- 更新日 : 2025年7月7日
育休の期間は何ヶ月?制度別に取得できる日数の計算方法を解説
育児休業(以下、育休)は、子育てと仕事の両立を支援する重要な制度です。近年、男性の育休取得促進や働き方の多様化に伴い、育休制度もより柔軟なものへと変化しています。しかし、「産後パパ育休」や「パパ・ママ育休プラス」、「分割取得」といった新しい選択肢が増え、「結局、自分はいつからいつまで育休を取得できるのだろう?」と期間の計算に悩む方も少なくありません。
この記事では、育休の基本的な期間計算から、父親向けの「産後パパ育休」、夫婦で協力して育休を取得する際に活用できる「パパ・ママ育休プラス」、さらには育休期間の延長や分割取得といった少し複雑なケースまで、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
目次
育休はいつからいつまで?
育休を取得できる期間は、いくつかの基本的なルールと、個々の状況に応じた特例によって決まります。
原則的な育休期間
育休は、原則として子どもが1歳に達する日まで取得可能です。ここで重要なのは、「1歳に達する日」が法的には「1歳の誕生日の前日」を指すことです。
育休の開始日は、母親と父親で異なります。
母親の場合
出産日の翌日から8週間の産後休業が法律で義務付けられており、育休はこの産後休業期間が終了した翌日から開始できます。
父親の場合
配偶者の出産予定日から育休を開始できます。
育休期間の計算方法
例1:母親Aさんの場合(子どもが4月10日生まれ)
- 産後休業期間:4月11日~6月5日(8週間)
- 育休開始可能日:6月6日
- 育休終了日(原則):翌年の4月9日
- この場合の育休取得可能期間:約10ヶ月間
例2:父親Bさんの場合(子どもの出産予定日が7月1日、予定日から取得)
- 育休開始可能日:7月1日
- 育休終了日(原則):翌年の6月30日
- この場合の育休取得可能期間:最大1年間
母親の場合は産後休業があるため、育休として取得できる期間は実質的に1年より短くなります。
育休の延長
育休は原則として子どもが1歳に達する日までですが、特定の事情がある場合には、子どもが1歳6ヶ月に達する日まで、さらに事情が解消されない場合は最長で2歳に達する日まで延長できます。
主な延長理由は、保育所等への入所を希望しているが入所できない場合や、育児を行う予定だった配偶者が死亡、負傷、疾病、離婚などにより子どもの養育が困難になった場合などです。
延長した場合の期間計算は以下のようになります。
- 1歳6ヶ月までの延長
子どもが1歳に達する日の翌日から、1歳6ヶ月に達する日(1歳6ヶ月の誕生日の前日)まで。 - 2歳までの延長
子どもが1歳6ヶ月に達する日の翌日から、2歳に達する日(2歳の誕生日の前日)まで。
延長申請の期限は、1歳から1歳6ヶ月への延長は子どもが1歳の誕生日の2週間前まで、1歳6ヶ月から2歳への延長は子どもが1歳6ヶ月に達する日の翌日の2週間前までです。
2025年4月からの注意点
保育所に入所できないことを理由とする育休給付金の延長申請について、2025年4月1日から審査が厳格化されています。入所保留通知書に加え、入所申込書の写しや延長理由申告書の提出が求められ、より実質的な審査が行われます。
【産後パパ育休】期間の計算方法
男性の育休取得を促進するため、2022年10月から「産後パパ育休」(正式名称:出生時育児休業)制度がスタートしました。
産後パパ育休の期間と特徴
産後パパ育休は、子どもの出生後8週間以内に、父親が最大で4週間(28日間)まで取得できる休業制度です。主な特徴は以下の通りです。
- 取得可能期間
子どもの出生後8週間以内。 - 取得日数
上記期間内で最大4週間(28日間、土日祝日も含む)。 - 分割取得
2回まで分割可能(最初の申し出時にまとめて申請が必要)。 - 休業中の一時的な就業
労使協定を締結し、事前に合意した範囲内で可能。
産後パパ育休の期間の計算
期間計算は、出生後8週間という限られた期間内で、どのように合計4週間(28日間)の休みを取得するかを計画することがポイントです。
- 申請期限
原則として、休業を開始しようとする日の2週間前まで。 - 出産予定日が実際の出産日と前後した場合
出産予定日より前に生まれた場合は実際の出生日から、後に生まれた場合は当初の出産予定日から、それぞれ8週間後の日までの期間内で4週間の休業を取得できます。取得できる休業日数の上限は変わりません。
産後パパ育休について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
【パパ・ママ育休プラス】期間の計算方法
「パパ・ママ育休プラス」は、両親がともに育児休業を取得することで、育休期間をより柔軟に活用できるようにする制度です。
仕組みと期間の考え方
パパ・ママ育休プラスは、一定の条件を満たした場合に、原則として子どもが1歳になるまでの育休期間を、子どもが1歳2ヶ月に達するまで延長できる制度です。
重要な注意点
1人あたりの育休取得可能最大日数(原則、産後休業期間も含めて1年間)は変わりません。 あくまで、「育休を取得できる期限」が1歳2ヶ月まで延びる、と理解することが重要です。
主な利用条件は、配偶者が子どもが1歳に達するまでに育休を取得していること、本人の育休開始予定日が子どもの1歳の誕生日以前であること、かつ配偶者の育休初日以降であることです。申請期限は、原則として休業開始予定日の1ヶ月前までです。
パパ・ママ育休プラス利用時の期間計算例
例:母親が1年間育休を取得後、父親が引き継ぐケース
母親が約1年間育休を取得後、父親がパパ・ママ育休プラスを利用して、子どもが1歳2ヶ月になる日の前日まで2ヶ月間育休を取得。世帯としては子どもが1歳2ヶ月になるまで切れ目なく育児に専念できます。
パパ・ママ育休プラスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
【育休の分割取得】期間の計算方法
育児休業は、法改正により、より柔軟に分割して取得できるようになりました。
通常の育休と産後パパ育休の分割ルール
- 通常の育児休業
父親・母親ともに、子どもが1歳(または延長した場合はその期間)に達するまでの間に、2回まで分割して取得できます。 - 産後パパ育休
創設時から2回までの分割取得が可能ですが、最初の申し出の際に2回分の休業期間をまとめて申請する必要がある点に注意が必要です。
分割取得した場合の期間の考え方
育休を分割して取得した場合でも、取得できる合計の日数(期間)の上限は変わりません。
- 通常の育休の場合
分割して取得した各休業期間を合計して、原則として1年以内(延長が認められる場合は、その延長された期間内)に収まるようにします。 - 産後パパ育休の場合
分割して取得した各休業期間を合計して、4週間(28日間)以内に収まるようにします。
育休期間の計算のポイント
育休期間を正しく計算し、スムーズに取得するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
各種申請期限の確認
育休制度には、種類や延長の有無によって異なる申請期限があります。
申請内容 | 申請期限 |
---|---|
通常の育児休業(初回) | 原則、休業開始予定日の1ヶ月前まで |
産後パパ育休 | 原則、休業開始予定日の2週間前まで |
育休延長(1歳→1歳6ヶ月) | 子どもが1歳となる誕生日の2週間前まで |
育休延長(1歳6ヶ月→2歳) | 子が1歳6ヶ月に達する日の翌日の2週間前まで |
パパ・ママ育休プラス利用 | 原則、休業開始予定日の1ヶ月前まで |
会社の就業規則も確認し、人事担当者に早めに相談しましょう。
社会保険料免除との関連
育児休業期間中は、一定の条件を満たすことで、健康保険料および厚生年金保険料が本人負担分・事業主負担分ともに免除されます。
社会保険料が免除される月のルールは以下の通りです。
- その月の末日が育児休業期間中である場合。
- 同じ月内に14日以上の育児休業を取得した場合(2022年10月~)。 賞与に係る社会保険料は、その賞与が支払われた月の末日を含んで、連続して1ヶ月を超える育児休業を取得している場合に限り免除されます。
年次有給休暇との関係
育児休業を取得した期間は、年次有給休暇の権利が発生するための出勤率の算定においては、出勤したものとして扱われます。
育休取得を理由に翌年度の有給休暇の日数が減ることはありません。
会社への早めの相談
法律で定められた申請期限を守ることはもちろんですが、育休の取得意向が固まった段階で、できるだけ早く上司や人事担当者に相談することが重要です。業務の引き継ぎ計画や人員配置の調整には時間がかかるため、早めのコミュニケーションが円滑な育休取得と職場復帰に繋がります。
取得できる期間を考えて、育休の計画を立てよう
育児休業の期間計算は、基本的な原則、産後パパ育休、パパ・ママ育休プラス、延長や分割取得のルールを理解すれば、ご自身の状況に合わせた計画が可能です。特に、父親向けの制度や夫婦で協力できる制度の活用を検討しましょう。
申請期限の確認、社会保険料免除、年次有給休暇の扱いといった関連知識も重要です。不明な点は、勤務先の人事担当者や専門家に相談しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
SMARTの法則とは?5つの目標設定方法やメリット、活用事例を解説!
SMARTの法則とは、目標設定に取り入れるべき要素を表した法則です。Specific(具体的な)・Measurable(測定可能な)・Achievable(達成可能な)・Relevant(関連性のある)・Time-bound(期限が明確な)…
詳しくみる元従業員による顧客情報の持ち出しは犯罪?個人情報保護法・不正競争防止法となる事例などを解説
元従業員による顧客情報の持ち出しは、企業にとって重大な問題です。情報漏洩が起きると、顧客からの信頼を失い、経済的損害や法的トラブルなど、企業存続に関わるリスクが生じる可能性があります。本記事では、元従業員が顧客情報を持ち出した場合の法律的な…
詳しくみる離職票は必要?離職証明書との違い、再発行の方法、退職時・失業保険の手続きを解説
離職票は、従業員が退職した際、企業がハローワークで退職手続きをすると発行される書類です。退職した従業員が雇用保険の求職者給付、いわゆる失業保険を受給するためには、離職票が必要となります。 離職票の発行はどのようにして申請し、いつ従業員に交付…
詳しくみる契約社員とは?パートとの違いやメリット・デメリットを解説
契約社員とは、契約期間に定めのある有期労働契約の社員です。正社員は契約期間に定めのない無期雇用なのが契約社員との違いとなります。 有期契約社員にはデメリットしかないと思われがちです。正社員を雇用せず契約社員にする理由はどこにあるのでしょうか…
詳しくみる育休は何ヶ月取れる?制度ごとに何日取得できるかを解説
育児休業は、子育てと仕事の両立を支援し、労働者が安心して育児に取り組めるようにするための重要な制度です。 この記事では、「育休は何ヶ月取れるのか」という基本的な疑問から、育児休業の期間、延長条件、関連する給付金、社会保険料の扱い、そして20…
詳しくみる社宅のルールを定める「社宅規程」とは?必要性や作成ポイントを解説
社宅を運用する場合は社宅規程を作成し、入居資格や費用負担の基準を明確にしておくことが大切です。 本記事では、社宅規程を作成する必要性や社宅規程に記載すべき項目を解説します。社宅規程を作成する際の参考にしてみてください。 社宅のルールを定める…
詳しくみる