• 更新日 : 2025年3月31日

労働基準法第20条とは?解雇予告についてわかりやすく解説!

労働基準法第20条は、使用者(会社)が労働者を解雇する際の手続きとして「解雇予告」を義務付けており、人事労務担当者にとって必ず押さえておくべき重要なルールです。

この記事では、労働基準法第20条の条文内容とその目的を平易に解説し、解雇予告の基本ルールや例外、違反した場合のリスク、そして実務担当者が注意すべきポイントについて詳しく説明します。最新の法改正や行政からの通知の確認方法、参考になる公式リソースも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

労働基準法第20条とは?

労働基準法第20条は、解雇の予告に関する規定です。簡潔に言えば、「使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に予告をしなければならない」と定めています。

もし30日以上前に解雇予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされています。これがいわゆる「解雇予告手当」の支払い義務です。

つまり、会社は原則として解雇日の30日前までに解雇予定であることを労働者に通知するか、あるいは通知をしない場合には30日分の賃金を支給する必要があるということです。両方を併用すること(たとえば10日前の予告+20日分の賃金支給)も可能です。

第20条の条文の目的

この規定の目的は、労働者が突然職を失うことによる生活上の困難を緩和する点にあります。解雇予告制度は、労働者に対して再就職などの準備をするための時間的・経済的な余裕を保障する趣旨で設けられています。

会社から一方的に解雇される場合でも、一定の猶予期間や金銭補償を与えることで、労働者が次の仕事を探したり生活設計を立て直したりする猶予を確保する狙いがあります。

また、民法では期間の定めのない雇用契約の解約には2週間前の予告で足りるとされていますが(民法627条1項)、労働基準法第20条は労働者保護の観点からそれを上回る30日の予告期間を求めています。

労働基準法第20条が適用されるケース

労働基準法第20条は、「使用者が労働者を解雇する場合」に適用されます。「解雇」とは、企業が労働者との労働契約を一方的に終了させることを指し、その理由は業績不振による人員整理(整理解雇)であれ、勤務態度不良などによる解雇(懲戒解雇を含む)であれ問いません。

会社都合・懲戒事由を問わず、使用者の意思で労働者を辞めさせる場合は基本的に解雇予告が必要です。正社員だけでなく、有期契約社員やパートタイマー・アルバイトであっても、期間の途中で契約を打ち切るような形で事業主側から契約解除する場合には解雇に当たり、同様に第20条の適用対象となります。

一方で、労働者の側から退職を申し出た場合(自己都合退職)や、契約期間を定めた雇用契約が期間満了で終了する場合(雇止め)は、第20条の解雇予告義務は発生しません。

労働契約があらかじめ合意された形で終了するケースでは「解雇」には該当しないためです。ただし、契約期間満了時の更新拒絶(いわゆる雇い止め)については別途ガイドラインや労働契約法上の手続き(例えば通知の努力義務など)が定められていますが、これらは労働基準法第20条とは異なるルールである点に留意が必要です。

第20条はあくまで「予告期間または手当の有無」に関する手続き規定であり、解雇そのものの有効性(理由の妥当性)については直接規定していません。

解雇理由の妥当性については労働契約法第16条で定める解雇権濫用法理(「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効」)が適用されます。

そのため、30日前に予告さえすればどんな理由でも解雇できるわけではなく、予告手続きと併せて、解雇理由が法律上有効と認められるかにも注意が必要です。

労働基準法第20条|解雇予告のルールと例外

解雇を伝えるタイミングは「30日前」が原則

解雇予告の基本は「30日前通知」です。会社が従業員を解雇する際には、少なくとも解雇日の30日前までにその旨を本人に伝えなければなりません。この30日という期間には、土日祝日など労働者の休日も含めて計算されます(カレンダー上の連続した30日間という意味です)。

たとえば、「11月30日付で解雇します」という場合は、遅くともその30日前にあたる10月31日までには解雇予告をする必要があります。解雇予告は口頭でも法律上は有効とされていますが、口頭で伝えただけでは「言った・言わない」のトラブルになりかねません。

そのため、実務上は書面で「解雇予告通知書」を交付するのが望ましいとされています。通知書には解雇予定日と解雇理由を具体的に記載し、後日の証拠が残るようにすることが重要です。

解雇の理由を説明する義務もある

解雇予告を行う際、労働者が請求すれば解雇理由を記載した証明書を交付しなければならないという規定もあります(労基法第22条)。解雇予告後、労働者から「なぜ解雇になるのか理由を書面で下さい」と求められた場合、会社は遅滞なくその理由を書いた証明書を交付しなければなりません。

この義務を怠ると法違反となりますので、解雇予告のタイミングでは解雇理由証明書の準備対応も念頭に置いておきましょう。

30日前に通知できない場合は「解雇予告手当」で対応

「30日より短い期間で解雇したい場合」や「即日解雇したい場合」はどうすれば良いでしょうか。その場合に用意されている仕組みが解雇予告手当の支給です。

労働基準法第20条では、所定の予告をせずに解雇する場合には少なくとも30日分の平均賃金を支払わなければならないと規定されています。

したがって、解雇日の当日に解雇を言い渡す(即日解雇)場合には、解雇通告と同時に30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

法律上は「少なくとも30日分以上の平均賃金」と定められており、その額の算定方法は以下の計算式で計算します。

平均賃金(日額)×(30日-予告した日数)

例えば10日前にしか予告できなかった場合には、不足する20日分の平均賃金を支払えば法律上の要件は満たせます。このように「不足日数×平均賃金」で算出される手当を支払えば、その日数だけ予告期間を短縮できる」という仕組みになっています。

ここで注意したいのは、解雇予告手当を支払ったからといって解雇の正当性が保証されるわけではないという点です。解雇予告手当はあくまで「予告期間に相当する金銭補償」であり、それ自体が解雇の妥当性を証明するものではないことを、人事担当者は認識しておく必要があります。

「平均賃金」は直近3か月の賃金総額で決まる

ここで出てくる「平均賃金」とは、労働基準法上の特別な計算方法で算出される賃金額です。

「その事由が発生した日(解雇予告の場合は解雇通告日)以前3か月間に労働者に支払われた賃金総額」を「その期間の総日数(暦日数)」で除した金額と定義されています。

簡単に言えば直近3か月の平均的な1日あたり賃金額のことです。

解雇予告手当として支払う額は、この1日あたり平均賃金に不足日数を乗じた金額になります。

平均賃金が1日あたり1万円の労働者を即日解雇する場合、30日分として30万円以上を解雇予告手当として支払わなければならない計算です。

もし5日分だけ予告期間を置けたなら、残り25日分として25万円以上の手当を支払うことになります。

労働基準法第20条|解雇予告手当を支払うタイミング

解雇予告手当を支払うタイミングについて押さえておきましょう。労働基準法第20条は支払いの期日自体は明示していませんが、判例や行政解釈上、即日解雇を行う場合には解雇の通告と同時に手当を支給することが必要とされています。

予告期間を一部設けて残り日数分の手当を支払うケースでも、遅くとも実際の解雇日(退職日)までには不足分の手当を支給しなければなりません。解雇予告手当は賃金ではありませんが、賃金に準ずるものとして、賃金支払いの原則(毎月1回以上、退職後の速やかな精算など)にも配慮して、できるだけ速やかに支払うことが望ましいでしょう。

労働基準法第20条|適用除外となるケース(例外規定)

労働基準法第20条の解雇予告義務には、いくつか法定の例外があります。つまり、一定の場合には30日前の予告や予告手当の支払いをしなくても法律違反とならないケースが存在します。

大きく分けると、「労働者の雇用形態・在籍期間に応じた例外」と「解雇の理由に応じた例外(ただし所轄労働基準監督署長の認定が必要)」の二種類があります。それぞれ見てみましょう。

1.短期契約や試用期間中などの労働者に対する解雇

労働基準法第21条は、第20条の解雇予告義務が適用されない労働者の範囲を定めています。それによれば、次のような労働者については解雇予告(第20条)の適用除外とされています。

解雇予告義務が適用されないケース
  • 日々雇い入れられる者:いわゆる日雇い労働者。ただし、日々雇用でも1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合は除外されません。
  • 2か月以内の期間を定めて使用される者:短期の臨時契約労働者。ただし、当初の契約期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は除外されません。
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者:季節雇用〔季節労働〕の労働者。ただし、当初の契約期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は除外されません。
  • 試用期間中の者:ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は除外されません。

以上のような労働者は、雇用開始からごく短期間のうちに契約を打ち切られる可能性があるため、法律上は解雇予告なしで解雇することが許容されています。

例えば、新入社員の試用期間中で入社後14日以内であれば、会社は解雇予告や解雇予告手当を行わずに即時解雇が可能です。しかし14日を超えた時点(入社15日目以降)で試用期間中の従業員を解雇する場合は、原則どおり30日予告または手当支給が必要となります。

人事担当者は、この「14日」の期限を正確に把握しておく必要があります。試用期間で様子を見る場合でも、解雇の判断は14日以内に行わなければ手続き上の義務が発生する点に留意しましょう。

2.自然災害や重大な規律違反による解雇

労働基準法第20条第1項ただし書きは、一定の場合には30日前の予告なしで労働者を解雇できる旨を規定しています。具体的には以下の2つのケースです。

(1)天災事変その他避けることのできない事由

大地震や台風などの自然災害、火災による施設消失など、会社側の努力ではどうにもならない不可抗力によって事業継続が困難になったケースが該当します。例として、工場が震災で倒壊し事業が当面再開不能となったような場合です。

ただし、経営者の重大な過失によって事業継続が困難になった場合(例:経営者の違法行為により事業停止)は含まれません。

(2)労働者の責に帰すべき事由

労働者側に重大な落ち度があり、即時に解雇することがやむを得ないようなケースです。勤務中の横領・背任行為、他の従業員や会社に対する暴力・傷害行為、長期間の無断欠勤(著しい職務放棄)などが挙げられます。

会社の秩序や事業運営に著しく悪影響を及ぼす背信的行為を労働者が行った場合には、即時解雇もやむを得ないでしょう。

上記のような例外事由に該当する場合であっても、直ちに解雇予告義務が免除されるわけではありません。法律の条文では、「所轄の労働基準監督署長の認定を受けたとき」という条件が付されています。

会社が勝手に「このケースは例外だから予告なし解雇だ」と判断するのではなく、事前に行政(労働基準監督署)に申請を行い、当該事由が正当に例外に該当するとお墨付き(解雇予告除外認定)を得る必要があるということです。

例えば、労働者が重大な規律違反を犯した場合、会社は証拠をそろえて監督署に「解雇予告除外認定」の申請を行い、認められれば即時の懲戒解雇を手当支給なしで実施できます。この認定手続きを経ずに即時解雇した場合、事後的にその解雇が無効と判断されたり、解雇予告手当の支払いを命じられたりするリスクが高まります。

労働基準法第20条|人事労務担当者が注意すべきポイント

解雇予告を怠ると罰則や金銭的リスクが発生する

解雇予告を怠ったり不適切な手続きを行ったりすると、企業側には重大なリスクが生じます。まず法的制裁として、労働基準法第20条違反は労働基準法第119条第1号により「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則の対象となります。

実際に直ちに刑事罰が科されるケースは多くありませんが、労働基準監督署から是正指導を受けたり、悪質な場合には送検される可能性もあります。

また、解雇予告手当を支払わずに解雇した場合、後になって未払いの解雇予告手当と同額の付加金(ペナルティ)の支払いを裁判所から命じられるリスクもあります。

労働基準法第114条に基づき、労働者が請求して裁判所が認めた場合には、会社は未払い手当と同額の付加金(いわば二倍取りの罰金)を支払わなければならなくなります。

つまり、本来支払うべきだった解雇予告手当の倍額を最終的に負担する羽目にもなりかねないのです。

解雇の効力が無効とされるおそれもある

解雇の有効性そのものへの悪影響も無視できません。解雇予告をせず即時解雇を行った場合、判例では「その通知は即時解雇としての効力を生じない」とされています。

つまり、会社が「今日限りで解雇だ」と言っても法的には労働契約は直ちには終了せず、解雇の効力は通知後30日経過したとき、または後日会社が解雇予告手当を支払ったときに生ずると解釈されます。

会社が解雇予告をしなかった場合、労働者はその後30日間分の賃金を請求できる余地があるとも言えます(実質的には解雇予告手当と同じ効果ですが、法的には賃金として請求可能)。

このように手続き違反があると労働者との争いが長引き、解雇の有効性そのものを巡る労使トラブルに発展する危険も高まります。裁判になれば、予告手当の有無だけでなく解雇の合理性や手続きの適正さが総合的に審査されるため、予告手続きを怠ったことが心証を悪くし会社側に不利に働く可能性もあります。

人事労務担当者としては、解雇予告に関する手続きを適切に行うことが企業を守る上で不可欠であると認識しましょう。

万一、解雇予告手当の支払いを失念したり不十分な予告で解雇してしまった場合は、速やかに未払い分の手当を支払って違反状態を解消することが大切です。判例でも、後になってでも必要額を支払ってしまえば付加金請求は認められなくなるとされています。

いずれにせよ、法定の解雇予告義務を軽視すると経済的損失や法的トラブルに直結するため、注意が必要です。

労働基準法第20条|裁判例から学ぶ実務上の注意点

最高裁昭和35年3月11日判決:「即時解雇」が認められなかった判例

解雇予告に関する代表的な判例として有名なのが、最高裁昭和35年3月11日判決(細谷服装事件)です。この事件では、使用者が労働者に対し解雇予告期間を置かず予告手当も支給せずに解雇通知を行いました。

先述の通り、最高裁はこの場合「その通知は即時解雇としての効力を生じない」と判断し、使用者が即時解雇に固執しない限りは通知後30日経過時または後日手当を支払った時点で解雇の効力が生ずると解釈すべきだと述べました。

つまり、会社が解雇予告義務を果たさずに即時解雇を通告した場合でも、法律上は「解雇予告をしたもの」とみなされ、そこから30日後に契約が終了したものと扱われるわけです。

この判例は、解雇予告手続きを無視しても解雇そのものは無効にはならないものの、結局30日間は雇用関係が続いたものとみなされ賃金支払い義務が発生することを示しています。

人事担当者は、この判例が示すように予告なし解雇をしても何の得にもならず、むしろ30日分の人件費やトラブル対応コストが発生するだけだという点を肝に銘じるべきでしょう。

例外規定の適用ミスで損害が拡大するリスク

裁判例から、解雇予告の例外適用に関する注意点を学びます。労働者の重大な背信行為があった場合など第20条ただし書き事由に該当すると会社が判断して予告手当を支給しなかったものの、後にその判断が覆されたケースです。

例えばある従業員を懲戒解雇する際、「横領行為があったので労基署の認定なしで即時解雇しても構わないはずだ」と会社が考えて手当不支給としたとします。

しかし裁判になってその横領事実が証拠不十分だった場合や、労基署長の認定を受けていないこと自体が問題視された場合、会社に未払い解雇予告手当の支払いと付加金の支払いを命じられる可能性があります。裁判所は客観的に見て「労働者の責めに帰すべき事由」に当たるかを厳格に判断しますし、認定手続きを踏んでいない会社側の落ち度も考慮します。

そのため、例外規定に該当するか微妙なケースでは安易に予告手当を省略しないのが安全策です。グレーな場合は手当を支払った上で解雇し、後で懲戒解雇による損害賠償など別の手段で対応を検討する方がリスクは低いでしょう。

解雇は「理由」と「手続き」の両面を満たして初めて有効

解雇全般に関する裁判例からの教訓として、先にも触れた解雇権濫用法理があります。判例上、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない解雇は無効」とされており、この原則は解雇予告の手続きを適切に踏んでいたとしても貫かれます。

実務では、「とりあえず30日分払って辞めさせれば大丈夫だろう」という発想は非常に危険です。解雇理由の妥当性(正当性)と解雇予告手続きの適法性は車の両輪であり、両方が揃って初めて有効な解雇となります。

裁判例でも、手続き上は適法に解雇予告がなされても、理由が不当だと判断されれば解雇は無効になり労働者の地位確認(復職)が認められるケースが多々あります。人事労務担当者は、解雇を実施する際には「理由」と「手続き」の両面から問題がないかを必ずチェックし、少しでもリスクがあれば専門家と協議するなど慎重に対応しましょう。

労働基準法第20条のまとめと実務への活かし方

労働基準法第20条に限らず、労働関係法令は時代に応じて改正が行われたり、新たな行政解釈が示されたりします。

人事労務担当者は、最新の法改正情報や行政通達を定期的にチェックしておくことが重要です。

第20条そのものは長年大きな改正はなく安定した規定ですが、例えば違反時の罰則金額が引き上げられた経緯(昭和の改正で罰金額が30万円に改定)など細かな変更はありました。常にアンテナを張り、「知らない間に法律が変わっていた」ということがないよう注意しましょう。


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