• 更新日 : 2025年6月2日

新卒の有給はいつから?4月に付与できる?条件や試用期間の扱いを解説

新卒で会社に入社したけど、「有給休暇はいつから使えるの?」そんな疑問をお持ちの新卒社員の方もいるのではないでしょうか。有給休暇は労働基準法で定められた労働者の権利であり、要件を満たせば必ず付与されます。この記事では、新卒の有給休暇がいつから取得できるのか、4月に付与できるのか、計算方法や注意点について詳しく解説します。

新卒の有給休暇はいつからいつまで?

4月1日入社の新卒社員が最初に有給休暇を取得できるのは、入社日から6ヶ月後 です。2025年4月1日の入社であれば、6ヶ月後の2025年10月1日に10日間の有給休暇が付与されるのが一般的です。

労働基準法では、有給休暇は以下の2つの条件を満たしたときに付与されます。

  • 入社日から「6ヶ月間継続勤務」
  • 全労働日の8割以上出勤

つまり、雇い入れの日から6ヶ月継続勤務し、かつその間の出勤率が8割以上であれば、年次有給休暇が与えられます。

この初回の付与日が有給休暇の「基準日」となり、今後の付与サイクルも基本的にはこの日付に沿って進みます。ただし、会社の就業規則によっては、入社時に数日間の有給休暇を付与したり、試用期間満了後に付与したりするケースもあります。

2回目以降の有給休暇はいつ?

2回目以降の有給休暇は、1回目の付与日から1年ごとに付与されます。付与日数は、勤続年数に応じて増えていき、次年度は11日、その翌年は12日というように年々加算され、最大で年間20日間が上限となります。

■ 週5日(217日以上)勤務の有給休暇付与日と付与日数

勤続年数付与日付与日数有給休暇の有効期限
6ヶ月2025年10月1日10日2027年9月30日
1年6ヶ月2026年4月1日11日2028年3月31日
2年6ヶ月2027年4月1日12日2029年3月31日
3年6ヶ月2028年4月1日14日2030年3月31日
4年6ヶ月2029年4月1日16日2031年3月31日
5年6ヶ月2030年4月1日18日2032年3月31日
6年6ヶ月以上2031年4月1日以降20日2033年3月31日以降

ただし、これらはあくまで法律上の最低付与日数であり、企業がそれ以上の有給日数を付与することも可能です。一般的な正社員であれば、入社から年数が経つにつれ有給のストックが増えていく仕組みだと理解しておきましょう。

有給休暇の消滅に注意!

有給休暇は、付与日から2年が経過すると消滅します。そのため、取得しないまま放置すると権利を失ってしまうことになります。毎年の付与日を把握し、計画的に取得することが大切です。

新卒の試用期間は有休カウントに含まれる?

新卒社員の試用期間は、本採用を前提とした勤務状況の確認期間です。そのため、試用期間中の勤務日数も、有給休暇の付与に必要な勤続期間としてカウントされます。つまり、試用期間中であっても、継続勤務期間や出勤率の条件を満たしていれば、有給休暇は付与されるということです。

例えば、3ヶ月の試用期間を経て本採用となる新卒社員の場合、試用期間開始日から6ヶ月経過していれば、有給休暇が付与されます。しかし、試用期間中はまだ業務に慣れていないことや、上司や同僚との関係性を考慮して、有給休暇の取得を控えめにしたいと考える方もいるでしょう。

そのような場合は、体調不良や家庭の事情など、やむを得ない場合に限って有給休暇を取得するのが賢明です。また、事前に上司に相談し、業務に支障が出ないように配慮することも大切です。

新卒の有給休暇を4月から付与することはできる?

新卒社員のモチベーション向上や、働きやすい環境づくりを目的として、入社時に有給休暇を付与する企業もあります。この場合、6ヶ月経過後に付与される有給休暇の日数から、入社時に付与した日数を差し引くのが一般的です。

入社時に有給を付与する日数の例

入社時に付与する有給休暇の日数は、企業によってさまざまです。

  • 入社時に3日間の有給休暇を付与:新卒社員が体調不良や急な用事などで休む必要が生じた場合に、安心して休めるようにするための配慮といえるでしょう。
  • 入社時に5日間の有給休暇を付与:少し長めの休暇を付与することで、新卒社員がリフレッシュしたり、入社後の手続きなどで必要な時間を確保したりできるようにする目的があります。
  • 入社時に10日間の有給休暇を付与:労働基準法で定められている6ヶ月経過後に付与される日数と同数です。入社時から有給休暇を付与することで、新卒社員の早期戦力化や定着率向上を期待する企業もあります。
入社日入社時付与日数6ヶ月経過後の付与日数2年目の付与日2年目の付与日数
2025年4月1日3日7日2026年4月1日11日
2025年7月1日3日7日2026年7月1日11日
2025年10月1日3日7日2026年10月1日11日

上記例の場合、入社日が各々異なっていますが、いずれも入社初日に分割付与していることに違いはありません。分割付与した場合の基準日は合計10日を付与した日ではなく、前倒しで付与した日(入社日)となります。そのため、いずれの場合も2年目の付与日は入社日の1年後となっています。

入社時に有給を付与する場合の注意点

入社時に有給休暇を付与する場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 就業規則への明記:入社時に有給休暇を付与する旨を、就業規則に明確に記載する必要があります。就業規則に記載がない場合、後々トラブルになる可能性があります。
  • 付与日数の管理:入社時に付与した有給休暇の日数を正確に管理し、6ヶ月経過後に付与する有給休暇の日数から差し引く必要があります。管理が不十分だと、有給休暇の残日数について従業員との間で認識の齟齬が生じる可能性があります。
  • 従業員への説明:入社時に有給休暇を付与する制度について、新卒社員に丁寧に説明し、誤解がないようにする必要があります。制度の内容や利用方法について、新卒社員が十分に理解できるように説明することが大切です。
  • 出勤とみなす扱い:入社時に有給休暇を付与する場合、有給休暇を取得した日を「出勤したもの」とみなして扱うことがあります。これは、有給休暇の付与要件である「全労働日の8割以上出勤」という条件を満たすためです。この点についても、就業規則に明記し、従業員に説明しておく必要があります。

入社時の有給付与から2回目以降のタイミング

入社時に有給休暇を付与した場合には、2回目以降の有給休暇の付与タイミングも、前倒しで付与した日(入社日)から1年ごととなるのが原則です。

ただし、会社の就業規則を変更することで、付与日を全従業員で統一することも可能です。例えば、基準日を4月1日に設定することで、それ以降の有給休暇は全従業員が毎年4月1日に付与されるようになります。なお、この基準日の統一は、前倒しで付与した場合に限らず、通常の付与を行った場合でも可能です。

基準日を統一することで、有給休暇の管理が容易になるというメリットがありますが、従業員によって付与日までの期間に差が生じる可能性があるため、注意が必要です。

新卒の有給休暇はいつから申請できる?流れと伝え方

新卒社員にとって、初めての有給休暇の申請は少し緊張するかもしれません。まず、自身の有給休暇が付与されているか確認しましょう。企業側も、新卒社員が入社後スムーズに有給休暇を取得できるよう、付与日や申請方法について明確に伝えることが大切です。

有給休暇の申請は、おそくとも取得日の1週間前までに申請することが理想です。なぜなら、会社側が業務の調整や人員配置を行うために必要な時間を確保するためです。

できる限り早めに申請することで、上司や同僚に迷惑をかけることを防ぎ、スムーズに有給休暇を取得することができます。企業側も、新卒社員が計画的に有給休暇を取得できるよう、申請時期について指導することが望ましいです。

スムーズな有給申請の流れ

有給休暇の申請は、以下の流れで行うとスムーズです。

  1. 取得日の決定
    業務の繁忙期を避け、余裕を持った日程で計画を立てましょう。
  2. 上司への相談
    取得希望日を伝え、業務の調整について相談します。
  3. 申請書の提出
    会社の規定に従い、申請書を提出します。口頭申請が認められている場合は、上司に直接伝えます。
  4. 承認の確認
    承認されたら、感謝の気持ちを伝えましょう。

有給申請の伝え方、会話例

有給休暇の申請は、早めに相談することを心がけましょう。取得希望日が決まったら、早めに上司に相談することで、業務の調整がしやすくなります。業務の引継ぎや調整について、積極的に協力する姿勢を見せましょう。

また、有給休暇の申請に理由を伝える必要はありません。労働基準法では、有給休暇の取得は労働者の権利として認められており、会社は正当な理由なく拒否することはできません。

新卒社員: 「〇〇さん、来月の〇日に有給休暇をいただきたいのですが、ご都合はいかがでしょうか?」

上司: 「〇日ですね。業務の引継ぎはどのように進める予定ですか?」

新卒社員: 「〇〇の件は〇〇さんにお願いし、資料も作成済みですので、〇日までに確認をお願いしようと思っています。」

上司: 「分かりました。では、有給休暇申請書を記入してください。確認後、承認します。」

新卒社員: 「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。」

有給の事後申請はできる?

病気や急な用事など、やむを得ない事情がある場合は、事後申請が認められるケースもあります。しかし、会社の就業規則で事後申請が認められていない場合や、連絡なしの欠勤は、無断欠勤扱いとなる可能性がありますので、注意が必要です。

できる限り事前に申請するようにしましょう。企業側も、事後申請に関するルールを明確にし、従業員に周知しておくことが大切です。

【会社側】新卒の有給休暇の注意点

新卒社員を受け入れる企業側は、以下の点に留意することで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な労務管理を行うことができます。

就業規則に有給休暇に関する事項を明記する

有給休暇の付与日、付与日数、申請方法、時季変更権など、有給休暇に関する事項は、就業規則に明確に記載する必要があります。これにより、従業員は安心して有給休暇を取得することができ、企業側も労務管理上のトラブルを避けることができます。記載事項の例としては、有給休暇の付与日、付与日数、有給休暇の申請方法、申請期限、有給休暇の時季変更に関する事項、有給休暇の計画的付与に関する事項、有給休暇の消滅時効に関する事項などが挙げられます。

有給休暇の取得を妨げない

労働基準法では、有給休暇の取得は労働者の権利として認められており、企業は正当な理由なく有給休暇の取得を拒否することはできません。企業は、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、時季変更権を行使することができますが、濫用は許されません。人手不足などを理由に、安易に時季変更権を行使することは、労働基準法違反となる可能性があります。また、企業は、従業員が有給休暇を取得したことを理由に、賃金の減額や人事評価での不利益な取り扱いなど、不利益な扱いをしてはなりません。

有給休暇の管理を適切に行う

企業は、従業員の有給休暇の付与日数、取得日数、残日数などを正確に管理する必要があります。管理方法の例としては、有給休暇管理簿を作成し記録する、勤怠管理システムを導入するなどが挙げられます。管理のポイントとしては、従業員に有給休暇の残日数を定期的に通知する、有給休暇の消滅時効に注意するなどが挙げられます。

有給休暇に関する相談窓口を設ける

企業は、従業員が有給休暇に関する疑問や不安を相談できる窓口を設置することが望ましいです。相談窓口の例としては、人事担当者、労務担当者、社内の相談窓口などが挙げられます。相談内容の例としては、有給休暇の付与要件、有給休暇の申請方法、有給休暇の取得に関するトラブルなどが挙げられます。

また、有給管理簿を整備し、各社員の付与日・残日数・取得履歴を記録することも重要です。特に、基準日を統一している場合は繰越分と新規付与分の管理を正確に行い、計算ミスを防ぐために勤怠システムや会計ソフトを活用するとよいでしょう。

新卒の有給休暇の計算を効率よく行うには?

有給休暇の計算は、従業員の勤続年数や出勤率によって付与日数が変動するため、煩雑になりがちです。特に、新卒社員のように入社時期が集中する時期は、正確な管理が求められます。

有給休暇の管理を効率化するためには、勤怠管理システムの導入がよいでしょう。従業員の勤怠状況をシステムで一元管理することで、有給休暇の付与日数や残日数を自動で計算できます。これにより、手作業による計算ミスや管理漏れを防ぎ、業務効率化を図ることができます。

また、クラウド型の会計ソフトを利用することも、有給休暇の管理を効率化する一つの方法です。クラウド型の会計ソフトの中には、勤怠管理機能や給与計算機能と連携し、有給休暇の管理を効率化できるものがあります。

マネーフォワードクラウドは、給与計算や勤怠管理など、人事労務に関する様々な機能を搭載しており、従業員の勤怠データを自動で取り込み、有給休暇の付与日数や残日数を自動計算します。

このように、ITツールを活用した有給管理は企業・従業員双方にメリットが大きいため、従業員が多い企業や有給管理に課題を感じている担当者は導入を検討すると良いでしょう。

新卒の有給休暇を正しく理解し計画的に活用しよう

新卒社員は、いつから有給休暇が付与されるのか、どのように申請すればよいのかなど、不安や疑問を抱えているかもしれません。企業側は、新卒社員が安心して働き始められるよう、有給休暇に関するルールや申請方法を明確に伝え、取得を促すことが大切です。

有給休暇は、労働者に与えられた権利です。新卒社員も、遠慮せずに有給休暇を取得し、ワークライフバランスの実現を目指しましょう。企業側も、クラウドシステムの活用など、管理の効率化も検討しながら、休みやすい職場づくりを進めましょう。

有給休暇の取得、管理に役立つテンプレート

有給休暇の取得や管理をスムーズに行うには、ひな形(テンプレート)を利用するのも効果的です。自社に合わせてカスタマイズしてお使いください。

マネーフォワード クラウドでは、ひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。


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