- 更新日 : 2024年4月12日
ソーシャルキャピタルとは?重要性やメリット、企業での活用事例を解説!
ソーシャルキャピタルとは一般的に社会関係資本と呼ばれ、人と人とのつながりから生みだされる価値を指します。構成要素は信頼・規範・ネットワークです。組織運営の円滑化、離職率低下、スムーズな事業展開、企業イメージアップがメリット、フリーアドレス制やジョブローテーション、メンター制、社内レクリエーションが活用事例とされます。
目次
ソーシャルキャピタルとは?
ソーシャルキャピタルとは社会的なつながりや信頼関係から生みだされる価値を指し、一般的には「社会関係資本」と呼ばれます。直訳すると「社会資本」となるため、多くの人が社会インフラ施設を想像しがちですが、ソーシャルキャピタルはそうした物理的なインフラを指す概念ではありません。
人と人と結びつきやつながりが資本になり得るという概念で、アメリカの政治学者であるロバート・パットナムによって提唱されました。パットナムは1993年の著書において「人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる、『信頼』『規範』『ネットワーク』といった社会組織の特徴」と定義づけを行い、「物的資本や人的資本と並ぶ新しい概念を意味する」としています。
また以下のように、さまざまにソーシャルキャピタルは定義づけされています。
- OECD「グループ内部またはグループ間での協力を容易にする共通の規範や価値観、理解を伴ったネットワーク」
- 世界銀行「社会構造全般と対人関係にかかわる個人の行為を規定する規範全般」
- フランシス・フクヤマ「信頼が社会に広く行き渡っていることから生じる能力」
ソーシャルキャピタルの3つの構成要素とは?
提唱者のパットナムによってソーシャルキャピタルの構成要素は、信頼・規範・ネットワークとされています。3つの構成要素について、それぞれ見ていきましょう。
信頼
信頼は他人によって不利益を被らされるのではないか、という不安を打ち消し、不備に備えるコストを節約できることを意味します。あらゆる取引において重要な要素であり、各種の取引コストを下げる働きをするのが、信頼です。また、信頼によって自発的な協力・協働が生じ、自発的な協力・協働がまた信頼を生みだすという好循環にもつながります。
規範
ソーシャルキャピタルにおける「規範」とは、互酬性の規範、つまり相互に利益を交換し合うことを意味します。互酬性には、「均衡のとれた互酬性」と「一般化された互酬性」の2種類があります。前者は同等価値の同時交換を指し、後者は当面の不均衡があっても将来的な均衡が期待される関係を指します。
一般化された互酬性は、短期的には相手の利益を考える愛他主義に基づきつつ、長期的には自身の利益につながるという利己心に裏打ちされています。こうして利己心と連帯とを調和させることで、互酬性は成り立つとされています。
ネットワーク
他人との結びつきが、ネットワークです。職場内での上司と部下のような「垂直的なネットワーク」と、趣味を通じてつながるような「水平的なネットワーク」があり、パットナムは水平的なネットワークが密であるほど相互利益獲得に向けて幅広く協力する、としています。
ソーシャルキャピタルが重要視される理由は?
ソーシャルキャピタルが重要視される背景には、急速かつ著しく変化する時代において、人と人とのつながりの重要性が認識されるようになったことが挙げられます。ソーシャルキャピタルの高い企業は社内の結びつきが強く、一致団結して業務を遂行できると考えられます。社会的信用も得られ、企業価値も高め、事業活動を有利に進められる、強い企業づくりにつながることから、ソーシャルキャピタルが重視されるようになりました。
企業でソーシャルキャピタルを高めるメリットは?
ソーシャルキャピタルを高めるメリットについて、細かく見ていきましょう。
組織運営が円滑になる
ソーシャルキャピタルが高いと、組織運営の円滑化が図れます。相互理解やルールの共有、困っている人に手を差し伸べる関係性構築ができていることにより、組織のスムーズな運営が図れます。
社員の離職率が低下する
高いソーシャルキャピタルにより、離職率も低下します。職場内の人間関係が良好になり、悩みを抱えた従業員が誰かに相談できる場所の確保につながり、働きやすい環境づくりができます。
事業展開がスムーズになる
ソーシャルキャピタルが高いと、事業展開もスムーズです。職場内で良好な人間関係が保たれ、報告・連絡・相談といった基本的なことがきちんとできるようになり、ビジネスが上手くいく環境が自然と整えられるためです。人事制度への活用によって、よりスムーズで効率的な事業展開も望めるでしょう。
企業のイメージアップにつながる
企業のイメージアップにも、ソーシャルキャピタルの高さが役立ちます。ソーシャルキャピタルが高い企業では、社員同士の信頼関係が構築されており、ハラスメントなどの人間関係トラブルが起きにくい環境が整っていると考えられます。困っている人に対しては手を差し伸べる環境となっていることから、特定の従業員にだけ大きな業務負担が生じることはなく、労働時間の適正化も図られているでしょう。
従業員一人ひとりが持てる力を十分に発揮でき、適切な労働環境が整備されていることから、ソーシャルキャピタルが高い企業は社会から高い評価を受けるようになります。企業のブランド価値向上が図れ、イメージアップにつながります。
企業におけるソーシャルキャピタルの活用事例は?
ソーシャルキャピタルは企業において、どのように用いられるのでしょうか。活用事例を紹介します。
オフィスレイアウトを工夫する
ソーシャルキャピタルの活用事例にはまずオフィスレイアウトを工夫することが挙げられます。例えば自分の席を定めないフリーアドレス制です。席が固定されていると、同じメンバーとの人間関係に限定されてしまい、新たな人間関係を広げていくことが難しくなります。フリーアドレス制とするといろいろな人と交流し、多彩な交友関係が持てるようになるでしょう。
ジョブローテーションを実施する
従業員に業務を固定せず、いろいろな仕事を担当させるジョブローテーションも、ソーシャルキャピタルの活用事例の1つです。新しい業務に従事する場合、前任者や同僚からの助言が不可欠となります。他者とのコミュニケーションを通じて知識や経験を共有し合う必要があり、ソーシャルキャピタルの活用が求められます。
メンター制度を導入する
メンター制の導入は、ソーシャルキャピタルを活用する事例のひとつです。この制度では、新入社員や若手社員がメンティー、先輩社員がメンターとなり、部署や上下関係を超えた人間関係を構築することができます。新たなつながり、強い絆の創出につながり、ソーシャルキャピタルを高めることにもつながります。
社内レクリエーションを実施する
ソーシャルキャピタルの活用事例には、社内レクリエーションの実施も該当します。社内レクリエーションで他部署の人や入社年度の違う人と交流を持つことは、人と人とのつながり強化に結びつきます。社内レクリエーション実施はソーシャルキャピタルに深く関わり、効果的な活用事例といえるでしょう。
事業の円滑化を目指してソーシャルキャピタルを高めよう
最近注目されているソーシャルキャピタルとは、人と人とのつながりが価値を生みだすことを指す言葉です。急激にかつ大きく変わる現代社会において近年注目を集めている概念で、事業の円滑化が図れます。他にも離職率が下げられる、組織運営の円滑化が図れる、企業のイメージアップにつながるといったメリットがあります。
活用事例にはフリーアドレス制のようなオフィスレイアウトの工夫に取り組む、ジョブローテーションを採用する、メンター制を導入する、社内レクリエーションを実施するといったことが挙げられます。自社に合うものを活用し、ソーシャルキャピタルを高めて事業の円滑化を図りましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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