• 更新日 : 2025年7月14日

体力の不足で特定理由離職者になる場合の証明書は?失業保険を受給する流れも解説

特定理由離職者とは「労働者の体力の不足」をはじめ、やむを得ない事情で自己都合退職した人を指します。体力の不足を理由に特定理由離職者になる場合、証明書として何が必要か、気になる人がいるかもしれません。

本記事では、体力の不足を理由に特定理由離職者になる場合の証明書や、失業保険を受給する流れなどを解説します。

体力の不足で特定理由離職者になる場合の証明書

特定理由離職者になるには、会社を退職した事情に応じて証明書の提出が必要になります。

体力の不足によって特定理由離職者になる場合は、証明書として医師の診断書が必要です。

特定理由離職者として失業保険を受給する流れ

ここからは、特定理由離職者として失業保険を受給する流れを解説します。

1. 前職の会社から離職票を受け取る

失業保険を申請する際は離職票が必要です。離職票を受け取るには、あらかじめ前職の会社に離職票の交付を希望する旨を伝える必要があります。

会社は労働者から離職票を交付してほしい旨を聞いたうえで、ハローワークに発行の申請を行います。ハローワークが離職票を発行し、その後労働者の手元へ送られる流れです。

2. 失業保険の申請に必要な書類を準備する

離職票を受け取ったら、失業保険を申請するために必要な書類を準備します。離職票以外で準備が必要な書類は以下の通りです。

  • 個人番号確認書類(マイナンバーカードや、個人番号が書かれた住民票など)
  • 身元確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 申請を行う本人の写真(縦3cm、横2.4cmのものを2枚)
    ※マイナンバーカードを提示する場合は不要
  • 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード
  • 特定理由離職者であることを証明する書類(「体力の不足」が理由であれば医師の診断書)

書類の準備が遅れると、失業保険の受け取りも遅くなってしまうため、会社を退職する前にあらかじめ準備しておきましょう。

3. ハローワークで失業保険の申請を行う

必要書類を準備できたら、ハローワークの窓口へ持参して失業保険を申請します。窓口では、離職票に記載された離職理由が本当であるか、慎重に判定されます。体力の不足により特定理由離職者になる場合、必要に応じて医師の診断書を見せて、体力的に仕事を続けられなかった旨をわかりやすく説明しましょう。

なお、この時にハローワーク様式の診断書を追加で求められることが大半ですので、ハローワークの指示に従い医師に記入を依頼し、ハローワークへ提出します。体力の不足で離職せざるを得なかったことが認められると、特定理由離職者として正式に扱われるようになります。

また、手続きの終了時に渡される「雇用保険受給資格者のしおり」は、今後の手順で必要になるため、大切に保管してください。

4. 待期期間を過ごす

待期期間とは、失業保険を支給するにあたって、失業の状態にあるかどうかを確認する期間です。失業保険を受給するには、受給資格が決定してから7日間の待期期間を過ごす必要があり、当該期間中はアルバイトやパートを含めた就労が制限されます。

待期期間中に就労して収入を得ると、待期期間が延長され、失業保険の受給が遅れるため注意です。失業保険を申請する際は、最低でも待期期間を問題なく過ごせる貯蓄を確保しておきましょう。

5. 雇用保険受給説明会に出席する

雇用保険受給説明会は、失業保険を受け取る際の流れや注意事項などを説明する会で、失業保険を受給する場合は参加が必須です。説明会の日程は失業保険の申請時に共有されるため、メモしたうえで忘れずに参加しましょう。

説明会には、筆記用具と「雇用保険受給資格者のしおり」を忘れずに持参してください。また、説明会の会場では新たに「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が渡されます。失業保険を受け取る際の手続きで必要となるため、大切に保管しましょう。

6. 失業認定日にハローワークへ来所する

失業認定日とは、失業保険の受給資格者が失業の状態にあるかをハローワークが確認する日です。失業の状態にあることが確認されると、失業保険の支給が決定し、所定の口座に振り込まれます。失業認定日は原則として4週間に一度の間隔で設定され、最初の認定日は原則として失業保険の申請時に指定されます。

失業認定日では、ハローワークへ来所したうえで、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書の提出が必要です。失業認定申告書には求職活動の状況や就労状況などの記入が必要であるため、認定日が近づいてきたら忘れず準備しておきましょう。

特定理由離職者のメリット

ここからは、特定理由離職者になるメリットを解説します。

失業保険の受給に必要な被保険者期間が短い

被保険者期間とは、大まかにいえば雇用保険に加入していた期間のことで、基本的には前の会社に勤めた期間を指します。失業保険を受給するには、原則として離職前の2年間で12ヶ月以上の被保険者期間が必要です。

しかし、特定理由離職者の場合、離職前の1年間で6ヶ月以上の被保険者期間があれば受給対象となります。失業保険の制度は、体力の不足をはじめ、身体的な理由で早期退職した場合でも受け取りやすいように整えられています。

給付制限期間がない

給付制限期間とは、待期期間とは別に、失業保険を受給する前に過ごさなければいけない期間です。

一般的な受給資格者は、令和7年4月1日以降の退職の場合、受給までに原則1ヶ月の給付制限期間を過ごす必要がありますが、特定理由離職者の場合は給付制限期間が設けられません。7日間の待期期間を過ごせば、すぐに失業保険を受給できます。

給付制限期間中に週20時間以上のアルバイトを行うと、就職したとみなされ失業保険が支給されないため、十分な収入を得ながら給付制限期間を過ごすのは難しいです(給付制限期間中にアルバイトを退職した場合は、失業保険を受給できます)。特定理由離職者になることで、前職を退職してから1週間程度で失業保険を受給できるため、収入が途切れにくくなります。

国民健康保険料が軽減される

国民健康保険は、会社に勤めていない人が加入する健康保険です。会社を退職し、失業保険を受給しながら暮らす人も、国民健康保険に加入する必要があります。

特定理由離職者の場合、居住している市区町村へ申請することで、国民健康保険料が軽減される制度があります。具体的には、前年の給与所得を実際の100分の30とみなして国民健康保険料を計算できるという内容です。国民健康保険料の額が減ることで、離職中の生活を安定させられます。

体力の不足で特定理由離職者になった場合の、失業保険の金額

失業保険の額は、1日あたりの支給額である「基本手当日額」に支給日数を乗じた額です。

基本手当日額を算出する際は、先に「賃金日額」を計算します。賃金日額は、原則として離職した日の直前6ヶ月に支払われた賃金の総額を180で割った額です。そして、賃金日額に一定の乗率をかけることで、基本手当日額を求めます。賃金の総額が高いほど、賃金日額にかける率は低くなる仕組みです。

また、支給日数は前職を辞めた理由によって決め方が異なります。体力の不足が原因で特定理由離職者になった場合は、被保険者であった期間の長さに応じて支給日数が決まります。被保険者であった期間の長さに応じた支給日数をまとめると、以下の通りです。

被保険者であった期間所定給付日数
1年未満90日
1年以上5年未満
5年以上10年未満120日
10年以上20年未満150日

一般的な離職者と異なり、被保険者であった期間が1年未満の場合でも失業保険を受給できる可能性がある点は、特定理由離職者の特徴です。

失業保険を受給できる期間

失業保険を受給可能な期間は、基本的に離職の日の翌日から1年間です。満額を受け取るには、すべての支給日数を離職の日の翌日から1年が経過するまでに過ごす必要があります。受給期間内で過ごせなかった日数分は支給されないため、注意してください。

受給期間中にケガ・病気・妊娠などで30日以上連続して働けなくなった場合は、働けなくなった日数の分だけ受給期間を延長できます。しかし、延長できる限度は4年までであるため、注意しておきましょう。

体力の不足以外で特定理由離職者になるケース

特定理由離職者になるケースは「体力の不足」以外にも多数存在します。一通りのケースを把握しておくと、再び自己都合で退職する際に、特定理由離職者として申請できるかをスムーズに判断できるでしょう。

ここからは、体力の不足を除いた、特定理由離職者になるケースを解説します。

疾病や負傷、身体の障害等による離職

体力の不足以外だけでなく、疾病・負傷・身体の障害などの身体的な理由で離職した場合でも、特定理由離職者として申請できます。体力の不足で離職した場合と同様に、証明書として医師の診断書を持参しましょう。なお、身体の障害とは、視力・聴力・触覚などの減退が挙げられます。

注意点として、疾病・負傷・身体の障害などの治療や療養に専念することで就労できない場合、失業保険の申請はできません。受給期間を延長し、働ける状態になってから失業保険を受け取る必要があります。

妊娠や出産、育児等による離職

妊娠や出産、育児などを理由に離職し、30日以上労働できない場合は特定理由離職者として扱われます。労働できない期間中は失業保険を受給できませんが、受給期間の延長は可能です。延長が認められると、ハローワークから「受給期間延長通知書」が発行されます。

就労できるようになったら、受給期間延長通知書を提示し、特定理由離職者として申請しましょう。

家庭の事情の急変による離職

「家庭の事情の急変」とは、両親が病気になったり、ケガを負ったりしたことで介護が必要になるケースを指します。介護のための帰省により離職せざるを得なくなり、かつ看護が必要な期間が30日以上と見込まれる場合、特定理由離職者として認められます。家庭の事情の急変を証明する際は、家族の健康保険証や扶養控除等申告書、医師の診断書などを準備しましょう。

なお、失業保険を実際に受け取れるのは、家庭の事情が解消された後です。妊娠・出産・育児の場合と同様、受給期間は延長できるため、焦らずに家庭の事情を解消してから失業保険を申請しましょう。

通勤困難による離職

特定の事情で通勤困難になったことが原因で離職した場合、理由に応じた証明書を提出することで、特定理由離職者になる可能性があります。特定理由離職者になり得るケースと、必要な証明書の例は以下の通りです。

特定理由離職者になり得るケース必要な証明書の例
結婚に伴う住所の変更
  • 住民票の写し
育児に伴う保育施設の利用
  • 保育園の入園許可証
転居を伴う事業所の移転
  • 事業所移転の通知
  • 移転先がわかる資料
配偶者の転勤等による転居
  • 配偶者の転勤辞令
  • 住民票の写し

上記以外にも、通勤困難によって特定理由離職者になるケースは存在します。通勤困難により離職した場合は、特定理由離職者として認められるかを確認し、認められるのであれば必要な書類を準備しましょう。

特定理由離職者に関するよくある質問

最後に、特定理由離職者に関するよくある質問と、質問の回答を解説します。

特定理由離職者と特定受給資格者の違いは?

特定受給資格者とは、倒産や解雇など会社都合の退職により、受給資格者になった人を指します。一方で、特定理由離職者とは、以下のどちらかに該当する人です。

  • 一定の有期労働契約が満了し、契約の更新がないことにより離職した人
  • 家庭の事情の急変や身体的な理由など、やむを得ない事由で自己都合退職をした人

前職の離職理由によって、特定理由離職者と特定受給資格者は区別されます。また、両者は失業保険の支給日数も異なり、ほとんどの場合は特定受給資格者のほうが多くなります。

虚偽の申告で特定理由離職者になるとどうなる?

虚偽の離職理由を申告し、特定理由離職者として失業保険を不正受給しようとした場合、受給した額をすべて返還しなければなりません。また、不正行為により受給した分の、最大2倍の額を納付するように命じられます。返還や納付に応じない場合、財産を差し押さえられる可能性があります。

さらに、悪質な虚偽申告が行われたと判断されると、刑事事件として告発されるケースもあるため要注意です。さまざまなペナルティが待っているため、失業保険の申請において虚偽申告は決してしないよう心がけましょう。


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