• 更新日 : 2025年4月2日

外国人労働者の離職率が高い理由とは?定着率を向上させるためのポイントも解説

各業界で人手不足が深刻化するなか、外国人労働者の採用が注目を集めています。日本の外国人労働者の数は年々増加しており、人手不足解消の鍵になるといえるでしょう。しかし、外国人労働者が定着しないと悩む企業が多いのも事実です。この記事では、外国人労働者の離職理由や、離職率を下げる対策方法、採用の時点で気をつけるべきポイントなどについて解説します。

外国人労働者数の推移

厚生労働省の「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」では、現在日本には約230万人の外国人労働者がいると記載されています。前年比は12.4%となっており、外国人労働者数は年々増加しているのがわかります。

引用:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和6年10月末時点)|厚生労働省

また、外国人労働者を雇用する事業所数は約34万件で、増加率は前年比7.3%です。人手不足の解消や企業のグローバル展開のため、外国人労働者の雇入れを行う企業が増加しているといえるでしょう。

外国人労働者の入職・離職時の届出が義務化された平成19年以降、外国人労働者の数は過去最多を更新しており、これからも増え続けると予想されます。

外国人労働者の1年以内の離職率は28.0%

ヒューマングローバルタレント株式会社が実施した「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」によると、外国人労働者の入社後1年以内の離職率は28.0%とされています。令和5年における日本人の離職率15.4%と比較しても、外国人労働者の離職率が高いのがわかります。

引用:日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査|ヒューマンホールディングス株式会社

また、調査では53%の外国人労働者が、入社後1年以内にモチベーションダウンを経験したと回答しており、全体の約3割が3ヶ月未満にやる気の低下を感じたとされています。外国人労働者の離職率を下げるためには、入社後の早期段階から定着のための対策が必要だといえるでしょう。

外国人労働者の主な離職理由

外国人労働者の離職は、待遇やキャリアアップ、上司のマネジメント力など、さまざまな部分への不満が要因で発生します。外国人労働者の主な離職理由を6つ解説します。

1. 待遇に不満がある

日本には、母国よりも高い給与水準を求めて来日する外国人労働者が多いと考えられます。日本人と同じ業務内容にもかかわらず給与が低い、サービス残業を強いられているなどの問題があれば、日本で働くメリットを感じられません。

外国人労働者にも、1日8時間・週40時間の法定労働時間が適用されます。法定労働時間を超えた分は時間外労働となり、残業代が発生します。また、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければいけません。

2. 企業風土が合わない

日本独自の企業風土が合わず、離職してしまうケースも挙げられます。日本人にとって当たり前の習慣でも、外国人にとって順応が難しい場合もあるでしょう。

たとえば、日本特有の「察する文化」が挙げられます。日本人が相手の気持ちを察し行動ができるのは、日本文化や従業員同士の性格を熟知している前提があるからです。日本の生活や仕事に慣れていない外国人に同等の理解を求めると、外国人労働者は違和感をおぼえるでしょう。

「言わなくてもわかるだろう」「これくらいわかって当たり前」と考えず、明確なコミュニケーションを取らなければなりません。

3. キャリアアップが見込めない

昇進や昇格のイメージがわかない職場は、将来の展望が見えにくくなり、モチベーションの低下につながります。外国人労働者個々の得意を見抜き、スキルに見合った業務でキャリア形成できる環境を作りましょう。

また、外国人労働者のなかには、日本特有の人事制度である「年功序列」や「終身雇用」の文化によって、キャリアアップが難しいと感じる人もいるでしょう。企業側は、社内の評価制度を明確化し、理想のキャリア形成が目指せる環境を整える必要があります。

4. 上司のマネジメントに不満がある

ヒューマングローバルタレント株式会社が実施した「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」では、42%の回答者が「上司のマネジメント・指導に対する不満」を離職理由に挙げています。外国人労働者を受け入れてまもない企業は、外国人とのコミュニケーションに慣れていません。外国人労働者の特性を把握しないまま従来のマネジメントを行うと、コミュニケーションに誤解が生じる可能性があります。

上司は、働く人材の変化に合わせてマネジメント方法を柔軟に変えなければなりません。「日本に住んでいるならこれくらいわかるだろう」などの思い込みは持たず、お互いに風通しのいいコミュニケーションを心がけましょう。定期的に面談を行い、仕事への不安や問題がないか確認するのも有効です。

参考:日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査|ヒューマンホールディングス株式会社

5. 業務内容が合わない

業務内容のミスマッチも、外国人労働者のモチベーションを低下させる要因のひとつです。「入社前に聞いていた仕事内容と違う」「予期せぬ体力仕事を強いられる」などの事態が発生すると、外国人労働者は企業に不信感をいだくでしょう。

また、スキルアップや経験を求める人材に対し、単調な作業ばかりをさせるとやる気の低下につながります。外国人労働者は自身のスキルを充分にいかせないと感じ、離職を考えるかもしれません。外国人労働者が仕事を通して目指したい姿を明確にし、成長を実感できる業務を割り当てる必要があります。

6. 高い日本語能力が求められる

日本企業では、敬語やメール文、名刺交換など、独特のコミュニケーションが発生します。日本語は少しのニュアンスの違いで誤解を生む可能性があります。外国人労働者にとっては高度な日本語スキルを求められるため、ストレスを感じるでしょう。自分の日本語スキルに自信を持てず、働く意欲を失ってしまうかもしれません。

特に、専門用語やニュアンスの違いを理解しなければいけない場合では、コミュニケーションにずれが生じやすくなります。初めて日本で働く外国人にもわかりやすいように、日本のビジネスシーンで使用する用語やルールをまとめたマニュアルを用意し、理解を深めてもらいましょう。

外国人労働者の離職率を下げる対策

外国人労働者の離職率を下げるには、会社制度の見直しや従業員の活発なコミュニケーションが必要です。給与や人間関係の不安を解消し、外国人労働者が会社で働くメリットを実感できるよう、職場環境を整えましょう。

1. 給与体系の見直しを行う

国籍を理由に労働条件に差をつけた場合は、労働基準法違反とみなされます。外国人労働者の給与は日本人と同等水準でなければなりません。社会保険制度への加入も同等の対応が必要です。

日本人と同じ仕事をしているにもかかわらず給与が安いとなれば、外国人労働者はより多くの報酬がもらえる同業他社に転職する可能性があります。不合理な待遇格差がある企業は、速やかに解消に取り組むべきです。年功序列や終身雇用が、労働者のモチベーションを下げる要因になっている場合は、「成果に対する報酬制度」の導入を検討しましょう。

2. 従業員同士のコミュニケーションの場を作る

外国人労働者が、業務のなかだけで日本文化や日本特有のコミュニケーションを理解するのは困難です。ランチタイムや懇親会の機会を設け、お互いを理解するための時間を作りましょう。

プライベートや外国人労働者の母国に関する話など、業務以外の会話をするのも有効です。外国人労働者が「会社に受け入れられている」「楽しい」と感じられるような職場環境を作るのが大切です。

3. キャリアアップの支援を行う

本来持っているスキルをいかし、仕事でスキルアップしたいと考える外国人は多いでしょう。特に、滞在期間が決まっている外国人労働者は、努力と成果を迅速に評価してくれる職場を求めています。業務やキャリアに関する相談窓口の整備や、明確な評価基準の制作など、さまざまなキャリアアップ支援が求められます。

外国人労働者が日本企業で働くためには、言語やマナーなど、さまざまなスキルを身につけなければなりません。評価項目を細かく設定し、短い期間(30・60・90日間など)のキャリアパスを設定すれば、目の前の目標が明確化してモチベーションの維持につながります。

4. 適切な人材を上司に抜擢する

ヒューマングローバルタレント株式会社が実施した「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」では、離職理由に「上司のマネジメントに不満がある」を挙げた外国人労働者が42%でした。貴重な人材をコミュニケーション不足で失うのは避けなければなりません。

外国人労働者の上司には、環境の変化に理解のある以下のような人材が適しているでしょう。

  • 異文化を受け入れられる
  • 差別的な意識を持っていない
  • 外国人に合わせた丁寧な説明ができる

外国人労働者が業務や会社のルールに対して間違った理解をしている場合は、何度も説明しなければならない場面が出てくるでしょう。上司には、外国人が異国で働く難しさを理解し、丁寧に対応できる人材が求められます。

参考:日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査|ヒューマンホールディングス株式会社

5. 適切な人員配置を行いスキルがいかせる環境を作る

外国人労働者の退職理由に、業務内容のミスマッチが挙げられます。外国人労働者が求めている仕事と実際の業務に大きな差があると、モチベーションの低下を引き起こします。このような事態を避けるためには、採用時に業務内容を具体的に伝え、外国人労働者本人に了承を得る必要があるでしょう。

定期的な面談や普段のコミュニケーションを通して、モチベーションが維持できているかを確認するのが大切です。外国人労働者のスキルや経験、学歴などを考慮し、適切な人員配置を行いましょう。

6. 言語の壁に対してサポートを行う

日本の会社やビジネスの場では、高い日本語能力が求められます。外国人労働者にとって、敬語やあいまいな表現の日本語を理解するのは容易ではありません。業務上、外国人労働者が必ず理解しなければならない内容は、多言語マニュアルや動画などのわかりやすい資料を用意するのがいいでしょう。

また、敬語やビジネスマナーの学習機会を設けるのも効果的です。仕事で困らない日本語能力は、企業と外国人労働者の双方に大きなメリットがあります。「日本にいるなら言語は勝手に身につくだろう」と考えず、企業側から継続的なサポートを実施しましょう。

外国人労働者の離職を未然に防ぐ取り組み

外国人労働者の離職を防ぐには、外国人労働者の雇い入れに関する社内全体の理解や、採用面接での工夫が必要です。会社の体制を見直し、外国人労働者を迎え入れる環境を整えましょう。

1. 採用プロセスを見直す

すでに採用している外国人労働者がいる場合は、面接に同席してもらうのもいいでしょう。日本語が堪能ではない外国人労働者にとって、自分の意思や希望を面接官にすべて伝えるのは困難です。必要に応じて母国語が話せる外国人従業員にサポートを求めましょう。

面接に母国語を話す外国人従業員がいると、面接を受けた外国人労働者は会社で働くイメージがわき、安心感を持つでしょう。外国人ひとりが孤立しないように、同じ母国の人材を数名採用するのも離職を防ぐ方法として有効です。

2. 面接で労働環境や仕事内容について丁寧に説明する

入社後の業務内容について、外国人労働者と企業の間で認識に相違があってはいけません。面接では、労働契約やキャリアアップの条件について正確な説明を行いましょう。

可能であれば面接時に職場を見学してもらい、実際の業務や労働環境をイメージできるように配慮するのもいいでしょう。

3. 外国人労働者の重要性を社内に浸透させる

日本人従業員向けに、外国人労働者を受け入れる経緯や重要性、異文化への理解を事前に伝えておく必要があります。日本人従業員からの理解を得なければ、現場で働く外国人労働者は孤独感をおぼえるでしょう。

日本語が堪能ではない外国人労働者にとって、良好な人間関係の構築は容易ではありません。外国人労働者の重要性を会社全体で理解していれば、入社する外国人は「歓迎されている」「必要とされている」と感じ、長期的に働いてくれるはずです。

多角的なサポートで外国人労働者の定着を目指そう

外国人労働者の離職率を下げるには、多角的なサポートが必要です。外国人の育成に適した上司の配置、企業風土の見直し、キャリアアップができる環境整備など、さまざまな対策が考えられます。人手不足を解消するうえで、外国人労働者は大きな力を担う存在です。日本人と外国人の双方が働きやすい環境を目指し、外国人労働者の離職率を下げる対策を講じていきましょう。


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