- 更新日 : 2025年7月30日
EQとは?高い人の特徴や改善方法を解説!
EQとは心の知能指数とも呼ばれ、自分の感情の状態を把握し制御した上で、他者の感情を理解し活かす能力のことです。職場の人間関係構築だけではなく、部下の育成やチームビルディングなど、ビジネスシーンでも重要となる指数として注目を集めています。
ここでは、EQの意味を解説するとともに、診断テストの仕方や高める方法を紹介します。
目次
EQとは?
EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは、「心の知能指数」といわれます。米国の心理学者ピーター・サロベイ氏とジョン・メイヤー氏が1990年に提唱した理論です。
EQは、自分の感情を理解しうまくコントロールすることで、前向きな気持ちを生み出す能力のことをいいます。前向きな気持ちは前向きな思考や行動につながり、モチベーションを高め、結果に結び付けることが可能となるでしょう。
また、自分の感情の状態を理解することができるようになれば、他者の感情の状態を理解することができるようになります。つまり、自分や他者の感情を理解することによって、対人コミュニケーションを良好に保つことが可能となるのです。
EQは後天的に高まるものとされており、コミュニケーションや信頼関係の構築に大きく役立てることができます。
IQとの違い
EQと混同しがちな概念にIQがあります。IQとは、Intelligence Quontientの略称で「知能指数」を指す言葉です。IQは、思考の速さなどの知能を数値化したもので、遺伝的な特質を持つともいわれています。
IQが高い人は能力が高く、ビジネスを成功させる要素の1つであるといえるでしょう。しかし、どれだけIQが高くても、人間の判断や行動は感情的な要素に大きく左右されます。企業組織内や顧客との関係性では、論理的な思考力や判断力だけではなく、自身や他者の感情を理解し、共感を創造する能力が不可欠です。EQは、組織のなかで成果を出すための能力として重要であると考えられます。
EQの指数の考え方
EQは、以下の4つの能力によって構成され、補完し合うように機能しています。
・感情の識別
自分や他者の感情を認識し、識別する能力を指します。感情を認識し、識別することができれば、自分や相手がいまどのような感情を抱いているのかが把握できるようになります。また、相手の感情を理解しようとすることは、共感を生み出します。
・感情の理解
感情がどのようにして起こったのかを考えることが、「感情の理解」です。自分や他者の感情を識別して終わりにするのではなく、その感情の原因を分析し、変化を予測することが重要となります。とくに、他者の感情はコントロールできるものではありません。「なぜ怒っているのか」「なぜやる気がないのか」など、原因について理解し感情の変化を予測することは、相手を思いやり、理解することにもつながります。
・感情の利用
「感情を利用」とは、問題を解決するために感情を作り出す能力のことです。人の行動や思考は、感情によって左右されます。したがって、継続的に成果を出すためには、ときには強い感情を抑えて気持ちを作ることも必要となるでしょう。感情をコントロールし、パフォーマンスを安定させることが重要です。
たとえば、苦手な課題を割り振られた際「いやだなあ」と思っているだけでは作業が進みません。「これを乗り切れば、大きな仕事を任せてもらえるかも」といったように、自分に求められている状況と自分の感情を結び付けることができれば、モチベーションの向上につなげられます。
・感情の調整
「感情の調整」とは、感情をコントロールし、ふさわしい行動・発言へつなげる能力のことです。そのためには、他者に自分の感情を伝えるための感情表現力も必要となるでしょう。自分や周りのコンディション、環境に合わせて感情を微調整することが重要になります。
たとえば、落ち込んでいる人を励まそうとしても、適切な励まし方は多種多様でしょう。「ペットを亡くして落ち込んでいる人」と「仕事で失敗して落ち込んでいる人」では、励まし方にも大きな違いがあります。こうした外部要因や他者の状況、自分の状況を踏まえた上で、ふさわしい行動や発言をすることが、「感情の調整」といえます。
EQの高い人の特徴
EQの高い人は、自分の感情や他者の感情を理解し調整する能力に優れているため、トラブルに動じず、冷静で落ち着きがあるという特徴があります。人間関係がスムーズであり、感じが良い印象を持たれることが多いでしょう。この能力はビジネスの上でも必要です。ここでは、EQが高い人の特徴を紹介します。
柔軟性がある
小さなことでも動じず、違う価値観を柔軟に受け入れる包容力があります。また、状況が変化しても適切に対応し、受容できる特徴があります。問題解決力も高く、ミスやトラブルに対しても、感情が乱されることなく冷静に対応できます。
傾聴力がある
相手の話に耳を傾け、感情を理解しようとします。したがって、コミュニケーション能力に秀でており、最後まで相手の話を聞くため、「頼れるリーダー」と思われることも多いでしょう。気配りができて共感力が高く、聞き上手と思われることも少なくありません。
ストレス耐性が高い
自分の感情も敏感に察知できるため、感情をコントロールし、ストレスに上手く対処します。理不尽な出来事に対応しても、自身の感情を処理し冷静でいることができます。
EQの診断方法 – テストやチェックはどうすればできる?
EQの検査で有名なのは、世界的にEQの概念を広めたダニエル・ゴールマン氏の「EQ測定~A Real Me」です。検査は200点満点で測定され、平均点は100点といわれます。検査では、素直に回答することが正確な結果を得るコツです。設問では、ストレスや葛藤が生じる場面で、「自分がどのように対応するか」と考える問題が多く設定されています。
また、EQ診断を専門にしているサービス会社に依頼するのも一つの方法です。
参考:EQ(こころの知能指数)「EQI行動特性検査」 | 組織診断ツール | コンサルティング | 公益財団法人日本生産性本部
EQを高めるための方法・トレーニング
EQは、最初は個人差があるかもしれませんが、訓練によって誰でも高めることが可能です。EQを高めるためには、「診断」「変革」「振り返り・改善」を繰り返すことが重要です。たとえば、社内でEQを高める研修を実施するのであれば、まず診断テストを用いて個々の従業員のEQを把握し、課題を特定するのが良いでしょう。その上で、研修を実施し、改善計画を実行します。研修後に振り返りを行い、実務に活かせるようにしましょう。
とはいえ、研修で感情のコントロールを学んでも、すぐに定着するわけではありません。日常生活で以下のポイントを意識することで、EQを高めていくことができます。
相手に寄り添う(傾聴、共感)
日頃の会話から、相手の感情を想像し、気持ちに寄り添うよう心がけるようにしましょう。話を聞く際に、相手の言葉のトーンや表情に気を配り、感情にアンテナを立てます。なにかいいたいことが思い浮かんでも、話を遮らずに最後まで聞くように意識しましょう。
周囲の人をよく観察する
周囲の人を観察し、良いところを見つける癖をつけましょう。職場の人の良い点を知っているだけで、何かネガティブなことが起こったとしても、「相手にも理由があるはずだ」と感情を落ち着かせることができます。
言語化を習慣にする
感情は目に見えません。そのため、自分自身の気持ちを言葉にすることで、感情に気づくことがあります。とくに、日記のような手軽に言語化できるツールはおすすめです。言葉に残しておくことで、後で振り返り、自分の感情を深堀することができます。
人事・労務においてEQは使える指標?役立つ場面はある?
心の知能指数と呼ばれるEQが高い人は、柔軟性に優れ、感情に振り回されずに冷静な判断を下すことができます。また、他人のミスやアクシデントに対しても、原因や本質に向き合った対応が可能です。
EQは、このように対人能力や問題解決力、コミュニケーション能力、リーダーシップを測る際の指標の一つになり得ます。人事評価と組み合わせ、人事異動を検討する際の参考資料として活用するのも良いでしょう。
またEQは研修やトレーニングで高めることができます。そのため、リーダーシップ研修などに取り入れることで、自社の社員の人材育成に活用できます。
研修やトレーニングでEQを向上させよう
EQの高い人は、スムーズなコミュニケーションを通じて他者からの信頼を得ることができます。また、自身の感情をコントロールできるため、難しいプロジェクトを任された際など、ストレスの大きな状況でも乗り切ることができます。
EQを高めることで、いままで難しく感じていた物事をスムーズに乗り切ったり、苦手な人との関係性を好転させたりすることができます。一人ひとりのEQの向上を図ることができれば、職場の働きやすさにつながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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