- 更新日 : 2025年6月2日
1日4時間勤務でも有給休暇はもらえる?条件や日数、給与の計算方法を解説
「1日4時間しか働いていないけど、有給休暇はもらえるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。パートやアルバイトでも、一定の条件を満たせば有給休暇を取得する権利があります。しかし、企業側の対応や計算方法に不安を感じる方もいるかもしれません。本記事では、「1日4時間勤務の有給休暇」に関するルールや取得方法、給与計算の仕組みなどを詳しく解説します。
目次
1日4時間勤務でも有給休暇はもらえる?
1日4時間の勤務でも、有給休暇を取得する権利があります。有給休暇は労働基準法で定められており、一定の条件を満たせば、パート・アルバイトなど正社員でなくても取得できます。
1. 1日4時間勤務で有給休暇が取得できる条件
有給休暇を取得できる条件は、次の2つです。
- 雇用されてから6ヶ月が経過している
- その間の出勤率が8割以上である
この条件を満たしていれば、1日4時間勤務のパートやアルバイトでも有給休暇が付与されます。
2. 1日4時間勤務の有給休暇の付与日数
週の勤務日数によって、有給休暇の付与日数が変わります。週あたり勤務日数ごとの年休付与日数の推移は次のとおりです。
- 週5日勤務(年間217日以上勤務):6ヶ月後に10日付与、勤続6年6ヶ月以上で20日
- 週4日勤務(年間169~216日勤務):6ヶ月後に7日付与、勤続6年6ヶ月以上で15日
- 週3日勤務(年間121~168日勤務):6ヶ月後に5日付与、勤続6年6ヶ月以上で11日
- 週2日勤務(年間73~120日勤務):6ヶ月後に3日付与、勤続6年6ヶ月以上で7日
- 週1日勤務(年間48~72日勤務):6ヶ月後に1日付与、勤続6年6ヶ月以上で3日
週の所定労働日数が5日以上または週30時間以上働く場合は、フルタイム労働者とみなされ、6ヶ月経過時に10日付与されます。一方、所定労働日数が週4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満のケースでは、付与日数が少ない「比例付与」となります。
週4日勤務(例:1日4時間で週4日など)の場合、6ヶ月経過時に 7日 の有給休暇が付与されます。その後の勤続年数1年6ヶ月で8日、2年6ヶ月で9日…と段階的に増え、最大付与日数は15日となります。
有給休暇の取得単位は通常「日」単位ですが、その労働者の1日分の所定労働時間分(この例では4時間)をもって1日とみなします。つまり4時間勤務の人が有休を1日取得すれば、その日の4時間分の賃金が支払われる仕組みです。
3. 有給休暇の取得方法
有給休暇は、原則として労働者の希望する日に取得できます。ただし、会社は「時季変更権」と呼ばれる権利を持ち、事業の正常な運営に支障がある場合は、別の日に変更を求めることができます。
4. 有給休暇の権利の消滅
有給休暇は、取得しないまま一定期間が経つと消滅します。労働基準法では有給休暇の有効期限は2年間と定められています。未消化の有給休暇を無駄にしないためにも、計画的に取得することが大切です。
1日4時間勤務の有給休暇の計算方法
1日4時間勤務のパートやアルバイトが有給休暇を取得した場合、賃金はどのように計算されるのでしょうか?有給休暇の給与計算には、以下の3つの方法があります。
- 通常の賃金(所定労働時間分)
- 過去3ヶ月の給与から算出した平均賃金
- 標準報酬日額(社会保険加入者向け)
具体的な計算方法について、次章で詳しく解説します。
1. 通常の賃金から算出
有給休暇中の賃金の計算方法として、所定労働時間分の給与を支払う方法があります。
例:時給1,200円で1日4時間勤務の場合
2. 平均賃金から算出
過去3ヶ月間の総支給額を基に、有給休暇の賃金を計算する方法です。
計算式: (過去3ヶ月の総賃金 ÷ 3ヶ月の暦日数)
例:3ヶ月の総賃金が360,000円、暦日数が90日
3. 標準報酬日額から算出(社会保険加入者向け)
社会保険に加入している場合は、「標準報酬日額」を基に計算する方法もあります。これは、健康保険や厚生年金の加入者に適用される計算方法です。
このように、1日4時間勤務のパートやアルバイトでも、適正な方法で有給休暇の給与が計算されます。
1日4時間勤務で有給休暇がもらえないと言われたら?
労働基準法上、有給休暇は労働者の権利です。会社は「業務が忙しい」「人員不足だから」などの理由で一方的に有給休暇の取得を拒否することはできません。
ただし、事業の正常な運営に支障が出ると認められる場合には、時季変更権を行使して別の日に振り替えることができます。
万が一、不当な理由で拒否された場合は、以下の方法で対応しましょう。
- 就業規則や雇用契約書を確認する:有給休暇の規定を確認し、法律に基づいた権利であることを再認識します。
- 上司や人事部に相談する:まずは直属の上司や人事担当者に事情を説明し、適切な対応を求めます。
- 労働基準監督署に相談する:それでも解決しない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談し、適切な指導を受けることができます。
1日4時間勤務でも有給休暇を確実に取得するコツ
有給休暇をスムーズに取得するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 早めに申請する:忙しい時期を避け、少しでも早めに申請することが大切です。
特に繁忙期は他の従業員との調整が難しくなるため、早めの計画が重要になります。 - 業務の引き継ぎをスムーズに:有給休暇を取得する際には、自分が担当している業務をスムーズに引き継げるよう準備をしましょう。例えば、業務の進捗状況をまとめたメモを用意したり、事前に引き継ぎミーティングを実施したりすることで、休暇中も業務が滞らないようにできます。
- 会社のルールを守る:有給休暇の取得手続きや社内ルールを事前に確認しておくことが大切です。企業によっては、申請期限が設けられている場合があるため、ルールを理解してスムーズな申請を行いましょう。
- 職場の状況を考える:チームの仕事に影響を与えないよう、繁忙期や人手不足の時期を避けて休暇を申請すると、了承されやすくなります。
1日4時間勤務の有給休暇の注意点
短時間勤務者の有給休暇にはいくつかの注意点があります。従業員と会社の双方の視点から、気をつけるべき点を詳しく解説します。
短時間勤務者の有給休暇にはいくつかの重要なポイントがあります。ここでは、従業員と会社の双方の視点から、注意すべき点を詳しく解説します。
短時間勤務者も正社員と同じ条件で有給休暇が適用される
パートやアルバイトなどの短時間勤務者でも、労働基準法に基づき正社員と同じ条件で有給休暇が付与されます。所定労働日数に応じた比例付与が適用されるため、勤務日数が少ない場合でも一定の日数の有給休暇を取得できます。
有給休暇を計画的に取得する
有給休暇は計画的に取得することが大切です。業務の繁忙期を避けて早めに申請することで、スムーズに取得しやすくなります。事前に仕事の引き継ぎを準備しておくと、周囲の理解も得やすくなります。
未消化の有給休暇は2年で消滅する
年次有給休暇には時効があり、取得せずに残った日数は付与された日から2年で消滅します。取得しないまま放置すると権利がなくなってしまうため、計画的に消化することが重要です。
会社が有給を与えない場合は法的対応を検討する
企業が正当な理由なく有給休暇の取得を拒否した場合、労働基準監督署へ相談し、指導を求めることが可能です。また、会社の対応が不当と考えられる場合は、労働組合や弁護士に相談し、適切な対応を取ることも検討しましょう。
有給休暇の管理を適切に行う
企業側は従業員の有給休暇を適切に管理し、従業員が取得しやすい環境を整えることが求められます。有給休暇の申請・承認プロセスを明確にし、適正に付与・管理することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、適切な管理を行うためには勤怠管理システムや会計ソフトの導入が非常に有効です。例えば、クラウド型の勤怠管理システムを導入することで、
- 従業員の勤務実績をリアルタイムで把握できる
- 有給休暇の残日数を自動で計算・表示する
- 申請や承認フローをオンラインで簡単に処理できる
など、業務の効率化につながります。
また、会計ソフトと連携することで、有給休暇の取得による給与計算がスムーズになり、手作業での計算ミスを防ぐことができます。
会社が適切に有給休暇を管理することで、従業員が安心して休暇を取得できる環境が整い、結果として職場全体の生産性向上にもつながります。
1日4時間勤務の有給休暇を正しく活用しよう
1日4時間勤務のパート・アルバイトでも、有給休暇を取得する権利があります。労働基準法のルールを理解し、適切に活用しましょう。会社側も適切な管理を行い、労働者が安心して休暇を取得できる環境を整えることが大切です。
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