• 更新日 : 2025年7月14日

若手社員の離職防止策は?離職の原因や対策方法もあわせて解説

現在、若手社員の約3割が入社から3年以内に離職していると言われています。しかし、早期離職は企業にとって、採用・教育コストの喪失だけでなく、組織全体の士気低下やブランドイメージの悪化など、多岐にわたる深刻なダメージをもたらすものです。

本記事では、若手社員の離職動向を踏まえながら、主な離職原因や、離職防止に有効とされる7つの施策を紹介します。若手社員が自らの未来を描きやすい職場環境づくりの参考にしてみてください。

若手社員の離職率

若手社員の早期離職は、いまや日本社会全体の課題といえます。厚生労働省の調査によると、大学を卒業して就職した新卒社員のうち、3年以内に退職する割合は34.9%です。3人に1人が3年以内に職場を離れていることとなります。

これは一時的な傾向ではなく、1990年代以降ほぼ横ばいで推移しており、構造的な問題といえるでしょう。背景には、待遇への不満やキャリア観の多様化、成長実感の欠如などが複雑に絡み合っています。

中でもZ世代と呼ばれる20代の社会人は、働きがいや環境の良さ、プライベートの尊重を重視する傾向があり、従来の我慢してでも今の職場で働くといった価値観とは、ズレが生じています。

こうした早期離職の現状を、正しく理解することが若手社員の定着施策の第一歩です。

参考:学歴別就職後3年以内離職率の推移

若手社員の離職率が高い業界

どの業界に若手離職者が多いかを把握することは、対策を考える上で重要です。厚生労働省のデータによると、大卒社員の就職後3年以内の離職率がとくに高いのは、「宿泊業・飲食サービス業(56.6%)」や「生活関連サービス業・娯楽業(53.7%)」「教育・学習支援業(46.6%)」となっています。

こうした業界に共通するのは、労働時間の長さや休日の取りづらさ、人手不足による過重労働です。加えて、給与水準やキャリアアップの見通しが不透明な場合、早期離職につながる傾向があります。

一方、製造業やインフラ関連の業界は比較的離職率が低く、安定性やスキルの蓄積が理由として挙げられます。業界特性と職場環境が、若手社員の定着に大きな影響を与えているのです。

参考:
新規大卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)
新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します

若手社員が離職する原因5つ

若手社員が離職するおもな原因を、ここでは5つ解説します。

仕事内容にやりがいを感じない

若手社員が早期離職を決意する背景には、仕事にやりがいといった意味を感じられない点があります。とくにZ世代と呼ばれる今の若手社員は、ただ働くだけでなく「自己成長」や「社会貢献性」といった要素を強く求めます。単なるルーティン業務や目的が不明瞭な作業が続くと、退職の引き金になりやすいでしょう。

やりがいは曖昧な感情ではなく、キャリアの方向性と仕事内容の一致によって生まれるものです。企業はその業務がどのような価値を生み出しているか、若手社員に伝える必要があります。その上で、定期的なフィードバックを実施し、若手社員自身がやりがいを感じられるよう、サポートすることが大事です。

人間関係が良くない

職場での人間関係、特に上司との関係は若手の離職に直結します。パーソル総合研究所の調査では、20代正社員の約5人に1人がメンタル不調を経験しているとされ(男性18.5%、女性23.3%)、そのうち約4割が、そのまま退職に至っています。

心理的安全性が確保されない職場では、若手は相談もできず孤立しやすく、離職リスクが高まるでしょう。そのため、感情面のケアと適度な距離感を兼ね備えたマネジメントが求められます。定期的な1on1や相談体制の整備によって、安心して話せる環境を構築することが、若手社員の定着には不可欠です。

参考:若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査

給与や残業量などに不満がある

「労働条件の不満」は若手の退職理由として非常に多く挙げられています。厚労省の調査では、20〜24歳男性の離職理由のトップは「労働時間、休日等の労働条件が悪かった(11.4%)」です。次いで「給与等収入が少なかった(10.5%)」が並びます。

SNSや転職サイトから他社の待遇情報が簡単に手に入る今の時代は、若手社員は比較して諸条件や待遇に納得ができないと、即座に転職を考える傾向があるとされます。待遇面の透明性と改善が、優秀な若手社員の離職を防ぐカギといえるでしょう。

参考:令和5年雇用動向調査結果の概況

キャリアビジョンが変化した

現代の若手社員は、働くことを「組織の一部」となることと考えず、自分自身の価値やキャリアの成長に重きを置く傾向があります。その結果、若手社員の多くが「キャリアの明確化」や「自己成長」を仕事選びで重視しており、副業や転職に前向きな姿勢を持っています。

こうした理由から、企業内に明示的なキャリアパスや学びの場がなければ、「自分らしい働き方」を求めて離職を選ぶ可能性が高まるでしょう。企業は自律型キャリアを支援しながら、定期的なキャリア面談や社内公募、スキル開発制度などによって、一人ひとりに伴走する姿勢が不可欠です。

ストレスが多い

プレッシャーや過剰な業務負荷のある職場環境は、若手社員の離職を加速させるでしょう。具体的には、短納期や高すぎるノルマ、先輩との業務比較などは、入社早々から強いストレス状態に陥るケースが少なくありません。

日本では、10代から20代の若年層で仕事関連のメンタル不調が43.9%に達しています。また、その多くが職場環境に起因するとされます。この状況を防ぐには、階層的な成長を支えるマネジメント体制が不可欠です。具体的には、業務量の適正化や締め切りの現実的な設定、段階ごとに目標を調整するといった取り組みが必要です。こうした取り組みが、若手社員のストレスを軽減させ、離職防止へとつながります。

参考:第11回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果|公益財団法人日本生産性本部

若手社員の離職防止が大事な理由

若手社員が離職すると、企業にはさまざまなデメリットが生じます。ここでは具体的に4つの企業損失を解説します。

採用や教育コストの無駄が発生する

若手社員が早期に離職すると、企業は多額の採用・育成投資をほぼ回収できなくなり、大きな損失となるでしょう。実際に、新卒1人あたりの採用費用は、約100万円と言われており、早期離職が続くとこれら費用が無駄になります。

さらに、3ヶ月以内の離職の場合では、教育費用が追加の損失として発生します。早期定着が進まなければ、企業の金銭・人的コストは雪だるま式に増加するのです。採用戦略や短期離職リスクを見直し、費用対効果を高める取り組みが喫緊の課題となっています。

参考:就職白書2020

企業イメージが低下する

若手社員の離職が続くと、企業の評判にネガティブな影響が広がります。離職率や社員の口コミは、転職サイトやSNSで急速に拡散され、就職活動中の求職者が重要な判断材料として注視しています。

「社員が長続きしない会社」というイメージが定着すると、応募数が減少し、優秀な人材の確保にも深刻な打撃を与えるでしょう。打開するには、離職率改善を通じて、企業ブランドを再構築することが不可欠です。

職場環境の改善や働き方の魅力を外部に発信し、内部では定着率を高める具体策を講じる必要があります。たとえば、社員のポジティブな発信を支援したり、口コミ改善のための定期的な社員満足度調査をしたりするなど、総合的なアプローチが効果的です。

知識・ノウハウが社内に蓄積されず、生産性が上がらない

若手社員が離れると、企業に蓄積された専門知識や顧客情報などが失われ、その結果として生産性が低下します。離職者が引き継ぎ不足で去ると、社内でナレッジの蓄積がなされず、退職後は業務の中断や手戻りが発生しやすくなるでしょう。また後述しますが、高い離職率はチーム内の信頼関係や業務の流れを乱し、残った従業員にも負荷がかかる状況を生み出します。

若手社員の早期離職の対策は、単なる欠員補充では済みません。組織全体の知的基盤と業務効率に深刻な悪影響を与えるため、抜本的な対応が早期に重要です。

既存社員に負担がかかる

若手離職後は、残った社員の業務量や精神的負担が増えることが多いです。欠員が出ると他メンバーがその分の業務を補う必要があり、労働負荷や残業時間が増加しやすくなります。

そして、業務過多は「ドミノ離職」の引き金にもなり、組織のモチベーション低下、継続的な離職という悪循環を招くでしょう。

結果として、組織全体の安定性や生産性が損なわれるリスクが高まります。心理的安全性やフォロー体制を整える施策が、全社的に求められます。

若手社員の離職防止に有効な対策

若手社員の離職防止に有効な対策を7つ解説します。

柔軟なワークスタイルの検討

若手社員の離職防止には、働き方の多様さが重要です。在宅勤務やフレックス制度など、多様な働き方の制度導入は、若手の離職抑止に効果的です。サイボウズ株式会社では「100人100通り」の働き方を実現する制度を導入し、かつて28%だった離職率を現在3〜5%まで改善させました。

単に新たな制度設計をするのではなく、社員個々のライフステージや志向を尊重する仕組みとして機能させられれば、満足度向上や離職防止に有効です。若手社員にとって、自分らしく働ける実感は何かを社内で定義し、定着率アップにつながる制度導入をすすめましょう。

参考:人事ポリシー | サイボウズ株式会社

業務量と労働時間の適切な管理

若手社員にとって、業務負荷が過剰だと早期離職の引き金になります。前述した通り、厚生労働省の調査でも、労働時間や休日の不満が20~24歳の離職理由のトップとなっています。実際に過重労働はメンタル不調の大きな要因であり、企業は対策を取る必要があるでしょう。

企業は勤怠管理システムの導入をしたり、労働時間の長さを評価しない方針を確立させたり、部門間での業務見直しをさせる取り組みが有効です。こうした取り組みにより、若手は自身の時間を尊重されていると感じ、心と体の余裕が生まれて定着につながるでしょう。

メンター制度の実施

メンター制度は、若手社員の定着において有効です。厚生労働省によれば、メンター制度を導入した企業では、メンティーの定着率向上や職場適応力の改善が報告されています。先輩との関係性構築を通じて業務の不安解消や心理的安心感が得られ、結果として離職抑制につながっているのです。

さらに、定期的な1on1面談と併用することで、相談しやすい環境が生まれ、若手の声を拾いやすくなります。このように、制度として形式的に取り入れるのではなく、継続的な対話を通じて信頼関係を育むことで、メンター制度は若手社員の安心感とエンゲージメント向上という成果を実現できるでしょう。

参考:メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル

研修やオンボーディングの充実

新人が安心して業務に馴染める環境は、離職防止に直結します。業務マニュアルやOJT、チェックリスト、研修などを整備し、標準化された教育体制を整えることで、誰もが安心して成長できる仕組みを構築可能です。

加えて、メンター制度を導入すれば、学習支援と心理的サポートを両立でき、定着率が飛躍的に改善されます。前述した通り、適切なメンター制度の導入は、職場定着率や職場適応力へ良い影響がある点がわかっています。

包括的な育成体制が構築できれば、若手社員に「この会社で長く育ててもらえる」という安心感を与え、結果として離職意欲を大幅に低減させる効果が期待できるでしょう。

透明性の高い人事評価制度の導入

若手社員は評価制度への納得感がなければ、企業への信頼を失いがちです。旧来の相対評価や曖昧な基準では、「何を頑張れば評価されるか」が不明瞭で、モチベーションが低下し離職を選ぶケースが増加します。

企業が評価制度を見直す際は、相対評価から透明性の高い絶対評価への移行が重要です。たとえば、スキルや行動・成果を可視化し、公開する取り組みが、定着率向上に寄与します。

公正さが担保されることで、社員は「何をすれば評価されるか」が明確になり、納得して働けるようになるでしょう。その結果、成長実感が高まり、組織への信頼が形成され、結果的に離職率の改善につながるのです。

社内キャリアパスの提示と支援

将来への道筋が見えないと、若手社員の離職意欲は高まります。キャリア支援制度や定期的なキャリア面談により、「自分がこの企業でどこまで進めるのか」といった社内キャリアパスを明確にすることが重要です。また、社内にロールモデル制度を構築し、自己成長を促すよう働きかける企業もあります。

これにより、現場での努力がどこに活かされるかを実感でき、今後自分はどのような道を歩めば良いかがわかり、企業に希望を感じやすくなります。キャリアの見える化と支援体制は、若手社員の辞めない意思を育む有効な施策です。

社内コミュニケーションの活性化

日常的にさまざまな対話の場があると、若手社員の帰属意識は高まり、離職率にも良い影響が見込めます。社内コミュニケーションの取り組みは多岐にわたります。1on1やコミュニケーションツールの導入、ランチ会や社内部活といったイベント開催、フリーアドレス制の導入など、多数の仕掛けを講じることが可能です。

こうした自然とコミュニケーションが生まれる文化や制度を導入すれば、若手社員だけでなく、企業全体の風通しが良くなります。安心感が持たれやすくなった結果、離職防止につながるでしょう。


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