- 更新日 : 2025年1月24日
有給休暇の取得理由は私用でいい?よくある取得理由も紹介!
体調不良や通院、家族の送迎や冠婚葬祭などの際、会社に有給休暇を申請します。通常は取得することができますが、なかには、有給休暇を申し出たのに取得できなかった人もいるでしょう。
この記事では、有給休暇は私用でも取得可能なのか、よくある取得理由、有給休暇が取得できないケース、退職時の有給休暇の取得などについて解説します。
目次
有給休暇の取得理由は私用でいい?
有給休暇を利用する際、会社に取得する理由を伝える必要はありません。労働基準法において、有給休暇は「労働者の請求する時季に与えなければならない」としています。つまり、私用のためという理由での有給休暇の利用は問題ありません。
会社で定められた有給休暇届の書式には、取得理由を記載する欄が設けられていることがほとんどです。しかし、本来、有給休暇は「仕事を休んでリフレッシュする、他には個人的な用事を済ませるためなどの理由で取得するもの」です。
そのため、有給休暇の取得理由を求められたとしても、「私用のため」とだけ記載しておけばよいということになります。
有給休暇のよくある取得理由は?
有給休暇の取得時に、取得理由として「私用のため」と記載しただけでは会社からいろいろ言われると心配している方もいるでしょう。差しつかえのない範囲で取得理由が記載できるようであれば、記載したほうがスムーズに有給休暇を取得することができます。ここでは、有給休暇のよくある取得理由をご紹介します。
体調不良・通院のため
体調不良の場合は出勤することができません。もし、無理に出勤させたとしても、そのせいで病状が悪化したり、インフルエンザなど他の人にうつる病気だった場合には、感染が社内に広がったりする可能性もあります。したがって、有給休暇の取得が認められやすいでしょう。
通院の場合も、病院や診療所は平日しか行くことができないことが多いため、認められやすいです。
家族の用事のため
親の通院の付添い、送迎や子どもの運動会や授業参観など、学校行事への参加のためという理由も有給休暇の取得が受け入れられやすいでしょう。男性の育児休業以外の育児参加として有給休暇を活用するのも、取得しやすい理由の一つになり得ます。
冠婚葬祭のため
冠婚葬祭は、会社を休んででも出席すべき重要な用事のうちの一つです。結婚式や新婚旅行など、前もって予定がはっきり分かっている場合は、早めに会社に話をしておけば、当事者がいない間の人員確保や仕事の分担も行いやすくなり、スムーズに有給休暇を取得できます。
家族や親族に不幸があった場合は、特別休暇を設けている会社もあるため事前に確認が必要です。そのような特別休暇が設けられていない場合には、有給休暇を取得することになります。
不幸に関しては、突然起きることではありますが、有給休暇の取得には柔軟に対応してくれる会社が少なくありません。
有給休暇を取得できないケースは?
有給休暇は法律では「労働者の請求する時季に与えなければならない」と定められていますが、会社には有給休暇に対して何か権利はないのでしょうか?会社にも条件を満たした場合に主張できる権利があるため見ていきましょう。
会社が時季変更権を行使した場合
労働者から有給休暇の取得申請があったときに、会社が「時季変更権」を行使した場合には、労働者は申請した時期に有給休暇を取得することができません。「時季変更権」とは以下のような権利です。
使用者は前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
「事業の正常な運営を妨げる」かどうかは、例えば、下記のような項目について、個別的、具体的、客観的に判断されるべきものであるとされています。
- その事業の規模
- その事業の業務内容
- 従事している労働者の職務内容
- 従事している労働者の忙しさ
- 代替要員を確保する困難度
- 代替要員による事業への影響の程度
- 労働者が指定した時季に有給休暇を取れるよう配慮を尽くしたか
など
ただし、時季変更権は有給休暇を取得する時期を変更するだけで、有給休暇自体の取得を妨げることはできませんので注意してください。
計画年休の対象となる場合
会社には、もう一つ「有給休暇の計画的付与制度」があります。有給休暇の計画的付与制度とは、労使協定を結ぶことによって、有給休暇のうち5日を超える分については、会社が計画的に休暇取得日を割り振れる制度です。
ただし、有給休暇の日数のうち、5日間は労働者が自由に使用できる日数として残しておかなければいけません。そのため、労使協定の締結による計画的付与の対象となるのは、有給休暇の日数のうち5日を超えた部分に対してです。
また、この有給休暇の計画的付与制度により、あらかじめ計画的に付与された有給休暇については、これを他の時期に変更して取得するようなことはできないので注意が必要です。
退職時は有給休暇をまとめて取得できる?
退職時に有給休暇が残っている場合、その休暇はまとめて取得することができます。有給休暇を取得する行為は、労働者に与えられた権利で、請求する時季やその利用目的については制限がありません。有給休暇を取得する日を「何月何日に取得します」と申請することによって権利が発生します。
引き継ぎは必要か?
退職する際には、自分の仕事を後任の人へ引き継ぐ必要があります。退職を円満に行うためにも、退職が決まったら早めに会社に申し出て有給休暇の消化と引き継ぎが両立できるようにスケジュールを調整しましょう。
有給休暇は買い取ってもらえるか?
有給休暇は、退職日の後には取得することができません。退職すると会社に在籍していないからです。退職日までにすべての未消化の有給休暇が使用できない場合、有給休暇の買い取りを申し出ることができます。
ただし、未消化の有給休暇を買い取るかどうかは会社が決めることができ、会社に買取を応じる義務はありません。そうすると、未消化の有給休暇が無駄になってしまいます。残日数を事前に把握して、未消化の有給休暇が残らないように確認して進めましょう。
有給休暇は未消化にならないように取得しましょう
有給休暇を取得する際の取得理由は、どのような理由であっても問題ありません。しかし、会社が取得に対してあまりよい顔をしないなど、有給休暇が取得しづらい場合や有給休暇を取得できないケースもあるでしょう。
また、退職時に未消化だった有給休暇はまとめて取得できるのか、その際の注意点についても確認が必要です。自分自身の有給休暇の残日数を確認し、計画的に有給休暇を消化するように心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労働施策総合推進法とは?概要と2022年施行のポイントを解説!
労働施策総合推進法は別名「パワハラ防止法」と呼ばれ、働く人にとって身近な法律です。2022年4月1日からは中小企業もこの法律の対象となるため、内容を把握しておきましょう。ここでは改正の背景や目的、企業が取るべき対応、気になる罰則について解説…
詳しくみる病欠で有給を使いたくない場合は欠勤扱いになる?風邪や体調不良の対応方法を解説
風邪など急な体調不良で会社を休む場合、「有給休暇を使いたくない」と考える人もいるでしょう。本記事では、病欠時に有給を消化せずに休む方法や、就業規則・労働基準法の観点から押さえておくべきポイントを解説します。社員の権利を守りつつ、会社とのトラ…
詳しくみる18連勤は違法?労働基準法に基づき分かりやすく解説!
18連勤は、身体的な疲労と精神的なストレスが積み重なり、心身の限界を迎えやすい働き方です。働き続ける中で疲労に気づかない場合も多く、無理を重ねることで最終的には深刻な健康問題につながる危険性があります。 本記事では 「18連勤は違法なのか?…
詳しくみる労働基準法に則した正しい残業時間の考え方とは?
そもそも労働時間とは?労働基準法での規定は? まず、「労働時間」とは何かについて定義しておきます。 労働基準法において「労働時間」とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいい、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従…
詳しくみる建設業は2024年4月から36協定の時間外労働の上限規制が適用
2024年4月から、建設業においても36協定の上限規制が適用されました。 長時間労働の是正を目的としたこの規制は、労働者の健康を守りつつ、企業が法令を遵守するための重要なルールです。 しかし、現場単位での締結や特別条項の運用など、建設業特有…
詳しくみる残業代の割増率とは?25%・35%・50%の違いや計算方法を解説
残業代の割増率は、労働者の労働時間が法定労働時間を超えたり、特定の時間帯や休日に働いたりした場合に加算される賃金率です。 法定労働時間を超える残業には25%以上、休日労働には35%以上、月60時間超の残業には50%以上の割増率が適用されます…
詳しくみる