- 更新日 : 2025年6月23日
就職促進給付とは?再就職するなら覚えておくべき手当について解説!
雇用保険制度には、さまざまな保険給付が設けられています。失業時の生活保障として基本手当などの求職者給付が大きな柱となっていますが、失業者が失業状態を脱して早く就職できるように促す就職促進給付も重要な役割を担っています。就職促進給付にも、さらに複数の給付があり、内容は複雑です。今回はその中の就業促進手当について詳しく解説していきます。
目次
就職促進給付(就業促進手当など)とは?
就職促進給付とは、失業中の労働者に対して雇用保険から支払われる給付金の一つです。雇用保険は、労働者の生活と雇用の安定のために設けられている社会保険制度です。求職者給付のうちの基本手当は失業保険の呼ばれ方でよく知られている、雇用保険の行う代表的な給付です。
失業者に対して労働者が安定した生活をしながら、就職に向けた活動を行えるようにと支給されます。また雇用保険は、育児休業や介護休業で給料が支払われない労働者に対しても育児休業給付・介護休業給付を行っています。
失業した労働者が安定した職業に就くことを支援するための給付が就職促進給付です。就職促進給付には就業促進手当・移転費・求職活動支援費があり、就業促進手当には受け取れる失業保険を多く残して再就職した場合に支給の対象になる再就職手当などの4種類の手当があります。
| 就職促進給付 | 就業促進手当 | 再就職手当 |
| 就業促進定着手当 | ||
| 就業手当 | ||
| 常用就職支度手当 | ||
| 移転費 | ||
| 求職活動支援費 | 広域求職活動費 | |
| 短期訓練受講費 | ||
| 求職活動関係役務利用費 | ||
就業促進手当には4つの種類がある
雇用保険は、労働者の生活や雇用の安定を図る目的で設けられている保険制度です。失業者に対しては求職者給付や就職促進給付を行い、生活を安定したものとしたり早期に安定した職に就いたりすることの支援としています。就職促進給付のうちの一つである就業促進手当には、次の4種類の手当があります。
再就職すると受給できる「再就職手当」
早期に再就職した場合に受給対象となるのが、再就職手当です。失業者は求職者給付の基本手当(いわゆる失業保険)を受けながら再就職に向けた求職活動を行います。基本手当の給付日数は、年齢や雇用保険であった期間、離職理由などによって決定されますが、再就職すると受け取れなくなります。
失業者が多くの給付日数を残すという不利益を被らないための制度が再就職手当です。給付率は2つあり、早く就職を決めた失業者に対しては高い給付率を用いて再就職手当給付額が計算されます。
前職より賃金減少したら「就業促進定着手当」
再就職はしたものの、前職より賃金が下がってしまった場合に受け取れるのが就業促進定着手当です。離職前の賃金の1日分の額に比べて低下している場合、給付を受けることができます。ただし就業促進定着手当支給額には、上限がある点に注意が必要です。
再就職手当支給外への就職は「就業手当」
再就職手当が安定した職業に就いた場合に対象になるのに対し、就業手当は常用雇用等以外の形態で就業した場合に受け取れる給付です。
就職困難者に支給される「常用就職支度手当」
障害があるなど、就職が困難である人を対象に給付されるのが常用就職支度手当です。基本手当受給資格者・高年齢受給資格者・特例受給資格者・日雇受給資格者のいずれかであり、就職困難者が安定した職業に就いた場合、要件に該当すると受け取ることができます。
就業促進定着手当を受け取れる3つの条件
就業促進手当のうち、就業促進定着手当は再就職によって給料が低下した場合に受け取ることができる給付です。以下で説明する条件に当てはまる場合に受給できます。3つの条件は全てに該当することが必要です。
再就職手当の支給をすでに受けている
就業促進定着手当を受けるためには、まず再就職手当の支給を受けていることが必要です。再就職手当とは先に触れた通り、求職者給付である基本手当について支給残日数がある場合に受け取れる手当です。決定された基本手当を1/3以上残して安定した職業に就いた場合に受け取ることができます。
就業促進定着手当は、再就職手当を受け取っている場合に支給対象となる給付で、再就職手当を受け取っていなければ就業促進定着手当も受け取ることはできません。
特定の条件で6カ月以上雇用されている
継続雇用されていることが、就業促進定着手当を受け取る、2つ目の条件です。就業促進定着手当を受け取る1つ目の条件は再就職手当を受け取っていることですが、再就職手当は「1年を超えて勤務することが確実であること」が支給要件とされています。就業促進定着手当を受け取るにあたっても継続して雇用されていることが求められ、6カ月以上雇用されていることが必要です。
同じ事業主に、雇用保険の被保険者として雇用されていなければ、就業促進定着手当の給付対象にはなりません。再就職手当は雇用される以外に自分自身が事業を開始する場合も支給対象になりますが、就業促進定着手当では起業は支給対象外になっています。
前職の賃金を下回っている
就業促進定着手当を受け取る条件の3つ目は、前職の賃金を下回っていることです。再就職によって賃金の低下が起こる場合に、就業促進定着手当の給付は行われます。前職の賃金よりも再就職先で支払われる賃金のほうが低い場合でなければ、就業促進定着手当は給付されません。
再就職先による6カ月間の賃金の1日分の金額が、離職前の賃金の1日分の金額に比べて低いことが必要です。
就業促進定着手当支給額の正しい計算方法
就業促進定着手当支給額の計算は以下のようにして求めます。
1.賃金の低下額を求める
以下の計算により賃金低下額を求めます。
2.再就職後6カ月間の賃金の支払い日数となった日数をかける
原則として月給制の場合は暦日数、日給月給制の場合はその基礎となる日数、日給制や時給制の場合は労働の日数となります。
また、就業促進定着手当には上限額が定められています。上限額は、次の計算式で算出されます。
就業促進定着手当の申請方法
就業促進定着手当の受給には申請手続きが必要です。以下に説明する方法で手続きします。
必要書類を用意する
就業促進定着手当の受給該当者には、ハローワークより申請書類が届きます。申請書や案内が郵送されるので、受け取ったら確認して準備を開始しましょう。申請に必要な書類は以下の通りです。
「4.再就職した日から6カ月間の給与明細、または賃金台帳の写し」について、再就職した日が賃金締切日の翌日でない場合には、再就職後最初の賃金締切後の6カ月分が必要です。
また「3.再就職した日から6カ月間の出勤簿の写し」「4.再就職した日から6カ月間の給与明細、または賃金台帳の写し」について、出勤簿の写し・賃金台帳の写しは事業主から原本証明を受けたものが必要になります。
必要事項を記入する
以下が就業促進定着手当支給申請書です。

引用:ハローワーク インターネットサービス|就業促進定着手当支給申請書
赤枠は本人が記入する部分ですが、青枠部分は事業主に記入してもらう必要があります。
書類をハローワークへ持参するか郵送する
就業促進定着手当受給に必要な書類が準備できたら、ハローワークに以下の方法で提出して申請します。
申請先:再就職手当の支給申請を行ったハローワーク
申請方法:窓口への持参、あるいは郵送
申請期間:再就職した日から6カ月を経過した日の翌日から2カ月間
就職促進給付を活用して有利に再就職しよう
転職のために会社を辞めると雇用保険から失業保険が受給できます。雇用保険は労働者の生活と雇用の安定のために、失業保険のほかにもさまざまな手当の給付を行っています。
早期に再就職した場合には再就職手当、再就職手当の対象外の就業をした場合には就業手当、就職困難者が安定した職業に就いた場合には常用就職支度手当の受給対象となります。
就業促進定着手当もこれらと同じ就職促進給付の一つで、再就職で賃金が低下した場合に受給できる手当です。再就職手当をすでに受けている・特定の条件で6カ月以上雇用されている、あるいは前職の賃金を下回っていることを条件に支給されます。
該当する場合は忘れずに申請して給付金を受給し、再就職に活用しましょう。
よくある質問
就職促進手当はどんな制度?
失業者が早期に安定した職業に就くことを促進する目的で設けられている制度で、再就職手当、就業促進定着手当、就業手当、常用就職支度手当の4種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。
就職促進手当を受け取る条件は?
就職促進給付のうちの就業促進定着手当は、「再就職手当の支給をすでに受けている」「一定の条件で6カ月以上雇用されている」「前職の賃金を下回っている」という3つの条件に全て当てはまる場合に受け取れます。詳しくはこちらをご覧ください。
就業促進定着手当支給額の計算方法は?
離職前の賃金日額と、再就職後6カ月間の賃金の1日分の金額との差に、再就職後6カ月間の賃金の支払基礎となった日数をかけて就業促進定着手当支給額は計算されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
病欠で有給を使いたくない場合は欠勤扱いになる?風邪や体調不良の対応方法を解説
風邪など急な体調不良で会社を休む場合、「有給休暇を使いたくない」と考える人もいるでしょう。本記事では、病欠時に有給を消化せずに休む方法や、就業規則・労働基準法の観点から押さえておくべきポイントを解説します。社員の権利を守りつつ、会社とのトラ…
詳しくみる管理者に日曜休みはない?休日出勤の手当と代休の有無をわかりやすく解説
管理職としての責任が大きく、業務の負担も増えるなかで、休日出勤を避けられない状況も多いのではないでしょうか。会社の方針や業務の進行に応じて、管理職は柔軟に対応する必要があり、時には予期せぬ休日出勤を余儀なくされることもあるでしょう。 本記事…
詳しくみる【社労士監修】労働基準法第32条とは?労働時間のルールや36協定との関係をわかりやすく解説!
労働基準法第32条は、労働時間に関する基本ルールを定めた条文です。人事労務担当者にとって、従業員の労働時間管理は法令遵守のみならず社員の健康管理や企業の信頼にも直結する重大事項となります。 本記事では、労働基準法第32条の概要をはじめ、具体…
詳しくみる36協定を守らない社員にはどう対応する?ステップごとの対応策やポイントを解説
企業が従業員に法定労働時間を超えて残業や休日労働をさせるには、「36協定」(労働基準法第36条に基づく時間外・休日労働に関する労使協定)の締結と労基署への届出が必要です。36協定を適切に締結・遵守しない残業は違法となり、企業には6ヶ月以下の…
詳しくみるタイムカードの30分単位計算は違法?給与計算の正しいルールを解説
タイムカードの記録を30分単位で処理して給与を計算する方法は、原則として労働基準法違反となります。すべての雇用形態で1分単位の実労働時間の集計が求められています。 この記事では、タイムカードの30分単位計算がなぜ問題なのか、労働基準法や厚労…
詳しくみるフレックスタイム制の清算期間とは?1ヶ月・3ヶ月での計算方法や注意点を徹底
フレックスタイム制の清算期間は、1ヶ月が上限でしたが、法改正により最長で3ヶ月とすることが可能です。清算期間の長さにかかわらず、期間内で週平均40時間を超えないように調整する必要があります。 本記事では、フレックスタイム制の清算期間について…
詳しくみる