• 更新日 : 2025年4月4日

移民と外国人労働者の違いは?定義や問題点を徹底解説

移民と外国人労働者は、法律上の定義や目的が異なります。違いを理解することは、適切な雇用管理の第一歩です。

本記事では、移民と外国人労働者の違いを明確にし、日本における受け入れ状況や企業が注意すべきポイントを解説します。適切な外国人雇用のために、実務に役立つ情報を確認しておきましょう。

移民と外国人労働者の違い

移民と外国人労働者は、定義や滞在目的、在留資格の種類、帰国の可能性が異なります。主な違いは、以下のとおりです。

項目移民外国人労働者
定義住居地を離れ移動する人日本で働くことを目的に滞在する外国人
滞在目的定住・永住が前提一定期間の就労
在留資格永住者・定住者など技能実習・特定技能など
帰国の可能性基本的になし契約終了やビザ期限切れで帰国の可能性あり

移民は地域社会に定着し、長期的な生活支援が求められます。一方、外国人労働者は就労期間が限られているため、適切な労働環境の整備や帰国後のサポートが必要です。

違いを理解することで、政策や支援策を適切に設計し、共生社会の実現につなげられます。

移民は本来の住居地を離れて移動する人のこと

移民とは、本来の住居地を離れ、他の地域や国へ移動する人を指します。国際移住機関(IOM)は、国境を越えるかどうかや移動の期間にかかわらず、移民を広義に定義しています。ただし、国際法上、移民の明確な定義はありません。

専門家の間では、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人を国際移民とみなすことが広く認識されています。

また、移動の期間によって「短期的または一時的移住」(3〜12ヶ月)と「長期的な恒久移住」(1年以上)に分類されます。個人の自由な選択による場合もあれば、経済的・政治的な事情でやむを得ず移動する場合もあることを理解しましょう。

移民と難民の違い

移民と難民は、出国の理由や状況に違いがあります。

項目移民難民
出国先選択できる限られている
出国における計画計画して移住逃れるために移住
渡航証明証持っている準備が困難

参考:「難民」と「移民」の差異 ―わが国における生活面に焦点化して―

移民は主に経済的な理由で、事前に計画を立てて移動します。一方、難民は戦争や迫害などの危険から逃れるため、計画の余裕がなく、急を要して出国することが特徴です。

また、移民は自らの意思で移住することが多く、生活の向上を目的としています。対して難民は、個人では対処できない危機に直面し、迫害を避けるために移動します。

難民の状況は緊急性が高く、国際的な保護が必要です。

不法移民と移民の違い

不法移民と移民の違いは、以下のとおりです。

項目移民不法移民
入国手続き正規のビザや許可証を取得している不法に入国、または在留期限超過している
在留資格適切な資格を保持し合法的に滞在している在留資格なし、不法滞在者とみなされる
義務法律で定められた権利と義務を持つ法的保護が限定的で強制退去の対象である

不法移民は、日本に有効な旅券なしで入国したり、不法に上陸、または在留期限を過ぎて滞在したりする外国人を指します。合法的な移民と異なり、法的な制約が多く、労働や生活の安定が難しくなります。

日本の移民受け入れの現状

​日本の在留外国人数は、年々増加傾向にあります。​令和6年6月末時点の日本の中長期在留者数は331万1,292人、特別永住者数は27万7,664人と合計358万8,956人の在留外国人がいます。前年末の341万992人と比較すると、17万7,964人(5.2%)の増加です。

地域別では東京都の在留外国人数が最も多く、70万1,955人(前年末比3万8,593人、5.8%増)で、全国の19.6%を占めています。​ついで、愛知県、大阪府、神奈川県、埼玉県が多い状況です。​

移民の増加は、日本の少子高齢化や労働力不足を背景に、受け入れ拡大が進んでいることを示しています。

外国人労働者は外国人の労働者のこと

外国人労働者とは、日本国籍を持たない、日本で働く労働者を指します。移住労働者や移民労働者と呼ばれることもあり、合法就労者と不法就労者に分類されます。

合法就労者は、適切な就労ビザを取得し、法的に許可された業種で就労する人です。在留資格には、職種ごとに異なる種類があり、在留資格の範囲内で働く必要があります。

一方、不法就労者は、密入国者や在留期間を超過した者、または在留資格の範囲を超えた仕事に就く者が含まれます。不法就労は法律違反となり、罰則の対象となるため注意が必要です。

外国人が働ける在留資格

外国人が日本で働くには、適切な在留資格が必要です。在留資格は就労の可否や職種の制限によって分類されます。

業種・職種問わず就労できる在留資格
  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

参考:日本で働ける外国人・働けない外国人|東京外国人雇用サービスセンター

上記の在留資格は、日本国内での活動に制限がなく、どの職業でも就労できます。

一定の範囲内の職種、業種、勤務内容に限って就労できる在留資格
  • 教授
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 高度専門職1号
  • 高度専門職2号
  • 経営・管理
  • 法律・会計業務
  • 医療
  • 研究
  • 教育
  • 技術・人文知識・国際業務
  • 企業内転勤
  • 興行
  • 技能
  • 特定活動
  • 特定技能
  • 技能実習

参考:日本で働ける外国人・働けない外国人|東京外国人雇用サービスセンター

資格外活動の許可がなければ就労できない在留資格
  • 文化活動
  • 留学
  • 家族滞在

参考:日本で働ける外国人・働けない外国人|東京外国人雇用サービスセンター

上記の在留資格は、原則として就労できません。ただし、資格外活動の許可を得れば、一定の範囲で就労可能です。たとえば、留学生は週28時間以内でのアルバイトが認められています。

外国人を雇用する際には、必ず在留カードなどで在留資格や在留期間、就労の可否を確認する必要があります。​適切な在留資格を持たない者を雇用すると、企業側も罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。

外国人労働者の受け入れ現状

​令和6年10月末時点の日本の外国人労働者数は230万2,587人で、前年より25万3,912人増加し、過去最多を更新しました。 ​外国人を雇用する事業所数も34万2,087所で、前年より2万3,312所増加しています。

国籍別の内訳は以下のとおりです。

  1. ベトナム:57万708人(全体の24.8%)
  2. 中国:40万8,805人(17.8%)
  3. フィリピン:24万5,565人(10.7%)

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省

また、在留資格別の内訳は下記のとおりです。

  1. 専門的・技術的分野の在留資格:71万8,812人
  2. 身分に基づく在留資格:62万9,117人
  3. 技能実習:47万725人​
  4. 資格外活動:39万8,167人
  5. 特定活動:8万5,686人

参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省

厚生労働省が公開した受け入れ状況のデータは、日本における外国人労働者の増加傾向を示しており、多様な国籍や在留資格を持つ外国人労働者が日本の労働市場で活躍していることがわかります。

外国人労働者を受け入れるメリット

少子高齢化が進む日本では、労働力不足が深刻化しており、外国人労働者は重要な役割を果たしています。外国人労働者の受け入れによるメリットを理解し、適切に活用することは今後の企業の成長を目指すためにも重要です。

以下では、外国人労働者を受け入れるメリットを紹介します。

外国人労働者の具体的な雇用方法については、下記の記事で解説しているため、あわせてご覧ください。

人材不足を解消し、若い人材を確保できる

外国人労働者の受け入れは、若い人材を確保する手段の一つとなります。

少子高齢化が進む日本では、若い人材の確保が困難です。とくに、労働力不足が深刻な業界では、外国人労働者の採用が組織の活性化につながります。

近年、技術力や専門知識を持つ外国人を採用する企業も増えており、国内で人材不足を補う重要な役割を担っています。日本人の応募が集まりにくい職種でも、適切な条件を設定することで、外国人を採用できるため、企業にとって大きなメリットとなるでしょう。

社内の多様性が高まり、グローバル化が進む

外国人労働者の受け入れにより、社内の多様性が向上し、グローバル化が進むことがメリットです。

外国人労働者は、日本語や英語を含む複数の言語を話せることが多く、海外市場への対応力を高める要素となります。また、多様な文化や価値観を持つ人材が加わることで、新しい視点やアイデアが生まれ、企業の成長や競争力向上につながります。

企業は異なる文化を理解し、尊重する姿勢を持つことで、多様な人材が活躍しやすい環境を築けるでしょう。

訪日外国人への対応力が向上する

外国人労働者の受け入れにより、訪日外国人への対応力が向上することが大きなメリットです。

日本語だけでなく英語や他の言語を話せる従業員が増えることで、外国人旅行者への案内や接客がスムーズになります。政府は観光を重要政策の一つとしており、2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人に増やす目標を掲げています。

そのため、多言語対応の需要は今後さらに高まるでしょう。とくに観光業では、訪日外国人への対応力向上が企業の成長につながります。

海外進出の足掛かりになる

外国人労働者の受け入れは、企業の海外進出に役立ちます。

海外展開を考える企業にとって、法律や文化、言語の違いは大きな課題です。しかし、進出予定国の文化や市場を理解している外国人労働者が社内にいると、現地の取引習慣や規制を把握しやすくなります。

数年単位で海外ビジネスを視野に入れる企業にとっては、外国人労働者の雇用は重要な戦略です。現地の情報を活用することで、スムーズな事業展開が期待できます。

外国人労働者の雇用を検討している方は、ぜひ下記の外国人の入社手続きに関する記事をあわせてご覧ください。

外国人労働者を受け入れる際の注意点

外国人労働者を受け入れる際には、注意点があります。外国人労働者を雇用する際は、適切な対応をしないと、職場環境のトラブルや法的リスクにつながる可能性があります。スムーズな受け入れのために、注意点を理解し、準備を整えることが重要です。

以下では、具体的な注意点を紹介します。

外国人雇用状況届出の義務を守る

外国人を雇用する事業主は、外国人雇用状況の届出義務があります。

特別永住者や公用・外交の在留資格を除くすべての外国人労働者について、雇入れおよび離職時に氏名や在留資格を確認し、ハローワークへ届出なければいけません。

届出を怠った場合や虚偽の届出を行った場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。ハローワークでは、届出情報をもとに雇用環境改善の助言や指導、離職した外国人の再就職支援を実施しています。

事業主は法令を遵守し、適切な雇用管理を徹底することが重要です。

求める日本語レベルを確認する

外国人労働者を採用する際は、必要な日本語レベルを事前に確認することが重要です。

日本語能力の指標として「日本語能力試験(JLPT)」が広く用いられており、日本で働く外国人や留学生の多くが受験する試験の一つです。

試験のレベルは「N5」から最も難しい「N1」までの5段階で構成されています。N5・N4は基本的な日本語、N3は中間レベルである程度の日常会話、N1・N2は日常生活やビジネスでの高度な日本語力を測ります。

企業がどのレベルの日本語を求めるか事前に定めることで、採用後のトラブル防止が可能です。外国人労働者を雇用する際は、職務内容に応じた日本語能力を確認し、適切な人材を採用しましょう。

外国人労働者にも労働基準法は適用される

日本国内で働くすべての労働者には、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法などの労働関係法令が適用されます。

労働基準法第3条では、労働条件における国籍差別を禁止しており、外国人だからといって低賃金で雇用することは許されていません。最低賃金を下回ることが許されないのはもちろん、労働時間や休日などの条件において、日本人と異なる不当な扱いをすることも違法です。

外国人労働者を適正に雇用するためには、労働関係法令を理解し、適切な労働環境を整えることが重要です。

不法就労を防ぐためにチェックする

外国人労働者を雇用する際は、不法就労を防ぐために慎重な確認が必要です。

不法就労の外国人を雇用した場合、企業は不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。営利目的で不法就労させた場合は、1年以上10年以下の懲役および1,000万円以下の罰金となるため、注意が必要です。

短期滞在や研修など、就労が認められない在留資格や在留期間を超過している外国人は就労できません。

不法就労を防ぐには、在留カードを確認し、就労可能な資格かどうかを必ずチェックすることが重要です。

移民と外国人労働者の違いを理解して適切な雇用を徹底しよう

移民と外国人労働者の違いを理解することは、適切な雇用管理のためにも重要です。

移民は永住を目的とした移動者であり、外国人労働者は一時的な就労を目的としています。それぞれの法的地位や権利を把握し、企業の雇用方針を明確にすることが、トラブルを防ぎ、円滑な運営につながります。


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