- 更新日 : 2024年2月9日
労働組合とは?概要やメリット、存在しない場合の作り方について解説!
労働組合とは、労働者が団結し、労働時間や賃金など労働条件の改善を目的に活動する組織のことです。労働組合の存在は、企業側にもメリットをもたらします。本記事では、労働組合の概要やメリットなどを解説します。労働組合がない場合の作り方などもお伝えしますので、参考にしてください。
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労働組合とは
労働組合とは、労働者が自分たちの労働条件や職場環境を改善・向上し、より働きがいのある職場にしていくために活動する組織を指します。正社員やパートといった雇用形態に関係なく、労働者であれば誰でも加入することが可能です。
労働組合の活動として、広く知られているのは労働条件の改善要求です。しかし、それ以外にも以下のようなさまざまな活動があります。
- 企業側に組合員の不満や苦情を伝える
- 不当な解雇やリストラを防ぐ
- 企業と組合員の関係構築のための情報交換
一般的に、雇用される側の労働者は、企業に対して弱い立場にあります。そのため、労働者が力を合わせて交渉などを行うために作るのが、労働組合です。
労働組合法と労働三権
労働組合法は、「労働三権」を保障するために定められた法律です。労働三権とは、労働者を守るための基本的な権利を指します。
ここでは、労働三権における3つの権利について、それぞれ解説します。
団結権
団結権とは、労働者が労働組合を自由に結成できる権利のことです。
労働者が個別に企業と交渉しても、雇用される側であるため立場が弱く、望むような労働条件を勝ち取ることは難しいと考えられます。
また企業側も、労働者一人ひとりに対応するのは現実的ではありません。労働者の中から企業と交渉する代表者を定めることは、双方にとってのメリットといえます。
団体交渉権
労働条件をはじめとしたさまざまな事項について、企業と交渉する権利が、団体交渉権です。労働組合は組合員の代表の立場で、対等の立場で企業と交渉を行います。労働者側から企業に対し、団体交渉の申し入れを行った場合、企業は正当な理由なく拒めません。
団体行動権
団体行動権とは、「ストライキ権」と呼ばれる、争議行動を起こす権利のことです。団体行動権という言葉に馴染みはなくても、ストライキはニュースなどで聞いたことがある方も多いでしょう。労働組合が主導して、集団で労働を拒否する行為を指します。
団体行動権は、労働条件や労働環境の見直しについて、交渉によって進展がみられないときに行使されます。
労働組合の種類
労働組合は以下の4つに大別されます。
- 企業内組合
- 産業別組合
- ナショナルセンター
- 国際労働組合総連合(ITUC)
それぞれの特徴を解説します。
企業内組合
企業内組合とは「単位組合」とも呼ばれ、企業を1つの単位として、その企業の従業員が結成した労働組合のことです。企業内の雇用条件や職場環境の見直しを主な目的としています。日本では企業内組合が主流であり、「労働組合」という場合、企業内組合を指しているケースが多いでしょう。
産業別組合
産業ごとに結成された労働組合が、産業別組合です。同じ産業に属する労働組合が、企業の枠組みを超えて1つの組合を結成し、企業や事業所はそれぞれが支部となります。産業全体に共通する課題や労働条件について、その解決を目指し提言や活動を行います。
ナショナルセンター
ナショナルセンターとは、労働組合の全国中央組織のことで、各国の労働組合を代表する存在です。業界の枠を超えた全国規模の取り組みを主導し、政府や経営者の全国組織と折衝を行います。
国際労働組合総連合(ITUC)
国際労働組合総連合は、世界のナショナル・センターが集まって作る労働組合の国際組織です。本部はベルギーのブリュッセルにあります。主な目的は、労働者に役立つグローバル化の追求です。世界中の労働者が暮らしやすいと思える社会にむけた提言や、世界の公正な労働基準の確立などを目的に活動します。
労働組合がある場合の企業側のメリット
労働組合がある場合の企業側のメリットとしては、主に以下の2点が挙げられるでしょう。
- 従業員に安心感を与えられる
- 現場の状況が把握できる
各メリットを解説します。
従業員に安心感を与えられる
労働組合が存在することで、企業は従業員に対し、安心感を与えられます。従業員は労働組合を通じて、労働条件や職場環境に関する意見や要望を伝えられるためです。
労働組合がない場合、従業員が企業に意見や要望を伝える手段としては、「職場の上司に伝える」あるいは「直接人事部などに伝える」のどちらかになるでしょう。上司に伝えても、しかるべき部署に伝えてもらえるかわかりません。また、いきなり人事部に伝えるのは、心理的なハードルが高いと感じる従業員が多いと考えられます。
現場の状況が把握できる
労働組合が相談窓口としての機能をもち、従業員に認知されている場合は、労働組合からの報告によって、職場のハラスメントの現状や働き方の課題などを把握できるでしょう。結果的に、コンプライアンスの強化につながる可能性も高まります。
労働組合がある場合の従業員側のメリット
労働組合がある場合の従業員側のメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- 企業に要望を伝えやすくなる
- 不当な扱いに対抗できる
各メリットを確認しましょう。
企業に要望を伝えやすくなる
労働組合があると、企業に要望を伝えやすくなります。賃金や労働時間をはじめとした労働条件や、働き方のルールなどに対する意見を企業に伝えることで、改善につながる可能性があります。
不当な扱いに対抗できる
労働組合の存在によって、企業からの一方的な解雇や減給などの不当な扱いに、対抗できるようになるでしょう。企業は正当な理由なく、労働組合が申し入れた団体交渉を拒むことはできません。
そのため、従業員個人では企業に相手にされず、話し合いが難しいような場合でも、誠実な態度を求められるでしょう。
労働組合がない場合はどうすべき?
企業に労働組合がなく、団体交渉の権利を得たいという場合、以下の2つの選択肢があります。
- 自分で労働組合を作る
- 合同労働組合に加入する
2人以上の労働者がいれば、自由に労働組合を結成できます。民主的な組合規約を備えていれば、役所への届けも、使用者の承認を得る必要もありません。ただし、企業との交渉を少しでも有利に進めたい場合は、少人数の労働組合にするのではなく、従業員の過半数を占める組織を目指す必要があります。
ユニオンと呼ばれる、合同労働組合に加入するのも選択肢の1つです。合同労働組合は一定の地域ごとに組織され、個人でも加入することが可能です。
労働組合の作り方と注意点
ここからは、労働組合の作り方と注意点を解説します。
労働組合の作り方
自分で労働組合を作る流れは、以下のとおりです。
- 結成の準備を進める
- 結成大会を行う
- 企業に通知する
労働組合を作るにあたっては、仲間集めが欠かせません。仲間が集まり次第、労働組合や労働組合法に関する勉強会を開き、知識を身につけつつ、規約案の作成など労働組合の結成大会の準備を進めましょう。
結成大会で規約が承認されれば、法的に認められた労働組合の誕生です。労働組合が誕生したら、企業に通知します。一般的に、企業への通知は「労働組合結成通知書」「団体要求・組合要求書」の提出をもって行います。
労働組合を作る際の注意点
労働組合を結成する際は、以下の点を押さえておきましょう。
- メンバー間の意見をできる限り統一する
- 執行役員には信頼できる人物を選出する
労働組合のメンバー間で意見が分かれてしまうと、企業との団体交渉を成功させるのは困難です。また、執行役員は労働組合の機密情報を扱うため、信頼できる人物を選ばなければなりません。
労働組合の概要や企業側のメリットを知っておこう
労働組合は、労働者が自らの労働条件や職場環境を改善し、働きがいのある職場にしていくために活動する団体です。企業に労働組合がない場合は、2人以上の労働者が集まれば自由に結成できます。
労働組合の存在は、企業側にも「従業員に安心感を与えられる」「現場の状況が把握できる」といった、メリットをもたらします。本記事を参考に、労働組合の概要やメリットを押さえておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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