- 更新日 : 2025年11月20日
年次有給休暇の出勤率8割の計算方法を解説|全労働日と出勤日の考え方も紹介
年次有給休暇を取得できる条件は2つあり、条件の一つに「全労働日の8割以上出勤していること」があります。
人事の担当者の中には「出勤率の計算方法を知りたい」「全労働日や出勤日の定義を知りたい」などと気になっている人もいるでしょう。
そこで本記事では、出勤率の計算方法について例を用いて詳しく解説しています。出勤率の計算で使用する全労働日や出勤日に含まれる日・含まれない日などもまとめています。
目次
年次有給休暇を取得できる条件
年次有給休暇を取得できる条件は2つです。
労働基準法の第39条にて、2つの条件をどちらも満たした従業員には雇用形態に関係なく年次有給休暇を付与することが義務付けられています。
もし従業員が有給の取得を申請したにもかかわらず会社が拒否した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。時季指定をする場合を除き、有給申請は拒否せずに取得させてください。
条件1:入社日から6ヶ月間継続して勤務している
1つ目の条件は、入社日から6ヶ月継続して勤務していることです。
「継続して勤務」とは、会社に在籍している期間を意味します。通常のように働いている期間だけでなく、以下のような期間も継続勤務に該当します。
- 試用期間
- 休職期間
- 長期の病欠期間
- 会社の合併
- 契約の更新
- 定年後の再雇用
休職期間や病欠期間なども継続して勤務している期間に算入する必要があるため、有給付与の対象となるかを判断する際は注意しましょう。数ヶ月にわたって休職しているからといって、継続勤務の期間が途切れるわけではありません。
また、契約の更新とは具体的に、6ヶ月未満だった契約を更新して結果的に6ヶ月以上契約する場合やパートやアルバイトを正社員に切り替えた場合などです。契約期間が伸びて6ヶ月以上になったり、雇用形態を転換したりした場合も継続勤務に該当します。
定年を迎えて再雇用した場合も継続勤務として扱ってください。ただし、再雇用までに期間が空いている場合は継続勤務にはなりません。
条件2:全労働日の8割以上出勤している
2つ目の条件は、全労働日の8割以上出勤していることです。
全労働日とは、労働契約において従業員に労働する義務が課されている全ての日を指します。基本的に、入社日から6ヶ月間の暦日数から会社の所定休日を引いた日数が全労働日となります。翌年度以降は、6ヶ月ではなく1年間の全労働日を算出してください。
入社日から6ヶ月にわたって継続して勤務している、かつ全労働日の8割以上出勤している従業員には、法律で定められた日数分の有給を付与する必要があります。
なお、全労働日に含まれる日と含まれない日については、本記事の「1、全労働日を算出する」という見出しで詳しく解説しています。
出勤率の計算方法
出勤率の計算方法について解説します。また、全労働日の算出方法や出勤日の算出方法も紹介します。
1. 全労働日を算出する
最初に全労働日を算出します。
全労働日とは、算定期間における全ての暦日数から会社で定めている所定休日を除いた日です。ただし、主に以下のような日は全労働日に含まれません。
- 休日出勤した日
- 不可抗力により休業した日
- 雇用主に起因する経営や管理の障害により休業した日
- ストライキのような争議行為によって労務の提供が全くなされなかった日
- 代替休暇を取得して終日出勤しなかった日
よって、全てのカレンダー上の日数から所定休日と上記の日数を除けば、全労働日を算出できます。
2. 出勤日を算出する
次に出勤日を算出します。
出勤日とは、労働の義務がある日に従業員が勤務した日のことです。出勤日に含まれる日と含まれない日を以下の表にまとめました。
| 出勤日に含まれる日 | 出勤日に含まれない日 | 労使間で自由に定められる日 |
|---|---|---|
|
|
|
労使間で自由に定められる日については、会社の規定によって出勤日に含むかどうかを決められます。
なお、休日出勤した日や不可抗力により休業した日などの全労働日に含まれない日は、出勤日にも含まれません。
3. 出勤率を計算する
最後に算出した全労働日と出勤日をもとに出勤率を計算します。「出勤率=出勤日÷全労働日」の計算式で算出可能です。
たとえば、6ヶ月間の全労働日が120日、出勤日が115日の場合は以下のような計算式になります。
出勤率=出勤日÷全労働日
=115日÷120日=0.958333…
上記の場合は、出勤率が約95.8%となり8割を超えているため、有給付与の対象となります。
例として、入社日が2024年4月1日の場合は、2024年10月1日に10日の有給を付与してください。なお、翌年度の有給の付与日は2025年10月1日となり、条件を満たしていれば11日分の有給を付与することとなります。
年次有給休暇の日数はどう決まる?
年次有給休暇を取得できる条件を満たした従業員には、決められた日数分の有給を付与する必要があります。
ただし、付与する有給の日数は所定労働日数によって変わり、所定労働日数が少ない従業員には比例付与という仕組みが適用されます。
比例付与が適用されるのは、以下の2つの条件を満たした従業員です。
- 週所定労働時間が30時間未満である
- 週所定労働日数が4日以下または1年間の所定労働日数が48日から216日である
どちらも満たした従業員には、比例付与で年次有給休暇を与えることになります。上記の条件を満たしていない場合は、パートやアルバイトだとしても通常の日数を付与する必要があるため注意しましょう。
付与するべき有給の日数を、通常の場合と所定労働日数が少ない従業員の場合に分けて以下より紹介します。
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
【通常の場合】年次有給休暇の日数
年次有給休暇を取得できる条件を満たした従業員には、継続勤務年数に応じて以下の日数を付与してください。
| 継続勤務年数 | 付与する有給日数 |
|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日 |
上記は法律で決められた最低日数であるため、会社の規則として法定日数以上を付与しても問題ありません。入社6ヶ月で15日の有給を付与したり、入社1年6ヶ月で20日の有給を付与したりすることもできます。
なお、年次有給休暇が10日以上付与される従業員には、付与された日から1年以内に最低5日は有給を消化させることが義務付けられています。
【所定労働日数が少ない従業員の場合】年次有給休暇の日数
年次有給休暇を取得できる条件を満たした従業員のうち、所定労働日数が少ない従業員には比例付与が適用されます。
週や年間の所定労働日数と継続勤務年数に応じて以下の有給日数を付与してください。
| 継続勤務年数 | 週4日 年169日~216日 | 週3日 年121日~168日 | 週2日 年73日~120日 | 週1日 年48日~72日 |
|---|---|---|---|---|
| 6ヶ月 | 7 | 5 | 3 | 1 |
| 1年6ヶ月 | 8 | 6 | 4 | 2 |
| 2年6ヶ月 | 9 | 6 | 4 | 2 |
| 3年6ヶ月 | 10 | 8 | 5 | 2 |
| 4年6ヶ月 | 12 | 9 | 6 | 3 |
| 5年6ヶ月 | 13 | 10 | 6 | 3 |
| 6年6ヶ月 | 15 | 11 | 7 | 3 |
比例付与を適用する場合、週の所定労働日数や年間の所定労働日数に応じて付与する日数が異なります。2年続けて同じ日数を付与することもあるため、付与する日数はしっかり確認しましょう。
また比例付与を適用する従業員でも、年次有給休暇が10日以上付与される場合には付与日から1年のうち最低5日は有給を取得させてください。
年次有給休暇や出勤率の計算に関する注意点
年次有給休暇や出勤率の計算に関する注意点を3つ紹介します。
出勤率が8割に満たなかった年も継続勤務年数に含む必要がある
出勤率が8割に満たなかった年は、年次有給休暇が付与されません。しかし、継続勤務年数には数える必要があります。
たとえば、雇用から2年6ヶ月が経つ従業員がいるとします。前年度の出勤率が8割未満であった場合、12日分の有給を付与する必要はありません。
ただ、今年度に有給付与の条件を満たした場合、翌年度は14日分の有給を付与することになります。有給付与の対象外であった年も継続勤務年数には数えなければならず、12日分だと足りないため注意してください。
時短勤務の従業員にも年次有給休暇を付与する必要がある
時間勤務で働いている従業員にも年次有給休暇を付与する必要があります。所定労働日数は有給の付与日数に影響しますが、週所定労働日数が5日の場合には1日の所定労働時間にかかわらず比例付与の対象とならないからです。
このように、所定労働時間を短縮しているといって、必ずしも年次有給休暇の付与日数が減るわけではありません。週所定労働日数が4日以下のケースでは時短勤務により比例付与の対象となることがありますので慎重な判断が求められます。
そのうえで、前述の年次有給休暇を取得できる条件を2つとも満たしている場合は、働き方や雇用形態に関係なく継続勤務年数に応じた通常の日数を付与してください。会社の独断で時短勤務の従業員に付与する有給日数を減らすことは認められないため気をつけましょう。
年次有給休暇の申請を拒否すると罰則が科せられる
従業員が申請した年次有給休暇を拒否すると、会社に6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
ほかにも、有給に関して労働基準法で定められた義務や罰則があります。詳しくは以下の表をご参照ください。
| 年次有給休暇に関する規定 | 違反した場合の罰則 | 根拠法 |
|---|---|---|
| 企業は従業員が申請した年次有給休暇を拒否してはならない | 6ヶ月以下の懲役 または30万円以下の罰金 | 労働基準法 第39条第5項 |
| 年間で5日の年次有給休暇を取得させなければならない | 30万円以下の罰金 | 労働基準法 第39条第7項 |
| 就業規則に年次有給休暇に関して記載しなければならない※ | 30万円以下の罰金 | 労働基準法 第89条 |
| 企業が時季指定をする場合は就業規則に記載しなければならない※ | 30万円以下の罰金 | 労働基準法 第89条 |
※就業規則の作成・届出が義務付けられる、常時使用する労働者が10人以上の事業場の場合
年次有給休暇の付与や消化に関しては関連する法律が多いため、付与日数を間違えていないか、従業員が有給を取得できているかなど、定期的に確認しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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