- 更新日 : 2025年7月14日
次の会社が決まっている場合でも離職票はいる?必要な理由や受け取るまでの流れも解説
離職票は、会社を辞めた労働者が失業保険を申請する際に必要な書類で、退職時に会社に発行の手続きをしてもらいます。次の会社が決まっている場合、現在の会社の離職票が必要なのか、気になる人がいるかもしれません。
本記事では、次の会社が決まっている場合に離職票を受け取ったほうがよいかどうかを解説します。
目次
次の会社が決まっている場合、離職票を受け取ったほうがよい
次の会社が決まっている場合でも、離職票は受け取ることをおすすめします。
離職票を使用する場面の代表例として、会社を退職した労働者が失業保険を申請するために、ハローワークへ提出するケースが挙げられます。そのため、転職先が決まっている状態で会社を辞める場合は、離職票は不要であると考えがちです。
しかし、新しい会社に入社した後も、離職票が必要になる可能性はあります。
次の会社が決まっている場合でも離職票を受け取るべき理由
ここからは、次の会社が決まっている場合でも、離職票を受け取るべき理由を2つ解説します。
転職先をすぐ辞めてしまう可能性があるから
新しい会社に入社したものの、仕事内容や人間関係が自分に合わず、短期間で辞める可能性はゼロではありません。新しい会社を辞めた後、次の仕事がすぐに決まらない場合、失業保険を受給することで転職活動中の収入を安定させられます。
しかし、失業保険を受給するには、原則として辞める日より前の2年間に12ヶ月以上の被保険者期間が必要です。新しい会社を1年未満で辞めた場合、その期間だけでは受給資格を満たせません。
転職前の会社を退職してから新しい会社に入社するまでの期間が1年以内であれば、両者の被保険者期間を合算して受給資格を判定できます。被保険者期間を合算して失業保険を申請するには、転職前・転職先の両方の離職票を持参する必要があります。
新しい会社をすぐに辞めて失業保険を申請する可能性を考慮すると、次の会社が決まっていても離職票を申請したほうが安心です。
育児休業給付の受給に関わる可能性があるから
育児休業給付は雇用保険の給付で、労働者が育児休業を開始した際に、一定の要件を満たすことで支給されます。原則的な支給要件の一つとして、休業開始前の2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上あることが挙げられます。しかし、新しい会社に転職して1年以内に育児休業を開始する場合、新しい会社の被保険者期間だけでは支給要件を満たせません。
失業保険の場合と同様、転職前の会社を辞めてから新しい会社に入社するまでの期間が1年以内であれば、転職前の被保険者期間も含めて受給資格を判定できます。転職前の被保険者期間も含めて育児休業給付を申請する際は、転職前・転職先の両方の離職票が必要です。
育児休業給付金は、収入が落ちてしまう育児休業中において、生活の支えとして重要な役割を持ちます。転職後、1年位内に育児休業が始まりそうな場合は、前職の会社から離職票を受け取っておきましょう。
次の会社が決まっている場合に失業保険は受給できる?
失業保険は、就職できる状況にあるものの、職業に就けない人に向けた制度です。そのため、すでに次の就職先が内定している人は、職業に就ける状態であるため受給できません。
退職日から新しい会社の入社日まで期間が空いている場合でも、就職先が決まっている以上、失業保険で空白期間の収入を補填することは不可能です。そのため、転職先へ入社するまでの間に失業保険を受け取る目的で、離職票を請求するケースは基本的にありません。
そもそも離職票とはどのような書類?
離職票とは、雇用保険に加入していた労働者が、会社を辞めた旨を証明する書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれます。会社の人事担当者が、労働者が離職する旨をハローワークに届け出ることで発行されます。
離職票は「離職票-1」「離職票-2」の2種類で1セットです。「離職票-1」には、退職した労働者の氏名や被保険者番号、個人番号などが記載されます。「離職票-2」では、離職理由や退職前6ヶ月間の賃金支払状況などを確認できます。給付額の決定に必要な情報が網羅されているため、失業保険や育児休業給付を申請する際に必要な書類です。
離職票を受け取るまでの流れ
ここからは、労働者が会社を辞めるときに、離職票を受け取るまでの流れを解説します。
1. 会社に離職票の交付を希望する
離職票は、労働者からの請求に応じて交付される書類です。労働者から申し出がないと、離職票が送付されない可能性があります。会社から送付を希望するか尋ねられるケースが多いですが、何も言われない場合は、自分から交付してほしい旨を忘れずに伝えましょう。
交付の希望は口頭で伝えても問題ありませんが、メールやチャットツールなどで文面に残すと「言った・言わない」のトラブルを避けやすくなります。
なお、退職する労働者が59歳以上の場合は必ず交付されるため、自分から希望を伝える必要はありません。
2. 会社がハローワークに離職票の交付を申請する
労働者が離職票の送付を希望する旨を伝えると、会社側でハローワークに届け出るための手続きが進められます。
会社は、離職票を発行してもらうために必要な「雇用保険被保険者離職証明書」を準備します。ほかにも、労働者の被保険者資格の喪失を届け出るための書類を準備しなければなりません。
会社からハローワークへの届け出は、労働者が被保険者資格を失った日の翌日(退職日の翌々日)から10日以内に行います。
3. ハローワークが会社に離職票を交付する
会社から離職票の交付申請や、労働者の被保険者資格喪失に関する届け出がされると、ハローワークが内容を確認します。届け出の内容に不備がなければ、離職票の発行が進められます。
発行に要する日数は、ハローワークの混雑具合によって変わるため不明瞭です。毎年4月・5月の上旬は、就職や退職に関する手続きが集中するため、離職票の交付に時間がかかりやすくなります。
4. 会社が労働者に離職票を渡す
ハローワークからの発行が終わり次第、会社が労働者に離職票を渡します。郵送や手渡しで受け取れるほか、会社が電子申請を行った場合は、マイナポータルでの受け取りも可能です。あらかじめ会社に受け取り方法を確認し、指示に従いましょう。
退職から2週間以上が経過しても離職票が届かない場合、会社が手続きを失念している可能性が考えられます。会社に連絡を取り、手続きが進められているか確認しましょう。
離職票に記載される離職理由
離職票の「離職票-2」には、前の会社を離職した理由が書かれています。離職票を受け取ったら、離職理由が正しく記載されているかを確認してください。離職理由はさまざまな種類がありますが、大まかには以下の6つに分類されます。
- 事業所の倒産等によるもの
- 定年によるもの
- 労働契約期間満了等によるもの
- 事業主からの働きかけによるもの(解雇や希望退職の募集など)
- 労働者の判断によるもの(一身上の都合による離職や、事業所移転による通勤困難・ほかの労働者からの嫌がらせなど正当な理由での離職も含む)
- その他(上記の5つのケースいずれにも当てはまらない離職理由)
離職票に記載されている離職理由によって、失業保険の支給額が変わる可能性があります。記載されている離職理由が事実と異なる場合は、ハローワークに相談しましょう。
離職票を紛失した場合は再発行できる?
離職票を紛失した場合、再発行は可能です。再発行してほしい場合はハローワークへ申請しましょう。前職の会社を管轄するハローワークで申請すると、再発行がスムーズに進みます。
前職の会社に対しても再発行を依頼できますが、受け取りに時間がかかりやすいうえに会社の負担が増えるため、基本的には避けるほうがよいでしょう。
離職票を発行したことがない場合は前職の会社に問い合わせる
ハローワークに離職票を直接請求できるのは、原則として再発行してもらう場合に限ります。退職時に離職票の交付を希望していなかったものの、後から欲しくなった場合は、前に勤めていた会社に問い合わせる必要があります。
会社が発行の申請に関する書類を準備したり、ハローワークで書類の内容を精査したりする時間が必要なため、離職票を受け取るまでに1〜2週間かかることを想定しておきましょう。
離職票を再発行してもらう2つの方法
一度発行した離職票を紛失し、ハローワークに再発行してもらう場合、申請の方法が2つ存在します。ここからは、離職票を再発行してもらう2つの方法について、それぞれの詳細を解説します。
ハローワークの窓口で申請する
窓口で再発行してもらう場合は、前に勤めていた会社を管轄しているハローワークへ向かいます。庁内で「離職票再交付申請書」を渡されるので、自身の氏名や住所、前の会社の名称や所在地などを記入して窓口に提出してください。
申請の際は運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認ができる書類も提出するため、忘れずに持参しましょう。
なお、離職票が破損したために再発行してもらう場合は、破損した離職票もあわせて持参します。
郵送で申請する
郵送で申請する場合は以下の書類を準備して、前に勤めていた会社を管轄しているハローワークへ送付します。
- 離職票再交付申請書
- 本人確認ができる書類のコピー
- 離職票を返信してもらうための封筒
返信用の封筒には、自分の氏名・自宅の住所を記入し、切手を忘れずに貼りましょう。
郵送での申請は、ハローワークへ行く時間がない場合に便利ですが、受け取りまでに数日かかる点に注意が必要です。
離職票に関するよくある質問
最後に、離職票に関するよくある質問と、その回答内容を解説します。
離職票の交付は会社の義務?
会社が労働者の希望に応じて離職票を交付することは、雇用保険法で定められた義務です。労働者が希望しているにもかかわらず、会社が交付を怠った場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
法律で義務付けられている以上、会社が正当な理由なく交付を拒んでも、毅然とした態度で交渉して問題ありません。交渉しても手続きを進めてもらえない場合は、ハローワークへ相談して、会社に手続きを進めるように指導してもらいましょう。
前の会社の離職票はいつまで保管するべき?
転職先に入社してから1年が経過した後は、前の会社から送付された離職票は破棄しても問題ありません。離職票が必要になるのは、失業保険や育児休業給付を申請するときです。失業保険や育児休業給付を受け取るには、原則として12ヶ月以上の被保険者期間が求められます。
転職先に入社してから1年が経過するまでは、給付を受給するために前の会社の被保険者期間も合計する必要があるため、前の会社から送付された離職票も必要です。転職先に入社してから1年が経過した後は、転職先の被保険者期間だけで支給要件を満たせるため、前の会社から送付された離職票は不要になります。
離職票と退職証明書の違いは?
離職票と退職証明書は、発行元と用途に違いが見られます。退職証明書は、労働者の希望に応じて会社が任意で発行する書類です。退職後に親族の扶養に入る際、直近の会社を退職した証明として親族の勤務先に提出します。
一方、離職票はハローワークから発行される書類で、失業保険や育児休業給付の申請時に必要です。退職した旨を証明する点は同じですが、使い方が全く異なるため混同しないように注意してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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