- 更新日 : 2025年7月14日
離職票の電子申請のやり方|紙申請との違いやメリット・デメリットを解説
従業員の退職時には、離職票を発行します。離職票は離職者が労務担当者でない限り、企業が作成するものですが、作成には時間を要します。
そのため、離職票の作成時間を削減するなら、電子申請の活用が有効です。離職票の電子申請は、e-Govポータルで「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)」の手続きをして作成していきます。この記事では、離職票の電子申請のやり方を各ステップに分けて解説します。
目次
離職票とは
離職票(雇用保険被保険者離職票)とは、雇用保険の被保険者が退職し、再就職するまでに受ける給付を申請するために必要な書類です。
離職する従業員は、退職から再就職までの期間が空くと、十分な収入を得られず生活に困窮する可能性があります。離職期間の収入を補填してくれる雇用保険の給付は、多くの人が受給するものです。そのため、企業には離職票の発行手続きをする機会が頻繁に訪れます。
離職票の作成方法の違いを比較
離職票の作成方法は、紙で発行する場合と電子申請で発行する場合で異なります。それぞれの方法の具体的な違いを解説していきます。
紙での作成
紙で離職票を作成する場合は、ハローワークが用意する指定の様式に、被保険者番号や離職年月日、賃金支払基礎日数などを記載します。比較的アナログな方式ですが「どこにどの情報を記載するのか」「何のためにこの情報を記載するのか」を覚えられます。よって、手続きに関する知識や理解を深めやすいです。
一方で、離職票の記入内容を間違えてしまうと、二重線での取り消しや訂正印の押印などの処理が必要です。慣れていても作成には時間がかかり、ほかの業務に充てる時間が少なくなってしまう場合もあります。
電子申請での作成
電子申請で離職票を作成する場合は、e-Govポータルで手続きします。必要な情報はパソコンで入力するため、書類への本人署名や押印も不要です。提出もWeb上でできるため、ハローワークに提出する際の交通費や郵送代などの経費削減もできます。
さらに、e-Gov対応の人事労務システムを活用すれば、すでに登録されている従業員情報や給与情報を反映して離職票が作成でき、より効率的な処理が可能です。ただし、システムごとに異なる電子申請の手続きには慣れが必要で、あらかじめ手順をおさえておく必要があります。
離職票の電子申請を利用するメリット
離職票の電子申請は、事務効率化ができる点や、時間の縛りなく利用できる利便性が強みです。それぞれのメリットを詳しく解説します。
作成の手間が減り事務を効率化できる
離職票を電子申請で作成することで、手間が減り事務の効率化が期待できます。
紙での作成は手書きとなるため、記入ミスの可能性があります。ミスしてしまうとその都度書き直したり、訂正処理をしたりしなければなりません。また、書類はハローワークに直接持ち込むため、ハローワークとのやりとりで時間を取られることもあります。
電子申請なら、パソコンで入力していくため、訂正時の二重線処理などは不要です。入力必須の項目についてはチェック機能もあり、入力漏れがないか確認しながら進められます。
加えて、ポータルサイトで手続きが完結するため、ハローワークへの連絡は質問や相談したいことがあるときなど、必要最低限で済みます。離職票を電子申請すると、作成にかかる時間を減らせるため、別の業務をする時間を増やせるのです。
24時間365日いつでも申請ができる
電子申請は、24時間365日いつでも離職票の作成・申請が可能です。「職場に行かないと作成できない」といった制約がなく、自宅や外出先でも作成できるため、多様な働き方にも対応しやすくなります。
提出もハローワークの窓口へ行く必要はなくシステム上で完結するため、そのまま審査に進み内容を確認してもらえます。
ペーパーレスの実現が期待できる
電子申請で離職票を作成すればペーパーレス化が進み、印刷費や紙代の削減が可能です。
たとえば、マイナポータルを経由して離職票を交付すれば、離職者がマイナポータル上で離職票を受け取れるようになるため、紙に印刷して郵送する手間が省けます。
また、作成した書類の控えはパソコン上でデータとして保管でき、キャビネットや書棚の収納スペースを圧迫しません。紙ベースでの作成から移行すれば、事務効率化だけでなくコストの削減も期待できます。
離職票の電子申請を利用するデメリット・注意点
電子申請はWeb上での手続きに慣れないと難しく感じやすいです。また、電子申請するには事前に作成環境の整備もしなければなりません。デメリット・注意点を解説していきます。
入力フォームなどの操作に慣れる必要がある
電子申請はe-Govポータルで専用の入力フォームを用いて行います。そのため、Web上でのシステムの操作や取り扱いに慣れていく必要があります。
とくに、これまでの経験から労務業務の知識が十分にあり、紙での発行に慣れている担当者にとっては、新しいシステムへの移行に抵抗を感じる場合があるかもしれません。電子申請に慣れるまでは、かえって紙での作成より時間がかかる可能性もあるでしょう。そのため、何度か離職票の電子申請手続きを経験し、操作に慣れていくことが重要です。
申請にはインターネット環境が必須
電子申請はオンラインで行うため、安定したインターネット環境がなければ離職票の作成ができません。自社の通信環境を今一度確かめてみるとよいでしょう。
また、自社の通信環境に問題がなくても、e-Govのシステム障害やメンテナンスなどが発生している間は、電子申請ができません。もし障害が発生している場合やメンテナンス中の際は、利用する日時をずらすか、急ぎであれば紙で発行するといった形で対応しましょう。
GビズIDや電子証明書を登録しておく必要がある
雇用保険の手続きで電子申請をするには、GビズIDや電子署名のための電子証明書が必要です。
GビズIDとは、事業者を対象とした共通認証システムで、ひとつのアカウントで複数の行政手続きの電子申請ができるものです。IDを発行する際には、代表者の身元確認が求められます。
電子証明書は、紙の取引における印鑑証明書のような役割を果たし、本人であることを電子的に証明します。電子申請では押印の代わりに電子署名を行いますが、この際に電子証明書がないと、書類の作成者が間違いなく企業の代表者であることを証明できません。そのため、離職票を電子申請する際は必ず用意しなければなりません。
なお、電子証明書には利用料がかかり、有効期間によって料金が異なります。いくつかの期間ごとの料金を見てみましょう。
期間 | 手数料 |
---|---|
1ヵ月 | 500円 |
3ヵ月 | 1,100円 |
6ヵ月 | 2,000円 |
12ヵ月 | 3,800円 |
24ヵ月 | 7,400円 |
本格的に電子申請での離職票発行に切り替えるのであれば、有効期間を長めに設定しておくとよいでしょう。
離職票の電子申請のやり方
離職票の電子申請の手順は以下のとおりです。
- マイナンバーを被保険者番号に登録する
- e-Govポータルでアカウントを作成する
- 雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)の手続きを始める
- 申請書類一式を作成する
- 電子署名をして提出する
- 審査完了後に離職票をダウンロードする
手順をおさえて、スムーズに離職票の作成を済ませましょう。
1. マイナンバーを被保険者番号に登録する
はじめに、離職者のマイナンバーが雇用保険の被保険者番号に登録されているかどうかを確かめます。
登録状況の確認は、離職者本人がマイナポータルで行います。もし登録されていない場合は、事業主が「個人番号登録・変更届」を管轄のハローワークに提出してください。
2. e-Govポータルでアカウントを作成する
マイナンバーの確認ができたら、実際の申請作業に入ります。申請はe-Govポータルで行うため、初めて利用する場合はアカウントを作成しましょう。
e-Govポータルのアカウントはメールアドレスとパスワードを設定すれば作成できます。離職票の作成を担当する職員が共通で利用できるアドレスで、アカウントを作成しましょう。
また、申請には電子証明書やGビズIDが必要です。事前にすべての準備が整っているか確かめ、すぐに手続きに入れる状態にしておきましょう。
3. 雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)の手続きを始める
e-Govポータルのアカウントが作成できたら、ポータルにログインしましょう。e-Govポータルのマイページ画面から「手続検索」を選び「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)」と入力して検索してください。
該当する手続きが表示されたら選択し「申請書入力へ」を押して申請を始めましょう。
4. 申請書類一式を作成する
まずは、申請者情報や企業の連絡先などを入力します。その後、申請書の詳細の入力に進みましょう。
入力が必要な箇所は黄色く色付けされているため、その部分を埋めていく形で作成します。就業規則や退職届などの添付書類を追加する場合は「書類を添付」ボタンを押して、各種書類を添付してください。
申請書の入力後は電子署名をしますが、従業員の署名の代わりに確認書を提出する場合は、この時点で忘れずに添付することが重要です。書類の入力や追加書類の添付が完了したら、提出先となる管轄のハローワークを選んで、作成を完了しましょう。
5. 電子署名をして提出する
書類の作成が終わったら、電子署名をします。「内容を確認」を押すと電子署名の画面に移るため「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」のチェックボックスが選択されていることを確認しましょう。
次に「設定」から電子証明書を選択して添付します。添付が完了したら、申請書の内容を最終確認して、提出ボタンを押してください。
提出後はハローワークで書類審査が行われ、審査が完了するとメールで通知が届きます。e-Govポータルのマイページにアクセスして「お知らせ」を押して審査結果を確かめましょう。なお、審査は通常1〜3日程度で完了します。
6. 審査完了後に離職票をダウンロードする
審査に通過したら、交付されたデータをダウンロードします。まずはe-Govポータルの「公文書」の項目から、該当の「到達番号」を押してください。次の画面で「公文書ダウンロード」ボタンをクリックして、データをパソコンに保存しましょう。
保存したデータは、印刷して離職者に渡してもよいですし、メールなどでデータとして渡しても構いません。離職者に渡すものは以下の3点です。
- 雇用保険被保険者離職票-1、資格喪失確認通知書(被保険者通知用)
- 雇用保険被保険者離職票-2
- 雇用保険被保険者離職票-2裏面
離職者への交付が完了すれば、手続きは終了です。離職者への交付と併せて、事業主宛の控えや通知も保存しておきましょう。
マイナポータルで離職票を受け取ってもらう際の電子申請のやり方
離職者にマイナポータルで離職票を受け取ってもらう際は、企業の電子申請手続きの前後に、離職者側での作業が必要になります。
それぞれの手続きを解説します。
【申請前】離職者に雇用保険WEBサービスへの連携をしてもらう
企業が電子申請をする前には、離職者本人にマイナポータルへログインしてもらい「雇用保険WEBサービス」との連携設定をしてもらう必要があります。
雇用保険WEBサービスに連携すれば、離職票をマイナポータルで受け取れるようになります。連携手続きは離職者本人がする必要があるため、手続きを始める前に、離職者へ退職前までにマイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携をしてもらうよう案内しておきましょう。
また、マイナンバーが被保険者番号に登録されていないとサービス連携ができません。マイナンバーが被保険者番号に未登録の場合は、忘れずに「個人番号登録・変更届」の届出をしましょう。
【申請後】離職票をマイナポータル経由で受け取ってもらう
企業による電子申請が完了し、審査に通過すると、離職票をマイナポータル上で取得できるようになります。
企業側は、審査完了のお知らせを確認する際に「離職者本人へマイナポータル上で直接交付しております」という記載があることを確認してください。この記載があれば、離職者がマイナポータル上で離職票をダウンロードできる状態となっています。
記載を確認したら、離職者にその旨を連絡して、書類を受け取ってもらいましょう。マイナポータル経由で離職票を交付する場合は、この連絡をもって企業側の手続きは完了です。
離職票の申請に関するよくある質問
離職票の申請に関してよく寄せられる質問や疑問をまとめました。従業員が離職予定の際の参考としてください。
離職票をデータでもらうことは可能ですか?
離職者が離職票をデータで受け取ることは可能です。企業は、離職票をマイナポータル経由で交付する際、離職者に「ハローワークでの手続きではスマートフォンの画面でデータを提示すれば問題ない」という旨を伝えておきましょう。
ただし、マイナポータルを経由せず企業からメール等で直接データを受け取った場合は、ハローワークでの手続きの際にそのデータを印刷して持参する必要があります。離職者が混乱しないよう、あわせて伝えておくとよいでしょう。
離職票はどういったときに必要ですか?
離職票は、雇用保険の基本手当(失業給付)を受け取る手続きをハローワークでする際に必要な書類です。基本手当は収入補填の役割を担うため、退職後の生活において重要な制度です。
退職する従業員から離職票発行の希望がなくても、退職からしばらくしてから発行を希望されることもあることから、企業としては退職時に発行しておいたほうがよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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