• 更新日 : 2025年3月5日

勤怠計算方法の正しいやり方!60進法や15分単位の処理の解決方法

勤怠計算は、従業員の給与に直接関わる大切な仕事です。

計算と聞くと、機械的に処理するだけというイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、勤怠計算を行うためには労務に関する法令の知識が必要であり、従業員の雇用形態や勤務形態の違いも考慮しなければならないため簡単ではありません。

この記事では、勤怠計算の基礎知識から計算時の注意点、おすすめの計算ツールを紹介していきます。

知っておきたい勤怠計算の基本

勤怠計算は従業員の給与を正確に算出するために、勤怠日数や労働時間を計算する業務です。

まずは勤怠計算の基礎知識から解説していきます。

勤務時間と労働時間の違い

勤怠計算では、勤怠実績から勤務時間と労働時間を計算し、労働時間にもとづいて賃金を支払います。

「勤務時間」と「労働時間」の違いは以下のとおりです。

説明計算式
勤務時間始業から終業までの、従業員が会社にいる間のすべての時間終業時刻 - 始業時刻
労働時間勤務時間から休憩時間を差し引いた、実際に働いた時間勤務時間 - 休憩時間

たとえば始業時刻が8時、終業時刻が17時、休憩時間が1時間の場合、勤務時間は9時間ですが労働時間は8時間になります。

労働時間についてより詳しい解説は、関連記事をご参考ください。

参考:そもそも「労働時間」とは?│厚生労働省

関連記事:「労働時間とは?含まれる範囲や上限、計算方法を解説」

法定労働時間と所定労働時間の違い

労働時間には「法定労働時間」と「所定労働時間」があり、正しい給与計算のためにはこの違いも理解しておく必要があります。

法定労働時間所定労働時間
定義労働基準法で定められた、労働者を働かせてよい上限時間会社が独自に定める社員の始業から終業までの時間
時間原則1日8時間・週40時間会社により異なる(例:9時~18時)
規定のルール法律で一律に規定就業規則などで各企業が自由に規定
割増賃金法定労働時間を超える場合は36協定の締結が必要

超過した場合は割増賃金の支払いが必須

法定労働時間内であれば割増賃金は不要

法定労働時間を超える労働時間は残業時間(法定時間外の労働)として、割増賃金の対象となります。

割増賃金の計算方法

従業員が法定労働時間を超過した場合、通常の労働時間とは別で割増賃金を計算し、給与に反映させなければなりません。

割増賃金に掛かる賃金の割合を割増率と呼び、下記のように労働の種類によって異なります。

労働の種類説明割増率
時間外労働法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働25%
深夜労働22時から翌日5時までの労働25%
休日労働法定休日(週1日)における労働35%
時間外労働+深夜労働22時以降の時間外労働(時間外労働25% + 深夜労働25%)50%

割増賃金が適用されるのは法定時間外の労働であり、法定時間内の労働(1日8時間週40時間)であれば適用されないため、混同しないよう注意しましょう。

割増賃金は下記のように計算します。

▼計算式

割増賃金 = 基礎賃金 × 割増率 × 対象労働時間

また、割増賃金の計算結果に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げになります。

参考:割増賃金の計算方法│厚生労働省

割増賃金の計算例

実際に、割増賃金の計算例を紹介します。

▼例① 時給1,000円の従業員が16時~1時まで勤務した場合の計算

16時〜21時(通常労働時間):1,000円×5時間×1.00=5,000円

21時~22時(休憩)

22時~1時(深夜労働時間):1,000円×3時間×1.25=3,750円

合計賃金:5,000円 + 3,750円 = 8,750円

※計算をわかりやすく示すため、例①では法定外労働時間は考慮していません。

例②は法定時間外の労働に深夜労働時間が加わったパターンで、少し複雑になります。

▼例② 時給1,000円の従業員が9時~23時まで勤務した場合の計算

9時~18時(通常労働時間):1,000円×8時間×1.00=8,000円※休憩1時間

18時~22時(法定外残業):1,000円×4時間×1.25=5,000円

22時~23時(法定外残業+深夜労働時間):1,000円×1時間×1.50=1,500円

合計賃金:8,000円 + 5,000円 + 1,500円 = 14,500円

※法定労働時間は9時~18時と仮定。

割増賃金について、より詳しくは関連記事をご参考ください。

関連記事:「時間外労働の割増率、割増賃金の計算方法を解説」

特殊な勤務形態の計算方法

フレックスタイム制や変形労働時間制など、通常の勤務形態と異なる場合の勤怠計算の方法を紹介します。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、決められた清算期間の範囲内で総労働時間を調整しながら働く制度です。

そのため、ある日は5時間働いて翌日は10時間働くというような働き方が可能です。

法定労働時間は通常「1日8時間・週40時間」が基本ですが、フレックスタイム制では清算期間全体で法定労働時間を算出します。

▼計算式

清算期間内の合計の法定労働時間 =(清算期間の暦日数 ÷ 7)× 40時間

▼計算例(清算期間が31日の場合)

(31日 ÷ 7日)× 40時間 = 177.1時間(177時間8分)

この場合は177.1時間が31日間の法定労働時間の上限となります。

そして超過分は法定時間外の労働(残業時間)として扱われるため、割増賃金が発生します。

関連記事:「フレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入の注意点をわかりやすく解説!」

変形労働時間制

変形労働時間制は、繁忙期や閑散期などその時々の業務量に合わせて労働時間を調整する制度です。

通常の勤務時間にばらつきがある場合でも、最終的に一定期間内での労働時間の平均が法定労働時間を満たしていれば問題ありません。

変形労働時間制では1週間、1ヶ月、1年単位の区切りで所定労働時間を設定し、この時間を超えないように働きます。

▼計算式

清算期間内の総所定労働時間 =(清算期間の暦日数 ÷ 7)× 40時間

※1週間の法定労働時間は40時間を基準としています。

▼計算例(1ヶ月単位・31日の月の場合)

(31日 ÷ 7日)× 40時間 = 177.1時間(177時間8分)

この場合、177時間8分がその月の法定労働時間の上限になり、超過分は法定時間外の労働(残業時間)として割増賃金が発生します。

また、各週ごとに定められた所定労働時間を超えた場合も、超過分が割増賃金の対象となります。

変形労働時間制については、1ヶ月や1年などの単位の区切りによって適用される規定が変わるので注意しましょう。

詳しくは関連記事をご確認ください。

関連記事:「変形労働時間制とは?1ヶ月単位や残業時間の計算をわかりやすく解説!」

みなし労働時間制

みなし労働時間制は、あらかじめ定めた所定の労働時間を働いたとみなし、実際の労働時間に関わらず一定の給与を支払う制度です。

そのためみなし労働時間制では、勤務時間が所定の労働時間を超過していても、残業代が支払われることはありません。

たとえば1日の所定労働時間の定めが8時間であれば、実際の勤務時間が6時間でも10時間でも8時間働いたものとして扱われます。

ただし、みなし労働時間を超える深夜勤務や休日労働が発生した場合には、割増賃金が発生します。

関連記事:「みなし残業とは?制度や導入のメリットについてわかりやすく解説」

休憩時間と遅刻・早退の時間は労働時間に含めない

休憩時間や遅刻・早退は労働時間に含まれません。

この章では注意点や計算方法について、解説していきます。

休憩時間の計算方法

労働基準法では、一定時間以上の労働に対して休憩時間を設ける義務があります。

勤務時間が6時間以内なら休憩時間はゼロでも問題ありませんが、6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要です。

そして、これらの休憩時間は労働時間に含めません。

たとえば9時~18時の勤務で1時間の休憩がある場合、労働時間は8時間になります。

また、休憩時間を計算する際は下記の点も考慮に入れましょう。

  • 休憩時間を分割する場合
    30分+15分のように分割して休憩を取得する場合、それぞれの休憩時間を合算する
  • 法定の休憩時間を超える休憩がある場合
    会社独自のルールで労働基準法による休憩時間を超える休憩を設定している場合、超過分も労働時間へは含めない
  • 休憩時間が適切に与えられなかった場合
    休憩中に来客対応が必要になった場合など業務の都合で本来の休憩を取得できなければ、実働時間として扱うか、別の時間帯で新たに休憩を設定する必要がある

従業員に適切な休憩時間を与えなかった場合、労働基準法に違反するため注意が必要です。

参考:労働時間・休憩・休日関係|厚生労働省

遅刻・早退の場合の計算方法

従業員が遅刻や早退をした場合、労働時間からそれらの時間を差し引いて計算します。

ただし、会社の就業規則によっては特別な計算方法が適用される場合もあるため、自社の規定がどうなっているのかよく確認しましょう。

勤怠計算の60進法と10進法の計算のルール

勤怠計算をする際、時間を時と分に分けて表記する「60進法」と、時間を小数点で表記する「10進法」が混在します。

通常、勤務時間の記録を60進法で行い、給与計算時に勤務時間を10進法へ変換して計算します。

労働時間60進法での表記10進法での表記
8時間8時間8.0時間
9時間30分9時間30分9 + (30/60) = 9.5時間
10時間45分10時間45分10 + (45/60) = 10.75時間

慣れれば難しくありませんので、表記の違いを理解して正確な勤怠計算を行いましょう。

勤怠計算を5分単位や15分単位で切り捨てる丸め処理は違法

勤怠計算の際、労働時間を5分や15分単位で切り捨てることは、丸め処理と呼ばれ労働基準法に違反します。

労働基準法第24条では、賃金は実際に働いた時間にもとづいて全額支払うよう定められています。

そのため、実際の労働時間が8時間5分だった場合、会社の判断でその5分間を切り捨てて8時間とするような行為は違法です。

ただし、実際の労働時間が8時間5分だった場合に8時間10分として計算するような、労働者の不利益にならない丸め処理は問題ありません。

労働者の不利益になるような丸め処理は、未だに多くの会社で黙認されているのが現状です。

しかし、慣習的に丸め処理を続けていると、労働基準監督署から是正勧告を受けたり、従業員から未払い賃金の請求を受けるリスクがあります。

▼丸め処理が問題になった例

企業内容結果
大手外食チェーン(2022年)5分未満の労働時間を切り捨てていたが、1分単位の計算に変更した過去2年分の未払い賃金16~17億円を支払った
大手回転ずしチェーン(2024年)アルバイト店員の労働時間端数を5分未満で切り捨てていた労働基準監督署から是正勧告を受けた

労働時間を1分単位で適切に管理すれば、従業員も安心して働けるため、企業への信頼にもつながります。

従業員の不利益になるような丸め処理は控え、賃金は適切に支払いましょう。

参考:朝日新聞
日本経済新聞

関連記事:「タイムカード・給与計算を15分単位で管理すると違法?丸め処理や遅刻・早退の計算方法も解説」

残業時間は丸め処理できる場合もある

例外として時間外労働や休日労働、深夜労働の残業時間については、1ヶ月単位での端数の切り捨てや切り上げといった丸め処理が認められています。

たとえば1ヶ月の残業時間に30分未満の端数があればその端数を切り捨て、30分以上の端数は切り上げて1時間として計算することが可能です。

ただし、このような端数処理をするためには、就業規則へのルールの記載や従業員への周知が必須になります。

また、あくまでも例外的なパターンであるため、通常の残業時間の記録は1分単位で正確に行うよう気をつけましょう。

勤怠計算におすすめの3つのツール

最後に勤怠計算におすすめの3つのツールをご紹介します。

①勤怠管理システム・アプリ

勤怠計算を効率的に行うためには、専用の勤怠管理システムやアプリの活用がおすすめです。

勤怠管理システム・アプリは、従業員の打刻データを元にシステムが自動で労働時間や残業時間を計算します。

勤怠計算にミスは許されませんが、システムで計算を自動化すればヒューマンエラーも軽減可能です。

また、近年は働き方改革により労務に関連した法改正が増えており、今後給与の計算方法などが変更される可能性もあります。

そうしたときでもクラウド型の勤怠システムであれば、システム側で最新の法改正に対応した計算方法に自動でアップデートしてくれます。

また、フレックスタイム制や変形労働時間制など、特殊な勤怠計算にも対応可能です。

システムに慣れるまでは大変ですし、クラウド型である場合は開発元企業への継続的な支払いが発生する点がデメリットです。

しかし、勤怠管理システムを使えば勤怠計算に掛かる時間を大幅に削減できるでしょう。

関連記事:「2025年最新 – 勤怠管理システムおすすめ比較!機能・料金・クラウド対応など」

②Excel(エクセル)

Excel(もしくはスプレッドシートなど類似の表計算ソフト)を使った勤怠計算は、勤怠管理システムのように継続的なコストが発生しません。

また、勤怠計算におけるテンプレート・フォーマットを無料配布している事業者のサイトで雛形を入手すれば、自分でマクロや関数を組む必要もありません。

そして、自社の環境に応じて自由かつ簡単にテンプレートをカスタマイズできる点が魅力です。

一方で、データ入力の際に誤った数値を入力してしまったり、意図せず関数が壊れて勤怠計算の結果が間違ってしまうような可能性があります。

Excelで勤怠計算する場合は、ダブルチェックをしたり、チェックリストを活用することでミスを防ぎましょう。

関連記事:「タイムカードはエクセルで簡単に管理できる?勤怠管理の注意点も解説!」

③電卓

電卓で計算する方法は、手軽に扱えるうえ、費用がかからない点がメリットです。

しかし、手動で数値を入力する必要があり、Excelのように一部の計算を自動化することもできません。

そのため、常にヒューマンエラーのリスクが付きまといます。

勤怠計算のすべてを電卓で行うことは難しいですが、部分的な計算をするだけであれば十分に活躍するでしょう。

勤怠計算は正しく行おう

勤怠計算は、その結果が従業員の給与に直接関係する仕事です。

そのため計算ミスは許されず、もし誤った計算をしてしまえば、従業員の生活に影響が出たり、会社の信頼を失いかねません。

正確な計算をするためには勤怠管理システムなどを活用し、人為的なミスを減らしていくことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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