明記しておくことで、計算上の混乱を防ぐことができます。

精算項目にも端数処理ルールを適用する

退職後に発生する残業手当や通勤費などを最終給与に合算して支給する際も、合計金額に対して端数処理を行う必要があります。このとき、処理方法が項目によって異なっていると不公平感を招くため、処理方法はすべての支給・控除項目で統一するのが望ましいです。

締め日ベースで処理するのが基本

実務では、給与の締め日時点で端数処理を行うことが基本とされています。締め日で計算を完結させることで、1,000円未満の繰り越しや次月への調整を避け、トラブルや手間を減らすことができます。

繰り越し処理には規定の明記が必要

企業によっては、1ヶ月の賃金支払い額において生じた1,000円未満の端数を翌月に繰り越す運用を行っている場合もあります。このような処理は、法に触れるものではありませんが、その場合は必ず就業規則や賃金規程に記載し、従業員に説明しておくことが必要です。規定がなければ、繰り越し処理はトラブルの元になりかねません。

退職月の説明も事前に行う

退職月の給与処理では、日割り計算のルールや支払タイミングを事前に説明しておくことが、従業員の安心と納得につながります。たとえ小さな端数であっても、退職時は敏感になりやすいため、明確な対応が求められます。

給与計算の日割りの端数処理は就業規則(賃金規程)へ記載し周知する

給与の端数処理方法は、就業規則や賃金規程に明記することでトラブルを防げます。規則に記載するだけでなく、新入社員への説明や制度変更時の案内などを通じて、社員にルールを正しく伝えることも重要です。

1. 日割り計算の基準

どの日数を基準にして月給を日割りするかを明示します。

  • 例:「日割り計算は、当月の暦日数を基準とする」「年間所定労働日数の1/12を基準とする」

2. 端数処理の方法

1円未満の金額をどう扱うかを明確にします。

  • 例:「1円未満の端数が生じた場合、加算時であれば切り上げる」「1円未満の端数が生じた場合、控除時であれば切り捨てる」

3. 処理の単位

処理を行う最小単位を決めておきます。

  • 例:「1円未満の端数処理は1円単位で行う」「1,000円未満の端数は翌月の給与支払日に繰り越す」

4. 支給・控除への適用範囲

支給や控除の対象となる賃金項目ごとに、端数処理の適用を明確にします。

  • 例:「基本給、役職手当、残業手当については日割り計算を行う」「通勤手当は定額支給とし、端数処理は行わない」

5. 締め日と退職日の取り扱い

締め日・退職日が月途中になる場合の支給基準と処理タイミングを記載します。

  • 例:「月途中で退職する場合は、退職日までの日数に基づき日割り支給を行い、1円未満は切り上げる」

記載例(就業規則または賃金規程)

第〇条(賃金の日割り計算および端数処理)月給を日割りで計算する際は、当月の暦日数を基準とし、当月の給与をその日数で割って1日あたりの賃金を算出する。

勤怠控除により1円未満の端数が生じた場合は、切り捨て処理する。

通勤手当については定額支給とし、日割り・端数処理の対象外とする。

給与計算での日割りの端数処理は切り上げか切り捨て

給与計算における日割りの端数処理では、1円未満の端数をどう扱うかをあらかじめ決めておくことが大切です。

加算時は切り上げ、控除時は切り捨てるように処理すれば、従業員にとって不利益とはなりません。処理方法や基準は就業規則や賃金規程に明記し、従業員に周知することで、計算の統一とトラブルの防止につながります。

関連:賃金規程とは?作成の流れやポイント、開示義務について解説


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