- 更新日 : 2026年1月30日
労働組合とは?メリットや作り方、注意点など解説
労働組合とは、労働者が団結して賃金や労働時間などの労働条件の改善を目指す組織です。社内に組合がない場合でも、ユニオン(合同労組)への加入や新設という選択肢があります。本記事では、人事労務の初心者が知っておくべき労働組合の基礎知識や、企業・従業員双方のメリット・デメリット、具体的な作り方の手順を分かりやすく解説します。
目次
労働組合とは?
労働組合(労組:ろうそ)とは、労働者が主体となって、労働条件の改善や職場環境の向上を目指して活動する組織を指します。
正社員だけでなく、パートタイム労働者や派遣社員など、雇用形態を問わず労働者であれば誰でも加入・結成できるのが特徴です。
労働三権と労働組合法による法的保護
労働組合の活動は、日本国憲法第28条で保障された「労働三権」によって強力に守られています。労働者が団結し、対等に交渉し、必要に応じて行動する権利の保障は法的義務として企業側に課せられています。
- 団結権:労働組合を自由に結成し、加入する権利
- 団体交渉権:労働組合が企業と労働条件について交渉する権利
- 団体行動権(争議権):ストライキなど、交渉を有利に進めるために行動する権利
労働組合の主な活動内容と役割
労働組合の役割は、単なる給与アップの要求にとどまらず、多岐にわたる職場課題の解決にあります。企業側と定期的な協議を行うことで、健全な経営バランスを保つ機能を果たします。
- 労働条件の交渉:賃金引き上げ(ベースアップ)や労働時間の短縮、休日増加の要求
- 職場環境の是正:ハラスメントの防止や安全衛生の確保
- 不当処分の阻止:根拠のない解雇やリストラ、不利益な配置転換に対する対抗
混同しやすい親睦会や従業員代表との違い
社内にある「親睦会」や「社員会」は、通常は労働組合ではありません。労働組合法上の組合と認められるには、会社から独立し、労働条件の維持・改善を主目的とする必要があります。単なる親睦を目的とした組織や、会社から運営費の援助を受けている組織は、団体交渉権やストライキ権といった法的保護を受けられない点に注意が必要です。
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労働組合の種類は?
労働組合には、大きく分けて「企業内組合」「産業別組合」「ナショナルセンター」「合同労働組合(ユニオン)」などの種類があります。
日本では特定の企業ごとに組織される「企業内組合」が主流ですが、近年では個人で加入できる「ユニオン」の影響力も高まっています。
企業内組合
企業内組合とは、企業(または事業所)を一つの単位として、その企業の従業員のみで結成される労働組合です。
内部事情に詳しいため、実情に即した柔軟な交渉ができる点が特徴であり、日本企業の多くがこの形態を採用しています。
合同労働組合(ユニオン)
合同労働組合(コミュニティ・ユニオン)は、一定の地域や職種ごとに組織され、勤務先に組合がない場合でも個人単位で加入できる組織です。
社外の組織であるため、企業側からの干渉を受けにくく、深刻な労働トラブルの解決に利用されるケースが目立ちます。
産業別組合
産業別組合(産別)とは、同じ産業(例:自動車、電機、化学など)に属する企業内組合が、企業の枠を超えて連合した組織です。
業界全体の労働基準の底上げや、政策提言などを行うことで、個別の組合では解決できない大規模な課題に取り組みます。
ナショナルセンター
ナショナルセンターとは、各産業別組合がさらに集結した全国中央組織のことです。日本においては「連合(日本労働組合総連合会)」が代表例であり、政府や経済団体(経団連など)に対して、法改正や社会保障に関する協議・提言を行います。
労働組合の加入形態は?
労働組合がある企業において、従業員の加入が「義務」か「任意」かは、労使間で結ばれる協定(ショップ制)によって決まります。
これは人事労務担当者が、採用時や退職時の実務で必ず確認しておくべき重要なルールです。
ユニオン・ショップ制
ユニオン・ショップ制とは、会社が雇用する労働者に対して、特定の労働組合への加入を義務付ける制度です。
この協定がある場合、組合を脱退したり除名されたりした従業員を、会社は原則として解雇しなければならないという強力な法的拘束力が生じます。
実務上の注意点:解雇が制限される例外ケース
全員加入の協定があっても、無条件に解雇できるわけではありません。最高裁の判例では、組合を脱退して「別の労働組合」に加入した労働者を、協定に基づいて解雇することは認められないとされています。労働者には「加入する組合を選ぶ自由」があるため、二重加盟や別組合への移籍を理由とした解雇は、不当解雇とみなされるリスクがある点に注意が必要です。
オープン・ショップ制
オープン・ショップ制は、労働組合への加入・非加入を個人の自由意志に委ねる形態です。
加入していない従業員(非組合員)であっても、組合員と同様の雇用条件で働き続けることができ、日本においても近年、働き方の多様化に伴いこの形態を選択するケースが見られます。
企業が労働組合を認めるメリットとは?
企業にとって労働組合の存在は、組織の健全性を維持し、ガバナンス(企業統治)を強化するための重要なインフラとなります。
労働組合との対話を通じて、経営陣が把握しきれない現場のリスクを早期に発見し、労使紛争を未然に防ぐことが可能になります。
現場の課題可視化による不祥事の防止
労働組合は、職場に潜むハラスメントやサービス残業などの実態を吸い上げる「早期警戒システム」として機能します。管理職には届かない現場の切実な声が組合を通じて経営陣へ伝わることで、法令違反や不祥事を未然に防ぎ、企業の社会的信用(レピュテーション)を守ることができます。
経営方針の浸透と従業員への納得感
重要な経営施策や構造改革を行う際、労働組合との協議・合意プロセスを経ることで、従業員の納得感が高まります。会社が一方的に決定を押し付けるよりも、組合を通じた双方向のコミュニケーションを行うほうが、施策に対する協力体制を築きやすく、結果として変革のスピードが上がります。
労使間の信頼関係による生産性の向上
適切な労使交渉が行われている企業では、従業員が「自分たちの意見が経営に反映されている」という実感を持てるため、会社への帰属意識(エンゲージメント)が向上します。不満が放置されない職場環境はモチベーションを安定させ、長期的な生産性の向上や離職率の低下に寄与します。
労使連携を円滑にするチェック・オフの慣行
企業が労働組合に代わって、従業員の給与から組合費を天引きして一括納付する仕組みを「チェック・オフ」と呼びます。
この事務代行を行うことで、組合側の運営を安定させるだけでなく、企業側にとっても組合との事務的な窓口を一本化し、良好な協力関係を維持しやすくなるという実務上の利点があります。
従業員が労働組合に加入するメリットとは?
従業員にとって労働組合に加入する最大の利点は、法律の保護を受けながら、個人では不可能な「対等な立場」での交渉が可能になることです。
賃金や福利厚生の維持・向上だけでなく、職場で不当な扱いを受けた際の強力なセーフティネットとして機能します。
賃金・労働条件の維持と継続的な改善
労働組合は、集団の力を背景に「春闘」などの賃金交渉を行い、ベースアップ(ベア)や賞与の確保、労働時間の短縮を目指します。個人の評価に基づく昇給とは別に、労働者全体の底上げを目的とした交渉ができるのは、組合員ならではの大きなメリットです。
不当解雇や不利益な処分の阻止
企業からの一方的な解雇や、根拠のない降格・減給といった不利益な扱いに対し、組合は団体交渉を通じて徹底的に抗議できます。法的な知識を持つ組合が介入することで、企業側の恣意的な判断を抑制し、雇用と生活の安定を強力に守ることが可能となります。
職場環境や福利厚生の充実
組合員のアンケートなどを通じて、食堂の改善や特別休暇の新設、リモートワーク制度の整備といった「働く環境」への要望を具体的に提案できます。現場のニーズに即した福利厚生を会社側に導入させることで、より働きやすい職場を自らの手で作り上げることができます。
専門的な相談相手や法的サポートの獲得
職場でトラブルが発生した際、上司や人事部には相談しにくい内容でも、組合の役員や外部の専門組織(上部団体など)に相談できます。必要に応じて弁護士などの専門家と連携したサポートが受けられる場合もあり、精神的な孤立を防ぐことができます。
労働組合がない場合の選択肢は?
社内に労働組合が存在しない場合、労働条件を改善するには「自ら新しく結成する」か「社外の労働組合(ユニオン)に個人で加入する」かのいずれかを選択することになります。
2名以上の意志ある労働者が集まれば、法律の定めに従って誰でも自由に組織を立ち上げ、団体交渉権を得ることが可能です。
社内で新しく労働組合を結成する
自社専用の労働組合をゼロから立ち上げる方法です。賛同する仲間を集めて規約を作成し、結成大会を開くことで、会社の承諾なしに法的な交渉権を持つ組織を設立できます。社内の事情に精通したメンバーで運営できるため、職場特有の課題に対して柔軟かつダイレクトに改善を要求できるのが最大のメリットです。
社外の合同労働組合(ユニオン)へ加入する
すでに存在する地域や職種ごとの合同労働組合(ユニオン)に、個人単位で加入する方法です。
一から組織を作る手間がかからず、経験豊富な外部スタッフのアドバイスを受けながら、すぐに会社側との交渉を開始できます。社内に仲間が少なく、自分一人や少数で動き出したい場合に非常に有効な手段です。
労働組合と過半数代表者の違いを理解する
労働組合がない職場で36(サブロク)協定などを締結する際に選出される「過半数代表者」は、あくまで一時的な手続き上の代表に過ぎません。労働組合法上の「団体交渉権」や「団体行動権」は持たないため、会社側と対等な立場で継続的に条件改善を勝ち取るには、正式な労働組合としての活動が必要不可欠です。
労働組合に関する注意点は?
労働組合の結成や活動に関連して、企業側が行ってはいけない「不当労働行為」という禁止事項があります。
これに抵触すると、労働委員会からの救済命令や、損害賠償請求の対象となるリスクがあります。
不利益取り扱いの禁止
労働組合に加入したこと、あるいは組合を作ろうとしたことを理由に、解雇、減給、左遷などの不利益な扱いをすることは厳格に禁じられています。
これはパートやアルバイトであっても同様に保護されます。
団体交渉の拒否(誠実交渉義務)
会社側は、労働組合からの団体交渉の申し入れを、正当な理由なく拒否することはできません。形だけの交渉ではなく、組合の要求に対して根拠を示し、誠実に回答する「誠実交渉義務」を負っています。
支配介入の禁止
会社が特定の組合員を抱き込んだり、組合の運営資金を援助したりして、組合の独立性を損なう行為を「支配介入」と呼び、禁止されています。組合はあくまで労働者の主体的な組織でなければなりません。
現代的な課題である「組織率の低下」への対応
近年、非正規雇用の増加や働き方の多様化により労働組合の組織率は低下傾向にありますが、その分、SNSなどを通じた「非組織的な抗議」が急増しています。
実体のある労働組合と誠実に交渉を行うことは、企業にとって「見えない労働リスク」を可視化し、ブランド毀損を防ぐための防波堤となります。
労働組合の作り方は?
実際に労働組合を結成する際は、法的要件を満たすために適切な手順を踏む必要があります。
以下のステップに従って進めることで、法的に保護された組織としてスタートできます。
ステップ 1:準備と仲間集め
まずは信頼できる同僚に声をかけ、準備委員会を立ち上げます。この段階では会社に知られないよう慎重に進めるのが一般的です。労働組合法を学び、どのような職場改善を目指すのかという「基本方針」を固めます。
ステップ2:規約の作成と役員の選出
労働組合には「組合規約」が必要です。名称、所在地、目的、役員の定数、会計ルールなどを定めます。執行委員長、書記長、会計などの役員もこの段階で内定しておきます。
ステップ3:結成大会の開催
賛同者が集まり、規約案が完成したら結成大会を開きます。ここで規約の承認と役員の選出を行い、正式に労働組合が発足します。議事録を作成し、結成した証拠を残しておくことが重要です。
ステップ4:会社への結成通知
組合が発足したら、会社側へ「労働組合結成通知書」を提出します。あわせて、最初の交渉事項をまとめた「団体交渉要求書」を出すのが一般的です。これを受領した会社は、正当な理由なく交渉を拒否できなくなります。
ステップ5:交渉が難航した際の労働委員会の活用
もし会社側が正当な理由なく交渉を拒否したり、議論が平行線をたどったりした場合は、公的機関である「労働委員会」に救済を求めることができます。専門の委員が中立的な立場で間に入る「あっせん」などの制度を利用することで、当事者間では解決が難しい対立も、法に基づいた円満な解決へと導くことが可能になります。
ステップ6:労働委員会の資格審査と法人格の取得
労働組合が「組合名義で銀行口座を作りたい」「事務所の不動産登記をしたい」といった場合には、法人格の取得が必要です。そのためには、労働委員会による「資格審査」を受け、労働組合法の規定に適合していることの証明を受ける必要があります。この審査を通過し、登記を行うことで、組織としての社会的信用と実務的な利便性が格段に向上します。
労働組合を正しく理解して健全な職場環境を構築しよう
労働組合(労組)は、労働者が自らの権利を守るための組織であると同時に、企業にとっては現場の声を吸い上げるガバナンスの要でもあります。ユニオン・ショップ制の例外的な運用や不当労働行為の禁止など、法的な注意点を正しく理解しておくことは、円滑な労使交渉と健全な経営に欠かせません。
もし自社に労働組合がない場合でも、2名以上の労働者がいれば自由に結成でき、あるいは外部の合同労働組合を活用することも可能です。本記事で紹介したメリットや作り方のステップを参考に、より働きがいのある職場づくりに取り組んでください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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