• 更新日 : 2025年8月26日

借り上げ社宅の物件探しのポイントは?従業員は自分で選べる?

借り社上げ社宅は、企業ごとで物件選択の自由度が異なります。従業員の希望物件を法人契約する場合や、企業指定の物件から選ぶケースもあるでしょう。

本記事では、借り上げ住宅を従業員自身で探す際のポイントや流れ、注意点について解説します。

借り上げ住宅とは?

借り上げ社宅とは、企業が不動産会社などから賃貸物件を借りて、従業員に貸し出すことを指します。

社宅に比べて、複数候補の立地や間取りから選べ、固定資産税や維持管理費がかからない点もメリットです。しかし、希望者が少ない場合は、無駄な支出につながります。

以下記事で、借り上げ社宅制度の特徴やメリットをまとめています。

社有社宅との違い

社有社宅は、会社が購入・所有する物件を、従業員へ住居として貸し出すことです。資産を保有できる観点から、 社有社宅を選ぶケースが 過去にはみられました。一方で、借り上げ社宅は、企業が不動産会社や個人オーナーと賃貸契約を結び、物件を従業員に住居として提供する制度です。

どちらの制度も家賃を従業員から徴収します。しかし、企業方針やコスト負担の考え方によって、最適な制度は異なります。

社有社宅は、固定資産税・都市計画税・維持管理費がかかる点がデメリットです。

住宅手当との違い

企業が従業員の住居費を支援する制度には、借り上げ社宅や社有社宅のほかに、「住宅手当」という方法もあります。

借り上げ社宅や社有社宅は住居を提供するのに対して、住宅手当は従業員自身が自由に物件を選び、家賃の一部を企業が手当として補助する制度です。

住宅手当の大きな特徴は、企業側で物件を準備する必要がなく、従業員で探します。そのため、契約や各種手続きにともなう負担を軽減できます。

住宅手当は給与として支給され、社会保険料などの課税対象です。企業・従業員とともに税負担が増加する点に注意しましょう。

以下記事で、住宅手当について解説しています。あわせてご覧ください。

借り上げ社宅は従業員が自分で選べる?

借り上げ社宅は、誰が物件を選ぶかについて明確な決まりはなく、企業ごとに運用方法が異なります。

どの方法を採用するかは、企業の裁量によって異なります。物件を探す方法は、以下が一般的です。

  • 従業員で探す
  • 企業側で探す
  • 連携する不動産会社で探す
  • 従業員が住んでいる賃貸物件を借り上げる

プライベートや立地を重視したい声がある場合は、従業員で選べる仕組みを導入するとよいでしょう。満足度が向上し、社員定着率につながります。

借り上げ社宅を従業員自身で探す流れ

借り上げ社宅は、従業員自身で物件を探し、契約することも可能です。

通常の物件探しと流れは変わりません。しかし、法人契約の場合は、提出書類や審査基準が個人契約と異なります。主な流れは、以下のとおりです。

  • 住みたい物件をピックアップ
  • 物件見学
  • 入居申し込み
  • 審査
  • 法人名義で契約
  • 入居

まずは、従業員自身で希望条件の物件を探します。エリア・間取り・通勤の利便性などを考慮し、候補を選びましょう。気になる物件を不動産会社へ連絡し、内見を依頼します。その際は、住み心地や周辺環境の確認をしておくとよいでしょう。

物件が決まったら、入居を申し込みます。契約前に、法人契約であることを伝えておきましょう。法人契約の場合は、企業の信頼性や支払い能力が審査対象です。審査対象が、個人契約と異なる点に注意しましょう。

審査通過後も、法人名義で賃貸契約を結びます。必要書類や手続きを不動産会社へ確認しておきましょう。契約完了後、入居可能となります。

借り上げ社宅の物件探しのポイント【従業員で探す場合】

借り上げ社宅を利用するにあたって、実際に現地を訪れて確認する「内見」は、快適な居住環境を選ぶ上で欠かせない過程です。社宅としての条件を満たしているかだけでなく、日々の暮らしを想定した視点でチェックすることが大切です。以下では、内見時に注目すべき項目について解説します。

社宅規定や希望条件に合致しているか

内見の前提として、企業が定める社宅規定に合致しているかをまず確認しておきましょう。規定には、家賃の上限、間取り、築年数、設備などの条件が盛り込まれていることがあります。また、従業員本人の希望条件(駅からの距離や部屋の広さなど)とのバランスも見ておくと、思い描いていた住居像とのアンマッチを防ぐことができます。内見時は、現地の情報と社内規定を照らし合わせながら、条件と合致しているかを確認することが重要です。

周辺環境の雰囲気はいいか

社宅の住み心地は建物そのものだけでなく、周辺の環境にも左右されます。実際に物件周辺を歩いてみることで、街の雰囲気や治安、騒音の有無などを肌で感じ取ることができます。昼と夜で街の印象が変わることもあるため、可能であれば複数の時間帯で確認すると、より現実的な判断がしやすくなります。公園やスーパー、医療機関など、日常生活に必要な施設の距離感も確かめておきたいところです。

遠方の場合はオンライン内見が可能か

勤務地から離れたエリアでの物件を検討している場合、現地まで足を運ぶのが難しいこともあります。そのようなときは、管理会社が提供するオンライン内見の利用を検討するとよいでしょう。ビデオ通話を通じて室内の様子を確認したり、担当者に気になる点をリアルタイムで質問することができます。事前に資料を受け取った上で、オンラインで具体的な確認を行うことで、現地訪問に近い情報量を得ることが可能です。

建物や設備の老朽化・管理状況

見落としがちですが、建物の状態や設備の管理状況も実際に確認しておきたいポイントです。共用部分の清掃状態やエントランスの印象、郵便受けなどの細部に至るまで、その物件がどの程度きちんと管理されているかがわかります。室内に関しては、キッチンや浴室、エアコンなどの使用状況、壁紙や床の傷み具合なども確認しておきましょう。長く住むことを想定したときに、安心感を持って暮らせるかどうかが判断の材料になります。

通勤・買い物の動線がスムーズか

日々の生活をイメージするうえで、通勤や買い物の動線がストレスの少ないものであるかも確認が必要です。内見時には実際に最寄り駅やバス停まで歩いてみることで、交通アクセスのしやすさを実感できます。また、近隣にスーパーやコンビニがあるか、夜遅くの帰宅時でも安心できる道のりかなども見ておくとよいでしょう。利便性は居住満足度に直結する要素であり、生活全体の質に大きく関わってきます。

隣人や周囲の音・生活音に問題がないか

物件の住み心地を左右するもうひとつの要素が、音の問題です。壁が薄かったり、周囲の住民の生活スタイルが異なる場合、思わぬストレスにつながることもあります。可能であれば夕方や夜など、生活音が出やすい時間帯に内見を行い、上下左右の部屋からどの程度音が聞こえるかを確認してみましょう。また、周辺の騒音状況(交通量や飲食店の有無など)も併せてチェックしておくと安心です。

借り上げ社宅の物件探しのポイント【企業で探す場合】

企業が従業員向けの借り上げ社宅を探す際には、条件に合致した物件を見つけるだけでなく、従業員の生活の質や企業としての運用効率も見据えた視点が求められます。物件の立地や契約条件、費用面だけでなく、将来的な継続利用のしやすさや管理体制まで幅広く検討することが望ましいです。

賃料と初期費用のバランスを確認する

社宅にかかる費用は企業が一定の負担をするケースが多いため、毎月の賃料に加え、敷金・礼金や仲介手数料など初期費用も含めた総コストを把握することが前提になります。相場より高額な物件を選んでしまうと、企業としてのコスト負担が増し、制度そのものの運用が難しくなる可能性があります。加えて、更新料や修繕義務など、長期運用を視野に入れたコスト計算も行うことが適切です。

通勤のしやすさと交通アクセス

従業員の勤務地までの所要時間や、最寄り駅までの距離、公共交通機関の本数などを総合的に確認します。物件がいくら条件に合っていても、交通アクセスが不便であれば利用を敬遠される可能性があります。交通費の支給基準にも関わるため、通勤ルートの現実性は企業側にとっても検討すべき要素です。

周辺施設と住環境の調和

近隣にスーパーや病院、コンビニエンスストアなどがあるかどうかは、日々の生活の快適さを左右します。加えて、治安や騒音、街の雰囲気なども物件の評価に影響します。社宅として長く利用する可能性がある場合、周辺環境が穏やかであることが結果的に従業員の定着にも寄与する可能性があります。

解約や更新条件の柔軟性

異動や退職など従業員の事情により、急な退去が発生する場合もあります。その際に違約金が発生する物件か、更新時に条件変更があるかなど、事前に確認しておくことで、運用面でのリスクを軽減できます。法人契約においては、中途解約時の扱いが物件ごとに異なるため、細かい条件の精査が欠かせません。

管理会社の対応力と信頼性

日常的なトラブル対応や、修繕時の迅速さなどは、物件を管理する会社の対応力に左右されます。管理会社が信頼できるかどうかは、従業員の居住満足度に直結します。問い合わせへの対応スピードや、修繕の手配体制などについても確認しておくと安心です。

借り上げ社宅を従業員が探す場合の注意点

借り上げ社宅を従業員自身で探す場合は、注意点もあります。具体的には以下のとおりです。

  • 法人契約や転貸借がNGの物件がある
  • 不動産会社や担当者が法人契約に不慣れ
  • 社内規定がある場合、従業員の希望通りにならない場合がある

法人契約や転貸借がNGの物件がある

賃貸物件には、法人契約や転貸借がNGの物件があります。転貸借とは、企業名での契約ではなく、社宅代行会社が借主として契約締結後、貸主として企業に物件を貸す形態です。

2020年に施行されたサブリース新法により、貸主が宅建業者でなければ、社宅代行会社が借主に対して重要次項の説明を義務付けられています。

その結果、以前よりも手続きが煩雑になり、転貸借を断られる場合があります。内見の際には、法人契約・転貸借で問題ないか確認しましょう。

参考:国土交通省|サブリース事業適正化ガイドラインの策定

不動産会社や担当者が法人契約に不慣れ

内見の担当者が法人契約に慣れている場合は、法人・転貸借NG物件を避けて物件を探してもらえます。

一方で、経験が浅い不動産担当者の場合は、法人契約できないなどのトラブルになる可能性があります。法人契約に慣れている業者、もしくは担当者を選ぶとよいでしょう。

社内規定がある場合、従業員の希望通りにならない場合がある

借り上げ社宅は、間取り・家賃・エリアなどに社内規定を設けていることが一般的です。規定がないと、福利厚生や交通費管理が煩雑化し、不公平感が生まれます。

規定がある場合は、事前に従業員に内容を伝えておき、必ずしも希望通りになるとは限らない点を伝えましょう。

借り上げ社宅を従業員が断ることはできる?

企業から借り上げ社宅の利用を案内された際に、自身のライフスタイルや家庭の事情により利用を希望しないケースもあります。会社からの制度であっても、必ずしも従業員全員にとって最適な選択とは限りません。ここでは、借り上げ社宅を断る際の判断基準や対応の進め方について解説します。

義務ではなく任意かを確認する

企業によっては、借り上げ社宅の利用を福利厚生の一環として任意で提供している場合があります。そのような制度であれば、従業員が自ら利用の可否を選ぶことができます。一方で、単身赴任や転勤などに伴って企業側が住居の提供を義務づけるケースもあり、その場合は断ることが難しくなることもあります。就業規則や社宅制度の運用マニュアルを確認し、自身に適用される制度内容を理解することが第一歩となります。

拒否する際の伝え方に配慮する

借り上げ社宅を辞退する意向がある場合でも、単に断るだけでなく、その理由を丁寧に伝える姿勢が双方にとって円満な対応につながります。たとえば、持ち家を所有している、家族の事情で通勤圏内に住み続けたい、保育園の通園など地域との結びつきがあるといった理由が考えられます。企業側も従業員の生活状況を踏まえて柔軟に判断することがあるため、事情を誠実に説明することで、無用な誤解を避けやすくなります。

借り上げ社宅を断った場合の従業員の対応

借り上げ社宅の利用を断った場合、住居に関する費用や手続きは自己責任となることがあります。制度の対象から外れることで失われるメリットや、想定される対応も理解しておく必要があります。

家賃補助制度の有無を確認する

借り上げ社宅を辞退する従業員に対して、別途住宅手当や家賃補助を支給している企業もあります。そのような制度が用意されていれば、借り上げ社宅を利用しなくても一定の支援が受けられます。一方で、代替制度が用意されていない場合は、自ら住居を探し、契約や支払いもすべて自己負担となるため、条件面をよく確認したうえで判断することが現実的です。

将来的な異動時の影響を考える

現在は借り上げ社宅を利用しない選択をしても、将来的に転勤や異動が発生した際に再度利用を勧められる可能性があります。過去に辞退した実績があっても、その都度事情に応じて制度が適用されるかどうかは企業の判断によります。状況が変わった際に再度制度を利用する意思があるかどうかも視野に入れておくと、将来的な選択肢の幅が広がります。

借り上げ住宅は通勤や快適性を考えた物件選びが大切

借り上げ社宅は企業によって物件選択の自由度が異なり、従業員自身で選ぶケースも少なくありません。

失敗しない借り上げ社宅選びは、企業のルールを確認し、通勤や生活の快適性を考えたうえで物件を選ぶことが重要です。

契約時の条件を把握しておくことも大切です。 本記事のポイントを参考に、後悔のない借り上げ社宅選びをしましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事