- 更新日 : 2025年7月7日
育休の取得平均期間は?男女別の平均や課題、法改正について解説
育児休業、通称「育休」は、子どもを養育する労働者の権利として法律で定められた休業制度です。企業の就業規則に関わらず取得できます。少子化や男性の育児参加促進が社会課題となる中、育休は仕事と育児を両立し、キャリアを築く上で欠かせない制度となっています。
この記事では、育児休業の平均取得期間、制度内容、職場復帰への準備、2025年最新法改正まで解説します。
目次
育休の平均取得期間と平均取得率
育児休業の原則的な期間
育児休業の原則期間は、子どもが1歳に達する日(誕生日の前日)までです。女性は産後休業(出産後8週間)の翌日から、男性は子どもの誕生から最大12ヶ月間取得できます。
有期雇用労働者も育休の対象です。2022年4月1日以降は「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃され、より多くの人が取得できるようになりました。
育休取得率と平均取得期間
日本の育休取得率は、男女間で差があるものの、男性の取得が伸びています。厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2023年度の男性の育休取得率は30.1%に達しました。2021年度の17.1%から大幅に増加しており、男性の育児参加が進んでいることがわかります。女性の育休取得率は84.1%と高水準を維持しています。政府は、男性の育休取得率を2025年までに50%、2030年までに85%に引き上げる目標を掲げています。
育休の平均取得期間を見ると、男女で大きな違いがあります。厚生労働省イクメンプロジェクトの調査(2023年)では、男性の育休平均取得日数は「46.5日」(約1ヶ月半)でした。
男女別育児休業取得状況
項目 | 2021年度 | 2023年度 | 政府目標(2025年) | 政府目標(2030年) |
---|---|---|---|---|
男性育休取得率 | 17.1% | 30.1% | 50% | 85% |
女性育休取得率 | 80.2% | 84.1% | – | – |
男性の育休取得率は上がっていますが、平均取得期間が短いのは課題です。「職場に迷惑をかけたくない」「収入が減るのが不安」「上司の理解が得られない」といった心理的・文化的な要因が影響しています。企業は、単に取得率を上げるだけでなく、長期取得を促すための職場文化の醸成や業務体制の見直しが求められます。
育児休業期間の延長と関連制度
育休は原則1歳までですが、特定の事情で延長できる制度や、夫婦で協力するための特例があります。
育休延長が認められる主なケース
原則1歳までですが、以下の場合に1歳6ヶ月または2歳まで延長できます。
- 保育園の入園を希望しているが入れない場合
子どもが1歳になる時点で保育園に入所できない場合が該当します。市区町村発行の入所不承諾通知書などが必要です。- 2025年4月以降は、育児休業給付金の延長審査が厳格化されます。入所意思がない育休延長を防ぐため、申請には複数の書類が必要となり、ハローワークの認定要件も厳しくなります。
- 配偶者の死亡・負傷・疾病・離婚などにより、子どもの養育が困難な場合。
- 育児休業中に次の子どもを妊娠・出産した場合。
パパ・ママ育休プラス
「パパ・ママ育休プラス」は、両親ともに育休を取得する場合に、期間を子どもが1歳2ヶ月になるまで延長できる特例です。それぞれが最大1年間取得でき、夫婦で協力して育児を行うことを目的としています。
産後パパ育休(出生時育児休業)
「産後パパ育休」(出生時育児休業)は、2022年10月に創設された男性向けの制度です。子の出生後8週間以内に最大4週間(28日間)取得でき、通常の育休とは別枠です。
大きな特徴は2回まで分割取得が可能な点です(最初の取得時にまとめて申し出る)。また、労使協定があれば休業中に就業も可能で、就業日数は最大10日(または80時間)までです。本制度と通常の育児休業を組み合わせることで、男性は子どもが1歳になるまでに最大で4回まで育休を取得することが可能です。
育休延長の条件や各制度は複雑になりがちです。特に2025年4月からの延長審査厳格化は、手続きの負担を増やす可能性があります。企業は、制度の周知だけでなく、従業員が適切に制度を活用できるよう、個別相談体制の整備や情報提供の強化が求められます。
育休の取得における課題
育休の取得や円滑な職場復帰には、様々な課題が存在します。
育休取得をためらう要因
育休取得をためらう主な要因は、「周囲に迷惑をかけられない」「職場に取得しにくい雰囲気がある」「仕事に復帰できるか不安」「収入が減少してしまう」といった点です。特に、男性の育休期間が短いのは、こうした心理的・文化的な障壁が大きいです。企業は、制度の充実だけでなく、従業員が安心して取得できる「心理的安全性」を確保するための文化醸成が必要です。
職場復帰に向けた準備と企業の対応
円滑な職場復帰には、従業員と企業双方の準備が不可欠です。
従業員の準備
子どもの預け先確保、家事・育児分担の話し合い、生活環境の整理、復帰後利用できる制度の確認など。
企業の対応
復帰1~2ヶ月前の面談で希望ヒアリング、業務スケジュールや引き継ぎ内容の調整、必要書類の提出、柔軟な働き方制度の活用事例共有、子どもの体調不良時の対応考慮など。
職場復帰後の働き方
育休復帰後の選択肢として多いのが「時短勤務」です。
メリット
- 家事・育児とのバランスが取りやすい
- 保育園の送迎に間に合いやすい
- 急な通院などに対応しやすい
- 残業が免除される(小学校就学前の子を養育の場合)
デメリット
- 労働時間に応じて収入が減少する(基本給・賞与の減額、手当不支給など)
- 多くの場合、時短勤務に期限がある(子どもが3歳までなど)
- 業務内容に制限が出たり、昇進・昇格に影響したりする可能性(「マミートラック」)
- 「会社に申し訳ない」と感じる心理的負担
フルタイム勤務は収入面で有利ですが、仕事と子育ての両立が大変で、残業や出張への対応も必要になります。働き方を決める際は、必要な生活費、保育園の対応時間、周囲の協力体制、社内環境、自身のキャリアプラン、理想の子育てスタイルなどを多角的に検討しましょう。
2025年育児・介護休業法改正のポイント
2024年5月に可決・成立した育児・介護休業法等の改正法は、2025年4月1日と10月1日に段階的に施行されます。
2025年4月1日施行の主な改正点
- 子の看護休暇の拡充
対象が小学校3年生修了まで拡大。学級閉鎖や行事も取得事由に追加。勤続6ヶ月未満を労使協定による除外規定から削除。取得事由拡大に併せて、名称も子の看護等休暇に変更。 - 所定外労働の制限(残業免除)
対象が小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大。 - 短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加
企業の努力義務に。 - 育休取得状況の公表義務の拡大
従業員300人超の企業が対象に。 - 介護休暇の取得要件緩和
勤続6ヶ月未満を労使協定による除外規定から削除。
2025年10月1日施行の主な改正点
- 育児期(3歳以降)の柔軟な働き方支援策の義務化
3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者に対し、企業は「始業時刻等の変更(時差出勤・フレックス等)」「テレワーク(月10日以上)」「短時間勤務制度」「年10日以上の育児目的休暇」「保育施設の設置運営等」のうち、2つ以上の措置を実施することが義務化されます(労働者は1つを選択可能)。 - 柔軟な働き方措置の個別周知・意向確認の義務化
対象労働者に対する個別の周知・意向確認が義務化されます。 - 妊娠・出産時および子が3歳前の個別意向聴取・配慮の義務化
妊娠・出産申出時、または子が3歳になる前に両立に関する希望を聴取し、配慮することが義務化されます。
これらの改正は、男女ともに仕事と家庭を両立できる環境を一層推進します。企業は、制度整備に加え、従業員への情報提供や研修を通じて、制度を適切に運用する準備を進める必要があります。
育休の平均取得期間は徐々に上がりつつある
育児休業制度は、子育て支援と労働者のキャリア継続に不可欠です。男性の育休取得率は上昇傾向にありますが、平均取得期間は短く、心理的な障壁も存在します。これは、育休の「量」だけでなく「質」の向上が求められていることを示します。
2025年の法改正は、柔軟な働き方支援の強化や経済的支援の拡充(手取り10割相当の給付金など)を含み、育休取得を強力に後押しするでしょう。企業にとっては、制度を積極的に活用し、従業員へのきめ細やかなサポートを行うことが、優秀な人材の確保や定着、ひいては企業価値向上に繋がる重要な戦略となります。
育児休業制度は、個人のワークライフバランスだけでなく、社会全体の持続可能性を高める基盤です。この制度を理解し、最大限に活用することが、これからの子育てとキャリア形成において重要になるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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